昨日のうちに投稿しようと思って書いてたら寝てました。
検査を受けてから数時間が経った。
デンジはあれから特にすることもなかったのでボーッと窓の外の荒野を眺めていると、部屋の外からコツコツと一つ足音がなるのが聞こえてきた。
「デンジくん、少しいいかな?」
部屋に入ってきたのはフォリニックさんだ。様子を見るにどうやら何か少し急ぎの用事があるらしい。
「ハイ!なんスか?」
「ケルシー先生って人に、あなたを連れて来るように頼まれたの。今から着いてきてくれるかしら?」
断る理由など最初から無いし、フォリニックさんの頼みとあらば尚更断れない。デンジは二つ返事でケルシー先生とやらのもとへ着いていくことになった。
歩いた先はどうやらデンジが一度も通ったことの無い道のようで、明らかに今までの施設の中とは雰囲気がガラリと変わり、秘密基地のような少し重苦しさのある空気だった。
道を通りすがる人も兵隊のような重い装備を纏っている者が多く見受けられ、まるで病院から打って代わって軍事基地に来たかのようだ。
フォリニックの足はある扉の前で止まった。どうやらここが目的地らしい。
彼女がコンソールを操作すると、機械的な扉が音を立てて開かれる。
「ケルシー先生。彼を連れてきました」
「ああ、ご苦労だった。フォリニック」
最初に見えたのはキレイな背中だ。大胆にも肩や背中が露出していて、透明な生地で出来た服なのも相まって真っ白な肌が晒されている。
そして光の加減か、緑がかった銀髪という不思議な色合いの髪、そしてそれに付いている猫の耳というギャップがその美しさを強調する。
その人物はゆっくりとこちらを振り向いて───
「あ」
その整った顔が見え、そして同時に目が合う。
吸い込まれた。この気持ちを表すのなら、その表現が正しいのだろう。
緑色の虹彩を持った瞳がこちらを射抜いてきた。どこまでも感情を読み取ることができない、底の知れぬその瞳はとても、いや、言葉にする事が無粋なほどに魅力的で……デンジは目を逸らすことが出来なかった。
フォリニックを見た時とは全く違う、不思議な感情が湧き上がってきた。それを証明するかの如く、いつの間にかデンジの頬には一粒の汗が伝っている。
「さて、君がデンジか」
機械的ではないのにも関わらず感情の起伏を感じぬその声は、恐ろしい程に美しい。
「あハイ!」
「まずは急に呼び出してしまった非礼を詫びよう」
「え!あ!イエ!謝ることなんかなんも!」
意識の外からの突然の謝罪にデンジは訳が分からず、少し混乱していた。
「そうか。では、早速だが本題に入らせてもらうよ」
そう言うと目の前の彼女はデスクに置かれた書類を手に取る。その一連の動作すらも無駄が無く、洗練された美が感じ取れる。
そして、その全てを受けたデンジの心は今、完全にケルシー先生のことで支配されていた。
なンだ、あの人……キレイ過ぎんだろ!
底知れぬ目と、思惑の一切を読み取れぬ表情。そのミステリアスな美しさは性という欲に飢え、尚且つ年頃の男子であるデンジを狂わせるには十分すぎた。
ポチタ、なあ俺さ……見つけちまったかもしれねェ!
