ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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春休み 1

 

 

 

 

 

 

 

 

 卒業式も終わり、学校もいよいよ春休みとなった。新学期から二年生になる我々も束の間の平穏を享受することになる。どうせ新しい学年が始まればこの学校はれやこれやと試練を寄こしてくるのだから、本当に一時の平穏である。

 

 来年に備える者、穏やかに過ごす者、こんな時でも勉強する者、きっと過ごし方は様々だが、俺は今日も自室で美術品製作を頑張っていた。

 

 清隆グループと一緒に遊ぶこともあれば、知り合いや知人と一緒にお茶することだってある。けれど部屋の中にいる時は決まって文化的活動か鍛錬のどちらかである。今日は美術的活動であった。

 

 マネーロンダリングはもう必要ないくらいにはポイントが集まっている。部屋の中にあった作品は既に輸出済みだ。今作っているのは完全に趣味であり、同時に緊急用のポイントを引っ張って来る為の物でもある。

 

 それにこうして何かを作っていると師匠モードが深まる感覚があるので鍛錬にもなるのだ。

 

 今、俺の前ではかなりデフォルメされた動物の彫刻が出来上がりつつある。作っておいてなんだがゆるキャラみたいな姿になってしまったので、これは流石に輸出できないなと考える。

 

 やはり仏像、あれは仏教圏で受けが良い上に国内よりもずっと需要が大きいので凄く稼げる……まあ仏様を金儲けの道具にしているみたいでアレだけどさ。

 

「ん?」

 

 部屋の隅にでも飾っておこうと考えていると、傍らに置いておいたスマホが震えてメールの受信を知らせる。確認してみると差出人は一之瀬さんであった。

 

 内容は「春休み中にどこかで会えないか」というものである。文面から察するに遊びに行く感じではないらしい。

 

「いつでもどうぞ、と」

 

 こっちの予定は幾らでも調整できるのでそんな返信をすると、一之瀬さんからは今日会いたいとのことだったので受け入れる。

 

 どこかでお茶でもするかという話になるかと思ったが、こちらの部屋にお邪魔するとのことなので。すぐさま部屋の清掃と受け入れ準備を整えていく。

 

 ここ最近は作品の大量輸出で部屋もかなり片付いたからな。とても広くて過ごしやすい空間になっている。人を招く分には問題ないだろう。

 

 台所でお茶の準備を進めていると、扉からノックの音が響いて来客を知らせた。どうやら一之瀬さんが来たらしい。

 

 扉の向こうにはいつもの朗らかな表情を浮かべた彼女がいるものだと思っていたが、そんな想像を裏切るかのように沈んだ表情で彼女は廊下に立っていた。

 

「ごめんね笹凪くん、急に……」

 

「いいさ、何か相談したいことがあるんだろう? 話くらい幾らでも聞くさ」

 

「うん……」

 

 一之瀬さんを部屋に招き入れる。以前にも食事をごちそうした時にも部屋に招いたが、あの時よりもずっと片付いた部屋を見て驚くことだろう。

 

「あ、片付いてるね」

 

「掃除したのさ。あの状態だとお客さんも呼べないから……あぁ、適当に座ってて、飲み物はコーヒーで良いかな?」

 

「大丈夫だよ。気を使わせちゃってごめんね」

 

 台所で水を沸かしてお茶の準備をしていると、一之瀬さんはどこか落ち着きなく部屋で佇んでおり、どうすればいいのかわからないといった様子であった。

 

 キョロキョロと顔を動かして、台所にいる俺と視線が絡み合うと、とても複雑な表情を見せてくる。

 

「さぁ、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 一之瀬さんにコーヒーを差し出して、一緒に砂糖とミルクも机の上に置いた。

 

 ジッと見つめていてもアレなので、こちらから砂糖を入れてミルクもタップリ投入していく。子供舌なので苦いのは駄目だからね。こうしないと飲めないのだ。

 

