ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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南雲「お、八神とは仲良くできそうだな」


無人島では背中を晒してはいけない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八神視点

 

 

 

 

 一年生は混乱の極みにあった。タブレット端末の消失という交渉材料消滅と一緒に二年生の思惑が明るみになったからだ。

 

 ここで徹底的な上下関係を押し付けて心を挫く、余計なちょっかいをかけないように徹底的に叩き潰してゴマすりだけをさせる関係に落とし込む……つまりは痛みによる恐怖を与えようという訳だ。

 

「龍園先輩との交渉は僕が引き受けます!! 皆さん今すぐ船まで帰ってリタイアをしてください!!」

 

「ま、任せたぞ八神、上手いこと交渉してくれ」

 

 逃げる言い訳を用意してやればすぐさま一年生たちはキャンプ地から逃げ出すことになる。根性もなければ勇気もなく、ただ本当に流されるだけの者が多い印象だ。

 

 当然と言えば当然か、軍隊でも警察でもないんだ、寧ろ高校生らしいと言えるのかもしれない。

 

 まぁアイツらのことはどうでも良い、僕がやらないといけないのは交渉だ。僕のおかげで助かったと一年生に思わせるのが今後の統治で大きな意味を持つ。それだけの話でもあった。

 

 蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う一年生を見送ってから、僕は僕のやるべきことと向き合う。

 

 或いは二年生との顔繋ぎもそうだろうか、侮れない奴だと思わせれば牽制にもなるし箔にもなる。僕にとってのこの試験での報酬は支配を一歩進めることにある。

 

 まずは交渉だ。最後のサーチを行った時の二年生の位置情報を思い浮かべてそれを頼りに動くしかない。

 

 龍園翔、およそ利口な人間とは言えないが、底辺を舐めるような馬鹿ではないと判断する。少なくともただ暴れることしか能の無い輩ならとっくに排除されている筈だろう。

 

 すぐさま動きだす。キャンプとなっている場所は小高い丘になっている為に緩やかな斜面を下りることになるのだけど、見下ろしてみると僅かな木々の隙間からよく目立つ青色のジャージが確認できる。

 

 かなり距離を詰められているな、もうかなりの数の一年生が襲撃されたのかもしれない。

 

 緩やかな斜面の向こう、木々の隙間から大柄でサングラスをかけた生徒、山田アルベルトの姿が見える。その隣には目的の人物である龍園の姿も確認できた。

 

 彼らの足元には一年生が転がっている。綾小路清隆を襲撃するメンバーの一人であったがリンチされて倒れているようだ。拙いな、一年生全体に二年生と戦うべきじゃないという価値観が広まれば今後が面倒になる。

 

「早めに話を付けないといけないな」

 

 こんな所で苦戦している場合でもないし、綾小路清隆以外の相手に手を煩わしている場合でもない。僕の証明はまだ始まってもいないのだから。

 

 だが同時に昂ってもいた。興奮していると言っても良いのかもしれない。まるで見えない盤上で駒を動かしているかのような気分だ。あの人に挑むという事実に心臓が跳ねる。

 

 楽しい、嬉しい――そして、怖い。

 

 いや、それは考えちゃダメだな、負けを認めるようなものだ。

 

 斜面の下からこちらを見上げる龍園と視線が結び合う。こちらを警戒しているようにも、侮っているようにも見える。

 

 悪いがお前は前座だよ龍園、僕の実力を証明して綾小路清隆に挑む資格があるのだと証明する為の踏み台でしかないんだ。

 

「せいぜい必死に足掻いて見せろよ。悪いがお前程度に苦戦する理由もないんだ」

 

 

 

 そして跳ねの良い踏み台になってくれ。それがお前の役目な――――。

 

 

 

 次の瞬間、天地がひっくり返る。

 

 痛みと、衝撃と、グルグル回る視界が今どんな状況にあるのか教えてくれる。僕は斜面を転がり落ちているということを。

 

 背中に強い衝撃を感じ取った瞬間に、僕の体は投げ出されてそのまま転がり落ちてしまったのだ。

 

