綾小路視点
南雲が持っていたタブレット端末を操作して、サーチ機能を連続で使用することで貯まっていたポイントの全てを消滅させることで、事実上このグループの敗退が決定することになる。
全てのポイントを消費した後、丁寧に指紋を拭き取りそれでも心配だったので粉々に粉砕してから海にでも沈めておけば俺が関わったという証拠を発見するのは難しくなるだろう。
変な難癖をつけられても困るからな、証拠や疑惑を残さないのは大切なことだ。
早めに移動するとしようか、この近くをうろついていることを目撃されればそれはそれで疑惑となる。なのでオレは腕時計の交換をする為に港へ進路を変えることになった。
南雲の指示で大勢の生徒が腕時計を破壊した状態で活動していたので単純に容疑者は70人ほどになるだろう。おそらく特定されることはないだろうが、現場から離れておいた方が良いのは間違いない。
なので素早く別エリアに移動してから、タブレットで他の生徒たちの動きを確認しながら移動することになり、ある程度まで港があるエリアまで近づいた段階でようやく落ち着けることになる。
天武と高円寺は大丈夫だろうかと考えて、逆に三年生たちが心配になってしまったほどなので、多分大丈夫なんだろう。
奇妙な話だ、襲われた側ではなく襲った側を心配するだなんて。
「パイセン、一つ訊いて良いッスか?」
「なんだ?」
鬱蒼とした森を進んで港を目指していると、音もなく樹上を飛び移る鶚がこんな質問をしてきた。
「ホワイトルームって実際の所、何を目的にしてるんでやがりますか?」
樹上に視線を向けてみると、枝の上にいる迷彩柄の怪人はこちらを覗き込んでいるのがわかる。
「それは、お前の個人的な興味なのか?」
「それもあるッスね。けれど雇い主に報告する情報は多い方が良いので」
この場合の雇い主は天武ではなく、政府関係者のことを言っているんだろうな。
「実の所、オレもハッキリと把握はしていない。だから表面的なことばかりだ」
「つまりは、天才を教育で作るってことだけッスか」
「あぁ、それがただの建前でしかないことくらいはわかるが、最終的にどこを目指しているのかを断言することはできない」
そしてそれくらいのことは鶚もわかっているんだろう。
「まぁ、当たり障りのない表現をするのならば、優秀な人材を量産するメソッドを作り、増やして、次代の主導権を握るといった所だろうな」
実際に、あの男がそれを目指しているのかもわからない。ホワイトルーム等という政治家にとってはあってはならないアキレス腱をわざわざ作る辺り、もしかしたら場当たり的な対処で生まれた施設であることも否定はできない。
「つまりホワイトルームは学校ってことッスか?」
「……」
「あれ、なんかウチ、間違ったこと言いましたか?」
「いや、そうではないが……そうか、学校か」
優秀な人材を育てるという点で見れば、確かにそうなのかもしれない。やっていることは様々な困難を与えて成長させるこの学園と大差が無いからな。
規模や考えや方向性こそ違えど、最終的な終着点は同じだと考えれば、後は誰にとって利益となるのかという話になる。
ホワイトルーム生が将来政治や国政に深く関わるようになればあの男が得をする、そしてこの学園の卒業生がそうなるのならば、政府関係者が得をする。そう考えるとただの政権争いの下準備でしかないのかもしれない。ホワイトルーム生もこの学校の生徒も大差がないか……これまでには無かった考えだな。
「鶚、お前から見てホワイトルームはどう見える?」
「そんなこと言われても困るッス。ウチはよく知らないんで……ただまぁ、一夏ちゃんくらいが大量にいるんならそこまで大層な施設でもないと思いますよ。ミサイルでも打ち込めば全滅するでしょうから、それか毒でもばらまけば終わりッス」
ホワイトルーム生である天沢をボロボロにしていたので、鶚にとってはそこまで脅威に感じなかったということだろうか。
