ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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綾小路「ここまでゴリラ全開だと尊敬するしかない」


サバイバル試験 2

 

 

 

 

 

 

 

 真嶋先生が説明した特別試験の内容を要約するとこうだ。

 

 1 各クラスには300ポイントが支給されて、そのポイントを自由に使って一週間を無人島で過ごすこと。その自由の判断は完全に生徒に委ねられる。

 

 2 試験終了後に残ったポイントはそのままクラスポイントに変換される。

 

 3 試験期間中、ドクターストップがかかるほどの怪我や体調不良者が出てリタイアした者がいた場合、ペナルティが下される。その他にも深刻な環境汚染や他クラスへの暴力行為や器物破損や略奪行為などが発覚しても大きなマイナスが与えられるとのこと。

 

 4 毎日の点呼に参加しない場合もまたペナルティ。

 

 5 島の至る所にスポットが存在しており、占有したクラスが使用権を得る。そしてスポットを占有する度に1ポイントが与えられる。スポットの占有や更新はリーダーだけができる。

 

 6 正当な理由なくリーダーの変更はできない。

 

 7 七日目の最終日に他クラスのリーダーを言い当てられれば50ポイントのボーナス。逆に外してしまうとマイナス50ポイントになってしまう。

 

 その他にも様々な細かなルールがあるようだが、主なのはこれらである。

 

 与えられた300ポイントを使ってどう工夫して生活するのか、それとも積極的に偵察やスポットの占有を行って攻勢に出るのか、それとも守りに入り耐えようとするのか、各クラスの性格が方針にも反映されそうだな。

 

「清隆、どう思う?」

 

「現時点ではなんとも言えない……ただ、実現できるかどうかわからないが、一つだけ思い浮かんだ作戦がある」

 

「ん、どんな作戦かな?」

 

 俺と清隆は特別試験の内容が説明されてから始まった、クラスを真っ二つにしている論争から少し離れた位置で作戦会議をしている。

 

 島に上陸してから特別試験の内容を聞いてからというもの、男女に分かれてずっと言い争っている状態なので、俺たちの会話が聞かれることもないだろう。

 

 間に入って仲裁している平田が可哀想になってくるな。彼は配慮を欠かさない男なので、だからこそ強く言えない部分もある。

 

「試験終了直前でのリーダーの変更だ」

 

「へぇ……正当な理由なく変更できないって話だけど」

 

「逆に言えば、正当な理由があれば変更できるってことだろ」

 

「なるほど、面白い発想だ」

 

 こういう枠に囚われない発想というか、思考は素直に感心できるな。俺はどうやって正面から叩き潰すかをどうしても最初に考えてしまうから。

 

「天武は何か思いついたか?」

 

「俺も一つだけ、実現できるかどうか正直わからないけど、できそうならその時に説明するよ」

 

「わかった……そろそろ、仲裁に入ったらどうだ? 平田が何度もこっちに視線をやってるぞ」

 

「そのようだ、行ってくるよ」

 

「合流場所はあの川辺付近だな? オレは先に奥にいって少し偵察してくる」

 

「ん、早めに戻ってくるんだぞ」

 

 どうやら清隆は俺がクラスを仲裁している間に偵察に行くらしい。行動的な彼も珍しいと思いながらも、姿を消してもあまり気に留められない存在感の無さは少し心配になってしまう。

 

 まぁ清隆のことは今は良い、それよりも仲裁である。クラスを真っ二つにしている理由、それはトイレが必要か否かだった。

 

 絶対に必要だと主張する女子たちと、トイレくらい支給された簡易の物で済ませようぜという主張の男子、相容れない争いはずっと続いている。

 

 俺は清隆に背を叩かれてその争いに近づいていき、仲裁を試みた。

 

「あ、良かった笹凪くん、何か意見はないかな?」

 

 ずっと男女の間に入って宥めようとしていた平田は、俺が現れたことで安堵の溜息を吐いている。そこまで信頼されると期待に応えたくなってしまうな。

 

「笹凪くん!! 絶対にトイレは必要だよね!?」

 

 篠原さんが女子を代表するかのようにそう言えば。

 

「トイレくらい簡易の奴で十分だって、それくらい我慢しろよ」

 

「そうだ、今は少しでも使用するポイントは減らすべきだろう」

 

 池と幸村が苛立ちながら反論して、女性陣の意見を批判する。

 

 ずっとこの繰り返しであった。平田の苦労も大きかっただろうな。

 

