ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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晩節を汚す訳にはいかない

 

 

 

 

 

 

 

 色々と忙しかった豪華客船での夏休みであったが、人手不足が故の準備期間の前倒しによってなんとか形になったと思う。ここ数日は本当に忙しかっただけに本番に間に合ってほっとしたのは秘密だ。

 

 せっかく南雲先輩が良い感じの催しを考えてくれたのだから台無しにはしたくない。もう引退することになっているあの人の晩節を汚したくはないので準備はしっかりしないとな。

 

 色々とアレな人だけど優秀な人であることは間違いないし、考えや発想は面白くもある。OAAの導入であったり試験の大胆な変更であったり、後はこういった催しであったりと本当にやることは一味違うのだ。

 

 ただそれら全てを粉砕するストーカー気質で評価がアレになっているだけなのだ。色々と思う所はあるけれど、晩節を汚したいと思うほど冷めた人間でもない。

 

 なので南雲先輩発案のこのレクリエーションはしっかりきっちり終わらせるとしよう。ミスなく失敗なく異変なくだ。

 

「皆さんおはようございます。午前十時になりましたので、現時点でここに集まっている生徒で募集を締め切らせていただきます」

 

 豪華客船の中央ホールに集まった生徒たちは結構な数だ、今朝のOAAの全体チャットで参加を呼びかけた結果、特別試験でもないし退学の危機もないのでそれならば参加しようと考えた人たちが多いらしい。

 

 良かった、これで閑古鳥が鳴くような事態になれば南雲先輩も草葉の陰で悲しんだことだろう。賑やかなのは良いことである。

 

 生徒会を代表してマイクを持ち、このレクリエーションの説明をすると、中央ホールに集まった生徒たちは耳を傾けてくれた。

 

「え~、生徒会の笹凪です。今回は学校の全面協力の下、ボーナスゲームが開催される運びとなり、学校生活の充実と向上を目指す生徒会の習いから、南雲生徒会長の発案が形になりました。無人島では全学年が争うことになりましたが、このゲームでは学年を越えてペアを作ることが可能です。是非そのメリットを生かして参加してください」

 

 生徒たちの視線が俺に集中する。二年生以外の学年からは畏怖を宿したものなのはもう気にしないようにしよう。

 

「ルールを説明します。今現在、この船内の共有スペースには至る所にQRコードが張り付けられています。それらをスマホで読み取ると報酬が得られる宝探しゲームです。100枚のQRコードはそれぞれ報酬が異なり、必ずしも発見の難易度と報酬の高さがリンクすることはありません。このゲームは運が大きな要素となるからです」

 

 ザワザワと生徒たちが騒ぐのが伝わって来た。

 

「貰えるポイントは一番低いもので5000ポイント、これが全体の半分であり、そして次に多いのが30枚の1万ポイントとなりますね」

 

 そこから順番に報酬が上がっていき、一番大きな報酬は100万ポイントとなる。かなりの大金だな。学校側も太っ腹であった。ただし参加費を徴収するので実はそこまで学校側に出費を強制している訳でもなかったりする。

 

 参加費が1万ポイントだからな、200人近く参加するので報酬の大半がそこから出ることになる訳だ。学校側の負担は思っていたよりも少ない。そう考えると生徒たちの財布から報酬を集めて再分配しているとも言えるのかもしれない。

 

 ただ上手くやれば100万である。これは大きい。

 

 生徒たちも目にやる気が宿っているので食いつきは良さそうだ。

 

「QRコードの数に対して参加者は凡そ200人、半数は報酬を得られないことになりますが、タッグを組むことで報酬を共有することができるのでメリットを生かすことを推奨します。ついでにヒントとなる謎かけもあるので挑戦してみるのも良いでしょう」

 

 だがこの謎かけを解いたとしても得られる報酬は最大で50万である。最高報酬の100万はノーヒントで完全に運任せの早い者勝ちだ。

 

 ある程度の説明が終わったのでマイクを鈴音さんに任す。すると入れ替わるように彼女が椅子から立ち上がった。

 