 後、家主から動かないと一之瀬さんも飲み辛いだろうと思ってのことだ。実際に俺がコーヒーを飲み始めると彼女も戸惑いながらも口を付けていく。

 

 少しは落ち着いただろうか。普段の表情が引っ込んでかなり落ち込んだ様子だったので、ほんの僅かにでも安らいだのなら幸いである。

 

 ほぅ、と憂い交じりの溜息を吐いてコーヒーを飲んだ一之瀬さんは、机を挟んでこちらを見つめて来た。

 

「何か、話があるんだね」

 

「……うん、だけど」

 

「相談するのはカッコ悪いと思ってるのかな……だとしたらそれは間違いだ、それはただ孤独なだけの人間だよ」

 

「でも、私、笹凪くんにはダメな姿ばっかり見せてるなぁって思って……」

 

「そう思っているのに、それでもここに来たんだろう」

 

「……ダメだよね」

 

「ダメじゃない。いいさ、付き合うから」

 

 一之瀬さんはその言葉に表情を沈ませる。情けなさを感じているようだが、同時に隠し切れない程に期待も覗かせているのがわかる。何だかんだで誰かに相談できることに安心しているのかもしれない。

 

「笹凪くん……また、背中を貸して欲しい。良いかな?」

 

「あぁ、大した背中でもないが、好きに使うといいよ」

 

 椅子から立ち上がって床に敷かれたカーペットの上に腰を下ろして見せる。すると彼女もまた座って背中を預けて来た。

 

 以前に、誹謗中傷で彼女が部屋の引きこもっていた時、元気づける為に話した時も、こうして背中合わせで話したんだったか。

 

 お互いに重心を背後にやって、共に背中で支え合う姿勢となる。顔は見えないけど、きっと見せたくないのだろうな。

 

 一之瀬さんの存在感を背中に感じ取りながら、彼女が話してくれるまで暫く待つことになる。そこから数分程経過しただろうか、彼女はポツポツと話し始めていく。

 

「私は入学してBクラスに配属されてクラスメイトたちと出会った時、勝ちを確信したの。自惚れと言われるかもしれないけど、とても良い仲間に恵まれたと思った。その気持ちは今も変わっていない」

 

「うん」

 

「だけど、唯一誤算だったのはリーダーの私。私がもっと上手く立ち回っていたら、クラスは今よりもずっと沢山のポイントを持ってたと思ってる」

 

 たらればの話は仕方がない。結果で語るのが全てである。それは一之瀬さんもわかっているのか、現在のクラスポイントに思う所があるのだろう。

 

 既にDクラス、つまり龍園クラスとの差はほぼ存在しない位置になっている。それこそ次の試験次第ではDクラスに転落しても何もおかしくはない程に。

 

「笹凪くんは、凄いね……入学当初はDクラスだったのに、たった一年でAクラスに迫る位置まで辿り着いて……私とは正反対」

 

 こういう時、どう伝えれば良いんだろうか? 頑張ったからとか、努力したからとか言うのは間違いなんだろうな。

 

「堀北さんや、坂柳さんや、龍園くんもそう。皆それぞれ強くなっているのがわかるんだ、なのに私は……」

 

 自信を失ってしまったということか。

 

「特別試験の結果は聞いているよ。龍園にしてやられたみたいだね」

 

「そう、だね……警戒しろって言われたのに、私は心のどこかで負けないって慢心してたんだ」

 

「具体的には相手はどんな動きをしていたのかな?」

 

「試験当日に腹痛を訴える人が出て来たの……後で話を聞いてみたんだけど、前日に石崎くんたちに絡まれてたみたいなんだ」

 

 一之瀬さんが言うには、カラオケルームで打ち合わせをしていたクラスメイトの何人かが絡まれてしまい、一時的に部屋の中が空白になってしまったらしい。

 

 その隙に下剤でも盛ったのか? 限界ギリギリの作戦……いや、やりすぎだろう。よく押し通したなそんな無茶を。

 

「一之瀬さん、学校に訴えた方が良いと思うよ」

 

