石とチェンソー   作:マカロニサラ・ブリッグス

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ACE

フロストノヴァ

あ。


熱中の渦

 

 

横に一閃すれば兵士の身体が引き裂かれ散らばっていく。血みどろで凄惨な景色の中心には楽しげに笑う悪魔の姿があった。

 

「なんだよ……あんな化け物がいるなんて聞いてないぞ!姉さんに報告を、いやその前にどうにか僕が生き残る方法を……」

 

メフィストとは焦りを隠せなかった。しかしそれも仕方がないのだろう。

非現実な存在が目の前に現れれば誰しもが同じ反応を示すはずだ、いやむしろこの状況の中で奴を止める手立てを考えようと思考を切り替えられるのなら凄いと讃えるべきである。

 

「回復を少数に集中させて強化すれば時間は稼げる、それで隙を作らないと……」

 

作戦を即座に立てて実行に移すその速度は、幹部であり司令塔を担う彼だからこそ成せる技なのだろう。

 

けれども彼は一つ失念している。

イレギュラーというのはなんとも非情なもので理屈など簡単に、理不尽に吹き飛ばせてしまうものなのだ。

 

「逃げんじゃねえ!勝負は続いてるだろうがァ〜!」

 

盾として置いた狂化兵を奴は道を通るついでとでも言いたげなのか、雑に斬り捨てて悪魔は近付いてくる。

 

速すぎる、強過ぎる、意味不明で馬鹿げている。あの正体不明の存在に思考が恐怖に染められてしまう。

だがその感情がより自分の首を締めていくことなど、初めて悪魔と相対する彼が知る由もないだろう。悪魔にとって恐怖は最高の餌だ、それを喰らえば喰らうほど力を増していく。

 

この一方的な戦いに勝負を付けるべく、悪魔はすぐそこまでやってきていた。死を報せる音は力を増したことで更に加速する。

 

逃げれない

 

メフィストの思考はそこでストップしてしまう。身体を動かすことさえ忘れてただ回転する刃を眺めていることだけだった。

そんな彼の頭を撥ねようとチェンソーマンは少年の首を狙って一直線に腕を振るう。

 

無情にも、刃が少年の首に触れた。

 

 

 

「ッ!?」

 

だがその刃がその先へ進むことは無く、血肉を断つ直前で戻っていく。よく見れば、その腕には1本の矢が深く突き刺さっていた。

 

「なんだァ〜!?いきなりどっからだよ!?」

 

狼狽えている悪魔の側頭部に見覚えのある紫の弾道が直撃して、悪魔はその衝撃で弾き飛ばされて地面を転がっていく。

確かあれは───

 

『メフィスト、無事か……メフィスト』

 

「ファウスト……?」

 

通信機から音声が流れた。この落ち着いた声は間違いなく大事な親友のものだ。

 

『撤退するんだメフィスト、こっちで陽動して時間を稼ぐ』

「でも、だけどアイツは!」

 

『ああわかってる、アレをまともに相手するのはまずいんだろう。だからここは一度引くんだ、あの人がもうすぐ来る』

 

「!……わかったよ、ファウスト。今から撤退する、援護射撃を」

 

『……了解、隠密射撃を開始』

 

 

 

 

「ぐあぁクソ!いってえぇ〜!!」

 

どっから撃ってきやがった!おかげであのガキを仕留め損なっちまったじゃねえか!

 

立ちあがって周りを見渡してみるが、先程出来上がった死体と懲りずに復活していく兵士以外に人影が見つからない。

ならばと白髪を探せば、隙を見て逃げ出そうとしていた。

 

「おい待てこの……っアブね!?」

 

第一射、対象の数歩先の地面に着弾。

 

追いかけようと足を前に出せば、再び先程の攻撃が邪魔をしてくる。

このままではどうにもならないと踏んだデンジは優先対象を狙撃手へと変えた。

 

地面のえぐれ方的に攻撃の方向がこっち向き……てことは、左の方角に潜んでるってことだよな?てことは攻撃できそうな位置を見つけりゃあ……あの家の上か!

 

「そこかァ!アレ〜、いねえ!?」

 

力任せに跳躍して狙撃地点と思われる所へと急接近してみたが、敵の姿は見当たらない。

場所を間違えたのかと思いその周囲を見渡してみてもやはりそれらしき影は視界に映らなかった。

 

「どこにいやがる───」

 

第二射、対象の右上腕に命中。肘から先が消失。

失った腕からは鮮血が溢れ出た。

 

「イぃっでえぇ〜!!」

 

振り向いた瞬間に先程とは全くの別方向からの攻撃を受けたようだ。痛みを感じると同時にデンジは、敵が通常の相手では無いことを悟る。

 

「クッソ、ただ撃ってるだけじゃねえ、見えねえように細工してんのか!」

 

残った左手でスターターコードを引っ張ればエンジン音と共にデンジの右腕は急速に治癒を始めていき、気がつけば消えた腕が元の形へと完治していた。

 

相手の位置、姿に加え射撃方法は全て不明という現状にデンジはただ次の攻撃に備えておくことしか出来ずにいる。

 

それならば今度はわざと攻撃を受けながら敵の位置にいち早くたどり着こうと、動きを止めてその時を待ち構える。

 

 

しかし今度は、いくら待てども次の攻撃がやってこないまま長い静寂が過ぎていった。

 

「……なんだァ?どうしてなんもしてこねえ」

 

先程の騒がしさとは打って代わって急に静まりかえった戦場に、ただ困惑だけが残される。

 

「……ンだよ、逃げやがったか?」

 