「生徒会の堀北です。参加される生徒の皆様にお願いがあります。不正防止の徹底の為、参加者には退室時に1万ポイントを支払うと同時に、学年別の名簿に名前を記入してもらいます。代筆などは認められません。第三者の携帯を利用した不正な参加を防ぐ為の措置ですので、どうぞご理解ください。報酬受け取りはレクリエーション終了までにここに戻り報告をお願いします。無視されますと報酬無効の可能性もあります」

 

 そんな説明が終わると同時にレクリエーション開始であった。

 

 ただ悲しいかな、事前にOAAで告知していたというのにアルバイトは集まらなかった。仕方がないので現生徒会員で受付を行い殺到する生徒を捌かねばならない。

 

 俺は二年生を、帆波さんは一年生を、鈴音さんが三年生を担当することになり、それぞれが受付に座って対応することになった。

 

 あれだね、俺が他学年を対応するとほぼ確実に恐れられて避けられるので仕方がない。生徒たちも俺と関わらないで良かったことでホッとすらしているらしい。

 

 生徒会役員なのにその評価はいかがなものか、本来は帆波さんみたいに慕われないとダメだというのに。

 

 そんなことを考えながら受付にやって来る二年生に謎かけが書かれた紙を渡して参加費を徴収していく。

 

 俺に気軽に接してくれる二年生は心の癒しである。過剰に畏れられたり悲鳴を上げて回れ右をされたりしないのは素直に嬉しかった。

 

「忙しそうだね、天武くん」

 

「ここ最近、ずっと生徒会の業務だって言ってたけど、これの準備をしてたんだ」

 

 受付に愛里さんと波瑠加さんが訪れる。どうやらこの二人はタッグを組んで宝探しに出かけるらしい。

 

「それでそれで~、一番高い報酬はどこにあるのかなぁ?」

 

「は、波瑠加ちゃん、ダメだよ困らせちゃうから」

 

「悪いけれどそれは話せなくてね、運勝負で早い者勝ちだから頑張ってよ」

 

「しょうがないかぁ、テンテンのことだから意地悪な場所に隠してそうだし色々探してみるよ」

 

 俺だからどうして意地悪な場所になるのだろうか……そもそもQRコードの場所を指定したのは学校側である。

 

 波瑠加さんと愛里さんは相談しながらも中央ホールを後にした。上手いこと高額報酬を見つけて欲しいものだ。後、楽しんでも欲しい。

 

 さて次は誰だと動きを促すと、今度は清隆が顔を出した。彼も参加するつもりらしい。

 

「忙しそうだな」

 

「でも楽しくはあるよ。こういうのも悪くない」

 

「裏方には裏方の楽しみ方があるということか」

 

 清隆は参加料を払ってから謎かけの紙を受け取った。

 

「協力者は見つかったのかい?」

 

「今の所はいない、悲しいことにスマホにメールの一つも届かないぞ」

 

「明人や啓誠を誘えばいいじゃないか」

 

「興味がないのと、体調不良だ」

 

 それは残念だな、だから清隆も一人なのか。

 

「せっかくの催しなんだ、誰かを誘うと良いよ。タッグを組んだ方が断然有利だから」

 

「そうしたいのは山々だが、簡単にはいかない」

 

 確かに清隆が交流の少ない相手や他クラスの人、ましてや他学年の人と積極的にペアを組むのは想像できない。

 

「ん、空いてるなら、軽井沢さんを誘ってみたらどうだい?」

 

「軽井沢を……何故だ?」

 

「いや、さっきからチラチラこっちを見てるからさ」

 

 俺が指差した方向に清隆が視線をやると、その先で軽井沢さんがビクッと体を反応させているのが見えた。

 

 大勢の生徒たちの人波に隠れていた彼女だが、どうやら清隆にペアがいないことに気が付いて機会を窺っていたらしい。

 

 チョイチョイと手招きすると、軽井沢さんは観念したのかこちらに近寄って来るのだった。

 

「な、なんか用?」

 

 髪を弄りながらちょっと尖った感じを醸し出すのは恥ずかしさを隠す為だろうか。

 

