月城さんと司馬先生、そしてこの二人が用意した八号と二十号、ついでに銃や刃物で武装した集団約50人を制圧したので、まず捕虜を砂浜へと一人一人並べることになった。
放置していた武装集団もそれぞれ丁寧に制圧して動きを封じて、彼らが持っていた銃と刃物も誰かに拾われたり見つけられたりしても困るのでしっかりと回収する。
五十人以上の人相の悪い集団が浜辺に並べられる光景はなんとも物騒なものである、動けないようにある程度は九号が痛めつけて立ち上がることもできない状態なのだから苦笑いすらも浮かばない。
手足を折られた集団が集団検死であるかのように丁寧に並んでいるのである。笑い話にもならないし何だったら不気味な光景ですらあった。
「はい、チーズ」
九号は船から持ってきたであろう自分のスマホでそんな彼らを撮影している。どうやら雇い主へ報告する材料の一つとしているようである。
月城さんは自分が用意した戦力の全てが手足を折られて並べられている光景を何とも言えない顔で眺めている。それを撮影している九号もだ。
まぁこの人に関しては他人を心配している場合ではない。だってロープでグルグル巻きにされて逆さ吊りの状態なのだから。
「ご主人、撮影は終わりましたッス」
「お疲れさま」
「決定的なやらかしの証拠なので後はどうとでも料理できるでやがります。他にも政府の学校で色々と雑な介入もしてましたんで、証拠はある程度は用意できました」
試験だったり人事だったりとかなり介入してただろうからね、しかも何の大義も無ければ意味もない行動ばかりである。正直雑すぎてもう少し慎重に動くべきだと思うくらいには月城さんのやらかしは多い。
アキレス腱やツッコミ所を作らない、それが権力者が長生きする秘訣だというのに、幾ら何でも迂闊な行動が多すぎるだろう。
この武装勢力に関してもしっかりと撮影されているし、月城さんはもしかしたら「そんな男は最初からいなかった」という感じになるのかもしれない。
冥福を祈るばかりである、ただ九号的にはまだ月城さんと話しておくことがあるらしい。
彼女はロープでグルグル巻きにされて逆さ吊りとなっている月城さんに近づいていく。
「ホワイトルームってどこにあるんでやがりますか?」
「ぐふッ!?」
そして逆さ吊りとなっている月城さんを容赦なく蹴り飛ばした。この人は今、鹵獲した中型ボートに設置されていた漁の網引き用のクレーンにぶら下げられている状態である。
しかもロープでグルグル巻きにされているので、なんだか蓑虫みたいな愛嬌があった……まぁ、逆さ吊りの状態なので欠片も笑えないんだけど。
そんな月城さんに九号は容赦なく暴行を加えて行くのだからドン引きである。清隆も凄く引いた顔をしていた。
「構成員の名前とスポンサーの名前も全部吐くッス」
また九号は月城さんの顔面をぶん殴る。殺さないように加減をしているようだけど大きく揺れ動いているのでそれなりに勢いがありそうだ。
しかしあれだな、逆さ吊りにして暴行を加えるとか、まるでマフィアの制裁みたいである。まぁ忍者なんてそんなものなんだろう。
一応、九号にとっては必要なことなので止めることもできない。せめて早めに吐いて解放されることを祈るしかない。
「滅茶苦茶やるな、鶚は」
「仕事だからね、あまり責めないであげて欲しい」
「別に止めたい訳じゃない、見ていると気分が良くなってくるから続けて欲しいくらいだ」
どうしよう、あの清隆がかつてないくらいに上機嫌だ。つまみと酒瓶片手に野球でも眺めているかのようである。普段は無表情なのに今の月城さんの様子を見る瞳はそれはもう楽しそうだ。
月城さん、どうやら貴方はかなり恨まれているようですよ。
ただ正当な怒りでもあるんだよな。流石にやらかし過ぎた結果なんだろう。自業自得である。
しかし逆さ吊りで尋問されている姿は俺としては同情を誘う。捕虜の扱いは国際法で決められているので暴行は推奨されない。
ただ九号にも仕事がある、鶚衆を敵に回してまで月城さんを庇う理由もないのもまた本音であった。
