ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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師匠曰く、事前の打ち合わせと調整は大切

 

 

 

 

 

 

 

 葛城と帆波さんたち、そしてその後も何名かの生徒と話し合い、交渉と譲歩などを行ってある程度は満足できる形に落ち着かせられたと思う。

 

 退学者を出さないようにフォローすること、そして他クラスや他学年の情報収集、俺がこの準備期間にやるべきことは主にその二つなのかもしれない。

 

 クラスの方針などは鈴音さんに任せて問題ないだろう。俺は俺にしかできない方法で色々と考えて貢献すれば良い。

 

 一年生たち、七瀬さんや八神や宇都宮との交渉を終えて、九号に方針と指示を伝え終えると、外は薄暗くなっており、スマホで時刻を確認してみると19時を表示していた。

 

 そろそろ帰って夜の鍛錬と勉強をするかと考えながら寮に辿り着き、ロビーに入った瞬間に同じように寮に帰宅した人物が視界に入る。あちらも俺に気が付いたのか声をかけてきた。

 

「や、笹凪くん。今帰り?」

 

「あぁ、松下さんもかい?」

 

「うん、コンビニ帰り」

 

 声をかけてきたのは松下千秋さんである。偶々こうして寮のロビーで鉢合わせしたのだが、彼女は良い機会だとばかりにこんな話を振って来る。

 

「あのさ、もしかして試験のグループってまだ決まってたりしない感じかな?」

 

「ん、そうだよ。松下さんもそうだっけ」

 

「声自体はかけて貰ってるんだけどね、これといった感じはまだないかな」

 

 なんでもそつなくこなす松下さんは実は総合力が高かったりする。一年生の序盤はそんな印象は無かったのだけれど、後半になるとエンジンでもかかったのかテストや運動でも印象が強くなっていったと思う。

 

 それは鈴音さんや清隆も同じ意見らしく、クラスの中でも注目株の一人であった。

 

「でさ、笹凪くんのグループに入れてくれない? 私、役に立つよ」

 

 上目遣いで少し妖艶な笑みを見せながらそう言ってくる松下さんの瞳は、こちらをしっかりと覗き込んで観察してくれている。

 

 彼女もまた目の前に迫った試験で生き残りを考えているということだろう。強かな部分もしっかりあるということだ。

 

「あぁでも、二週間近くも一緒にいることになるんだし、色々とあれかな」

 

「色々と、どうなるのかな?」

 

 そう問いかけると松下さんは挑発的な笑みを見せる。ここで変に意識しないのは彼女らしいのかもしれない。

 

「私たちの距離が縮まるんじゃない? 試験が終わった頃には名前で呼び合ってるかも……もしかしたらそれ以上とか」

 

「なるほど、それは魅力的な提案だけど、男女が二人で組むことは出来ないルールだ」

 

「あれ、もしかして笹凪くんグループを作らず一人で試験に挑む感じなの? てっきり綾小路くんか堀北さんと組むかと思ってたんだけど」

 

「確実にそうなると断言はしないけど、一人で挑む可能性は高いのかもしれないね」

 

「ふぅん。まぁ笹凪くんの場合はそれが一番なのかもね、下手に組んでも誰も追いつけないだろうしさ」

 

 松下さんはどこか納得した様子で頷いている。そしてコンビニのビニール袋の中を漁って中からココアの缶を取り出した。

 

「はい、甘い物好きみたいだからあげる。もしグループを作るつもりになったら声をかけてよ」

 

「ありがとう、その時が来たら考えておくよ」

 

 彼女はまた笑ってエレベーターのボタンを押した。そして上階から下りてきたエレベーターの扉が開くと同時に中に入るのだが、それよりも早く中から大柄な男子生徒が寮のロビーに姿を現した。

 

「うわ!?」

 

「おっと、怪我はないかねぇ」

 

 その男子生徒とは高円寺六助のことである。エレベーターの入口で鉢合わせるとは思わなかったのか、松下さんは大きく飛びのいて後退している。尻餅をつきそうにもなっていた。