「やぁ軽井沢さん、君もレクリエーションに参加するってことで良いのかな」

 

「まぁね、暇だったし、1万ポイントの参加費でもしかしたら大儲けできるかもって思ったら美味しいから」

 

 そんな言い訳をしながらも彼女の視線は清隆へチラチラと向いているのだから可愛らしくある。

 

「そうか、悪いんだけどペアが決まってないんなら清隆と組んであげてくれないかな。相手がいなくて困ってるみたいなんだ。そうだろう?」

 

「あぁ、それはそうだが……軽井沢が迷惑だろ」

 

「そんなこと言ってないし……むぅ、まぁ笹凪くんがそこまで言うのなら考えてあげなくもないけどさ」

 

 あくまで仕方なくといった姿勢を崩さない軽井沢さんではあるが、緩みそうになる唇をモニュモニュと動かしてなんとか誤魔化そうとしているようだ。

 

「そ、それで、アンタは私と組みたい訳?」

 

 髪を弄りながらそんなことを言う軽井沢さん、清隆は相変わらず感情が読みにくい顔をしているが、何か納得したのかそれとも観念したのかはわからないが、ほんの僅かに溜息を吐いてからこう言うのだった。

 

「わかった、他に相手もいない。軽井沢、俺と組んでくれるか?」

 

「へぇ~……そんなに私と組みたいんだ」

 

 何を言っているんだお前はと言いたそうな清隆であったが、言葉にはすることはなく呑み込んで素直に頷く。

 

「そうだな、お前と組みたい。軽井沢が良い」

 

「たうわッ!?」

 

「たうわ?」

 

 奇妙な声を上げて緊張を露わにする彼女であったが、相変わらず唇をモニュモニュさせながらペアの申請を行っていく。

 

 愛里さんには少し悪い気もするけれど、どっちの味方でもあるので偶にはこういうのも良いだろう。軽井沢さんは楽しそうなので悪い気分にもなっていないようだしな。

 

 さっそくとばかりに宝探しに向かう二人を見送ることになる。楽しんでくれれば幸いである。

 

 さては次は誰だと受付に人を迎え入れると、中央ホールから離れて行く清隆と軽井沢さんに視線をやりながら興味深そうな顔をしている松下さんと、三年生の男子生徒であった。

 

 三年生の受付はここじゃないんだが、と言う前にその男子生徒は俺を見て顔を真っ青にしてしまう。

 

 この人は多々良先輩だったか、南雲先輩と同じクラスで襲撃犯の一人であり、石を投げつけて来たので投げ返した相手でもある。それを証拠に頬には大きなガーゼが張り付けられていた。

 

「い、いや、違うんだ……これは、その」

 

「はい」

 

「そ、そうだ予定があったんだった。悪いな松下、また今度にしてくれ」

 

 俺を見て冷や汗を大量に流す多々良先輩は、そんなことを一方的に捲し立てながら離れてしまう……何がしたかったんだろうか?

 

「やぁ松下さん、さっきの多々良先輩だけど、なんだったんだい?」

 

「何かペアが組みたかったみたいだよ。でもモーション強くてさ、うんざりしてたからありがとね。三年生避けには笹凪くんだなって」

 

「酷い評価だ」

 

「正当な評価でしょ、何か笹凪くん色んな所で噂されてるよ。笑いながら三年生の手足を折って回ったとか、命乞いする生徒会長を崖の下に蹴り落としたとかさ。最後にはメタル化してビームを吐いたとか木を引っこ抜いたとか」

 

「完全に風評だからそれ、俺はただ降りかかって来る火の粉を払っただけだよ」

 

「そうなんだ……あ、それより受付済まして良い?」

 

「参加費は1万になります。こちらに署名もお願いするよ」

 

「はいは~い」

 

 帳簿に名前を書き込んでから松下さんは参加費を払う。彼女もお宝探しにやる気を出しているようで良かった。こうして開催したんだから大勢の生徒に楽しんで貰いたかったからな。

 