 どういうことだ? 何も気配は感じなかったぞ!? 一年生は全員撤退した筈だ。あのキャンプ地には僕しかいなかったのに。

 

 何とか受け身をとって勢いを抑えないと――そんな思考よりも早くホワイトルームで散々鍛えた体は対処に動いていた。

 

 斜面に接する瞬間に痛痒を少しでも減らすように受け身を取る。ただし既に勢いが付いてしまった落下を止めることは叶わず。完璧ではなく最善を目指すことしかできない。

 

 この場合の最善とは、可能な限り負傷を減らすということだ。華麗に着地など不可能なのでそれが限界でもある。

 

 一体誰が僕を蹴り飛ばしたんだ、タブレット端末が盗まれたこともそうだが、どうやら一年生の中には裏切り者がいるらしい。

 

 誰だ? あのキャンプ地にいた一年生の中なのは間違いない。だがそれらしい振る舞いをしている者はいなかった。

 

 或いは椿さんだろうか? 彼女は僕に疑念を抱いていた。このまま勢力を拡大させることを嫌った?

 

 色々な思考が脳裏に生まれては消えて行くのだが、それらを中断させたのは斜面を転がり落ちて地面に着地した瞬間である。

 

 いや、着地とはお世辞にも表現できないか、これは完全な落下であり衝突だ。

 

「グッ……ガハッ」

 

 そこが斜面の下にある地面だと理解した瞬間に感じ取ったのは、内臓が掻き混ぜられたかのような不快感と競りあがって来る吐き気だ。そのすぐ後に鈍痛が全身に広がっていくのがわかる。

 

 意識はある。それは幸いだと同時に得られた最高の結果でもある。突き落とされて全身ボロボロになって気絶する可能性が高かっただけに、最小の被害と言えるのかもしれない。

 

 たとえ足の骨が折れていると確信できるだけの状況であったとしても、気絶はしていなかった。交渉に挑めるのはせめてもの救いだな。

 

「おいおいなんだ、斬新な土下座のやり方だな。転げ落ちて来るとはなかなか笑えるぜ」

 

 体の負傷を確認している僕の頭上から龍園が声をかけてくる。どうやら斜面を転げ落ちて行った先は彼らの近くであったらしい。

 

「確かテメエは八神だな。丁度いい、処理したかった一人だ」

 

「う、ぁ……ま、待ってください、ごほッ……僕は話し合いに来たんです」

 

 足は折れている、多分肋骨も、体中に広がる鈍痛は長引いている。

 

 こうなってしまった以上は仕方がない、この姿を最大限利用して同情を誘おう。

 

「あん? 何言ってやがる? テメエらが徒党を組んでこっちの学年に襲撃かけたネタは上がってんだよ、証拠だって揃ってる。笑わせんじゃねえよ」

 

 そんなことを言いながら龍園は容赦なく僕の後頭部を勢いよく踏みつけて来るのだった。

 

 容赦がないことだ、こっちは怪我人だというのに。人の心が無いのかコイツは。

 

「ぼ、僕たちは、もうリタイアします……そちらに襲撃することも、順位を脅かすこともしません」

 

「で、それをどう証明するってんだ? ダラダラ逃げ回ることもできるよなぁ。確実な証明をしたいならタブレット端末を出せ、サーチ機能の空打ちはこっちでやるからよ」

 

 あぁクソ、無いんだよ盗まれたから。

 

「い、今はありませんッ……ですが、リタイアするのは本当です。僕もこの怪我ですから続行もできません。三位から確実に転落します。他の一年生たちも上級生に恐怖していますから同様です……だから、もうこれ以上は止めましょう」

 

 返答代わりにまた後頭部に踵が落とされてしまう……お前、いい加減にしろよ?