「優秀な人を作りたいって言われても、別にホワイトルームじゃなくてもポンポン生まれてるでやがりますよ。オリンピックに出れる人も、テストで100点取れる人も、世の中大勢いるじゃないッスか」
身も蓋も無い言い分だとオレは思った、しかし確かにその通りではある。別にホワイトルームでなくとも同じことができる人間は世の中には大勢いるだろう。人類は60億以上いて中には天武みたいなのもいる訳だからな。
「天才を作るのなら、やるべきなのは教育じゃなくて最強の遺伝子の掛け合わせッスよ。ウチらみたいにね」
「英雄の血を貰う、だったか?」
「そうッスよ、それを何世代を重ねるのが結局は一番。そもそも教育で才能を育てるなんて一つの要因に過ぎないッス。優秀な人間を育てたいなら場当たり的なことはせず、血と遺伝子の掛け合わせも何世代もやって研ぎ澄ました個体を生産して、そこに改造を施すのが一番でやがります。そいつに子供を大量に産ませれば最強の集団になるんですから」
お前たち忍者は競走馬のブリーダーか何かなのか? 言ってることはわからなくはないが、やってることは倫理を蹴り飛ばしたようなものだ。
いや、天武の知り合いの時点で常識など期待すべきではないか。いつまでもこんな話をしても意味はないので話題を逸らすとしよう。
「お前の雇い主はホワイトルームを調べて何をしようとしているんだ?」
「ウチはただ雇われてるだけなんで……でも、権力者の考えることなんて皆一緒なんじゃないッスか」
「そうかもしれないな」
オレの父親がそうであるように、その政敵だって同じことを考える。己にとっての利益は何かを。
将来的にあの場所がどうなり、どう扱われ、あの場にいる者たちがどこへ行くのかわからないが……少しでも幸福な未来であって欲しいと思うのは、オレも天武に毒されてきているからだろうか。
似合わないな、こんなことを思うのは……だが今は敵だ、そこを見誤らず行動するとしよう。
「お……誰か来たみたいなんで、ウチは黙ります」
港まで移動する道中で、誰かがこちらに近寄って来るのがわかった。タブレットを確認してみると、どうやら愛里が一人で行動しているらしい。他のメンバーはどうしたのだろうか?
「き、清隆く~ん」
ガサガサと草木を掻き分ける音も近づいて来て、それが目の前まで来た瞬間に、愛里が顔を出す。
無理をして枝葉を掻き分けて来たからなのかジャージはボロボロで、長く歩いたのか靴や足元はドロドロだ。まさに疲労困憊といった感じであり、ここまでの苦労と道中が想像できてしまう。
「や、やっと、やっと追いつけたッ……はぁ、はぁ」
「愛里、もしかしてオレを追いかけてたのか?」
「うん……でも、清隆くん、グルグル無人島を回ってて……でも、港に近寄って来てたから今しかないと思ったん、だよ」
それでそんなにボロボロな姿なのか、そもそも何故オレを追いかけていたのだろうか。
「よ、良かった……追いつけ――きゃッ!?」
草木が作る壁から体を引っこ抜いた瞬間に愛里の体は勢い余って倒れこんで来るので、その体を受け止める。
「あ、あの、ごごごごめんなさいッ」
「いや、気にするな、疲れが出たんだろう」
鶚、枝の上でニヤニヤするのは止めろ。見えているぞ。
「随分とボロボロだな。そうまでしてどうして追いかけて来たんだ?」
胸と腕の中に納まった愛里はその言葉にバッと顔を上げる。見つめ合う形になり、普段の愛里ならばすぐさま飛び退いて距離を取る筈なのだが、今日はそんなことにならずに大慌てしながらこう言ってくる。
「あ、あの、あのねッ、えっと、理事長先生と、学校の先生が……すっごく悪いことを考えてるのを聞いちゃったの!! もう、アレだよ、前に皆で観た映画の悪役みたいな感じなの!!」
「まずは落ち着くんだ。深呼吸して、冷静に説明して欲しい」
要領を得ない説明である。軽くパニックになっているようにも思えた。