「それで、さっき軽井沢さんと綾小路くんがペア組んでたみたいだけど、なんで?」

 

「清隆がペアが見つからなくて困ってたみたいだからさ、軽井沢さんも一人だったしお願いしたんだ」

 

 嘘は言っていない、けれど松下さんは思案顔になってしまうのだった。

 

「ふ~ん、そういうことにしといてあげる」

 

「他意はない、本当だよ」

 

「わかってるって、それじゃあ大金を見つけてくるよ」

 

「頑張って、そして楽しんで欲しい」

 

「うん」

 

 参加申請を済ましたことで中央ホールから松下さんも出て行く、是非とも頑張って欲しいものだ。

 

 振り返って小さく手を振って来た彼女にこちらも手を振り返す、そして次の人を受付に引き入れていく。今度は誰かなと予想しているとAクラスの葛城と戸塚コンビだった。

 

「笹凪、参加を申請したい」

 

「こっちに署名と参加費の支払いをお願いするよ。戸塚もどうぞ」

 

「言われなくてもわかってる」

 

 葛城と戸塚コンビだが無人島試験ではしっかりと三位を得ていた。しかし坂柳さんは二位だったので彼女との戦いでは後れをとってしまった形だ。その辺の所はどう思っているんだろうかと考えていると、こちらの思考を読んだかのように葛城がこう言ってくる。

 

「文句はない」

 

「まだ何も言っていないよ」

 

「だが坂柳との戦いの結果を知りたそうな顔をしていたからな」

 

「確かにその通りだ……遠回しにしても仕方がないから単刀直入で訊くけど、納得はしているのかい?」

 

 リーダーの座を無人島試験で完全に決着をつけるという約束であった筈。しかし反旗を翻そうと考えれば不可能ではないだろう。その辺の考えがあるのかを知りたくはある。

 

「無論、納得している。全力を尽くしたが届かなかった、それが全てだ……俺たちのクラスは長らく不健全な状態が続いていたしな、その責任の一端はこちらにもある。だがこうして決着がついた以上は何も文句などない。Aクラスは完全に一枚岩になったことになる、こちらの派閥の者も全て坂柳に預けた」

 

「戸塚はいるようだけど」

 

「友人とレクリエーションに参加することに何の障りがあるというんだ」

 

「……か、葛城さん」

 

 何故か感極まったように涙目になる戸塚。

 

「そうか、納得しているのなら良かったよ。これから先、Aクラスはより手強くなるってことか」

 

「お前としては争い合っている方が良かったのだろうな」

 

「そりゃ他クラスからしてみればそうだ」

 

「本当に不健全な状態だったな……だがここから先はそう簡単にはいかない、俺は俺なりのケジメとして坂柳に従い、クラスに貢献するつもりだ」

 

 どうやらもう坂柳さんに反発するつもりはないようだ。彼女の下で活動することに文句は無いのだろう。それでも言いたいことはしっかり言うんだろうけど、それこそが健全な組織でもある。

 

「坂柳も随分とお前を意識しているようだからな。試験が終わった後に話し合ったが、お前を倒す為にはクラスの総力で挑む必要があると言っていたぞ」

 

「坂柳さんがそんなことをね」

 

「あぁ、少し意外ではあった、坂柳は常に余裕を崩さず先を見ていると思っていたからな……誰かの力が必要等とは入学当初は言わなかっただろう」

 

 彼女も丸くなった……いや、龍園と同様に成長したということか。

 

 葛城は同級生の癖が強すぎるせいでどこか影が薄く思われがちではあるが、二年生の中でも飛びぬけて優秀な生徒だからな、彼が坂柳さんの下で実力を発揮するとなると強敵になるだろう。

 

 それは坂柳さんもわかっている。全ての力を掻き集めて戦うことになるのかな。

 

「今回の無人島試験でよくわかった。Aクラスのリーダーに相応しいのは坂柳だ。そして同時に笹凪の常軌を逸した実力もよくわかった……いずれ、Aクラスの総力でお前に挑むとしよう」

 

