ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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それぞれの視点 2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇都宮視点

 

 

 

 

「笹凪先輩のグループは圧倒的だな」

 

 四日目に順位が発表されてから折り返しを過ぎて十日目の今日になっても、あのグループは圧倒的な大差を維持するだけでなく、それどころかポイントを伸ばしながら突き放しにかかっている。

 

 これはもう勝てないだろうな、既に全体が二位と三位狙いに動いているように思えた。

 

 ただしそれは、あくまで正攻法という範囲での話だ。チマチマポイントを稼いだ所で意味はない。なら強引にリタイアさせる方向にシフトするのが自然な流れだ。

 

 ルールを説明される時も学校側が言っていたからな、仕方がないと。

 

「三年生が大勢リタイアしたみたい」

 

 クラスメイトから借りたタブレット端末と、そこに紐づけされたポイントを消費してサーチを繰り返す椿は、丸太の椅子に座りながらそんなことを言った。

 

 あまり表情を動かす奴ではないが、おそらく様々なことを考えていることはわかる。OAA以上の能力を持っているのはわかっているのだから。

 

「七日目からずっと張り付いていたけど、次々脱落者が出てる。課題に先回りしたり色々やってるみたいだけど、この感じだと十日目以降は全滅するかもね……誰も付いていけてない」

 

「笹凪先輩の逃げ切りが確定するってことか?」

 

「このままいけばそうなるよ……あの人、わかってはいたけどやっぱり怪物だね」

 

 他人のタブレット端末を眺めながら椿はまた考え込む。

 

「……」

 

 そして無言になって暫く考え込む。瞼を閉じて無言となり、そのまま三十秒ほど過ぎ去った段階でようやく次の動きを見せた。

 

「一位を取るのは無理だね。三年生が上手く疲れさせてくれれば良かったけど、想定以上に笹凪先輩が異常だった」

 

「だが無傷という訳ではないだろう、疲労は蓄積するものだ」

 

「そうでもないよ。ほら、今サーチしたんだけど、笹凪先輩はもう別のエリアにいる。さっきと今の僅かな間にね。疲れている人間はここまで素早く動けない……宇都宮くんはできる? 三年生たちに数日間も追いかけ回された後に全力疾走で次の課題に向かうことが」

 

 タブレット端末を見せつけながらそういう椿だが、別に悲壮感はない。まだ負けたとは考えていないからだ。

 

「だとして、どうするつもりだ?」

 

「リタイアさせる、それも強制的に」

 

「……そうなるだろうな」

 

「反対はしないんだ?」

 

「退学のリスクはないとはいえ、一年生が初日にリタイアした以上、他の学年に上位三組を持っていかれれば、やはり損害は大きいからな」

 

 笹凪先輩との交渉で、一年の各クラスはそれぞれリタイアする生徒をバランスよく選んで試験を初日に放棄している。これが一つのクラスであれば反対の声を上がったのかもしれないが、全てのクラスでバランスを取ったというのが上手い話だ。

 

 もしポイントを持っていかれたとしても、全てのクラスで損害を負担することになる。つまりここでクラスポイントに差が生まれることはない。

 

 加えて、報酬として各クラスにはプライベートポイントが払われているので断る理由もない。

 

 何より、それら全てを受け入れて上位三組を一年生のグループで満たせれば利益しかない。そういう方針だったのだが、そこまで簡単な話でもなかったということだろうな。

 

「椿、聞かせてくれ、俺たちが現時点で得られる最大限の利益はなんだ?」

 

「上位三組を独占すること、そして綾小路先輩をリタイアさせること、その二つを達成できれば莫大な利益になる……例の懸賞金の話はまだ続いているし、綾小路先輩をリタイアさせる状況に追い込めれば、迎えに来るのは月城理事長だって試験が始まる前に説明してくれたから」

 

 確かにそう言っていたな。あの懸賞金の話を知っている一年生全員にそういう話がされた。もしあの男をリタイアさせられる状況になった場合は、迎えに来るのは教師ではなく月城自身だと。

 

 つまり、多少の無茶を押し通しても不問になるということだ。

 

「リタイアによる退学のリスクはないんだ。大胆に動くべきだと俺は思う」

 

「そうだね……ただ、やっぱり笹凪先輩には手を出すべきじゃない」

 

「俺が出る」

 

