ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

137 / 227
それぞれの思惑と方針

 

 

 

 

 

 

 特別試験の、正確にはその準備期間とも言うべきものが学校側から開示された翌日、生徒たちにはそれぞれカードが配られることになった。どれも戦いを有利に進めたり、或いはリスクを少なくしたりといった効果があるので、生徒たちは自分たちにとってどれが必要かと悩んで行動することだろう。

 

 今も学校の片隅で、或いは中庭で、もしくはコモンスペースで、食堂で、生徒たちが色々と話し合っている。自分が欲しいカードであったり仲間であったりを確保しようとしているのだろう。

 

 ポイントで購入したり、もしくはカードを交換したり、単純に勧誘したり、おそらく夏休みの特別試験が始まるまではずっとこんな感じだと思われる。

 

 そしてそれは俺も同じだ。クラスの方針は鈴音さんに任せるとして、こちらはこちらで色々と動くとしよう。勧誘の声もかなり激しいからな。

 

「……ん?」

 

 放課後になり、さて最初は誰と話そうかと考えているとスマホが立て続けに震える。大量のメールが届いたからだ。

 

 差出人は誰かなと確認してみると、大半は三年生のスパイたちであった。どうやら南雲先輩の方針をこちらに密告してくれているらしい。

 

 三年にはざっと30人ほどのスパイと10人ほどの準スパイ、そして俺に好意的な人が何人かいるので、南雲先輩の動きを把握するのは簡単だった。

 

「なるほど、学年を支配しているからこそできる戦い方だな」

 

 スパイの先輩たちからのメールの大半が似たような内容である。南雲先輩が取るべき作戦とはつまり三年生全員で談合して彼がいるグループを勝たせるというものであった。

 

 また「便乗」のカードを南雲先輩のグループに全て注ぎ込むことで大量のポイントを得るというものである。普通ならばそんなことは難しいのだろうが、学年全体を従えているのならば不可能じゃない。

 

 わかりやすく、そして強力な作戦であった。

 

 しかし南雲先輩の動きが早いな。最初からこうすると決めていたかのような反応だ。やはり生徒会長というアドバンテージがあるからだろうか。

 

 もしかしたら事前にどういう試験なのか把握して準備や考えを整えていたのかもしれないな。そう考えるとやはり生徒会長と言う立場は大きな意味を持つ。

 

 鈴音さんをいずれは生徒会長にとは思っていたけど、こうやって生徒会長ならではの優位性を見せられると改めてその目標を目指すべきだと思ってしまうな。

 

 まぁ良いさ、スパイが大量にいるので三年生の動きは筒抜けだ。南雲先輩の動きや考えはある程度把握できる。だとすれば俺が注意すべきは二年生や一年生になる。

 

 何より、まだ清隆の懸賞金問題が残っているので、特に一年生は要注意であった。

 

 しかし交渉相手でもあるので動きは慎重に、師匠曰く誰が相手でも舐めてかかるなとのこと。

 

「すまない二人とも、待たせたね」

 

「いや、俺もついさっき着いたばかりだ」

 

 放課後になって俺が最初に合ったのはAクラスの葛城であった。その隣には配下の戸塚の姿もある。

 

 ケヤキモール内にある個室があるカフェで落ち合った俺たちだが、別に仲良くお茶しようという訳ではなく、こんな時期なのだから当然ながら話題となるのは夏の特別試験のことだった。

 

 こちらとしてもAクラスの動きを把握したかったので、声をかけて貰えたのは都合が良かった。

 

 お互いに個室の椅子に座って腰を落ち着ける。せっかくなのでオレンジジュースでも頼むとしようかな、そろそろ暑くなってきたので冷たい飲み物が欲しかった。

 

「葛城さん、本当に笹凪と手を組むんですか?」

 

「不満なのか?」

 

「そうではないですけど……Bクラスの存在感は日に日に大きくなっています。ここは協力するのではなく突き放すべきだと思うんですけど」

 

「お前の言葉にも一理はある、しかし今はクラスを纏めることを最優先にしたいのだ」

 

「ん、どういうことかな?」

 

 戸塚と葛城の話を聞いていると、俺と組みたいのはわかったのだが、それがクラスを纏めることにどう繋がるのか疑問であった。

 

 彼らは俺の質問に少し迷い、しかし隠しても意味がないと判断したのか説明をしてくれる。曰く、今度の特別試験でクラスの内紛に完全決着を付けると。

 