 

「あはは、大丈夫。それじゃあ笹凪くん、高円寺くんもおやすみ、また明日ね」

 

「あぁ、良い夜を」

 

「グッナイッ」

 

 六助の言葉に唇の端っこを僅かに歪めながらも、松下さんはエレベーターに乗り込んで姿を消してしまう。

 

「やぁマイフレンド、逢瀬の邪魔をしてしまったかな?」

 

「気にする必要はないよ、別に甘い時間という訳でもなかったからね」

 

「ふむん、なら構わないのだがね」

 

 髪を掻きあげてセットする六助はいつものように不敵な笑みを浮かべている。彼はいつでもどんな時でも変わらないのである意味安心感のある相手でもあるのだろう。

 

「どこかに出かけるのかな?」

 

「私も逢瀬の時間さ」

 

 私もってなんだ、俺は別に松下さんとそういった時間を過ごした覚えはない。

 

「モテるようで羨ましいよ。秘訣を知りたいもんだ」

 

「ハッ、ハッ、ハッ!!」

 

 何故か笑われてしまう。別におかしなことを訊いた訳でもないと思うんだが。

 

「変な柵を意識して遠慮などしているからそんな言葉が出て来るのだよ。君は紳士で達観しているが、だからこそとも言えるだろう。時には年相応に振る舞うことも必要さ」

 

 何とも含蓄ある言葉であった。そう言えば波瑠加さんからも父親っぽい顔になっているとよく言われるな。そういう意識や姿勢が駄目なんだろうか。

 

「試しに先程の松下ガールを口説いてみるといい、守るべき対象として見るのではなく、ただのクラスメイトとして接すればまた異なる関係が生まれるさ」

 

「なるほど、参考になるな」

 

 俺はどこかクラスメイトを守るべき存在として見ていたということか。それは間違いではないのだろうけど、意識しすぎるのもまた問題だ。それではまるで保護者と子供のような関係になってしまう、それはそれでどこか歪だ。俺たちは同級生なのだから。

 

「ふッ、頑張ってみるといい。恋も愛も、楽しんでこそだ。いっそお試しで付き合ってみるくらいカジュアルな感じで接すればいい」

 

「そんな感じで良いのか」

 

 そう言えば橋本も似たようなことを言っていたか、あのチャラチャラした男もあれでモテるからな。参考にした方が良いのかもしれない。

 

「そうとも、難しく考えすぎるから動きも鈍くなる。もっと自由で良いのだよ」

 

 六助らしい言葉であった。彼はいつでも自由に生きているからな。

 

「それよりもだマイフレンド、今度の試験では私をグループに加えてみる気はないかい?」

 

「君を? あぁ、開始直後にリタイアしたいってことか」

 

 そう納得していると六助は不敵に笑うだけだ。去年の無人島サバイバルでも初日の夜にリタイアしたことを考えると、きっと今年の試験も同じようなことをするのかもしれない。

 

 ただ六助の提案はそこまで悪いものとも思えなかった。少なくとも単独で勝手にリタイアされるよりはずっとマシである。同じグループならば俺がリタイアしなければ問題はないのだから。

 

「そもそも六助は退学回避のポイントを持ってるじゃないか」

 

 マネーロンダリング用の企業設立のお礼として、六助には1億ポイントを支払っている。

 

「確かにね、なので君が嫌だと言うのならばそれでも構わないとも」

 

「嫌なんてことはないさ。君には散々世話になったからね。わかったよ、俺とグループを組もうか、試験本番では好きにして良いからさ」

 

「グㇾィト、ではそれで行こうじゃないか」

 

 六助にはマネーロンダリングをする為の会社設立でもの凄く世話になった。土地から社員、社屋から法関連や税関連、ツッコミどころのない企業を偽装するのはとてつもなく大変なことだっただろう。それら全ての問題は彼が片付けてくれた。

 

 俺がこの学園に大量のポイントをここまでスムーズに外から引っ張って来れたのは、全て彼の助けがあったからこそである。そう考えると頭が上がらない存在なのかもしれない。

 