「全員、傾注」

 

 こういう時に便利なのが師匠モードだ。あれだけ騒がしかった騒動がピタッと静まって、全員の視線がこちらに集中するのだった。

 

 ただ、このまま怖がらせて脅しのように上から押さえ続けていると不満も残るので、すぐに平常時に戻る。

 

 師匠曰く、緩急は大事。

 

「皆、聞いて欲しい。俺なりに試験の説明を受けて考えたんだが、この特別試験では越えなければならない三つの目標があるんだ、それが何かわかるかな?」

 

「越えなければならない三つの目標? なんだよそれ」

 

 池がそう尋ねると、俺は島の海岸に落ちていた枝を拾って、白い砂浜に説明を書き込んでいく。

 

 わかりやすさは大事、師匠もそう言ってた。

 

「じゃあ堀北さん、三つの内の一つ、第一目標は何だと思う? 君の考えを聞かせてくれ」

 

 同時に、議論や会議も大事だ。例え結論ありきだったとしても、意思と意見を交えたという過程が集団には必要だろう。

 

 何より、ここで堀北さんがクラス全体に意見を言えるような立場や状況を作りたい。そして今の彼女ならば俺が望む答えを言ってくれる筈だ。

 

「そうね……クラス内の信頼や団結を崩壊させないこと、じゃないかしら」

 

「うん、俺もそう思う。今、堀北さんが言ったように第一目標がまさにそれだ。これはこの試験で超えなければならない最低ライン、テストで言えば赤点ラインだね。ここでそれらを崩壊させてしまうことは、つまりこれから先の試験でも尾を引くことになる……そうなれば最悪だ」

 

「えぇ。加えて言うのなら、学校側は私たちに喧嘩をさせようともしているわ。今のDクラスはまさにそう……冷静になりなさい」

 

 堀北さんのその言葉にバツが悪そうな顔をする者が幾人かいる。

 

 同時に、彼女を意外そうな瞳で見ている者も多い。確かに四月頃の彼女を知っているクラスメイトからしてみれば、堀北さんから信頼や団結なんて言葉が出ることに違和感を感じるのかもしれない。

 

「第一目標を理解したことで、第二目標を共有しておこうか。はい、幸村、君はどう考える?」

 

 少しだけ頭が冷えた様子の幸村は顎に手を当てて考えた後、こう言った。

 

「……やはりポイントの節約は必要だと思う。これは、感情的に言っている訳ではない」

 

「そうだね、俺もそう思う。幸村の発言は何も間違っていない。それこそが第二目標であり、テストなら赤点ラインを超えて七十点って所だ……じゃあ次に第三目標を共有しよう。はい、平田、君の意見を聞かせて欲しい」

 

「そうだね……第一、第二目標を踏まえた上で考えるなら、やっぱりポイントをどれだけ稼ぐことができるかじゃないかな?」

 

「そう、まさにそれが第三目標だ」

 

 それら全てを砂浜に枝で書き込んでいく、こうやって文字にして残すとよりわかりやすいだろう。

 

「そして、その第三目標こそがこの試験で百点を取れるかどうかの重要な部分だと思ってる。ポイントをどんどん稼いでいって、この試験を終えるのが理想だ」

 

 砂浜にそう書き込むとクラスメイトたちの視線がそこに集中する。

 

「クラスの信頼や団結を崩壊させないこと、それらを満たした上でどれだけポイントを節約できるか、そしてこの試験期間中にどれだけのポイントを稼げるか、クラス全体でまずはこの三つの目標を共有できたことで、次は意識を切り替えよう」

 

「意識を切り替える?」

 

 幸村が眼鏡をクイッと上げながらそう言ったので、俺は頷きを返す。

 

「ポイントをどれだけ節約するかじゃない、勿論それも大事だけど、どれだけポイントを稼げるかって方向に……もっと言えば、使った分すら補填できるくらいに稼いでやろうぜ、くらいの意識で行こう。それならトイレやその他の必要な物資を用意するのも抵抗はないはずだ」

 

「……言いたいことはわかるが」

 

「大丈夫だよ、俺も考え無しにこんなこと言ってる訳じゃない。しっかりと作戦を考えた上で言っているんだ」

 

「この特別試験で勝利することを考えているんだな?」

 

「応とも」

 

「……わかった、ポイントの使用に関してはもう何も言わない」

 

 一応、信頼はあるらしい。四月の時点でSシステムの本質に気が付いて説明していたので、発言力や存在感はクラスの中で根付いているようだ。

 