「笹凪、お前も知っているだろうがAクラスは長く内紛を続けていた」

 

 坂柳さんと葛城の対立、それに引っ張られるようにクラスは真っ二つになっているのは俺だけでなく学年全体で知られていることである。

 

 一時はかなり追い込まれていたというか、大人しくなっていた葛城派閥であったが、一年最後の特別試験で坂柳さんが負けてしまったことで息を吹き返したそうだ。

 

「健全な状態でないことは言うまでもない。俺としてもいつまでもこの状況を続けたくはないのだ……そんな時に坂柳から提案されてな、今度の特別試験で完全に決着を付けようと」

 

「なるほど、君はそれを受け入れた訳だ」

 

「あぁ、勝っても負けても、次で終わりだ」

 

 ならば葛城派閥としては負ける訳にはいかないということか。そしてそれは坂柳派閥としても同じことが言える。だからこそ彼は俺をスカウトしようとしているのかもしれない。

 

「葛城の考えはわかったよ。しかし俺がAクラスの事情に首を突っ込む理由はないんだよね」

 

「だろうな、他クラスのお前にとっては寧ろ長引いてくれた方が都合が良いのだろう」

 

「身も蓋もない言い方をするとその通りだ……加えて言うのならば、利益もないんだ」

 

「互いに協力して試験を終えるというのは利益にはならないか?」

 

「君に協力しなくてもそれは可能だよ」

 

「笹凪ッ!! せっかく葛城さんが声をかけてくれてるっていうのに」

 

「落ち着け弥彦、笹凪の言い分も尤もだ」

 

「ですけど!!」

 

「去年一年で嫌と言うほどわかった筈だ、笹凪の常軌を逸した実力がな……確かに下手に協力すれば逆に俺たちが足を引っ張る可能性すらあるかもしれない。それは笹凪にとっても損をする結果だろう」

 

 ではどうするのかと言うのならば、報酬を用意することだった。

 

「笹凪、こういうのはどうだろうか? 今回の試験で協力してくれるのならば、お前をAクラスに移動させることを約束するというのは」

 

 結局、こういう形になるということだ。スカウトする為に報酬を用意する、わかりやすい交渉であった。

 

「葛城、誤解があるようだけど、実は俺はAクラスで卒業することにそこまで強い拘りがある訳じゃないんだ」

 

「なに、どういうことだ?」

 

「学校側がそこを勝利条件にしたから目指しているし、クラスメイトたちをAクラスで卒業させたいとも思っている……だけど俺自身はそこまで執着はないよ」

 

「よくわからないな。この学校に来た者の多くはその特権を得る為に切磋琢磨しているものだと思うのだが」

 

「卒業後の推薦や就職の斡旋なんて最初から興味が無い。そんなものは自分の実力でどうにかすれば良いだけの話だ」

 

「なるほど、強者の理論だな」

 

「そう言われるとアレだけど……それにだ、俺が目指している場所はAクラスで卒業したからといって叶えられるものではないよ」

 

 うん、全く足りていない。もし俺の夢を叶えられる手段があるとするのならば、それは一人でも多くの人を救ってからだろう。Aクラスで卒業したからといって叶えられるものでもない。

 

「だから、そういった交渉で俺が靡くことはない」

 

「そうか……難しいものだな」

 

 深く考え込む葛城は瞼を閉じて眉間に皺を寄せている。

 

「だけど、そうだな、君に協力することは出来ないけど、同じように坂柳さんに協力することもない、それでどうかな?」

 

「坂柳のグループには入らないということか……わかった、それだけでも救いだろう」

 

 こっちに都合があるからな。少なくとも他クラスの生徒と組むというのは難しい。身軽に動きたいというのもそうだけど、ホワイトルーム関連や月城さんの動きも気になる。

 

 場合によっては、無人島で荒事に巻き込む可能性すらもあった。そういった意味でも誰かと組む訳にはいかないのかもしれない。

 

 清隆自身、そしてその背景や影響力を知った上で問題ないと思える九号、今回の一件で巻き込めると断言できる戦力が二人しかいないのは考えものであった。

 

 まぁ尤も、九号一人いればお釣りが貰えるくらいなので、そう考えると少しだけ気楽にもなる。

 