「宇都宮くんが強いのは知ってるよ。高校一年生とは思えないくらいにさ……でも、多分、そういう次元の相手じゃないと思う。私たちの考える強い弱いとか、そういうレベルにいない人だろうから」

 

「では宝泉と組んでならどうだ?」

 

「意外、あんなに嫌ってたのに」

 

「今もそれは変わらない……だが背に腹は代えられないだろう」

 

 もっとも、あの男が俺に協力することはないのだろうが。

 

「まぁ落ち着いてよ。大胆に動くべきって話は同意できるけど、狙う相手は吟味しておきたいんだよね」

 

「笹凪先輩は狙わないと?」

 

「それよりは、手駒を大勢失った三年生が狙い目かもね。笹凪先輩のペースに合わせた結果、皆フラフラみたいだし。あれもこれも取ろうと思えばきっと手が足らなくなる。欲張らずに狙う相手は一つに絞ろう」

 

「二位と三位狙い、或いは綾小路先輩に集中するってことか」

 

「まぁね、笹凪先輩にだけは手を出すべきじゃないってことは間違いないかも。狙うのは南雲先輩か、坂柳先輩……それか綾小路先輩か、やるにしても一点突破だね」

 

 前者は二位、後者は三位の位置にいる。綾小路先輩に関してはその首に大量のポイントがかかっている。

 

 そしてまた椿は考え込む。どこを目指すのが最善なのかと。

 

「でもまぁ、今の三年生の状況なら、多分だけど向こうから声をかけてくるんじゃないかな」

 

 椿がそう言いながらタブレット端末をまた見せつけて来る。すると俺たちのキャンプ場所に近づいてくる光点が一つあった。三年生のものだ。そしてその光点は俺たちだけでなく他の一年生の代表たちにもそれぞれ近づいているようだった。

 

「まさか、生徒会長と協力するのか?」

 

「あっちは手が足りない、私たちも手が足りない、そして一位には消えて貰いたい、話が早いでしょ」

 

「本音はなんだ?」

 

「三年生とは協力するフリをしながら狙いは綾小路先輩にだけ集中する」

 

「利用するということか」

 

「どうせあっちだってそのつもりだよ。上位グループ同士で潰しあってもらって席を空けていってもらおう、運が良ければ共倒れになって席が二つ空くかも……無理だったとしても私たちは綾小路先輩に集中するで良いと思う」

 

「笹凪先輩と生徒会長の戦いに関わるつもりはないのはわかった、どの程度まで利用するんだ」

 

「協力する代わりに食料と水を提供して貰おうかな、そしていざ行動する時はダラダラしておこう、批判されないくらいに動いてさ」

 

「得たリソースは綾小路先輩を追い込むのに使う訳だな。なら他の一年生たちにもその方針を伝えておこう」

 

 一位の笹凪先輩を追い落としたくて仕方がない三年生たちの焦りと余裕の無さはある程度は察することができる。疲労困憊でリタイア者も大勢出ているので人手を高く売りつけられるかもしれない。

 

 それで笹凪先輩を落とせれば良し、生徒会長が疲弊して三年生がより追い詰められても良し、どっちに転んでも一年生には得しかない。そういうことだ

 

 他のグループも同じことを考え始める頃合いだ。椿はそう言うのだった。

 

 リタイアすることによる退学の心配がないからなのか、やはり行動がより大胆になるのは避けられないんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 坂柳視点

 

 

 

 

 

 

「――と、考えるグループが多くなってくるでしょうね」

 

 タブレット端末が映し出す光点から様々な情報がこちらに齎される。何を思ってどこを目指しているのか完全ではないもののある程度は推測できます。

 

 天武くんを追い回すことで疲弊させるつもりが、想定以上に元気一杯な様子に三年生たちは大きく困惑しているのでしょう。長丁場の試験でペース配分を乱すことは絶対に避けなければならないというのに。

 

 ここに来て三年生から多くのリタイア者が出ていることが、彼らの見積もりの甘さと余裕の無さが透けて見えることになる。

 

 ほら今も、伝令役と思われる三年生が港に現れて私に近づいてくるのですから、一年生だけでなく二年生からも戦力を引っ張り出したいのでしょうね。

 

「それでどうすんのよ、三年生と協力するの?」

 

