「クソがッ、これで終わったと思ってんじゃねえだろうな!?」
保健室まで宝泉をお姫様抱っこで運んでベッドの上に放り投げてからの第一声がそれである。
ここに運んで来る間もそれはもう激しく抵抗していたのだが、折れた手首と膝では上手く体を動かせず、大勢の生徒にその姿を晒しながらここまで来てしまったのだ。
相当苛立っているらしい。けれど重傷者なので怒りに任せて暴れられても困る。骨折がより重症になられても困るからだ。
「怪我人はジッとしておきなさい」
「グハッ!?」
ベッドの上から痛む体を引きずりながらも、飛びかかろうとしてきた宝泉の顎を拳で殴りつけて脳震盪にしてから意識を奪う。
沈む巨体を再びベッドに寝かしつけておけば、後は学校が適切に処置するだろう。おそらく病院に運び込まれることになるだろうが、怪我人は医者に任せるのが一番だ。
そんな訳で俺ができることはここにはない。意識を失った宝泉を学校に任せて教室に帰るだけである。
流石にやりすぎてしまっただろうか? もしかしたら一年生から生意気な生徒の手足を粉砕するヤバい先輩とか思われないだろうか……だとしたら悲しい話である。
まあ気持ちはわからなくはない。俺も三年生にそんな人がいたら関わりたくないと思うだろうからな。
もしかしたらパートナー選びに苦戦するかもしれない。そんなことを考えながら教室に帰ると、そこには見たことの無い男性と一年生が鈴音さんたちと話しているのが見えた。
「お帰りなさい、彼、どうだったの?」
「重症だ、おそらく病院送りだろう」
「そ、そう」
鈴音さんも少し困惑した様子である。怖がらせてしまって本当に申し訳ない。
「こちらの方は?」
次に視線は男性の方に向く。スーツ姿の中年男性はただ何となく観察しただけでよく鍛えこまれていることがわかってしまう。かなり動ける人なのか、何気ない姿勢一つすら無数の鍛錬と経験が感じ取れた。
あぁ、要注意人物だな……大人な分、下手すればホワイトルーム生よりも。
「1年Dクラス担任の司馬だ。こちらの生徒が迷惑をかけたようだな」
やはり教員側の人間であるらしい。これだけ見事な重心と体幹、呼吸を自然に行える人が教師というのも違和感があるので、傭兵や軍人と名乗られた方がまだ納得できるほどであった。
「彼は保健室で寝かせました。おそらく今頃救急車が呼ばれていると思います。それと、失礼を承知で言わせて貰いますけど、受け持っている生徒の指導はしっかりお願いします。彼、女子生徒の首を平然と絞めてましたよ」
「そ、そうか……学園のルールに関してはしつこいほどに説明したのだがな、改めて指導しておこう」
少し引きつった顔をした司馬先生は、そう言ってからその場を後にするのだった。
「えっと、笹凪先輩ですよね? その、クラスメイトが失礼なことをいたしました、代わりに謝罪させてください」
司馬先生の背中を見送ると、今度は宝泉と一緒に行動していた女子生徒が頭を下げて来る。美しい金髪と意思の強そうな瞳を携えた彼女の名は七瀬翼。鈴音さんが作った優等生リストに入っていた一人である。
「いや、こちらこそすまない。もっと穏便に終わらせるつもりだったんだけど、少し力加減を誤ってしまって……君の同級生を傷つけてしまった、寧ろこちらが謝罪させて欲しい」
相手の自爆であったことは間違いないが、怪我をさせてしまったのは揺るがない事実、だから俺も素直に頭を下げた。七瀬さんは申し訳なさそうな顔をしていたが、受け入れて欲しい。
「それで、鈴音さんと何を話していたのかな?」
「特別試験のことで彼女と話していたのよ……Dクラスと協力体制を結べないかとね」
「はい、堀北先輩にも説明していたのですが、私たちのクラスはこちらのクラスと連携をしたいと思っていたんです」
「その割には彼は随分とはしゃいでいたようだけど」
「宝泉くんに関しては本当に申し訳ありません、最初は私が皆さんと話をする筈だったのですが……御しきれなくて」
「あ~……君がDクラスのリーダーってことで良いのかな? 宝泉はもしかして護衛的な立場とか?」