「それは……しないことにしたんだ。今回の油断と慢心は教訓にしようって。もしこれが二年生や三年生の後半だったら取り返しのつかないことになっただろうから」

 

 言いたいことはわからなくはないけど、学校に訴えない理由にはなっていないと思う。まぁ一之瀬さんなりの配慮ということなんだろう。

 

 そういった部分を、龍園は突いた訳か……もし一之瀬さんが学校に訴えていれば多分あのクラスの何名かの首は飛んでたと思うんだが。

 

 相手の配慮に甘えた作戦ではあると思うけど、実際にそれで一之瀬さんクラスに勝利して、その一之瀬さんも学校に訴えないというのだから、完全に思惑通りになっているのだから笑えない。

 

 いや、龍園はきっと笑っているんだろうけど。

 

 背中で感じ取る彼女は少しだけ震えているようにも受け止められる。いつもより頼りなく思えて、華奢に感じてしまうのは、彼女が自信を失ってしまったからだろうか。

 

「どう思うかな?」

 

「甘いと思うけど、訴えないともう決めてしまったのならば、どうしようもない。この経験を教訓にするしかないさ」

 

「そうだね……うん、その通りだよ」

 

 そこで彼女はこちらの背中に体重を大きく預けて来る。疲れ切ったかのように。

 

「ごめんね。私は、何度も何度も……笹凪くんに甘えちゃってる」

 

「これは前にも言ったっけ、時間は君に寄り添ってはくれないけど、俺は君に少しだけ贔屓するって」

 

「うん……だから、甘えちゃうんだ。ダメなのに、そんなことしちゃいけないのに」

 

「迷惑だとは思っていない、気にしないでいいよ」

 

「笹凪くんに頼ってばかりの私が、これから先、戦っていけるのかな」

 

 大丈夫と、君ならできるという言葉を彼女は必要としているのだろうか?

 

「それにね……少しだけ、怖くもなったんだ」

 

「怖い?」

 

 また背中で感じる一之瀬さんが震えているのがわかる。

 

「こんなに大事な試験で負けちゃったのに……クラスメイトは私を責めなかったの。大丈夫だよって、私が悪い訳じゃないよって、それどころか頑張ったねって、こんなに情けない私なのに」

 

 一之瀬さんクラスの人たちを思い出す。誰も彼もがお人好しというか、善人で固められている集団であると。当然ながら口汚く罵ることはないだろうし、批判することもないのかもしれない。

 

 それを喜ぶべき長所と考えるべきか、それとも妄信的だと考えるのかは意見がわかれる所だろう。

 

 

「私は、クラスメイトに誇れる私なのかな」

 

 

 それが、今の一之瀬さんの内心を語る上での全てのようだ。不安と自信喪失が合わさって折れそうになっている。

 

 彼女はとても賢くて、優しくて、そして皆が思っているよりも普通の女の子であった。

 

 そう、普通の女の子なのだ。もしかしたらそれを本当の意味でそれを理解している人はそんなに多くないのかもしれない。

 

「一之瀬さん、君は普通の女の子だったね……考えてみれば当たり前のことだけど、高校一年生だったか」

 

「……普通かな?」

 

「きっと君のクラスメイトは認めないかもしれないけど、普通に悩んで、普通に迷って、うん、凄く普通だ」

 

「あはは……そうかもね」

 

「だから愚痴ったりすることくらいとても普通のことだ」

 

「優しいね、笹凪くんは」

 

「優しくはない、ただ俺はいつだって自己中心的に動いているだけだ」

 

「そんなことないよ。私はきっと誰よりも笹凪くんの優しさに救われたから」

 

 まだ未熟な……半端者の俺にそこまで大それたことが出来たのだろうか?

