東方女友達(仮)   作:タイラー

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紅魔館編 ⑤フランドールの遊び

「ま、迷ってしまった……」

 

紅魔館の地下にてそう呟いたのは、聖櫻学園新聞部部員の南條クミコである。

彼女は部長に指示され、紅魔館の主であり、吸血鬼であるレミリアの取材にやってきたのだが、何故かこの地下に迷い込んでしまっていた。

 

「あぁ……怪しい地下への階段を見つけたからって好奇心に任せて降りるんじゃなかった……」

 

紛うことなき自業自得である。

 

「うぅ……何にせよ早く脱出して、レミリアちゃんに話を聞かないと……部長に何をされるか……」

 

脱出できてもできなくても、割と前途多難な自分の運命を少し呪いつつ、暗い地下をクミコは進む。

 

「……あなた、誰?」

 

突如、背後からクミコは声をかけられた。

誰もいないと思っていた場所での突然の出来事に心臓が口から出そうなくらい吃驚しつつ、恐る恐る振り返る。

 

そこには何とも可愛らしい金髪の幼女が立っていた。背中には木の枝に宝石を幾つかぶら下げたような奇妙な飾りがある。

 

「え、えっと私はここに招待された聖櫻学園の南條クミコっていうの」

「招待? またお姉様が何かやってるの?」

 

1人で考え事をし出した金髪の少女をクミコはあらためて確認する。

暗い地下では、少女の紅い瞳は良く目立つ。見るものを惹きつける宝石のようであり、全てを傷つける血塗られたナイフのようでもある。

しかし、彼女をみているだけでは何にもならないと考え、とりあえず質問する。

 

「あの、あなたの名前は?」

「私? 私はフランドール・スカーレット。レミリアお姉様の妹よ」

 

フランドールは考え事を中止して、クミコの問いに答える。

 

「えっ!? じゃあ、あなたも吸血鬼!?」

「勿論よ。人間にこんな羽根ある?」

 

フランドールがそう言うと、背中の飾りがバサバサと動いた。

それは羽根だったのか、とクミコは驚く。

 

「それで? クミコは何故ここにいるの? お姉様に呼ばれたなら上にいるべきじゃない?」

「あ、そうだった! 実は迷っちゃって……帰り道知っていたら教えてくれないかな?」

 

クミコはフランドールの問いかけで自身の置かれた状況を思い出し、階上への道を尋ねる。

それに対してフランドールは、うーん、と唸った後に、手を叩いて、

 

「私と遊んでくれない? 1人で暇してたの。遊んでくれたら外に出してあげるわ!」

 

と、笑顔で提案してきた。

クミコにとっては背に腹は変えられない。そもそも遊ぶくらいで上に戻れるならお安い御用である。

 

「分かったわ。遊びましょ。ただ、そんなに長い間は遊べないけど」

「大丈夫よ。そんなに時間はとらせないわ」

 

そう言うと、フランドールは手をクミコの前に差し出し、

 

「ジャンケンをしましょう?」

 

と、言った。

 

「ジャンケン? いいの? そんなので?」

「ええ、十分。2人いないとできない遊びだから、あんまりやったことないのよ」

 

フランドールの言い回しに奇妙な点を感じたが、クミコは何となく口を挟めなかった。

 

「1回きりの真剣勝負ね。クミコが勝ったら帰り道を教えてあげるわ。私が勝っても外には出してあげるわよ」

「それって何か違いがあるの?」

 

フランドールの話す条件に違和感を覚える。

 

「あるわよ。勝ったらあなたはあなたの意思で外に出れるし、コンテニューできるわ。ただ、負けると――」

 

そこまで話を聞いて、クミコの勘が告げる。

この少女は危険だ、と。

締め切りに間に合いそうになかったときの部長の言葉や実際間に合わなかったときの部長の眼と同等以上に恐ろしい狂気が、フランドールの眼と言葉に宿っていた。

 

「――あなたは、コンテニューできないわ」

 

勝たなくてはダメだ! 言葉の意味はよく分からないが、絶対に勝たなくてはダメだ!

クミコの脳内はそんな警鐘で埋め尽くされる。

 

「じゃあ、いくよ〜! じゃ〜んけ〜ん――」

 

クミコの思考のパニック具合など気にするはずもなく、ジャンケンは始まっていた。

 

(な、なななな何を出すべき⁉︎ 統計学的にはチョキが初手で一番多いって部長が言ってた気が、でもそれは人間相手のデータだから吸血鬼相手には役に立たない⁉︎ ジャンケンに必勝法なんてないしどうすればばばばば――)

 

「ぽんっ!!」

 

考えが纏まらない間に、手を出した。

堅く握り締められた拳、つまりはグー。

対するフランドールの手は、

 

――チョキ。

 

「はぁぁぁぁーっ……」

一気に気が抜けたクミコはその場にへたりこむ。

それを見て、ニコニコ微笑みながら、

 

「どう? 真剣にやるジャンケン。面白かったでしょ?」

 

と、話しかけるフランドール。

涙目になりながら、とにかく首を縦に振るクミコ。

ここで否定して、じゃあもう一回、などと言われてはたまったものではない。

 

「じゃあ、帰り道を教えるね。また、遊びましょ?」

 

幼女といえる外見から、信じられないほどの狂気と妖艶さを纏った笑みでクミコを見つめるフランドール。

先程の恐怖が蘇りそうになるのを必死で押さえ、クミコは帰り道を覚え、地上に帰還した。

 

(あぁ、生きているって素晴らしい!)

 

クミコはその感動を胸に、即座に悪魔の館から立ち去った。

 

後日、取材しなかったことを理由に、新聞部部長により同程度の恐怖を味あわされることになるのを、彼女は知らない。

 

 

 

 




Q フランちゃん、怖すぎない?
A フランちゃん、うふふ

紅魔館編 終了です。次回から更新が遅くなります。申し訳ないです。
次回予告 小話
次々回予告 白玉楼編
予定は未定です。
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