腕の中で深呼吸を繰り返す愛里は、幾度か繰り返すと落ち着けたのか冷静になる。冷静になったことで今の体勢や状況を理解したのか、大慌てで距離を取るのだった。
「ごごごごめんなさいッ!?」
そしてまたパニックになってしまう……僅かに視線を上に向けてみると、枝の上で鶚がやはりニヤついているのが見えた。
「愛里、それで理事長がどうしたんだ? 何かを聞いたのか?」
「あ、あの、うん……えっと、理事長先生と、一年生の担任の先生が森で話してて、私、壊れた腕時計を交換しようと港に帰ってる途中に偶々聞いちゃって」
「そうか、どういった内容のものだったんだ?」
すると愛里の視線が右往左往する。こんな反応を見せるということは呑気な世間話では無かったんだろう。
それこそこうしてボロボロになりながら追いかけて来るくらいに、何かを伝えなければならないと思ったに違いない。
月城、少し迂闊すぎるんじゃないだろうか、一般生徒を巻き込むのは止めた方がいい。オレというよりは天武が激怒するぞ。
まぁ今の愛里に目立った外傷はないことから、一線を越えることは無かったようだが、もし引き際を誤っていれば天武が首を引き千切ることを決断する展開だってあった筈だ。
「清隆くんを、誘拐するって……話してたよ」
シュンっと、不安そうに視線を下げる愛里には恐怖の色も見て取れる。もしかしたら脅されたのかもしれないな。
「そうか……いつ、どこで、どうやってとかは話していたか?」
「最終日に、えっと、I2で……だったと思う。聞こえたのは、それだけだよ。後は、七号? よくわからないけど、そっちが本命とかなんとか」
月城はオレを排除するよりも天武の処理の方が優先順位が高いのか? これまでの月城の動きを見ても本気で俺を退学させるつもりがあるのか疑わしい部分はあったな。
変なちょっかいばかりかけてくる、そんな印象ではあったのでもしかしたらオレが退学しないシナリオのようなものでもあるのかと考えていたが、天武に関しては完全に計算と思惑の外ということだろうか。
ただ、月城が何をしようとも天武が倒れる未来が見えない。アイツを倒すのに必要なのは個人や集団の頑張りではなく軍事力の有無だ。
月城がどれほどの軍事力を動かせるのかはハッキリとしないが、まさかこの無人島に戦車を持ってこれる筈もないので、つまりは無意味な仮定である。
そしてもし戦車を堂々と引っ張って来れるような相手ならば、オレはとっくに退学しているだろう。
しかし月城は手の込んだ自殺でもしたいのだろうか? いや、よく考えてみればこれまでもそんな感じだったか……死ぬのならせめて一人で逝って欲しいんだが。
「わかった、教えてくれて感謝する。おかげで準備と覚悟を整えることができそうだ」
完全にその情報を前提にして行動することはできないが、一つの目安として準備を整えられる。来るとわかっているのと、不意打ちで来られるのはやはり異なるからな。
とりあえず天武と情報を共有して処理しておこう。ようやく本命の魚が釣れそうでオレとしても安心できるばかりだ。
だが池曰く釣りは根気、食いつこうとする魚影が見えても焦ってはいけない。もう少しだけ隙を晒しておこう。
「あ、あの、清隆くん……」
不安そうにこちらを見つめて来る愛里は、オレの袖口を掴んで僅かに引っ張って来る。
こんなに弱々しい姿を見るのは久しぶりかもしれないな。一年生の後半くらいから波瑠加やグループの影響もあってか垢ぬけて成長して来た印象であったが、今は入学したばかりの頃の愛里に近い。
それだけ不安だということだろう。誰かを拉致するだなんて話を聞かされればそうもなる。
「どうして、その……理事長先生は、そんなことをしようとするの?」
その質問に、オレは真っすぐと愛里を見つめてこう返す。
「いいか愛里、よく聞いてくれ、月城は――オレを誘拐しようとはしていない」
「ええぇえええ!?」
「いや、もしかしたらタダのドッキリかもしれない」
「ええぇぇええ!?」
