東方女友達(仮)   作:タイラー

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白玉楼編 ①妖夢と持論

白玉楼にて

 

外の世界からやってきた珍客の話は、ここ白玉楼にも届いていた。

しかし、白玉楼の所在地は冥界。普通の人間が普通に来ることはまずあり得ないし、来たいとも思わない場所に存在する。

 

よって、珍客の噂を聞いていても、白玉楼においては通常意味のないものである。

 

冥界の主が気まぐれを起こさない限り――

 

「ねぇ、妖夢。外の世界にはお化け屋敷なるものがあるそうよ」

 

冥界の主――西行寺幽々子がそんなことを呟いた。

これがキッカケだったのは言うまでもないが、この時点で半人半霊で白玉楼の庭師兼剣術指南役の魂魄妖夢は気付いていなかった。

 

「何ですかそれ? お化けが住むお屋敷のことですか?」

 

ここみたいに、と言わんばかりの訝しげな表情で妖夢が聞き返す。

 

「いいえ。聞いた話だと、人間がお化けを模して人を驚かせる出し物小屋だそうよ」

「驚かせる? 肝試しみたいなものですか?」

「そうじゃないかしら? 自ら怖がりに行くなんて人間って酔狂よね」

「幽々子様も生きてる時は人間だったでしょうに……」

 

妖夢が思わず呆れを見せるが、幽々子は気にも留めず、話を続ける。

 

「ここもお化け屋敷として開放したら受けそうじゃない?」

「は? いや、確かにここは真実お化け屋敷ですが開放する意味がないですよね?」

「何言ってるの、妖夢。外の人がいっぱい来たら、楽しそうじゃない」

 

紅魔館の主も気まぐれだが、この方もたいがいだ、と妖夢は思った。

 

 

① 妖夢と持論

 

お化け屋敷(真)として、白玉楼は聖櫻学園の生徒に一般開放された。そして、それなりの好評を得ていた。

しかし、それは真のお化け屋敷としてのリアルな恐怖を味わえるから、などではなかった。そもそも白玉楼には怨霊の類がいないため、幽霊たちは、皆一様に白くて丸いおたまじゃくしのようなものでしかなく、怖いも何もありはしなかった。

その幽霊たちが可愛いと感じる者や冥界の桜の美しさを聞いた者が集まったのが、好評の実態である。

 

また、中には変わった目的を持ち、訪れる者もいた。

聖櫻学園剣道部の五代律は、その1人である。

 

白玉楼には、剣術稽古のための部屋がある。剣道場と言ってもいいだろう。

その道場の床に正座で座り、お辞儀をして、律は頼む。

 

「拙者に稽古を付けていただけないだろうか?」

 

頼まれている相手は、妖夢である。

白玉楼には凄腕の剣士がいる、という噂を耳にし、律はここにやってきたらしい。

 

出処は不明だが、その噂は正しい。妖夢は確かに凄腕の剣士であるし、幽々子の剣術指南役である。

しかし、真の一流の剣士から見ると、妖夢はまだまだ未熟者でしかなく、本来誰かに教授する程の力はない。

幽々子の剣術指南役となっているのは、祖父の頃からの繋がりによるものが大きい。

 

「稽古と言われても……私もまだ半人前の身。軽々しく他人に教えを施せる立場ではないんですよ」

 

妖夢はそのことをありのままに語った。

しかし、律は諦めなかった。

 

「拙者も未熟者ではありますが、貴女が拙者よりも遥かに強いことは理解できます。稽古が無理だと仰るならば、強くなるための助言をいただくことはできませぬか?」

 

律の必死の頼みは妖夢の心を打つものだった。

武芸者として、己を磨きたいという欲求は痛い程共感できた。

 

「……分かりました。では、一言、私がいつも心がけていることを」

「っ! かたじけない、妖夢殿」

 

律が土下座しようとするのを制し、妖夢は律の対面に正座で座る。

そして、ゆっくりと語り始めた。

 

「月並みなことになってしまいますが、私は平常心を心がけています」

「平常心……ですか」

「そう。あらゆる武術において、達人が至る境地の一つに無心というものがあります。無心の境地に至ることが出来れば、心掛けなど意味をなしませんが、簡単に至れるものではない。そこで、まず何が起きても動揺しない心構えが必要です」

 

平常心を保つことで、無心に至る土台作りを行う。

妖夢の話の要点はそんなところである。

さらに、妖夢は続ける。

 

「私の剣、白楼剣は人間の迷いを断ち切ることが出来ます。魂魄家の者にしか使えない特殊なものです。私は実際にはこれを使えていますが、迷いのある者が迷いを断ち切ることは出来ないと考えています。

だから、常に平常心で確実に状況を判断し、迷いなく決断することを心がけています」

 

妖夢が話を終えると、律は畏まってお辞儀をした。

 

「ありがとうございます。大変参考になりました」

「いえ。同じ剣の道を歩む者、参考になって良かったです」

 

二人は固く握手を交わす。異世界の剣士に友情が結ばれた瞬間であった。

 

そのとき、

 

「妖夢~? 人魂灯がまた無いのだけれど、どこにやったのかしら~?」

 

部屋の外から声が聞こえてきた。

幽々子の声である。どうやら妖夢を探しているようだ。

 

律はこの声が聞こえてきたとき、握手を交わす妖夢の態度に異変が生じたことに気付いた、というより気付かざるを得ない。

 

急にガタガタと握る手が震え出したのだから。

 

妖夢は律の手を離すと、すぐさま部屋の外に出た。

律はなんとなく、今、部屋から出ることを遠慮した。直感的に、武士の情けをかけたともいえる。

 

「あのですね幽々子様決して無くしたわけではないのですただ現世に置いてきてしまっただけで」

「あらあら。そんな言い訳してる暇があったら、やるべきことをしたらどうかしら?」

 

部屋の外からそんな会話が聞こえた後、バタバタと誰かが走り去る音がした。

律は溜息をつく。

 

「言うは易し行なうは難し……拙者も妖夢殿もまだまだ未熟ということだろうな」

 

一流への道は遠く果てなく続くものだと、律は悟った。




Q 遅すぎない?
A 更新遅れて本当にすみません。ぶっちゃけこれからも不定期かつ遅いです。それでも見てくれるという方、ありがとうございます。
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