「しかしようやく一息つけられるな」
「忙しい二週間だったからね」
流石に清隆も疲れがあるのか、砂浜に腰を下ろしてゆったりとしながら九号の尋問を眺めている。
「今後、月城はどうなると思う?」
「どうだろう、九号の報告次第だろうけど……学校にはいられないんじゃないかな」
「流石にやりたい放題やったツケがあるから、そうもなるか」
自業自得としか言いようがない。それでも勝てていればまだ言い訳が出来たのかもしれないけど、負けた上に逆さ吊りである。最早哀れと思うしかない。
暫く清隆と並んで月城さんの尋問を眺めていたのだが、九号が不満そうにこっちに帰って来たことで話が動くことになる。
「あの人、ただの雇われなのでそこまで詳しい情報を知らないよ~です。ざっくりとした情報しか持ってませんでした」
「そうか」
「それでもまぁ報告としては十分なんッスけどね」
隠し切れない失態の数々だけでも九号の雇い主的には問題ないということだろうか、欲しいのは弱点とツッコミ所なのでホワイトルーム関連はそこまで重要ではないらしい。
首に縄をかける決定的な証拠はもう揃っているので、不要と言ってしまえばそれまでか。
九号と入れ替わるように今度は清隆が接岸された中型ボートまで歩いていった。そして船に乗り込むと漁の網引きで使うクレーンを操作し始めた。
「月城、幾つか質問がある」
「……何でしょうか?」
クレーンを動かすと、当然ながらそこに括りつけられて逆さ吊りとなっている月城さんも動くことになる。こうやってみると本当にマフィアの制裁のように見えた。
月城さんも諦めているのか特に抵抗がない、さっさと終わらせてくれとでも言いたそうな顔をしているな。
「まず、お前は本当に俺を退学させるつもりがあったのか? 色々とやらかしてはいたが、どちらかと言えば天武がいることの方が邪魔だと感じているようにも見えた」
「否定はしませんよ、私が敗れるシナリオという物もありましたので」
「最初から退学させるつもりは無かったということか」
「正確な表現ではありませんね、あくまでシナリオの一つ。そうなればそうなったで何も問題はありません。まぁ尤も、私はどちらかと言えば政敵の情報を得る方に力を注いでいましたが」
「だとしたら間抜けだな、弱点を探そうとして自分の弱点を晒しているんだから」
清隆の皮肉にも切れ味がある。やはり彼は月城さんのことが嫌いなのだろうか。
「学校に忍び込ませたホワイトルーム生は何人いる? 天沢だけか?」
「天沢さんは確かリタイアしていましたね、既に処理済みですか?」
すると清隆は突然にクレーンを操作してその先端で逆さ吊りにされていた月城さんを容赦なく海に沈めるのだった……えぇっと、何をやってるのかな?
そのまま暫く海に沈めたままで放置すると、またクレーンを操作して月城さんを引き上げる。
「うッ、がふ、ごほごほッ」
「質問に質問で返すな、訊いているのはこちらだ。淡々と答えろ」
「ッ……天沢さんと、八神くんですよ」
「他には?」
「……」
「七瀬に関してはどうだ、アイツの主張は真実なのか? 松尾の息子の敵討ちがどうのこうのと言っていたが、それが真実である証拠はどこにもない……オレの近くに置く為のシナリオとも考えられる」
「どう、でしょうね……私も、全てを知っている訳ではないのですよ。所詮は雇われの処理係、いざという時に切り捨てられるように重要な情報は基本的には伏せられています」
「つまり、何も知らないと?」
クレーンが操作されて僅かに月城さんの位置が下がる。頭頂部が海に接するくらいの位置であった。
「慎重に言葉を選べ、勢い余って海に沈んでしまうかもしれないからな」
「本当ですよ。私は全てを知って把握している訳ではありません。言ってしまえばただ流れてきた情報や指令や駒を右に流すだけの存在、そして私と同じ立場の者は幾人もいる」
嘘を言っているようには見えない、けれどお気に召さなかったのか清隆はクレーンを操作して月城さんを海に沈めるのだった。
そこから十秒ほどして月城さんは引き上げられる……ここまでくると可哀想になってきたな。