 港近くの課題に参加していた私のグループの方々は、無事に一位を取って今は小休止を取っているようです。無料で配布されている水で喉を潤しながら次の課題を目指す準備を整えています。

 

「いいえ、真澄さん。当初の予定通り私たちは二位と三位狙いで動きます。皆さんは葛城くんと課題を被らせないままこれまで通り動いてください。どの課題を受けるかはこちらから随時指示しますのでご安心を」

 

 葛城くんのグループは今現在六位の位置にいる。可能ならば彼と私で二位と三位の独占を狙いたい。それが私たちの目標でありそれは今も変わってはいない。

 

「……笹凪を排除する選択肢はないのか?」

 

 鬼頭くんはこちらの考えに賛同しながらも、一位を取ることを考えているようですね。

 

「既に便乗のカードを彼に注ぎ込んでいます、勝ってもらわないと困りますね。増員のカードを得る為に大きな出費がありましたので……そういった理由もありますけど、彼を物理的に排除することはまず不可能ですよ。そうでなければ二位と三位狙いで妥協などしませんから」

 

 出来るのならば選択肢の一つに入れても良いのかもしれない。けれど今この無人島に存在する全ての戦力を集めて挑んだとしても最後に立っているのは天武くんでしょう。屍の山が作られるとわかっているだけの行動をわざわざする必要はない。

 

 彼を物理的に排除するのに必要なのは頭数ではなく、軍事力でしょうしね。おそらく生徒会長はそこを理解できていないのでしょう。

 

「天武くんに一位を取って貰って出費の補填を行い、二位と三位を得てクラスポイントの変動も互角にする。三年生に関わっている時間はありませんね……とは言え、生徒会長が今現在は二位、そろそろ目障りになってきました」

 

 こちらに近寄って来るのは桐山副会長でした。どうやら彼が伝令役のようですね。

 

「坂柳だな、少し話がある」

 

「ある程度は推測できますよ。桐山副会長。要件は天武くんを排除する為の共同戦線ですね?」

 

「話が早くて助かる、その通りだ。お前たちにとっても厄介な相手の筈、手を組むことに何の憚りもない筈だ」

 

「どのような条件を提示してくれるのでしょうか?」

 

「条件だと? おかしなことを言う奴だ、共通の敵を倒すことそのものが報酬と言えるんだぞ」

 

「ではお帰りください。こちらは別に単独で挑んでも構いませんので」

 

「笹凪のグループは強敵だ……アレは常識の外にいる存在だからな」

 

「はい、知っていますよ。きっと先輩方よりもずっと」

 

 二コリと笑って見せると桐山先輩は眉間に皺を寄せる。やはり焦っているようですね。

 

「水、或いは食料を……そしてポイントを提供してくれるのならば、こちらからもある程度の人員を出しましょう」

 

「……」

 

「あぁ、嫌ならばそれで構いませんよ。決めるのはそちら側ですので」

 

「たとえそれが南雲を敵に回すことだとしてもか」

 

「もしかしてご存知ありませんか? 私たちは桐山副会長と違って別にペットではないんです。餌が貰えなければ生きられないほど哀れな存在でもありません」

 

 今度は明確に睨まれてしまいましたね。まさに面従腹背、或いはそういった所を眺めるのが好きなのかもしれませんねあの生徒会長は。

 

「……交渉はお前たちでやれ、無線の周波数だけは教えておく」

 

「ふふふ、そんなに機嫌を悪くなさらないでください、ちょっとした戯れですので……わかりました、交渉はこちらで行いましょう。副会長は主の下にしっぽを振って帰ってくださって構いませんよ」

 

「……」

 

 最後には黙ってしまった桐山副会長は、眉間に皺を寄せながらも背中を向けて港から森の中へと走って行きました。嫌われてしまったようですね。

 

「で、本気で協力するのか、姫さん?」

 

 橋本くんは胡乱気な顔で私を眺めて来ます。

 

「まさか、二位の南雲先輩は邪魔ですので、消えて貰いたいんです。水と食料と、可能ならばある程度のポイントを引っ張りだしてから、後はダラダラと過ごしましょう……批判されない程度に動いてね」

 

 ただでさえ三年生は全学年で最も人数が少ない学年になっている。天武くんのペースに合わせた結果、水も食料も当初の計算とは大きくズレているのは間違いない。

 