「どちらが上下という訳ではありませんが、私は宝泉くんの腕っぷしを頼りにしている部分は間違いなくあります。振る舞いや態度はどうであれ、突出した力であることは間違いありませんから」
「なるほどね」
だとしたらすまないと思う。その頼りにしている力を病院に送ってしまった。
「どんな話をしていたのかな? クラスで協力するとは言っていたけど、詳しい条件は?」
その辺の話は鈴音さんとしていたのか、彼女はこう説明してくれた。
「彼女たちのクラスはまだどことも契約を結んでいないの。最初からクラス同盟を視野に入れていたらしいのよ」
「はい、そして可能ならばこちらのクラスと同盟を結べたらと思っていたのですが……その」
宝泉が暴れてうやむやになった挙句、印象が最悪になってしまったということか。
「宝泉くんの件に関しては本当にどれだけ謝罪しても足りないと思います。先輩方の私たちへの印象も最悪でしょう……ですが、それら全てを棚上げにさせて言わせてください。私たちに協力して欲しいと」
度胸のある子である。宝泉があれだけ醜態を晒したというのに、それでも踏み込んで来るのだから。
目の前にいる七瀬さんを見つめると、この子はこの子でよく鍛えられているのがわかる。学力評価も高く身体能力も高い、Dクラスに配属された理由が謎である。
相変わらず、強い意思を宿した美しい瞳でこちらを見つめて来る七瀬さんは、どうした訳か忠犬を連想してしまう。それが少し不思議であった。
「鈴音さんはどう思っているんだい」
「条件次第と言った所かしら……宝泉くんという不安要素もある、この場で決断することは難しいわね」
そりゃそうだ。何より印象が最悪でもある。ましてやこちらには余裕がある上に選ぶ側なのだから。
「その話、僕も交ぜてくれませんか?」
鈴音さんと一緒に悩んでいると、会話に割り込んで来る男子生徒が現れる。さっきからこちらをずっと観察していた一人であった。
柔和な表情と、穏やかな立ち振る舞い……そしてオリンピック選手のように研ぎ澄まされた重心と体幹と呼吸を持つ要注意人物である。
あぁ、なるほど、劣化清隆と言う表現がよく似合う。そんな体であった。
「君は?」
「初めまして笹凪先輩、そして堀北先輩。僕は1年Bクラスの八神拓也と申します」
こうして観察する分には何も違和感はない。相手に警戒をさせない微笑みも、言葉遣い一つとっても穏やかで心地いい。彼を見た人の多くが真面目で清潔な人なんだろうと根拠も無く思うくらいには理想的な男子であった。
一年前の清隆とそこは大違いである。
「実は僕もこの昼休みを使って二年生と交流できないかと考えていまして」
「それは、貴方もクラス同盟を考えているということかしら?」
「堀北先輩の仰る通りです」
そこで俺と鈴音さんは視線を結び合う。まさかこちらが理想としているクラス同盟を一年生たちから持ち掛けられるとは思っていなかったからだ。
都合が良いと、そう思ってしまうほどに……まるでこちらが求めている状況をわざわざ用意したかのように思えてしまう。
ただしそれは、ホワイトルーム関連の話や情報を持っている俺だからこその考えなんだろう。鈴音さんは寧ろ興味を引かれているようにも見えた。
チラっと、教室からこちらを窺う清隆に視線を送ると、彼はこちらに任せるとでも言いたげな顔をした。既にパートナーを決めているから最悪の状況は避けられると思っているのだろう。
何より、清隆にはプロテクトポイントがある。二度刺さなければ退学はできない。ここで下手を晒したとしても心臓は二つあるのでまだ耐えられるという訳だ。
「少し疑問があるわね。貴方たちはどうして私たちのクラスと同盟を結びたいのかしら? それこそAクラスの方が同盟相手としては理想的だと思うのだけれど」
尤もな意見に八神は迷うことなくこう答えた。
「はい、確かに総合力という点で見ればAクラスの方が理想的でしょう。しかし僕が……僕たちのクラスが注目したのは、現時点のクラスポイントではなく、去年一年の先輩方の成績なんです」
「去年の?」