 退学の回避を協力することくらい、当然の手伝いですらあった。

 

 まぁ問題はないだろう。どうせ試験本番になれば速攻でリタイアするのだから、結局俺は一人で挑むことになる筈だ。手伝ってくれれば楽になるのだけど、そこまで求めることもできない。

 

 寧ろ勝手に一人でリタイアしないだけ配慮してくれているのかもしれない。リタイア組は一年生で固めるつもりだったからな。

 

 髪をセットしながら鼻歌交じりに寮から出ていく六助を見送りながら、俺もまたエレベーターに乗って私室がある階まで移動することになる。

 

 部屋に戻ってまずは食事だと考えていると、その前に鈴音さんとの作戦会議や情報交換を終えていないことを思い出す。

 

 なので食事の前に報告である。電話で済まそうかと思ったが、時間を取らせるのも悪いと思ってメールで済ましておく。

 

「お?」

 

 返信はすぐに来る。内容は短くて今すぐ部屋に来いというものであった。

 

 スマホには19時を少し過ぎた辺りの時刻が表示されている。男子が女子の部屋がある階に20時以降にいることを発見されると罰則があった筈なので、あまり喜ばしいことでもないのだが……。

 

 しかし、続いて届いたメールに書かれていた『夕飯を作り過ぎたからおすそ分けする』との内容に、俺は変な言い訳を止めてノコノコと足を運ぶことになるのだった。

 

 20時になる前に帰れば問題はないだろう。チョロいのかもしれないけどそんなことを思った。

 

 ただ周囲の者に見られて要らぬ噂や評価をされてもそれはそれで問題なので、全力で気配を探りながら誰にも会わないように注意する必要があるだろう。

 

 エレベーターで女子の部屋がある階まで移動して、通路に誰もいないことを確認してから鈴音さんの部屋のインターホンを押すと、彼女はすぐに出迎えてくれる。

 

 驚くことにエプロン姿であった……いや、夕飯を作っているのだから自然なことではあるんだろうけど。

 

「どうしたのかしら?」

 

「いや、エプロン姿がちょっと新鮮だったからさ、見惚れた」

 

「そ、そう……早く入りなさい。こんな所を誰かに見られたくはないの」

 

 交際もしていない男女が夜に密会だからな。別にやましいことは無くても話題にはなる。いや、そもそもそんなことを気にするのなら呼ばなければ良いんじゃないかな。

 

 電話かメールで済ませれば……なんて言うのは今更だな、手料理に釣られてノコノコここまで来てしまった俺が悪いということなんだろう。

 

「もう少しだけ待っていて、すぐに出来上がるから」

 

「何か手伝おうか?」

 

「大人しく座っていなさい」

 

 鈴音さんの部屋に上がるのは別に初めてのことでもないのだが、別に何度来ても慣れるようなこともない。反対に緊張することもない辺り、俺は少し遠慮が無いのかもしれない。

 

 相変わらず実用性第一と言うか、シンプルかつ無駄のない部屋は実に彼女らしいと思う。この雰囲気と言うか部屋の空気はアレだな、堀北先輩が生徒会長だった頃の生徒会室によく似ている。

 

 今は南雲先輩によってかなり華やかになったあの部屋も、去年の夏頃まではこの鈴音さんの部屋みたいにとても落ち着いてシンプルであったと思い出す。

 

 しかしあれだな、女性の部屋はもっと可愛らしい小物とかが多い印象であったけど、これはこれで良いと思う。

 

「出来たわよ、運んで頂戴」

 

「了解」

 

 タダ飯食らいもあれなのでそれくらいは手伝うとしよう。食器類などを机の上に運んでいざ実食である。どうやら本日の献立は和食であるらしいので師匠と過ごした山奥の神社での生活を思い出す。

 

 師匠は和食好きだったからな、よく作らされたものだ。

 

「お口に合うかしら?」

 

「勿論さ、凄く美味しいよ」

 

