「ふふん♪ 中々好評じゃないか」
紅魔館に出入りする、大勢の聖櫻学園の生徒たちを見て、自室で悦に浸っているのは、紅魔館の主、スカーレット・デビルことレミリア・スカーレットである。
自身のアイデアが受け、客が入る様子を見ていると笑いが止まらないらしい。
しかし、ある一点、不満なことがあった。
「でも、暇ね……」
やることがないのである。
決してレミリア自身がやる気を出さなかったわけではない。全員への挨拶が終わり、1時間ほどした後に暇となったので、咲夜の手伝いを申し出た。美鈴にも、パチュリーにも、だ。
しかし、
「お嬢様が居られると、メイドの仕事が増え、メイド体験どころではなくなってしまいます」
「武術講義は外で行うので、太陽が苦手なお嬢様のお身体に障られるかと……」
「レミィが私の手伝い? 丁重にお断りするわ」
と、三者三様にお断りされてしまったのだ。
(あれ? 主を敬う断り方をしているのは、美鈴だけじゃないか?)
ふと、そんなことも思ったが、頭を振って否定する。咲夜は優秀な部下だし、パチュリーは無二の親友だ。そんな彼女らが自分を邪険に扱うわけがないと、前向きに考え、後向きに逃避する。
それにしても、何故自分の元に客が来ないのだろうか、と思考を転換させる。
挨拶の後に聞きたいことがあれば、自分の元に聞きにこい、と言ったはずなのに一向に来る気配はない。
「吸血鬼、ということで怯えさせてしまったか……」
レミリアは思い当たる原因を口にする。
しかし、真実の原因はそれではない。
単に聞くことがないのだ。
ぶっちゃけお金持ちのお嬢様の遊びとしか思われておらず、仮に本当に吸血鬼だとしても聞くことはない。
弱点などを聞いておきたい気もするが、吸血鬼であろうがなかろうが、機嫌を損ねられた場合の罪悪感が酷い、という理由が大半を占めているのをレミリアは知らなかった。
「まぁ、仕方ない。恐怖を感じるからこそ、人間は素晴らしい敵になり得るのだしね」
レミリアはそう結論付けて、ご満悦になる。都合の良い解釈で気分が決まるところは、外見相応の精神構造だ。
「……ん?」
レミリアは自分の部屋の前に誰かいることに気が付いた。音もなかったので普通なら気付かないであろうが、生憎レミリアは普通ではない。
まさか、遂に客が来たのだろうか?
レミリアは身嗜みを整え、悠然と椅子に座る。
そして、扉が僅かに開かれる。
「……」
「……」
覗き見、とも言えない。顔が半分以上、露出している。
そんな間抜けな姿を晒しながら、訪問者は無言である。
思わずレミリアも無言になる。
まさか、本当にアレで覗いているつもりじゃないだろうな、と疑ったそのとき、
「子どもがいる〜!」
能天気な一言が、訪問者――山田はなから放たれた。
「誰が子どもか!」
思わず怒鳴りつけてしまうレミリア。
「うわっ!? 何故気付いた!?」
「本気で気付かれないと思っていたのか!?」
真面目にツッコミを入れた後に、レミリアは考える。
(いけない! いきなり怒鳴っては余裕のない奴みたいじゃない!)
冷静に、と肝に命じ、訪問者を迎えることにする。
「こほん! 失礼……この吸血鬼、レミリア・スカーレットに何か用かな?」
「吸血鬼ってなんだ〜?」
レミリアの態度の変化も大して気にせず、山田は質問する。
「そんなことも知らないのか? 吸血鬼とはな、人の血を吸う恐ろしい怪物のことさ」
レミリアは呆れつつも、鋭い犬歯が見えるように妖艶な笑みを浮かべ、質問に答える。
自らがその怪物であることを告げ、恐怖心を抱かせようとしたのだ。
「あ〜、蚊のことかぁ〜!」
「ちっがーうっ!!」
しかし、その目論見は崩れ去った。
冷静さも何処へやら、またレミリアは叫ぶことになった。
「私を蚊扱いするとは――貴様、覚悟はいいだろうな!」
「あ、そうだ! メイドごっことか退屈だから鬼ごっこでもしよう!」
山田はレミリアの怒りを無視し、そんなことを言い出す。
「何処までも馬鹿にして……あぁ、いいだろう。吸血鬼たる私が鬼をやる。正にリアル鬼ごっこだな! 楽に死ねると思うな、小娘!」
「じゃあ、あんたが鬼ね!よーい、ドン!!」
「ぎゃおー、たーべちゃうぞー!!」
その後、山田を追いかけ回すレミリアの姿は、沢山の生徒に目撃され、例外なく全員を和ませたという。
Q レミリアの口調が一定しないね?
A だって、そんな感じじゃないか原作が