「先輩方のクラスは入学当初こそDクラスでしたが、そこから様々な試験を勝ち進み今ではAクラスに迫る勢いです。そして何より、最も多くのクラスポイントを稼いだクラスとも言えます。その期待と勢いがあるからこそ、同盟を申し込むべきだと判断したんです」
「七瀬さん、貴女のクラスも同じ理由で?」
「似たような理由であることは間違いありません。いずれAクラスに上がるのではという思いはありました。それに、私も入学してDクラスに配属された身です。今後のクラス闘争で同じようにDクラスに配属されながら勝ち上がった先輩方を参考にできればと」
だから、その勢いと流れを受けてクラス闘争を勝ち進みたい。言っていることにそこまでの違和感は七瀬さんからも八神からも感じ取れなかった。
「加えて言うのならば、こちらのクラスに笹凪先輩がいることも理由の一つでしょうか」
「天武くんが?」
「二年生だけでなく、全学年で最高の評価と力を持っている先輩ですから、友誼を結んでおいて決して損はないと私は考えました」
「もちろん、僕にも同じ思いがあります」
「なるほど、言いたいことはわかったわ、納得もした」
二人の説明に鈴音さんは満足そうに頷く。クラス同盟を結ぶのが彼女の方針だからこの展開はまさに望むものである。しかも贅沢にも選べる立場なのだから、楽であるとも言えるだろう。
彼女は俺に視線を向けて来るので、頷きを返す。彼女の判断に任せると。
避けるべきは清隆とホワイトルーム生を組ませることにある。既に彼はパートナーを選んでいるのでどちらと組もうと安全圏なのは間違いない。
さてどうしたものかと悩む鈴音さん、或いはどんな条件で同盟を結ぶのか考えを巡らしているのだろうか。
「堀北さん、悩むのも良いけど、もうすぐ授業が始まっちゃうよ?」
そんな彼女に声をかけたのは、教室から顔を出した桔梗さんである。彼女は俺と鈴音さんを見て、次に一年生の二人を見た。
「えっと、二人とも一年生だよね? 私は櫛田桔梗です。宜しくね」
「七瀬翼です。宜しくお願いします。櫛田先輩」
「僕は八神拓也です。初めまして」
自己紹介を受けて少し頭を下げる一年生に、桔梗さんは優しく微笑みかける。
「まだわからないことや不安なこともあるだろうけど、困ったことがあれば何でも相談してね。ふふ、頼りになる先輩って思われたいんだ」
なるほど、彼女はこうやって関係を作っていくのか、穏やかな表情と愛らしい容姿で積極的に声をかけられれば、確かに頼りたくなってしまうだろう。
「二人の話は教室まで聞こえて来てたけど、私たちのクラスと協力したいんだよね? ねぇ堀北さん、私は賛成だよ、二人とも凄く真面目そうだし、きっと上手く行くと思うな」
「櫛田さん、さっきの宝泉くんの行動を見てよくそんな感想が出て来るわね」
「あはは、それを言われると確かにそうだけど、ほら、天武くんがいるからヤンチャな子も大人しくなるんじゃないかな」
「それは……そうでしょうね」
桔梗さんからも、鈴音さんからも、変な信頼をされているんだな俺は。
「あ、本当にもう授業が始まっちゃうよ? 七瀬さんも、八神くんも、そろそろ教室に戻った方が良いと思うな」
「そうですね。それでは先輩方、クラス同盟の件、どうか前向きに検討をお願いします」
「僕の方もどうかご検討を、決して損はさせませんので」
「あぁ、待って、せっかくこうして会えたんだから、友誼を結んでおきたい」
最後の確認として俺は自らの掌を差し出して握手を求める。まずは七瀬さんに。
「クラス同盟が結べるかどうかは今後の条件次第だろうけど、俺個人としてはそういったことを抜きにしてでも後輩たちとは仲良くしたいと思っている。これから宜しくね」
「はい、宜しくお願いします。笹凪先輩」
特に迷うことなく七瀬さんは俺と握手をしてきた。そして今度は八神へと掌を向ける。
「八神も、宜しく頼むよ」
「……はい」
彼は差し出された掌を見つめて、ほんの僅かにだが躊躇しながら、それでも自分の右手を差し出してくる。
その指先は大きな戸惑いを纏っているが、それでもしっかりと結ばれた。
結ばれた指と掌から伝わって来る感触は観察しただけではわからない細かな情報を教えてくれる。この時点で俺の中では完全な黒となってしまうのだった。