 月城さんは南雲先輩より遥かに厄介な大人の権力者だし、清隆のお父さんもそれは同じだけど、別にこの国で誰よりも強い訳でもないし、我儘を押し通せる立場でもない。

 

 人は死ねばそれまで、暴力と権力というものはそれを守れるだけの力があって初めて意味を持つものである。そして残念なことに九号はそれらを無視できる立場であった。

 

「あの子が同学年ならなぁ」

 

 思わず愚痴ってしまう。現状で二年生の中で完全な協力者は清隆と坂柳さんだけなのだが、坂柳さんに関してはどうしても体力面で不安がある。その点、九号ならば何も問題は無い。彼女一人でおそらく全てが片付けられるくらいだからな。

 

 月城さんが百人いても、最後に立っているのは九号だろう。だから彼女が味方側でしかも二年生ならばこれ以上ないくらいに心強い味方なのだが、今回の試験だと一年生が大っぴらに二年生に協力するのは――。

 

「いや、そうとも限らないのか?」

 

 学年で分かれて競うというルールの説明から少し考えていたが、別に学年を意識する必要も無いのか。

 

 三年生の多くが既にこちらスパイなのだから、別に学年に拘る意味もない。

 

 九号もそうだけど、何人かの協力者を一年生に作っておいても問題はないだろう。

 

 スマホを取り出して早速九号と相談しようと思っていると、視界の隅で龍園クラスの金田の姿を捕らえる。

 

「あれは金田と、一年生か?」

 

 間違いない、片方の生徒はOAAで顔と名前も覚えているので間違いなく一年生である。

 

 二人は何やら話しながら俺と葛城がさっきまで使っていた個室があるカフェに入っていく。どうやらあちらも密談のようだ。

 

 龍園の指示で一年生と接触していると見るべきだろう。当然ながら見据えているのは夏の特別試験である。葛城や坂柳さんもそうだけど色々な方針や思惑がある。どこのクラスも最大の利益を得ようと様々な行動を起こしている、当然だな。

 

 俺たちのクラスだって同じように有利になれるように動いている。他のクラスだって同じように動く。そうやってそれぞれの勢力が夏の特別試験を目指す。

 

 本当に大規模な試験になりそうだな。

 

 鈴音さんもクラスの方針を慎重に考えるだろうし、俺は俺で出来ることをやっておこうか。

 

 考えなければならないのは如何に退学者を出さないかという点であった。そこに関してはポイントの暴力でどうにかできるのだが、誰を協力者にするかも慎重に考えないといけない。

 

 とりあえずOAAで誰がどんなカードを持っているか確認するか、ポイントで救済するにしても安上がりな方が良いに決まっているからな。

 

 狙い目としては「半減」や「無効」のカードを持っている生徒だろう。彼ら彼女らを口説ければそれだけでこの試験は退学のリスクと費用がかなり減らせることになる。

 

 幸いなことにポイントは大量にある。この試験の退学者は成績下位の5グループだけなので、それぞれ口説き落とさなければならない。

 

 試験開始直前に、速攻で5グループをリタイアさせる。そんな展開に持っていければ後の生徒たちは退学の危険性が無くなるのだ。費用はそれなりにかかるだろうけどカードを上手く使えば最小の支出で済む。

 

 これが俺が試験が始まるまでにやるべき準備の一つだろうな。鈴音さんにクラスの方針は丸投げして俺はリスクを減らす方向性で動くとしよう。

 

「天武くん。お~い、天武くん」

 

「ん……帆波さん、どうかしたのかい?」

 

 ケヤキモールのど真ん中でOAAを確認しながら悩んでいると、そんな俺に声をかけてきたのは帆波さんであった。その隣には神崎の姿もある。

 

「神崎も久しぶり」

 

「あぁ」

 

 相変わらず俺を警戒する神崎ではあるが、以前に帆波さんが言っていたように嫌われている訳ではないのだろう。普通に会話は成立するし表情を歪められる訳でもないのは救いだ。

 

「二人は何をしてるんだい? もしかしてデートかな?」

 

「んにゃ!? ち、違うよ、本当に違うからね!?」

 

「笹凪、あまり変な揶揄い方をすべきではない」

 

「あ、ごめん、そこまで全力で否定されるとは思わなかった」

 

 もっと軽い感じで流されるかと思っていたけど、帆波さんも神崎も割と真面目かつガチに否定してくる。そこまで強く言われると申し訳ない気分になってきた。

 