 

「恐怖だと? そいつはこっちのセリフだろうが。お前らが徒党を組んで襲撃してきたから仕方なく抵抗してるだけだぜ。今も怖くて怖くてつい蹴り飛ばしちまったよ」

 

 いけしゃあしゃあとよくもそんなことが言えたものだ。

 

 だが、拙いな、やはり二年生ははこっちを徹底的に追い込むつもりだ。交渉してリタイアさせるよりも物理的に痛みを与えて恐怖を植え付けることを望んでいることがわかる。

 

 一年生全体に、二年生と戦うことを止めようという価値観が広がるのはこちらとしても動き辛くなる。今後綾小路清隆と戦う上でそれは最悪の状況とさえ言えるだろう。

 

 何とかして軌道修正しないと、そう考えた瞬間に龍園はまたもやこちらを蹴り飛ばしてくる。

 

「うぐッ」

 

「いいかよく聞け一年、上下関係って奴は大切だ。二度と舐めた真似をできねえように躾けてやるから覚悟しろ。まさか殴り返されねえと思ってた訳でもねえだろうしな」

 

 そもそも襲撃を計画したのは僕じゃない、ただ都合が良かったから乗っかっただけだ。

 

 だがそんな説明をしてもこの男は聞かないのだろう。そもそも求めているのは謝罪でもなければ追い落としでもない、一年生全体に対する牽制を目的としている相手だ。

 

 順位を落とすのは、言ってしまえばその過程で発生するものでしかない、だとするとやはり交渉は難しいか。

 

 せめてタブレット端末を交渉材料にできれば、押し留める理由の一つくらいにはできたというのに。

 

「だがどうしてもって言うのなら考えてやらなくもねぇ、テメエらの襲撃の落とし前として賠償を支払うって約束するのならな」

 

「僕の一存では、難しいです」

 

「なら寝てろ」

 

 そして龍園は僕の顔面を蹴り飛ばして来るのだった。顎先に当たったそれは意識を飛ばすには十分なものであり、僕はその場で気絶することになるのだった。

 

 まだ、戦ってもいないのに……その価値すらないと言うのか。

 

 許さないぞ綾小路清隆、お前が全ての元凶だな。

 

 憎き相手の顔を思い浮かべながら意識を失うことになる。次に目覚めたのは僕と同じようにボロボロの姿になった南雲先輩と桐山先輩が同じように並べられた船の医務室であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇都宮視点

 

 

 

 

 

 一年生の襲撃は失敗に終わった。宝泉が撃退されただけでなく、ほぼ無傷の二年生が勢いそのままにこちらに報復を行ったからだ。

 

 結束力も、意思も、そして覚悟も足りていない集団と、ハッキリとした指揮系統の下で計算された暴力を振るう集団、どちらが勝つのかは考えるまでもない。

 

 蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う一年をそれぞれ囲んで叩くだけの作業だ、もう戦いですらなかった。

 

 或いはあの場で強いリーダーシップを取れていればと思わなくはないが、その為の実績を持つのは生徒会の八神くらいだ。そしてその八神が交渉役を受け持った以上は俺たちにできることは何もない。

 

「八神は上手く落としどころを見つけられると思うか?」

 

「無理」

 

 隣を走る椿がハッキリと断言した。

 

「二年生はこう言いたいの、逆らわずゴマをすれって。その為の報復で、その為の攻撃、謝罪は求めてないのかもね……襲撃を上手く利用されちゃったかな。まさか宝泉くんがここまであっさりやられるとはね」

 

 そこに関しては俺も驚いている。色々と粗暴で落ち着きのない男であったが、その腕っぷしだけは疑いようがなかった。

 

 結局、個人の腕力などは組織力の前には無意味ということか、情けない話ではあるがこちらに龍園のようにクラス全体を暴力方面に動かせるだけの団結力があれば話は違ったのだろうが、宝泉が潰された時点で一年生全体に恐怖が走ってしまった。

 

「宝泉くんは私との話をタブレットを録画モードにして記録していた筈、それも二年生に渡ったって考えるべき……本当に、やることなすこと裏目に出てる。やんなっちゃうな」

 

 珍しく椿が大きな溜息を吐いている。流石に堪えているようだ。

 

「椿、俺たちはこれからどうするべきだ?」

 