 それでも圧倒的な大差で一位を維持されているのが三年生たちにとっては屈辱であり我慢できない状況ですので、振り回されているとわかっていながらも追い回すしかない。

 

 この試験で最も大切なのはペース配分だというのに、それを根底から無視してしまえば大量のリタイア者も出てしまう。

 

 いえ、もしかしたら相手のペース配分を乱す為に速攻でリタイアする者をあらかじめ作ったのでしょうか。

 

「退学のリスクもないのだからいざとなればリタイアすれば良い……それはサーチ機能などを使いやすくするメリットもありますけど、ペース配分を乱すデメリットにも繋がっているようですね」

 

 結果的に、三年生からは大量のリタイア者が出て一年生や二年生まで協力を要請するような事態になっているのですから、最初から計算していたのでしょうか。

 

 どちらにせよ、生徒会長が最初に考えていた絵図はもうどこにもない。だとすれば彼を追い落として上位三組を二年生で埋めることも不可能ではないでしょう。

 

 生徒会長は天武くんを意識するあまり、自分が狙われる側にいることをあまり意識していないようですね。

 

 背中から蹴り飛ばしたらどこに転がるんでしょうか、少しだけ興味があります。

 

 もしそうなったとしてもきっと恨みはしないでしょう。だって月城代理もこう仰ってましたから……仕方がないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍園視点

 

 

 

 

「ハッ、足りねえな」

 

 接触して来た三年生から提示された共闘、笹凪をリタイアさせる為の同盟の話を聞かされて鼻で笑うしかない。

 

『不足か? お前にとっても一位の笹凪がリタイアするのは悪い話じゃないだろ』

 

 ダラダラと人を介して話しても無駄だと判断して、接触して来た三年生から無線機の周波数を聞き出してから大本と直接交渉をすることになった。

 

 無線機の向こうからは生徒会長様の声が聞こえて来るが、随分と落ち着きがないのがよくわかる。余裕綽々で構えてたら逆転不可能な大差を付けられたんだ、気持ちはわからなくはないがな。

 

「おいおい誤魔化すなよ。困ってるのはテメエで、俺たちは売りつける側だろうが」

 

『この俺を相手にそこまで強気に出れるのは評価してやるよ』

 

「クク、取り繕うなよ、笹凪を追いかけ回してた手下も随分とリタイアしてるようじゃねえか。手を貸して欲しいんなら相応の物を出せよ。生徒会長様は随分とケチじゃねえか、えぇ?」

 

『……何が欲しい?』

 

「水と食料、そしてポイントを寄こせ」

 

『おいおい、水と食料はともかく。ポイントまでくれてやったらただ俺たちが大損するだけじゃねえか』

 

「代わりに勝利の名誉をくれてやるよ、下級生にダブルスコアでボロ負けしたクソ雑魚生徒会長って呼ばれないようにな」

 

 無線機で南雲と会話しながらも、俺は目の前で行われている課題を眺めていた。鬱蒼とした森の中に建てられた大型テントの中では、英語の課題が行われていて、アルベルトとひよりが参加しているのが見える。

 

 どちらも得意分野で、目立つライバルもいねえ、上位は固いだろうな。

 

『幾ら欲しい?』

 

「2000万だ」

 

『俺を舐めるのもいい加減にしろよ』

 

「どうした、随分と機嫌が悪いじゃねえか。ちょっとした冗談だ、笑ってやりすごせよ……それとも焦ってるのか?」

 

 ミシっと、無線機を強く握りしめるような音が聞こえて来る、かなり苛立ってやがるな。

 

 退学のリスクが無いからいざとなればリタイアすればいい、そんな考えでペース配分を乱して三年からは大勢のリタイア者が出た結果、こうして下級生まで巻き込みにかかってるんだから考え物だ。

 

 アイツ、これも計算の内か?