「それかサプライズの相談だな。実はオレの誕生日が近いんだ」
「清隆くんの誕生日はもっと先だよね!?」
「それか、ホールインワンかもしれない」
「どういうこと!?」
ダメだな、流石にこれで騙される訳もないか。どうしたものだろうか。
「心配だよ、あんな怖い人たちに……よくわからないまま襲われるだなんて」
こちらの袖口を掴む指先に力がこもっている。
変に誤魔化しても意味がないか、しかし巻き込む訳にもいかないので上手く伝えられない。
「愛里、とりあえず港に進もう。オレもそのつもりだったからな」
「あ、うん……」
港がある方角に歩き出すのだが、指先で摘ままれた袖口はそのままだ。振りほどくこともできなかったので放置するしかない。
「……」
「……」
そして暫く無言のまま森の中を歩く、だがチラチラと視線は感じているので、やはり気になっているのだろう。
「心配させてしまったな」
「……うん」
「だが、深刻に考える必要はない。色々と気になることはあるだろうが、きっと上手くいくだろうからな」
「どう、してかな?」
「オレは一人じゃないからだ。仲間も友人もいる……そうだな、愛里は天武に勝てると思うか?」
「て、天武くんに? それは、絶対に無理だと思うけど」
「オレもそう思う……まぁ、なんだ、だから安心してくれ。何が起こったとしても、一人で挑むことはないからな」
「それは、違うかな」
天武がいるからという説得力で何とか納得させようと思ったのだが、愛里は意外にも強く否定してきた。
「天武くんが百人いても、私は清隆くんが心配だよ」
「どうしてだ?」
アイツが百人とか、これから世界でも征服するのかという感じなのだが。
すると愛里は黙ってしまった。何かを言おうかと迷い、しかし口には出せず、何度も言葉と呼吸を詰まらせながらも……やはり摘まんだ袖口は離さない。
力がこもった指先は揺れ動いていて、愛里の中にある不安や迷いを表しているかのようにも思えた。
それでも迷いを打ち消すかのように袖口は引っ張られることになる。
「清隆くんが……好きだから」
まぁオレは天武ほど鈍感ではないので、愛里から特殊な感情を向けられていることは知っていた。うぬぼれなのかもしれないが、きっと間違いではないのだろう。
「だから、不安だよ……嘘でも冗談でも、天武くんがいるって言われても、心配になっちゃうな」
以前の、それこそ入学したばかりに愛里ならば自分の中にある感情を言葉にして伝えることはしなかっただろう。いや、できなかったと言うべきか。
だが、去年一年の経験が何かを変えたのかもしれない。それはグループの皆もそうだが、やはり天武の影響が大きいのだろうか。
勉強や運動にも前向きになり、うつむきがちだった視線も前に向けられた姿は、大きな成長を感じられるものであった。
親しくしている波瑠加やグループの皆の影響もあるんだろうが、やはり天武の存在が大きいのだろうか。
「そうか……いや、そうだな、心配するのが当然か」
「う、うん」
ただ恥ずかしがって照れないという訳ではない。今も自分の発言を振り返って挙動不審な感じになっていた。
「あ、あの……その」
顔を真っ赤にして俯いている姿は入学したばかりの頃の愛里を思い出して少し懐かしい気持ちになる。ここ最近はあまり見ることもなかった姿でもある。
「愛里、ありがとう。好意を向けられるのは素直に嬉しい」
「そ、それは……つまり、えっと、あわわ」
「だが、すまない。好意に応えることは難しい」
「……ぁ」
こちらを見上げる瞳が動揺しているのがわかる。
「そう、だよね……私じゃあ、清隆くんと釣り合わないよね」
「いや、そうじゃない。言っただろう、好意は嬉しいと……ただ、なんだ、色々と片付けなければならない問題が多いんだ」
ホワイトルーム関連であったり月城であったりあの男のことであったりと、本当に色々と立て込んでいる。恋愛と言う関係や経験を積んでおきたいという考えもあるのだが、もし狙われたらと考えると現実的ではないからな。