「私が……はぁ、はぁ、知っているのは、ホワイトルーム生は天沢さんと八神くん、そして七瀬さんは駒の一つという程度のこと……或いは、私とは別のルートで貴方のお父上の息がかかった存在が学校に入って来ていることも考えられますが、そこまでは把握していません」
「そうか……まぁ、その発言が真実かどうか判断はできないので、何を言った所で意味はない。仮に尋問して情報を得ても一人だけでなくもっと大勢を拷問して吐かせる必要がある、これ以上は無意味か」
尋問で情報を得るにしても複数の角度から入手する必要がるという点は同意できる。月城さん以外にも何人か捕まえてそれぞれ尋問して、情報の精度を上げていって初めて意味を持つ。
言ってしまえば、たった一人を拷問して得られる情報なんて、なんの信用もないのだから。
「……一人だけ尋問して得た情報を信用しないという考えがあるのならば、どうして私はこうして逆さ吊りにされているのでしょうか?」
そんな月城さんの尤もな発言に、クレーンの操作レバーに手をかける清隆は、眉を顰めて当然とばかりにこう言った。
「報復に決まってるだろ……それとも、殴り返されないと本気で思っていたのか」
「……」
「試験に介入したり、面倒な懸賞金をかけたりと色々やってくれたようだな……それに、愛里を巻き込みかけた。もう一度訊くぞ、本当に殴り返されないと思っていたのか?」
そんなことを言いながら清隆はまた月城さんを海に沈めてしまった。彼にしては珍しく強い怒りを感じているらしい。割と正当な怒りでもあるので止め辛いんだよね。
だが殺すまではいかないだろう。いい塩梅でまた月城さんは引き上げられた。
それにそろそろ報復の時間も終わりそうだ。一応、清隆は保険の保険として真嶋先生と茶柱先生にも情報を渡していたそうなので、大人組の二人がこの浜辺にやって来るのが確認できたからだ。
この砂浜に近づいてくるのは月城さんたちが使っていた中型ボートと同型の物である。それが接岸すると船内から真嶋先生と茶柱先生が姿を現した。
「笹凪……これはどういう状況だ?」
「えっと、月城さんの手引きで武装勢力が無人島に潜入していたので制圧しました」
「……」
茶柱先生はまず砂浜に並べられた五十人ほどの暴漢たちを見る。全員が手足を折られて身動きが取れない状態であり、その傍らには折り曲げられた刃物や銃器が置かれている。
そして先生は清隆に水責めをされている月城さんに向けられた。ロープでグルグル巻きにされて船のクレーンに逆さ吊りにされているこの学園で一番偉い人を暫く茫然と眺めていると、最後に理解できないとばかりに大きな溜息を吐く。
「い、意味がわからん」
茶柱先生としてはそう言うしかなかったようだ。そりゃそうだろう、学園の理事長のやらかしとしてはあまりにも方向性が違いすぎる。
脱税したとか、誰かを贔屓したとか、個人的な人事をしたとか、裏口入学させたとか、そういう学校権力者あるあるとでも言うべき話ならば理解できるのだろうけど、武装勢力を用意したとか言われても困るのは自然な反応だろう。
隣にいる真嶋先生もなんと言えば良いのかわからないといった表情である。とても正常な反応なので何も間違ってはいない。
手足を折られて浜辺に並べられた武装勢力に明らかにおもちゃとは思えない銃と刃物の数々。それを学園の理事長が用意したとか、一般教員からしてみれば受け入れがたい状況だというのはよくわかる。
しかもその張本人は逆さ吊りで水責めの真っ最中だ。真嶋先生も茶柱先生も「どうしろと?」とでも言いたそうな顔をしていた。
「えっと、とりあえずは大丈夫です。武装勢力は全て排除して、武装も破壊しました。月城さんと協力者の司馬先生も拘束しています。近くに脅威はありません、そこは安心してください」
訳が分からないと言いたそうな顔の二人にそう伝える。受け入れがたいかもしれないけどまずは理解して貰わないと。
「どうして綾小路は月城理事代理を水責めしているんだ?」
「報復だそうです」
「……」