「一人でも多く船まで逃がすっていうのが目標だよ。怪我人が出れば出るほど一年生の間には二年生と戦うべきじゃないっていう価値観が広まることになる、それだけは避けたいけど……」

 

 今後も今回のように全学年で行われる試験があると考えれば、確かにその価値観は致命傷になるだろうな。それこそ戦う前から勝負が決まることになる。

 

 そして、だからこそ二年生は徹底的な報復に動いている。この場の勝利もそうだが、これから先の試験でも有利に動けるようにと。

 

 二年生と戦うべきではない、その価値観はつまり毒であり呪いだ。これが広まればそのまま一年生は事実上の支配下に置かれると言っても過言ではない。

 

 三年生を壊滅させた辺り、どうやら二年生は全学年で最も厄介で巨大な力を持っているということだろうな。

 

「交渉はできないか」

 

「タブレット端末を渡せば報復を止めさせる大義名分くらいにはなったかも、どれくらいの効果があるかはわからないけど」

 

「そもそも何で無くなったんだ?」

 

「八神くんの話を聞いてる間に誰かが盗んだんだろうね」

 

「あの場にいた一年生の誰かが……裏切り者がいるってことか」

 

「かもね、そこまで怪しい動きは誰もしてなかったと思うけど」

 

 俺も同感だ、八神に注目していたとは言え、誰かがタブレットに近づけばわかりそうなものだが。

 

 いや、今考えるべきはそこじゃないか。

 

「宇都宮くん、悪いんだけど一年生の保護をお願いできないかな」

 

「二年生を足止めしろってことか」

 

「うん、ここまでグダグダになった以上はね、せめてそれくらいはしないとさ」

 

 椿はそこで止まるように指示を出す。

 

「八神くんの交渉が失敗に終わったっていう前提で話を進めるけど、二年生たちは一年生を普通にリタイアさせるつもりはない。恐怖心を植え付けるようなリタイアを望んでる。だから少しでも多くの生徒を無傷で船まで戻らせる必要がある、なら」

 

「殿が必要だろうな」

 

「まるで戦国時代の合戦だね」

 

「わかりやすくて良い」

 

「どこがさ……まぁ宇都宮くんはここで待機しておいて、多分だけど逃げて来る一年生はここを通るだろうからさ」

 

 今、俺たちがいるのはD7エリア、港にもある程度近く、しかしまだ走らなければならない絶妙な距離だ。

 

「理由は?」

 

「道ができたから。ほら、見てよ」

 

 椿は指示したのは何度も踏み鳴らされた獣道のような通路であった。生徒が幾度も往復したことで出来上がった足跡や踏み鳴らされた草木などが作り出す道である。

 

「試験も後半になってこの無人島には最初はなかった道が色々できてる。皆無意識の内にこういった道を使ってるんだよ」

 

 そしてその道は真っすぐと港まで続いていた。逆に言えば枝分かれしながらも無人島の奥深くまである程度は続いているのだろう。

 

 なるほど、逃げて来る一年生も、追ってくる二年生も、無意識の内にこの道を使っているということか。だとすると椿が示したこの場所はその道の合流地点とも言えるのかもしれない。

 

 ここで待機していれば、自然とぶつかり合うことになる訳か。

 

「できるだけ時間を稼いで欲しい、まぁこんなこと言うのはアレだけど、無茶はして欲しくはないんだけどさ……いや、ミスした私が言っても意味ないか」

 

「あまり気にするな、お前の方針に乗ったのは俺も同じだ、そして他の一年もな」

 

 唯一の誤算だったのは宝泉が瞬殺されたことだ。相手に勢いを与えてしまったな。

 

「俺はここで殿を務める。椿はどうする?」

 

「他の生徒の誘導かな」

 

「意外だな、もう少し冷めた奴だと思っていたが」

 

「うん、自分でも驚いてる……まぁ、偶にはね」

 

 そんなことを話していると、一年生連合共有の無線通話を受けて慌てて逃げてきた一年生の一部がこちらに走って来る。

 

「宇都宮!! ヤバいぞ!!」

 