仮にもしそういった相手を見つけるのだとしても、肩の荷が下りた時なのかもしれない。
「迷惑じゃ、なかったのかな?」
「そんなことはない、嬉しいとさえ思った」
すると愛里はそれは盛大な溜息を吐いてその場に崩れ落ちるのだった。
尻餅をついた状態でヘナヘナと萎んでいく雰囲気さえある。安心半分、不安半分と言った所だろうか。
「愛里は悪くない。全てオレの事情によるものだ。だから今は気持ちに応えることはできそうにない」
とりあえず天武と一緒に何もかもを粉砕して身軽になってから考えるべきことなんだろう。少なくともアイツの協力が得られるのならば現実的な選択肢としてそれがあり得るからな。
「もし愛里さえ良ければだが、いつか何もかもが片付いた時に、今と同じ気持ちを持っていたら、その時はまた向き合わせて欲しい……恋愛と言う感情はまだまだ理解が浅いが、知りたいとは思っているからな。天武が言うには、一人前の人間になるのには必要なことだそうだ」
都合が良い発言だろうか? だが現状ではそうとしか言えない。
天武曰く、素直であれとのことらしいからな。アイツは何だかんだで正しいことしか言わないので間違いではないんだろう。
「わ、私はまだ……清隆くんを好きでいて良いのかな?」
「どうだろうな、そんな時が来たとしても愛想をつかしているかもしれないぞ」
「そんなことはないよッ」
「そうなのか? 愛里はよく告白されているようだし、良い相手が現れるかもしれないじゃないか。波瑠加から聞いたがこの前も上級生に誘われたとな」
寧ろもっとまともな相手を探した方がずっとマシだと思うのだが、そういう話ではないんだろうな。
「こ、断ったよ、それは……だって、いつも清隆くんを見てたから」
自分の発言に頬を赤くして俯く。そのまま黙ってしまったので、このままではいつまでも港に戻れないと判断してオレは尻餅をつく愛里に手を差し伸べた。
「港に戻ろう。おそらく波瑠加たちは心配しているだろうからな」
「あ……うん」
引っ張り上げて再び立ち上がらせると、二人並んで歩き出すことになる。
そして暫く無言の時間が流れるのだが、愛里はオレの袖口をまた指先で摘まんだ。
「いつかまた、告白しても良いかな?」
「言っただろ、素直に嬉しいと」
「うん……その時は、もっと成長した私を見せるからね」
そして開き直ったかのように微笑んで見せた。
そうか、そうだな、入学したばかりの頃の愛里はもういないということか。たった一年と少しだが、成長するには十分な時間だったということなんだろう。
クラスメイトの成長を面白いと感じて、楽しく思えるのは、もしかしたら天武の影響なのかもしれないな。
色々とアレ過ぎて何もかもを破綻させる友人の姿を思い出して、アイツのいない学校生活を思い浮かべるのだが上手くはいかなかった。
ただ一つだけわかることは、きっと今とは大きく異なる何かがあったということだけだ。
きっとそれは、感謝すべきことなんだろう。オレはそんなことを思うのだった。
なんであれだ、一先ずオレがやるべきことは月城の排除なんだろう。最終日に来るかもしれないとわかっているのならば、準備と覚悟を整えておくべきだ。
だがあれだな、月城は未だに天武を敵に回す気があったのか……手の込んだ自殺になりそうだが、ちゃんと考えて行動しているんだろうか。
敵ながら不安になるほどである。天武を倒すには個人ではなく軍事力が必要となるのだが、しっかりと準備を整えた上で挑めているのか心配だ。
敵に心配されるとは、いよいよ末期である。オレは海に沈む月城を幻視するのだった。
しかししつこい奴らだ、今更オレがホワイトルームに戻った所でなんの意義も見いだせない筈だ。何を隠そうオレ自身がそう思っている。あそこで学ぶことはもう何もないと。
ホワイトルーム最高傑作綾小路清隆は、もうとっくに否定されているのだから。