先生たちはまた黙ってしまう。来たは良いものの想定を遥かに超える状況に言葉を無くしているようだ。
それでも教師としての立場なのか、絞り出すようにこう言った。
「あ、綾小路……とりあえず理事代理を海に沈めるのは止めろ」
「……チッ」
今、舌打ちしたのか? あの清隆が? どれだけ月城さんを嫌っていたんだ……気持ちはわからなくはないけど、俺としてはそこまで感情を露わにする清隆が見れてちょっとした衝撃を受けた程である。
これも成長と言うことなんだろうか、あのロボットのような男が遂に誰かに怒りの感情を向けたということだ。
何故か俺はフルマラソンを完走したような満足感と充実感を身に宿す。ただ清隆が怒ってるだけなのに不思議な話である。
「月城代理、弁明を聞きたい。貴方は一体何をしているんでしょうか?」
「茶柱先生、これは非常に高度な政治的案件です。一教師が、いえ、ただの一般人である貴方が関わるようなことではない。何も見なかったことすることです」
「それで済むと思いですか」
「済むも済まないも、決定事項です。民間人に抗いようがありません。寧ろ私が抵抗しないだけ――ごぼごぼごぼッ」
清隆、月城さんが喋っている最中にクレーンを操作するんじゃありません。
「ぶはッ!? うッ、ごほ……良いですか、私ももう学園を離れることになります、今後手を煩わせることも、こんなわかりやすい弱点を晒すこともありません。ここで見た物は墓まで持って行きなさい、それで納得できない場合はとても面倒なことになる」
逆さ吊りになっている月城さんは視線を先生たちから船の上でクレーンを操作する清隆に向けた。
「そういう訳です、貴方の勝ちですよ。私は学園を去りましょう」
「去って、どうするつもりだ?」
「さて、どうなるでしょうね、私にもわかりませんよ。ただの中間管理職ですので」
一連の雑な介入の証拠は押さえられているので、後はどうにでも料理できてしまうだろう。九号の雇い主の判断次第では学園から離れた瞬間に黒服の男たちに囲まれてどこかに連れ去られるとか冗談抜きで起こるかもしれない。
政治の世界は魔境である。そんな男はいなかったが当たり前のように存在するんだから。
「そのことなんッスけど、ウチの雇い主から話があるそうッスよ」
そこで話に加わって来たのは九号である。彼女は懐からゴツイ衛星電話を取り出して見せつけた。
そんな物まで用意していたのか、周到と言うべきなのだろうか。
「あ、ちょっと聞かせられない話なんで、先生方は離れて貰うでやがります」
「はいわかりましたと言えると思うのか? そもそも君は、えっと……確か」
「一年の鶚ッス。さっきの月城の言葉を借りるなら、これは非常に高度な政治的案件です。民間人が立ち入るべきじゃないッス……知っちゃいけないことを知って監視付きの生活がしたいんなら構いませんけど」
真嶋先生と茶柱先生はどうしたものかと視線を絡ませる。大人の協力者だけど、民間人なので出来ることは殆どないんだよな。ただ客観的な視線が欲しかっただけなので、この手の話に巻き込むことはできない。
「茶柱先生、真嶋先生、ここは彼女の言う通り離れていてください。お願いします」
頭を下げて二人を遠ざける。巻き込んだ側なのでせめてこの二人の安全は確保したかった。
二人は納得はいっていない顔をしていたけど、強引に背中を押して遠ざける。本当にすみません。
先生二人を会話が聞こえない場所まで移動させてから船まで戻ると、そこでは九号の衛星電話でどこかと通信が繋がっていた。逆さ吊りの月城さんはその衛星電話をとても不審そうに見ている。
「……どこの誰と繋がっているのでしょうか?」
「政府与党の幹部ッス」
「……」
そう言われてしまえば月城さんとしては無視することが出来なかったのだろう。観念したように溜息を吐いてからこう言って来る。
「この縄を解いていただきたい。どうせ貴方たちに抵抗しても無駄なのです。憂さ晴らしはこの辺で良いでしょう」
九号は納得したのか懐から刃物を取り出して縄を切り裂いた。すると当然ながら月城さんは海に落ちることになる。それも頭から。