まだ派手にやり合おうとしていたつもりであったために、あっさりと手を引かれたことに対して少し拍子抜けしてしまった。

その行動に何か目的があるとすれば、それはやはりあの少年を逃がす時間を作ることだったのだろう。あの攻撃の主が一体誰だかは知らないが仲間思いなやつだと敵ながらに感心していた。

 

だが結果的に両方を取り逃してしまった事に後味の悪さを感じながらも休息をとろうとした瞬間、体に強い熱を感じた。

派手に動き回ったせいかと考えたが、チェンソーマンである今の身体でそこまで疲れが蓄積するものとも思えない。ならこの暑さは一体なんだと考えてふと気がついた。

 

……この暑さは、この背中の熱さは俺のじゃない。

 

背後の石壁が赤熱していく。内側から溶け出した壁から漏れだす炎に頭が危険信号を鳴らしている。

 

「うわぁっぶねェ〜!ナ、なんだぁ!?」

 

反射的に横へ跳ぶと、元いた場所を飛び出していくそれは通り道の全てを焼き尽くして、灰さえも残さずにただ葬り去っていく真っ赤な柱だった。

 

溶け残ったその道の先から、程なくして誰かが歩いてやってくる。それは言葉にするなら

 

 

 暴力

 

 厄災

 

 絶望

 

そんな重い単語が並べられるほどの大きな圧力を醸し出す存在だった。

アレは間違いなくやばいとデンジの脳が訴える。

 

「お前が、我が同胞達の邪魔をする異分子か」

 

反射的にエンジンを吹かす。

 

呼吸をしようものなら、瞬く間に喉が焼けるほどの熱波の中から、声の主が姿を現した。

始めに目に入ったのはくすんだ色の銀髪、そして気高さを感じる黒い双角。

そして黒くボロボロではあるが美しさと力強さを感じる衣装と腕に巻かれた赤の腕章。

 

レユニオンの主導者、又の名を暴君タルラ。

 

それらイメージをまとめ、凄まじい威圧感を放つ女性だった。その姿を見たデンジは思わず息を呑み……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カワイイ。」

 

 

美女を前にデンジは無駄に真っ直ぐな瞳で、そううわ言のように呟いた。

 

彼はいつ如何なる時も変わらず、女性に飢えていた。

 

「……散れ、名も知らぬ怪物よ」

 

「アッツゥ!!」

 

しかし現実は悲しいかな、その女性は姿を見せるなり掌から出した炎で即座に燃やしてきた。

なぜこうも出会う女は皆が皆、俺を殺そうとしてくるのだろうか、解せない。だがしかし、カワイイゆえに許さざるを得ない。

 

「アッ、アツ!?イタァ!!ってウワー!?腕が無くなってる〜!?」

 

先程の巨大な火柱に比べて今の攻撃は小規模に感じるのだが、その火力は全く同じである。

僅かにでもそれに触れれば皮膚は焦げ落ち、1秒でも炎に巻かれてしまったのなら灰すら残ることは無い。

純粋にデタラメなその火力こそが彼女の驚異的な能力と言えよう。

 

デンジとしてはあまり進んで殺し合いたくないのだが、あの殺意の籠った目を見るに逃がしてくれるつもりは無さそうだ。

 

「クソ、こうなりゃやってやるしかねえか!」

 

燃えた腕を回復させてすぐさま突進を仕掛けようとする。

 

「が、クソアッチィ!!」

 

彼女の操る炎に行く手を阻まれて思うように近づけない。

射程に入らなければ攻撃が通らない分、デンジにとって相性の悪い相手だ。

加えて相手のその技の限界も未知数なために、ただただ回避を強いられていた。

 

炎の火力が高過ぎて近づけねぇ!反則にも程があるんじゃねえかオイ!?

 

デンジはあの強力な炎を突破できる、何か有効な手段が無いかと模索を始めた。

 

攻撃しようにもなぁ……チェンソーも熱で溶かされちまう。あんなの、水とか被らねーと勝負にもなんねえぞ……なんかいい方法か、なんかねえのかな〜。

 

そうしているうちに思考が纏まらなくなってくる。

長いことサウナにも勝る高温状態に置かれているために、脱水症状が起き始めていた。

 

あ〜……めんどくせぇ、とりあえずまぁ、突っ込んじまうかあ?

 

……あ、いや、そうだ。

 

 

何かを思いついたデンジはコードを引っ張り、今日何度目かのエンジンを吹かしてからタルラへと走り出した。

その足の踏み出す先に迷いは無い。

 

「……執拗い奴だ」

 

変わらずの表情で、その手を悪魔へと向けると豪炎を浴びせるべく炎を生み出す。

人間大になった火球が撃ち出されるが、悪魔は回避する素振りを見せない。

血迷ったのかとタルラは呆れた目で見つめていた。

 

「オレ、思いついちまった」

 

炎に呑み込まれる寸前に悪魔は言葉を発した。そしてそれは続く。

その灼熱でチェンソーの先端が溶けていく。

 

「燃え尽きちまう前にコード引っ張ってさぁ───」

 

悪魔は炎の中へと消えていく。

だが、止まらない。

炎を掻き分けて、チェンソーの刃先が顔を出す。

 

「回復するのを繰り返せば、それってさァ───」

 

炎を置き去って、傷一つないチェンソーマンの姿がそこにあった。

 

「ノーダメージってことだよなぁ〜!!?」

 

それは無茶苦茶な思考が生み出した、あまりにも強引な突破法だった。

 

「これなら天下統一も夢じゃねえぜ〜!」

 

チェンソーの刃渡りが届く距離には、タルラが佇んでいた。





心が辛いんだよ!重いんだよ!最高だよアークナイツ!

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  • 両方知ってる
  • 未来最高!未来最高!
  • まだ休んじゃだめですよ。
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