普通の高校生の体ではない、握手をしてそう感じ取ったので、推測は確信へと変わっていく。
こちらの内心はきっと向こうには伝わっていないだろう。一年生二人は頭を下げてから自分たちの教室があるフロアへと帰っていく。桔梗さんが言う通りもうすぐ授業が始まるのでこちらも席に戻っていく。
色々と考えなければならないことが多いな。そんな意思を席に座る前に清隆と視線でやり取りしてから授業を受けることになる。
話し合うのは放課後で良いか、清隆は清隆で天沢さん対策を考えないといけないからな。
授業を受けながらも気になるのはホワイトルーム生、そして月城さんの思惑であった。
一目見れば重心や体幹や呼吸から、相手がどれだけ鍛えてどれほどの実力を持っているかはよくわかる。握手もしたからほぼ確信にまで至っており、だからこそ楽しいと思う。宝泉に七瀬さんに天沢さんに八神、他にも今年の一年生は面白い生徒が多い。
ホワイトルーム関連は抜きにして、もう一つ気になるのは一年生の動向だろうか。七瀬さんや八神はこちらのクラスと同盟を結ぶ理由を色々と述べていたが、やはりホワイトルームという背景を知っているとどうしても違和感を感じてしまう。
鈴音さんも言っていたが、どうせ同盟を結ぶのならばAクラスなのだから。
俺がいることや、去年の成績、今の勢い、尤もな理由を述べていたし、別に間違ったことは言っていないのだが、それでも迷わず来るとは思えない。
理由はわかる、納得もできる、けれどそれでも違和感は拭えない。俺たちがAクラスであったのならばそのブランド力や信頼から同盟を提案されても何も不思議ではないのだが。
少々穿ち過ぎだろうか? オリンピックアスリートみたいな体を持つ八神は論外として、七瀬さんや宝泉が月城さん側である可能性は低い?
もし俺は月城さん側だとして、宝泉のような馬鹿みたいに目立つ生徒を送り込むだろうか。
同じことを清隆も思ったのか、放課後になってすぐに声をかけてきた。
「あの宝泉と七瀬という生徒、僅かにだがオレに注目しているようだった」
「そうなのか」
「少しの違和感を覚える程度だがな……お前の見立てでは新入生の中で警戒すべきなのは天沢と八神だったか、宝泉と七瀬に関してはどう思う?」
「宝泉は目立ち過ぎるし、七瀬さんは細いように見えてしっかりとした体幹だったかな。ただ、どちらもそこまで違和感はないよ」
放課後になって清隆は天沢さん対策に勤しむらしい。既に彼は九号とパートナー契約を申請しているので安全圏と言えばそれまでだが、須藤のパートナー相手として考えているらしい。
ケヤキモールで待ち合わせとなるらしいが、どんな料理でも来いと言わんばかりに気迫に溢れている。
「けれどあの二人は清隆に注目していたか……天沢さんも何だかんだで接触しているし、八神もクラス同盟をチラつかせて距離を詰めて来ている。全員の思惑の中心にいるのが君って訳だ、モテモテじゃないか」
下駄箱で靴を履き替えながらそう伝えると、清隆は珍しく渋面を作る。嬉しくないとばかりに。
「まぁ君はあの子とパートナーを結んでいるんだ。滅多なことにはならないと思うし、最悪の場合でもプロテクトポイントもある」
「ああ、そこは安心できる所だ。最終試験で勝てて良かった」
二度刺さなければ清隆を退学には出来ない。これは月城さんの失態とやらかしが原因でもある。
「だが油断も出来ない。プロテクトポイントで守れるのは普通の退学だけだ、明らかな犯罪行為などでは難しいだろう……だからこそ、相手の出方もある程度は絞れる」
二度刺さなければ退学させることが出来ないのなら、一度で完全に追い込めばいい。犯罪行為のでっち上げなどはわかりやすい手でもあるだろう。
だとしたら清隆に近づいてくる相手の出方もわかる。寧ろ試験で堂々と落とすのはブラフの可能性すらもあるのかもしれない。
「七号、報告ッス」
そんなことを考えながら俺も靴を履き替えていると、下駄箱の向こう側から声がかかる。九号からの報告があるらしい。
下駄箱のあちら側は確か一年生のエリアだったな。九号も靴を履き替えているのだろうか?