「それじゃあ改めて、二人は何を?」

 

「交渉だよ、欲しいカードが幾つかあったからね」

 

「なるほど、考えてみれば当たり前のことだったか」

 

 帆波さんクラスも夏に向けて準備している。俺たちと同じようにだ。

 

「お前はここで何をしているんだ?」

 

 鋭い視線に射貫かれて少しだけ怖いのだが、別に隠すようなことでもないので素直に答えておく。

 

「こっちも似たようなものさ。交渉と勧誘、色々とね。退学者が出ないように事前に調整しておきたいんだ」

 

「どういうことだ?」

 

「今回の試験、成績下位の5グループが退学になるんだ。だったら早めに試験をリタイアさせて安全圏を確保したくてね。リタイアさせる者を事前に調整してポイントを渡しておけば、それも可能だろう?」

 

「なるほどねぇ……でも天武くん、それってもの凄いポイントが必要になるけど、大丈夫なの?」

 

 また心配されてしまった。けれど帆波さんはこちらの資金力を細かく把握している人なので、すぐに納得したような顔となった。

 

「うん、大丈夫、大きな問題はない……それにこれは、そちらのクラスにとってもありがたいことなんじゃないかな」

 

 最初に5グループがリタイアするのなら、その後にどれだけリタイアしても退学になることはない。そして下位となった5グループもポイントを事前に渡しておけば問題も起こらない。

 

「それはそうだけど、やっぱり心苦しいよ。なんだか天武くんに甘えっぱなしだなって」

 

 ここでラッキーだと喜ぶ所なんだが、そうはできないのが帆波さんらしいと言えるのかもしれない。

 

「まぁあまり気にしないでいいさ、これは俺が俺の夢を叶える為に勝手にやっていることだから」

 

 別に彼女を喜ばせたい訳でもなければ、利益を与えたい訳でもない。本当にどこまで行っても自分自身の為だと断言できる。俺はとても自己中心的な人間だからな。

 

 退学者を出さないようにするのだって、突き詰めれば自分の為である。感謝も憂いも不要であった。

 

「笹凪、具体的に誰を早期にリタイアさせるのか決めているのか?」

 

「ん、半減や無効のカードを持っている生徒、できれば一年生と交渉しようと思っている。退学回避の費用の負担もそうだけど、幾らか報酬のポイントを握らせる必要があるだろう」

 

「何故、一年生なんだ?」

 

「俺の都合だ。微々たるものではあるけれど、一年生全体の頭数……戦力を減らすことができると考えていてね。最初は自分のクラスからリタイアする者を選ぼうかと思っていたけど、誰が勝つのかまだまだ読み切れない部分が多いので戦力は残しておきたい」

 

 今回の試験は他学年と競う必要がある。ならば自分たちの戦力をリタイアさせる選択肢はない。それなら敵側となる三年生か一年生の数を減らした方が良いだろう。

 

 微々たる変化だろうが、一年生が5グループ分も数が減るとするのなら、少しは楽な展開になるのかもしれない。それに下手すれば一年生全体が清隆の懸賞金を狙いに来る可能性もあるので、そういった面からも一人でも多く排除しておきたい。

 

「そうか……お前が救済に動くのならば、俺たちは無効や半減のカードを集める必要はなさそうだな。だが、一年生たちがその交渉を受け入れるのか? 下位5グループから上位に入ったクラスにポイントが支払われるんだぞ」

 

「その辺は考えているよ、ぶっちゃけポイントの暴力でどうにでもできるからさ。何より一年生たちにはまだまだ時間と余裕がある、損失を上回る利益を提示すれば靡く筈だ」

 

 神崎はこちらから得た情報を吟味して考え込んでいる。もしかしてこの二人の交渉と方針に影響を与えてしまっただろうか? リスクを減らすカードを求めていたのかもしれないが、そのリスクをこっちで勝手に消滅させてしまったからな。

 

 集めた所で試験開始と同時にリタイアする者がいるだろうからな、あった所で無意味になってしまう。

 

 帆波さんクラスの方針に少し影響を与えてしまっただろうが、別にマイナスを押し付けたという訳でもないのでこちらが申し訳なくなる理由もなかった。

 

「あ、そうだ。天武くん、前に生徒会で話した協力の話なんだけど……どうかな?」

 

「あぁ、その話か――」

 