「楽しみにしているよ……あぁ、そうであって欲しい」

 

 葛城は少しだけ微笑みを浮かべて参加申請を済ます……実力に反して色々と不遇な男であったが、ようやく万全に戦える環境に腰を落ち着けられたということだろうか。

 

「そうだ葛城、君って一年の頃は生徒会に入ろうとしていたよね?」

 

「あぁ、だが今はそのつもりはない」

 

「今からでもと誘おうと思っていたんだけど、先手を打たれてしまったか」

 

「OAAの全体チャットでアルバイトの募集をしていたのは把握しているが、人手不足なのか?」

 

「聞いてるかもしれないけど三年の先輩たちが大怪我で事実上の引退でね、だから人を集めているんだ」

 

「なるほど、深刻なようだな……悪い話ではないと思うが、既に二年生はお前と一之瀬、そして堀北がいる筈、それならば組織運営としては一年生を集めた方が良いだろう。体育祭が終われば新旧の引継ぎも行われる、一年生を多く引き入れて今後に備えて経験を積ませるべきだと俺は判断する」

 

「そうか、やっぱ一年生だよなぁ」

 

「すまないな、期待に沿えず」

 

「いや、気にしないでくれ。ただ二年生であっても構わないとさえ思っている。気が向いたら生徒会の扉を叩いてくれ」

 

「あぁ、その時がくればな」

 

 そして葛城は戸塚と一緒に宝探しに赴く。高額のQRコードを見つけるのは難しいだろうけど頑張って欲しい。

 

 しかし残念だ、葛城が入ってくれれば肩身が狭い思いをしなくて済んだんだが……もし八神が復帰しないとハーレム生徒会とか揶揄われそうなんだよなぁ。

 

 一年生の男子候補の一人であった石上は何の興味も示してくれなかったし、どうしたもんだろうか。

 

 どれだけ考えても八神を復帰させてヘイトを押し付けるという考えしか思い浮かばない。俺も疲れているようだ。

 

 それかいっそ清隆を生徒会に誘うか? いや、同じクラスばかりだとそれはそれで問題か、今更だけど。

 

 だったら宝泉はどうだろうか……足と左手を折って右手だけ動かせるようにすれば暴れずに書類仕事くらいはしてくれるだろうか?

 

 幾ら何でも頭のおかしい状況なので却下した。少し冷静になろう。

 

 どうしたものかと受付で生徒たちを捌きながら思い悩む。ある程度は参加申請を終えると少しだけ暇にもなるので本当に真剣に考え込んだと思う。

 

 だが人を集める以外の案が出て来る筈も無く、俺の意識は思考の海から生徒たちの笑い声で引き戻されることになるのだった。

 

 どうやら見つけたQRコードでそれなりに大金を得られたようだ。笑顔で喜んでいるのは一年生である。

 

 その隣では思うように結果が振るわなかったのか、頭を抱えている男子生徒も見える。

 

 酸いも甘いもある宝探しゲームだけど、退学の心配はないので楽しんで貰えているようで何よりだろう。色々と考えなければならないことも多いのだが、ああして生徒たちが楽しんでいるのは素直に嬉しい。努力と準備が報われた気分になるからな。

 

 なので釣られるように俺の頬も緩むことになる。最初はそこまで生徒会に意欲がなかったのだけれど、こうしていると楽しくもあるのだろう。

 

 生徒たちは皆、それぞれが笑ったり残念がったりと気楽に楽しんで貰えているらしいので俺も満足である。

 

 こういうレクリエーションは凄く良い、そう考えると南雲先輩が強制的に引退してしまうのがちょっと残念に感じるのが不思議だ。

 

 まぁ南雲先輩の発案で形になった催しである。最後くらいはしっかりと花を持たせて晩節を汚すようなことにならなくて本当に良かった。

 

 

 

 聞こえますか南雲先輩、生徒たちの楽しそうな声が。これが俺たちから貴方へ贈るレクイエムです……いや、止めておこう、なんだかあの人が死んだみたいになっている。これは流石に失礼な思考であった。

 

 

 

 

 

 

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