「ふふ、なら良かったわ。賞味期限が近かった物が多いから今日で全て処理して貰うわよ」

 

「あぁ、任せてくれ」

 

 清隆に作ってもらう料理も美味しいけど、鈴音さんに作って貰う料理もまた美味しい。やはり女性に作ってもらうと何故か一味違うと思ってしまうのは、きっと俺が単純だからなんだろう。

 

 机を挟んで対面に座る彼女もまた作った料理に満足いったのか、僅かに微笑んでいる。

 

「そうだ、もしかしたら六助とグループを作ることになるかもしれない」

 

「高円寺くんとね……制御できるの?」

 

「いや、彼に関しては好きにさせるのが一番だと思ってる。試験開始直後にリタイアするものだという前提で動くよ」

 

「可能ならば、彼にもしっかりクラスに貢献して欲しいのだけれど……まぁ、勝手に一人でリタイアされるよりはマシと思うしかないのかしら」

 

「六助は、それで納得して動くような男じゃないさ」

 

 鈴音さんは普段の六助を思い出したのか苦い顔になる。それでもクラスを纏める立場としてはしっかりと協力して欲しいのだろう。

 

 そんな会話をしながら情報交換だ。俺が放課後にやっていた一年生の速攻リタイアの話もしっかりと伝えておく。

 

 一年生たちにポイントを預けて試験開始直後にリタイアさせる。それだけだと彼ら彼女らには損しかないので、しっかりと利益が得られるように余分にポイントを渡しておく。そんな形で結んだ幾つかの契約を彼女に話すと考え込むような表情となった。

 

「一年生はそれで納得したのね?」

 

「あぁ、明日にでも正式な契約書を作ろうと思っている」

 

「ならこれで私たちの方針も確定する。リスクを少なくできるカードを集める必要は無く、それよりも便乗や先行のカードを中心に集めるべきね」

 

「便乗のカードに関しては集めてたんだよね?」

 

「えぇ、ただ……」

 

 そこで彼女は言い淀む。何かしら注意すべきことがあるらしい。

 

「今日の放課後に何人かに声をかけたのだけど、どうやら龍園くんのクラスも便乗のカードを集めているみたいなの」

 

「ん、もしかして高めのポイントを吹っ掛けられた感じ?」

 

「法外という額でもないけれどね」

 

「龍園もこっちと似たようなことを考えてる訳か、南雲先輩も同じ方針だし、やっぱり大量に稼ぐには特定のグループに一点賭けする感じになるんだろうな」

 

「南雲会長も同じ方針だというの?」

 

「集めた情報によると、三年生全体で結託して南雲先輩のグループを勝たせる方針らしい。便乗のカードも一点集中だ」

 

「私たちの作戦を大規模にした形という訳ね」

 

 そうなのだ、南雲先輩とやろうとしていることは実は俺たちのクラスと同じことである。ただしこっちはクラス単位だけど、あの人は学年全体だ。その時点で優位性が確立されてしまっている。

 

「今から方針を変えるかい?」

 

 僅かに視線を下げて考え込む鈴音さんは、十秒ほど悩んだ後にゆっくりと首を横に振る。

 

「いいえ、このまま進める。退学者の心配が必要なくなったのだからクラス全体としてはバランスよくグループを作って上位50パーセントの報酬を狙い、上位入賞に関しては貴方に一点賭けする。勿論、便乗のカードも一枚でも多く集めて天武くんに注ぎ込むつもりよ」

 

「それだと数で三年生との戦いは不利になってしまうけど」

 

「そうね。けれど、それが一番利益になると判断したわ。間違っているかしら?」

 

「戦いに絶対はない、だから俺は勝てるように努力するだけさ。そしてそれは南雲先輩にも同じことが言えるだろう」

 

 そうだ、それに多少の数の差は実力で凌駕すれば解決する話だ。数は絶対の力だけど、それにだって限界はある。

 

 そもそも、三年生たちにはスパイが沢山いる。決して完全な不利と言う訳でもないだろう。

 