「待て、何の話をしている」

 

 こちらの都合や考えを説明しようと口を開こうとするのだが、その前に神崎が待ったをかけた。

 

「えっと、天武くんたちと共闘できないかなって思ってたんだ」

 

「初耳だ」

 

「ごめんね、そういう話をしてたってだけで、何も決まってはいなかったんだけど、せっかくの機会だから良いかなって。あ、お茶でも飲みながら話さないかな?」

 

 帆波さんはケヤキモール内にある憩いの場に視線をやってそんな提案をしてくるのだが、神崎は難色を示してしまう。

 

 ライバルというか、強く意識されているから難しいのかもしれない。

 

「一之瀬、笹凪は敵だぞ」

 

「天武くんはそうじゃないよ、今だって救済に動いてくれてるんだから」

 

「それはそうだが、共闘することに繋がらないだろう。俺たちとしてはBクラスに勝利することを考えるべきなんじゃないのか?」

 

 彼の言っていることは別におかしなことでもなく、寧ろ自然なことでもあるのだが、帆波さんはどこか納得いっていないらしい。少しだけ難しく考え込む顔をしていた。

 

「でも神崎くん、今回の試験は平均点でも総合点でもなくて、どのグループが勝つかだから、それならやっぱり天武くんをスカウトする方が一番勝率が高いよ」

 

「言いたいことはわかるが……仮に一位になっても報酬のポイントは山分けになる。Bクラスとの距離は縮まらない」

 

「今は龍園くんのクラスを突き放すことを目指すべきじゃないかな」

 

 そう言えば一年生と組んで行う筆記試験で帆波さんクラスは最下位になってしまったことで、龍園クラスとの距離が縮まったんだったか。既に後がないというか、クラスポイントの差は50もない状態である。そう考えると神崎の焦りもわかる気がした。

 

「あぁ~、すまない、実は共闘に関してだけどちょっと難しいかもしれない」

 

 方針や考えの違いで少しだけ対立しているようにも見えるので、誤解は解いておくべきなんだろう。

 

「え、あ……ダメ、かな?」

 

「ん、やっぱりクラスの方針もあるからね」

 

「そっか……うん、そうだよね」

 

「神崎もすまない、混乱させてしまったようだ」

 

「いや、別に完全に悪手だと思っている訳でもない……ただ、もう少し議論すべきだと思っただけだ」

 

 こっちを警戒するあまり帆波さんと対立してしまったことに気が付いたのだろう。彼はここで一歩引く姿勢を見せる。俺としては寧ろここで引くのではなくグイグイ前に出て積極的に意見をぶつけるべきだと思うのだが……他人に強制するものでもないか。

 

「まぁ今回は共闘は見送ろう。多分俺が他クラスとグループを作ることはないだろうからさ」

 

「クラスメイトとグループを作るということか、一番多くのポイントを得るのならばそうするべきだろうな」

 

 それで勝てると断言できないから多くの者が総合力の高い生徒と組みたがるのがこの試験であった。

 

 しかし神崎は勘違いしている。俺は多分単独で無人島に放り込まれる可能性が高いということだ。

 

「今回に関しては敵同士、しっかり競い合おう。勿論、俺は負けるつもりはないからさ」

 

「当然だ、こちらも勝たせてもらう」

 

 神崎はやる気を漲らせるが、隣にいる帆波さんは少しだけ表情を沈めていた。

 

「帆波さん?」

 

「あ、大丈夫……うん、天武くんのグループは強敵になりそうだなって思って、でも私だって勿論負けるつもりはないよ」

 

「あぁ、強敵になりそうだ」

 

 無人島での展開次第では帆波さんや神崎たちとも戦うことになるんだろう。それはそれで少し楽しみでもある。よくよく考えてみればこの二人と直接対決をすることはこれまで無かったからな。そうなったらなったで面白いのかもしれない。

 

 なにせ大規模な試験なのだ。どうなるかなど現時点では誰にもわからない。そして誰が勝つのかも見通すことはできなかった。

 

 三年生は南雲先輩を中心に動き、一年生はまだまだ戦力や考えも読み切れてはいない。そして二年生は曲者揃い、そう考えるとやはり結果は不透明であった。どんな天才でも現時点で誰が勝利するかなど判断できないだろう。

 

 面白い試験になりそうだ、俺は改めてそう思うのだった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。