「そちらの現地協力者とパートナー契約を結んですぐに、こちらのクラスの天沢一夏という生徒が協力を持ちかけて来やがりました」
そんな報告を、下駄箱の向こう側から伝えられると、俺と清隆は視線を結び合う。
「具体的には何を?」
「内密で大きな儲け話があるという話ッスよ……なんでも、パイセンのご友人からプロテクトポイントを剥したら2000万、退学させれば追加で2000万」
何ともまあ大盤振る舞いだ。なるほど、ホワイトルーム生の潜入とは別に月城さんはそちらの方向性でも攻撃してきたということか。
「教えてくれてありがとう。一応聞いておくけど、そっちに靡くつもりはないよね?」
「舐めるなでやがります。たかだか4000万でパイセンを敵に回すほど馬鹿ではありませんよ……忍者は強い人とお金持ちの味方ですから。それに一度主君と認めたんですから忠誠を軽く扱いはしません」
「そりゃそうか、疑って悪かったね……報告ありがとう。だけどメールや電話でも良かったんだよ?」
下駄箱の向こう側にいる九号にそう伝えると、少しだけ笑い声が聞こえてきた。
「いやいや、この学校から支給されたスマホは財布以外に使う気になれません。安全性が不透明なんで」
盗聴とか検閲とかをされていると彼女は思っているらしい。そうでなくても位置情報は管理されていると考えているのだろうか。警戒心が強いことだ。
「報告は以上ッス」
「わかった、天沢さんに関しては追って指示を出すからやんわりと対応しておいて欲しい」
ざっくりとした指示を出すと、下駄箱の向こうにあった霞のような気配は消えて行く。
「どうやらホワイトルーム生以外にも警戒しないといけないようだな」
「清隆、まるで賞金首みたいになってるよ」
「まるで、じゃなくて実際にその通りだ……宝泉や七瀬が注目していたのもそれが理由だろうな」
大きな溜息を吐く清隆は、これから件の天沢さんに料理を振る舞うことになるのだから、そりゃ疲れるだろう。
「それ以外の一年生も関わっていると見るべきかな?」
「全員と言う訳ではないだろうが、ある程度はそうだと思うべきだ」
「だけど種が割れてしまえばわかりやすくもあるね」
「あぁ、その通りだ」
清隆だってそこはわかっている。わかって理解した上で、敢えて受け入れるつもりのようだ。誰が敵で誰が月城さんの協力者であるか、泳がせて情報を得るつもりなのだろう。
安全圏のパートナーとプロテクトポイントが確保できていることから、清隆には余裕があるということだ。
「まあ天沢さんの対処は君に任せるよ。俺はクラス同盟の話を鈴音さんと詰めておくからさ」
「そうしてくれ……さて、何を作らされるんだろうな、和食に中華、イタリアンにフランス料理、だいたい行けそうだ」
天沢さんが要求してくるであろう料理を推理しながらも余裕が窺える。チェスで負けると料理を振る舞うことになっているから慣れているんだろう。
清隆は待ち合わせをしているケヤキモールに向かうことになり、俺は俺でクラス同盟を纏める為に話し合いに参加しなければならない。
九号からの報告でホワイトルーム生以外にも警戒しなくてはならないとダメだからな、改めて警戒を強めないといけないだろう。