 なにより鈴音さんには迷いがない。これが一番勝率が高い作戦だと確信しているようだ。ならば俺からは何も言うまい、結果でその判断が正しかったのだと証明するだけである。

 

「問題となるのはやっぱり便乗のカードの総数か。明日以降も集めるとして、もしかしたら龍園クラスと綱引きになるのかな」

 

「多少のポイントなら払うつもりではいるけれど、赤字が出ないように注意しないといけないわね」

 

「こっちは半減や無効が不要になったんだ。それで交換を提案してジョーカーを掴ませようか」

 

「そうね、それで多少は集められるでしょう。グループ作りに関してはバランスよく、カードに関しては先行と便乗を一つでも多く、試験の本番になるまではそんな動きになると思うわ」

 

「ん、それで良いと思う。後は本番で俺が勝つだけだ」

 

「高円寺くんの説得を忘れないで欲しいわね。最初から諦めないで、協力できるようにしなさい。別に貴方の実力を疑っている訳ではないけれど、同じグループを組むというのなら力になって貰える方が良いに決まっているのだから」

 

「六助に関してはなぁ……」

 

 本当に動きが読めない。そして頭が上がらないくらいに既に協力して貰っているので、何とも言えないんだよな。

 

「まぁ頑張るよ」

 

 そうとしか答えられなかった。彼は俺に制御できる存在ではない。

 

 そこから先も鈴音さんとは意見と情報交換をしていく。共に夕飯を味わいながらだ。

 

「ごちそうさま。とても美味しかった」

 

「お粗末さま」

 

「お皿洗いは俺がするよ」

 

「座ってなさい」

 

「そうもいかないんだけど」

 

「お礼も兼ねているのだから甘えておきなさい。貴方のおかげで退学のリスクを排除できた、今日くらい働かなくても罰は当たらないわよ」

 

 そう言われると不思議と納得できてしまうな。確かに俺は頑張ったのかもしれない。退学者を出さないというのは俺の勝手な自己満足でしかないけど、どうやら鈴音さんは賞賛してくれているようだ。ありがたい話である。

 

「手持無沙汰だと言うのなら、そこにあるノートに問題文を作っておいてくれるかしら」

 

「……ん?」

 

「出来れば、以前のテストと近しい難易度のものが良いわね」

 

「あれ、働かなくて良いのでは?」

 

「暇なのでしょう?」

 

「門限も近くなってるしさ。女子階に20時以降にいる所を見られると寮監から注意されるんだよね」

 

 確か一度で忠告、二度で学校に報告、三度目で問題も大きくなるらしい。この学校は基本的にはバレないようにしろというスタンスなので露見しなければ問題ないと言えばそれまでだけど、だからといって推奨している訳でもない。

 

「まだ時間はあるのだから、この後、勉強に付き合いなさい」

 

「……はい」

 

「ふふ、素直になったわね、それで良いのよ」

 

 有無を挟めない雰囲気だったので従うしかなかった。後三十分ほどで20時になるので、短い間だけどそれまでは鈴音さんの勉強会に付き合うとしようか。

 

 以前の高難易度テストを師匠モードの俺が引っ張り出して来るので、それを参考に幾つかの問題を作ってノートに書いていく。

 

 その後、洗い物を終えた鈴音さんが来たことで勉強会が始まることになる。何だかんだで付き合っている内に集中してしまったというか、楽しくなって来たので、結局部屋に帰ったのはそれから二時間後であった。

 

 流石にこんな時間にこの場にいることを誰かに発見される訳にはいかなかったので、部屋に帰る時は本当に警戒しながら帰宅することになる。

 

 廊下に出た瞬間に誰かと鉢合わせて見ろ、きっと明日にはあることないこと掲示板に書きなぐられるに違いない。

 

 なので俺はリスクを排除する為に廊下に出て帰宅するのではなく、ベランダから飛び降りて一階に着地すると、そこから部屋に戻ることになるのだった。

 

 完璧な帰宅方法だな、鈴音さんも感心していたほどである。

 

 

 

 

 

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