 そしてその一年たちの背後には追いかけ回してくる二年生の姿がある。大義名分があるとはいえやりたい放題やってるようだな。

 

「椿、行け、ここは俺が引き受ける」

 

「気を付けなよ」

 

 あの二年生、なんて名前だったか……確か石崎だったか? 手下もいるようだ。

 

 逃げてきた一年生の一団が俺の横を通り過ぎて港まで走っていく、それを確認すると真っすぐと迫る二年生を見据えた。

 

「どけよ」

 

「断る」

 

 二年生の目的は一年生を完全に潰して上下関係を植え付けることだ。戦うべきじゃないという考えや価値観が広がるのは阻止しておきたい。この学校でそんな認識が学年全体に広がればただ搾取されるだけの集団になりかねないからな。

 

 せめて、侮れない奴もいると思わさなければならないだろう。

 

 石崎を筆頭とした二年生と向かい合い睨み合う、三人程度なら初手を間違えなければ対処はできる。

 

 まずはリーダー格の石崎を潰して勢いを掴む。固めた拳で顎先を殴りつけるイメージを作りながら前のめりになっていく。

 

「あぁ、いや、お前って宇都宮か? なら丁度良かったぜ、三位のグループにいる奴だよな。潰せって言われてるんだよ」

 

「やれるものならやってみろ」

 

「ハッ、逃げ回るだけの根性無しどもとは少し違うようだな」

 

 あまり細かく考えるタイプには見えなかったが、石崎はこっちも注意深く観察するだけで殴り掛かってはこない。それどころかこちらとの距離感を常に意識しているようにも見えた。

 

 意外にも冷静なタイプなのか? それとも何か作戦があるということだろうか。

 

 あちらと同じようにこちらも様子や動きを観察していると、また一年生の集団が逃れて来るのがわかった。恐れるように石崎たちを見ているが、視線で先に行くように促すと走り去っていく。

 

 そんな一年生たちを、石崎たちは特に気にした様子もなく見逃した。俺だけに集中してくれるのはありがたいが、動きが読みにくいな。

 

 もっと単純でわかりやすい男かと予想していただけに、冷静な対応は面倒でもある。

 

 だが時間稼ぎと言う点でみればこれはこれでありがたい。少なくとも目的は達成できている。

 

「石崎、何をじっとしてやがる」

 

「いえ、思ってたよりも手強そうだったんで、龍園さんたちを待ってたんですよ」

 

 あぁなるほど、石崎が待っていたのは援軍か、無人島の奥側から姿を現したのは悪名高い龍園とその手下たちだ。既に幾人かの一年生を襲撃したのかどこか満足そうにしていた。

 

 一人二人増えた所で問題はないと言いたいが、あの一際大きな体躯を持った相手が面倒だな。確か山田アルベルトだったか。

 

 宝泉と戦った筈だがほぼ無傷な辺り、そもそも個人の喧嘩など最初からするつもりはないのだろう。思っていたよりも石崎は冷静だ。

 

 下手な意地やプライドを優先するのではなく確実に勝てる戦いをすればいい、そう割り切って動ける相手は厄介でしかない。これはスポーツではなく抗争、そこを一年生たちは勘違いしていたのならこの結果も当然か。

 

「クク、なんだやる気か?」

 

「黙って引き下がれるほど弱くはないつもりだ」

 

「どいつもこいつも、自分は誰にも負けないと勘違いしてやがるな。さっさと消してやるか……やるぞお前ら」

 

 黙ってやられる訳にはいかない。せめて侮れない相手が一年にもいると実感させる必要がある。そうしなければもう今後の試験で一年生に勝ち目がなくなってしまう。

 

 柄ではないかもしれないが、面子は大事だ。

 

 

 

 

 その日、一年生の大半がリタイアすることになる。半分は船に戻り、もう半分は強制的なリタイアという形で。

 

 三年生も一年生もほぼリタイアするという異常事態だった。

 

 無人島には、ほぼ二年生だけが残ることになる。

 

 

 

 

 




課題を担当している教師「なんか生徒たちが課題に参加しなくなった、何で?」
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