 

「ねぇ、笹凪くん……訊いていいかな?」

 

「ん、何を訊きたいのかな?」

 

「どうして……笹凪くんはこんなに優しくしてくれるのかなって」

 

 身じろぐ感触が背中から伝わって来た。先程までの震えではなく、どこか緊張したような雰囲気であった。

 

「あ、あのね、勘違いかもしれないけど……その、えっと」

 

「君の笑顔がみたいからだ」

 

「にゃ!?」

 

 とても奇妙な声が背中から聞こえて来る。

 

「困っている誰かを笑顔にしたい、迷っている誰かに道を示したい……俺は、正義の味方を目指しているからね」

 

「せ、正義の味方」

 

「馬鹿みたいだろう? そんなことを掲げられるほど強くもないのに、賢くもないのに、正しくもないのに、俺はそれを目指しているんだ……だから、俺の目の前で誰かが困っているのなら、何度だって助けるさ」

 

「……だから、助けてくれるんだ?」

 

「あぁ、だから、君を助ける……困ってるみたいだからね」

 

 すると背中から伝わる緊張がどこかに消えて行く感触があった。何かが空振ったような、そんな気分になる。

 

「そっか……笹凪くんは、そういう人だったね……特別な人なんて――」

 

「一之瀬さん?」

 

「あ、うぅん……大丈夫、何でもないよ」

 

 なら話を戻すとしよう。これからについてだ。

 

「一之瀬さん。新学期が始まれば、また俺たちは色々な困難が立ちはだかると思う」

 

「うん、間違いなくね」

 

「それでも戦っていかなければならない」

 

「無理、だよ……私じゃ、勝てない」

 

「そうは思わない。だって俺は一年生の中で、実は一之瀬さんを一番尊敬しているからね」

 

「……ぇ」

 

「坂柳さんでも、龍園でもなく、君を一番評価もしている。なんでかって訊かれると困るけど……卒業式で答辞をしている堀北先輩を見た時にさ、二年後にそこに立っていて欲しいと思ったのは、君なんだ」

 

「私が?」

 

「生徒の代表って考えたら、やっぱり一之瀬さんが相応しいなって……龍園はアレだし、坂柳さんはやっぱりアレだしさ」

 

「それなら、笹凪くんの方が似合ってるよ」

 

「なら、俺と君とで勝負だね」

 

「……」

 

 そこで背中合わせの姿勢を止めて立ち上がった。急に支えを失って倒れそうになった一之瀬さんを支えて手首を掴んで引っ張り上げる。

 

 見つめ合う形になったことで、一之瀬さんの目尻に僅かな涙が浮かんでいることに気が付く。

 

「戦ってくれ、これから先も……挫けそうでも、泣きそうになっても、悲しくても。それでもだ」

 

「私と笹凪くんで……戦うことになるんだよね」

 

「あぁ。俺は坂柳さんも龍園も倒してAクラスになるよ。できれば一之瀬さんもそうして欲しい。つまらない策略をねじ伏せて、卑怯な作戦も蹴り飛ばして、そして挑んでくれ」

 

 少し傲慢な言い方かもしれないな。まるでAクラスにいることが確定しているかのように話している。けれど必要なことだ。

 

「そして越えて行ってくれ。俺も、坂柳さんも、龍園にも勝って……一之瀬帆波こそが真の実力者なんだと、卒業式で答辞することで証明して欲しいんだ。何故かって? 俺がそれを見たいからだ」

 

「もしそうなったら、笹凪くんたちはAクラスで卒業できないんだよ?」

 

「何も問題はないよ」

 

 机の上に置いてあったスマホを操作して、ポイントの総額を見せつけるように彼女の目の前に置く。

 

 一之瀬さんの視線はその画面を走り、そしてまさに驚愕という言葉が似合う表情となってしまう。

 

「え、なん、なんで……え?」

 

 開いた口が塞がらないという表現がよく似合う様子である。そりゃ億単位のポイントを持っていると知ればそうもなるな。

 

「30億ポイント?」

 

 ザックリとそれくらいの資産を持っている。全員をAクラスに移動させる24億ポイントに加えて、有事の際の備えとして余剰資金も用意してある。これが俺の全財産であった。

 