足と手が片方づつ折れているようなので腰位の水位であっても溺れるかもしれなかったので、俺は慌てて彼の体を海から引っ張り出して船まで持ってくる。
月城さんは折れていない方の腕でしっかりと衛星電話を受け取って耳に当てると、あちら側の誰かと会話を始めるのだった。
「二級政府案件ッス、ウチらも聞く権利がありません。離れておきましょう」
「会話の内容を知ると拙いのか?」
「綾小路パイセンはまぁ関係者でもあるんでギリギリッスかね、でもどうせ大人の権力者の話なんて碌でもないことばかりですよ。知らない聞こえなかったっていうのが一番楽だと思うッスけどね」
「そういうものか」
「知ってしまった結果、押し寄せて来る色々な問題を全てねじ伏せられるのなら話は別ッスけどね。でも面倒ッスよ」
「そう言われると確かにそうか……わかった、聞かなかったことにしよう」
「それで良いんッスよ」
全部殴り倒して黙らせられるのなら何も問題はない、けれどわざわざそんなことするなんてただのゴリラだ。無意味な問題に首を突っ込む必要はどこにもないという判断は俺も賛成だった。
俺たちとは少し離れた位置、船の船首側で衛星電話を片手にどこかの誰かと会話をする月城さんは、ある意味俺たちを前にした時よりもずっと焦っている様子である。少し冷や汗をかきながら電話片手にペコペコ頭を下げる姿はまさに中間管理職と言えるのかもしれない。
そうやって数分程会話を続けた月城さんだが、話は終わったのか衛星電話をこちらに返して来た。
そして静かに、とても穏やかな顔つきでこう言ってくる。
上機嫌にも見えるし、全てを諦めたような顔にも見えた。どっちだろうな。
「話は終わったのか?」
「えぇ、色々と実のある契約を結べたと思います。まぁ、これから先は新しい雇い主のご機嫌取りに勤しむことになるでしょう、それも命がけで」
「……そうか」
その発言である程度の状況を察したのか、清隆はこんな質問をした。
「今後、ホワイトルームはどうなる?」
「さて、私にはなんとも。すぐさま潰されるのか、それとも共同経営を持ちかけるのか、或いはある程度泳がしてから完成した商品だけを奪い去るのか、何であれ最早私の与り知らぬ案件です」
おそらく、月城さんは二重スパイみたいな立ち位置になるのかもしれないな。新しい雇い主に継続的に清隆の父親やホワイトルームの情報を流すのだろう。
中間管理職は大変だ。そうとしか思えない。
俺たちにとって重要なのは政治でも裏の取引でも大人たちの都合でも無く、日々の日常と青春である。面倒な話は学園に持ち込まずに大人たちの間でやっていて欲しかった。
まぁ、なんであれ、これで月城さんの排除も確定したので結果としては上々だろう。
全てが片付いたのならば、俺は改めて自分のやるべきことをやるだけである。
「ん、全部終わったみたいだし。俺は試験に戻るとするよ。試験最終日は貰えるポイントが倍になるから今からでも頑張らないと」
「そうか、そうだったな……今は試験の途中だったか」
「清隆も色々あって忘れてたみたいだけど、学生の本分は試験と勉強だよ。武装勢力の排除だとか、政治だとかホワイトルームだとかそんなことはタダの面倒事でしかない。俺たちは学生なんだ、何よりも試験に集中しよう」
ここで俺の本音を伝えておこうか。
武装勢力だとか政治だとか月城さんだとか、普通の学生に何を押し付けているんだ。
勉強させろ、体を鍛えさせろ、青春させろ、ここは学校なんだぞ。
学校行事に武装勢力を連れて来るとか、少しは常識的な行動を心がけるべきだと思う。非常識にもほどがあるだろう。
そんな訳で俺は学生らしく試験に挑むことになる。それが当たり前で、それが普通だ。
大人の都合に振り回されるのはもうコリゴリである。俺も清隆も学生であることを月城さんは理解して欲しかった。
まぁ今更言っても仕方がない。残った時間で課題に挑んで最後の最後まで全力を尽くすだけである。
そうすれば長かった特別試験もいよいよ終わりということだった。