 

「ククク、冗談だ。500万ポイントで手を打ってやるよ」

 

『まだ高いな、せいぜい100万って所だ』

 

「そうか、なら他の所を当たれよ」

 

 どいつもこいつもタダ働きはゴメンだろうがな。

 

『まぁ待てよ龍園。冷静になって考えろ。お前もこのまま一位を独走されることは面白くないだろう』

 

 そうだな、そして二位のお前も邪魔だという言葉を呑み込んでおく。

 

「いつまでも理屈をこねくり回してるんじゃねえよ。俺たちが協力しなければ一番困るのは誰だ、テメエだろうが?」

 

『こっちは他の奴に声をかけてもいいんだぜ? 坂柳からは前向きに検討するって言われてる、そして一年からもな』

 

「そうかよ、じゃあな」

 

 そこで無線機での通話を強制的にぶった切る。その三十秒後に痺れを切らしたのか生徒会長様は再び無線通話を繋げて来やがった……ここまでわかりやすいとはな、普段ならともかく随分と笹凪を意識しているらしい。

 

『200万だ』

 

「足りねえよ600万だ」

 

『さっきより増えてるじゃねえか』

 

「そりゃさっきの話だからな、今は600万だ」

 

『……』

 

 言葉こそ発しないが、無線機の向こうにいる南雲が苛立っているのがわかった。

 

 やはり笹凪を意識しすぎだな、冷静さを欠いてやがる。

 

「ククク、だが俺は寛容だ、水と食料を増やせば500万にまけてやるよ」

 

『無い袖は振れないもんだぜ』

 

「あるだろうが、リタイアした所で退学にはならねえんだ。無能な三年のグループをリタイアさせればそいつらの物資を回せる筈だ」

 

『人手を増やす為に人手を減らしてたら意味がないだろう』

 

「水と食料を渡すのは笹凪を襲撃した後で構わねえぜ、後払いでな。テメエからしてみれば一位さえ消せればそれで言い訳はできる、違うか?」

 

『……良いだろう』

 

「悪いが口約束じゃあ話にならねえ、教師立ち合いで契約書を作るぞ」

 

『そりゃそうだ、お前は約束を守る相手には見えないからな』

 

 自己紹介か? まぁ良い、これである程度のポイントを稼げるだろう。無線機の通話を切って契約を結びに行くとするか。

 

「龍園さん、生徒会長と協力するんですか?」

 

 南雲との話が終わると、黙って話を聞いていた石崎がそんなことを聞いて来た。

 

「する訳ねえだろうが、仮に無人島にいる人間全員で襲い掛かった所で最後に立ってるのは笹凪だ。人手はある程度は用意してやるが、真面目にやればやるだけ損するんだ、批判されない程度に動いてりゃそれで良い」

 

 南雲は数を揃えて襲い掛かれば勝てると思っているのかもしれねえが、ゴリラへの理解が足りてねぇから出せた無意味な計算だ。仮にそれをやるのだとしても揃えるのは人じゃなくて銃器とかの兵器だろうが、そこを理解できていないようだな。

 

 高校生レベルの強い弱いではなく、笹凪に勝つのならば軍事力を引っ張って来なければならねえ。無駄なことに真剣に付き合うつもりは欠片もない。

 

「何人か人を見繕って南雲に送る。適当に付き合わせてそれで終いだ。どうせ笹凪は落ちねえよ。三年から水と食料とポイントを奪って疲弊させんぞ……二位の南雲も邪魔だからな」

 

「了解ッス、そんじゃあ手の空いてる奴らに声かけときます」

 

「契約の際に期限は設けるぞ、ずっと付き合うつもりも意味もねえ。一日だけのレンタルって形にしてやるよ」

 

「それで500万……ぼったくりじゃないですか」

 

「知らねえよ、困ってんのはあっちなんだからな」

 

 アルベルトとひよりが問題なく課題で上位を奪ってこちらに戻って来るのが見える。これでこっちのグループは五位まで順位を上げられたな。

 

 笹凪を意識するあまり自分が狙われている側にいることを気が付いていないようだからな、状況次第で蹴り落とすこともできるだろう。

 

 何より、こっちは集めた便乗カードの全てをアイツのグループに注ぎ込んでいるんだ、一年からも契約で固めて注ぎ込んだ結果、笹凪が一位になれば膨大なプライベートポイントが入って来る。そう言った点でも南雲に付き合うことはできねえ。

 

 どうせ坂柳も似たようなことを考えてるだろう。笹凪を潰すよりも南雲を追い込んで上位の席を空ける方が現実的だと。

 

 せいぜい稼がせて貰おうか、笹凪のポイントはあくまで保険の保険、Aクラスを目指しながらも俺は俺で8億はしっかりと引っ張ってこねえとな。

 

 

 

 

 

 

 

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