「俺はこのポイントを使って全ての一年生をAクラスに移動させるつもりなんだ。だから卒業する時にどこのクラスがAだったとしても、あまり関係がない」

 

「……」

 

 もはや言葉もないのか、一之瀬さんはただただ絶句してしまう。

 

「だから、心配する必要はないんだよ」

 

「本当に、全員をAクラスにするつもりなの?」

 

「嘘偽りなく。そうするつもりだ」

 

 彼女は流石に受け入れがたいのか、それとも衝撃が大きかったのか、フラフラとしながら揺れ動いていく。

 

「そっか、なら……これで――」

 

「ダメだよ、君は今、安心しようとしている」

 

「え……」

 

「龍園なら、ここで安心はしない。坂柳さんなら、当然安心しない。俺のポイントを保険として、それでも自分のクラスをAに上げようとするだろう」

 

「……」

 

「その差が、きっと一之瀬さんとあの二人の差だ……つまりはリーダーの差だ」

 

 今度は違う意味で絶句することになった。

 

「もう一度言おうか……戦ってくれ、一之瀬さん。挫けそうでも、泣きそうでも、それでも突き進んでくれ」

 

 そしてその先で、ただ純粋に決着を付けたい。

 

 

「俺はAクラスで待っている……だから挑んで来い、一之瀬帆波。坂柳も龍園も蹴り飛ばして、証明してみせろ」

 

 

 俺はまたいつかのように小指を彼女の前に差し出す。

 

「約束をしよう。卒業式に、答辞をするのは俺か君のどちらかだって」

 

「もし……どれだけ頑張っても届かなかったら?」

 

「馬鹿な正義の味方を呼べばいい。足りないのなら俺が何もかもを巻き込んで強引にゴールまで引きずっていくさ」

 

 涙に濡れた瞳は目の前に立てられた小指を見つめている。

 

「さぁ、小指を出して」

 

 おずおずと、差し出される小指が触れ合って、結び合う。

 

「約束だ。俺たちを越えて行ってくれ……それでも届かなかったら、俺が全てを終わらせる」

 

「……うん」

 

 大切な宝物に触れるかのように小指は繊細に触れて来るので、少しくすぐったいな。

 

「見てて欲しいの……これからの私を、笹凪くんに挑む私を」

 

「あぁ、もちろんだ。言っておくけど、簡単に負けるつもりはないよ」

 

「だね、だって凄く強敵だろうから」

 

 もう、大丈夫だな。少なくとも折れそうになっていた心は持ち直してくれたらしい。やはり30億ポイントは衝撃が大きかったのだろう。

 

 彼女は結び合った小指を何度も何度もギュッと締め付けて来る。そしてこちらを上目遣いで見つめながら、こんなことを提案してくる。

 

「ねぇ、笹凪くん……あの、これからは、名前で呼んでもいいかな?」

 

「ん、構わないよ。俺も名前で呼んでも許してくれるかい?」

 

「もちろんだよ……名前で呼んで」

 

「ん、なら今日から帆波さんだ」

 

「うん……て、天武くん。改めてよろしくね」

 

 固く結び合い、もう離れないのではと思えるほどに力が込められていた小指は、そこで名残惜しさを纏ったまま離れていくのだった。

 

 こうして俺たちはまた新しい約束を結ぶことになる。大切そうに小指をもう片方の手で包み込む一之瀬さん……いや、帆波さんを見て少しだけ穏やかな気持ちになってしまう。

 

「私は、私の思うままに戦う……だから、また魔法をかけて」

 

「前にも言っただろう、何度だってそうするさ」

 

「ありがとう……本当に、ありがとう」

 

 それで良い、もし挑む時が来なかったとしても俺が保険になる。

 

 だから帆波さんは、力強く挑んでくれ。この過酷な学校で生き残ってくれ。

 

 

 Aクラスで君を待つ。そしてこう言って欲しい。

 

 

 

 邪魔だどけ、そこは私の席だ、ポイントなんていらないと。

 

 

 

 

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