それはデンジにとって人生で最大の一目惚れだった。
「……君の書類に目を通して、いくつか質問がある。君の体のこと、そしてチェルノボーグでの一件、最後に君の今後の選択だ」
そういうと先程の検査結果の書類を手に取り軽く読みながら、彼女は言葉を続けた。
「このレントゲン結果に関して、複数箇所の骨折が見受けられていたようだが今現在はアーツ治療も無しに全て完治している。この事実は古来より長く紡がれてきた医学の歴史の中を覗いても、異例であるという他ない」
だが、と言葉を付け足してから彼女は視線を書類からデンジへと向ける。
「それよりも、私個人が目をつけたのは君の心臓だ」
一枚の写真がモニターから映し出される。それは自身の体内のX線写真だ。
「これは心臓として確かに機能はしているが、本来の心臓とは異なる形状をしている。例えるのなら一つの生物にも近い造形だろう……デンジ、これが一体何なのか知っているのであれば聞かせて欲しい」
「えっと、コイツはポチタです!」
「ポチタ、とは?」
「昔、一緒に暮らしてた悪魔です。それで俺がゾンビの悪魔に殺されたときに契約の対価として、心臓をくれたんですよ!」
説明を終えると、ケルシーは顎に手を添えて何かを考え始めた。
「ふむ……君の言う悪魔、というのはどういう存在なのか教えて貰えるだろうか?」
「悪魔の、存在っすか?」
何故そんな質問をするのだろうかと疑問に感じたデンジだったが、とりあえずその問いに答えることにした。
人の恐れるものが悪魔となり、その概念を恐れれば恐れる程に力を増すこと。そして、逆に恐れられなければ弱くなること。
稀に人の体を持つ悪魔や、それが人の体を乗っ取ることで生まれる魔人の存在。
その中には、人に友好的な悪魔も存在するということ。
「まあ、大体ざっとこんな感じです!」
「成程。概念の実体化と、人の意識の変化が齎す力の影響……デンジ、君に聞いて欲しいことがある」
再び、彼女の視線はデンジへと注がれる。
「……君の言う条件に該当する悪魔と呼称される生物は、恐らくこのテラの大地には存在しない」
そして、と付け加えて話は続いた。
「これは血中源石濃度、検査の結果だ。君の血液には本来含まれている筈の源石が一切検出されなかった……」
「あのー、源石って何なんすか?」
デンジは前々から疑問に思っていたことを聞いた。すると、その言葉を聞いたケルシーは「やはりか」と一言呟いて静かに目を伏せた。
「このような事象、到底信じたくは無いが……デンジ」
名前を呼ばれると再び目を開き視線が合った。
「君はこのテラの大地の、いや、この世界の存在では無い。言うなればこことは違う異世界の人物だ。」
それは突拍子も無い話だっただろう。誰も信じるはずがない……そして、それを聞いたデンジの表情は変わらない。ケルシーはそうなるのも無理もないかとこの後のことを一人考えていた。
デンジの口が開く。
「なんだ、そーなんすか!」
ただあっけらかんと言い放った一言は、ケルシーの予想とは全く違う反応だった。
「……動じないんだな、君は」
「まー、そういうことだってあるかも知んないですし。それに、こんな感じのことは前にもありましたから!」
そう言って思い出すのは、永遠の悪魔に閉じ込められた時のことや、地獄へと落とされた時のことだ。
「そんときも俺が色々頑張れば、どーにかなりましたから!だから気にしないッスよ!」
「……どうやら君は、私の予測以上に強かだったようだ。なら、この話をあまり長く続ける必要は無いだろう」
そう言い切ると、書類をしまってデスクの上へと置いた。
「なら、君には今後の方針について決めてもらおうか」
「今後?」
ケルシーは指で数字を表しながら説明を始めた。
「一つは、ここロドスを抜けて生活をする。だが、君の身元が固まっていない以上は他の地域で暮らしていくのは大変なことだろう」
「二つ、ロドスで特別患者として生活をすることだが……余程の事態に陥らない限りはこの船からは出られなくなってしまう」
「そして三つ目、ロドスで雇われて仕事をこなしながら生活をする。幸い、君は戦闘の分野でも問題ない実力を持っていることはチェルノボーグの件で聞かせてもらっているが……君はどうする?」
デンジはそれを聞いて、腕を組みながら考えた。
「……自由がねぇってのは困るな。でも、ここを抜け出しても、どこに行けばいいのかなんて全然分かんねーしなぁ……」
ならば、とデンジはケルシーに対して質問をする。
「なあケルシー先生!」
「何だ、デンジ」
「ここに美味い飯はあるんすか?」
「ああ、その問題は無いだろう」
それなら良かった。だが一番に聞きたいことはそれじゃない、もっと大事な事がある。
「なら雇われたとして、犬みたいに死ぬまで扱き使われたりは?」
「ここは理想を掲げ、平等な自由の為に生きるもの達が集う場所だ。誓って、そのような事はしないさ」
それを聞いて、デンジの口角は上がった。ならばその答えは決まったようなものだ。
「なら、決まったぜ!」
「聞かせてもらおうか」
息をひとつ吸って、声を出す。それはしっかりとした芯のある言葉だった。
「ここで働くことに決めた!それでもいいんだろ?」
「ああ。無論、断る選択肢は無いさ。ならば追って、オペレーター配属のテストなどを行うことにしよう」
ようこそ、ロドス・アイランドへ。
そう言うとケルシーは手をこちらへと差し出した、そして対するデンジもその手を迷うことなく握った。
ケルシー。ケルシー。
デンジくんの傾向的にたぶんこういう人が好きだよなと思いました。
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まだ休んじゃだめですよ。