 俺の言葉に一定の重みがある状態はやり易い、特にこういった試験では。

 

「よし、それじゃあ移動しようか。さっき船の上から島を観察してた時にいい感じの場所を見つけたからさ。須藤、悪いんだがテントを頼めるか?」

 

「こいつか? おう、任せとけ」

 

 よしよし、須藤も素直だぞ。

 

「須藤くん、僕も手伝うよ」

 

「悪りぃな平田、そんじゃあ半分頼むぜ」

 

 平田と須藤が支給されたテントを分け合って運ぼうとする光景は、四月頃にはまず見なかった光景である。

 

 浜辺から移動して目指すのは清流が近くを流れるキャンプ場のようなスポットである。川が近いこと、そして均された地面があることが利点の場所であった。

 

 ここにペンションでも建てればまさにキャンプ場といった感じの場所である、そんなものはどこにもないけど。

 

「そうだ、誰かキャンプ経験とかある人いないかな?」

 

「俺やったことあるぜ」

 

 何と手を上げたのは池である。意外にもアウトドアな趣味を持っていたらしい。

 

「助かるよ、もう少ししたら拠点候補の場所が見えて来るからさ、そこに決まったらテントの設営とかやって欲しい」

 

「よし、任せてくれよ」

 

 こんなにも頼りになりそうな池を見るのは初めてかもしれない。

 

「ねぇ笹凪くん、どんな場所を拠点にするのかな?」

 

 櫛田さんがそう尋ねて来ると同時に、目的地も見えて来た。

 

「あそこだよ、川が近くにあって地面も平らな場所」

 

 拠点には持って来いだろう。特に川があるのは利点の一つでもある。

 

「どうかな、反対意見のある人?」

 

 意見を求めてみるが特にそれらしいものを返ってこない。そもそも別の場所にこれ以上の拠点があるかもわからないので、反対のしようがないって感じなんだろう。

 

「それじゃあここを拠点にするとして、設営に入ろうか。池隊長、宜しく頼むぞ」

 

「え、隊長? 俺が?」

 

「キャンプ経験あるんだろ? ここで良い感じに動けば女子からの好感度も上がると思うよ」

 

「マジで?」

 

「頼りにならない男より、こういう時に率先して動ける男の方がカッコいい、間違いない。櫛田さんもそうは思わないかい?」

 

「確かに、頼りになる人って感じでカッコよく見えるね」

 

「うぉぉおおお、見ていてくれ桔梗ちゃぁぁぁんん!!」

 

 平田と須藤が運んでいた荷物を奪い去るように受け取った池は、そのまま設営の準備に取り掛かる。

 

 チョロい男であった。しかし手際が良いので頼りにもなるのは間違いない。

 

「それでは、当初の予定通り全体の方針として、ポイントの確保をメインにDクラスは動こうと思う。皆、そこに異論はないかな?」

 

 拠点も決まった、設営も始まった、なので次は方針の確定である。

 

「反対意見が無いようなら、とりあえず設営班と島の探索班に分かれて行動しようか。前者はここで拠点の製作、後者は島の探索って感じになるだろう」

 

 そこで平田が手を上げた。何か反対意見があるのだろうか?

 

「反対意見という訳ではないけど、探索班の人たちは単独での行動は控えて欲しいかな。最低でも二人一組で行動して貰いたいんだ」

 

「確かに、一人だと何かあった時に助けも呼べないだろうからな」

 

 配慮を欠かさない男、それが平田であった。

 

「平田、設営班を任せられるだろうか?」

 

「構わないよ、笹凪くんは探索班かい?」

 

「あぁ、せっかくの無人島だからな、走り回りたい。こっちは池を上手く使ってやってくれ」

 

「わかった、そっちも気を付けて」

 

「あぁ、任せてくれ。よ~し、それじゃあ今から名前を呼ぶ人は探索班として行動して貰う。基本的に体力のある奴を中心に選ぶけど、設営班の方が良いって人はそう言ってくれて構わないからな」

 

 無人島でのサバイバル試験なのだ、下手に不満を溜められても困る。

 

 須藤や三宅などの運動部に所属している者などを中心に、十人ほどを選抜して二人一組で組ませるくらいで良いか。

 

「探索班の仕事は主にスポット位置の発見だ。それ以外にも何か有用そうな物があれば平田に報告してくれ。平田、悪いんだが地図の作製も頼めないか?」

 

「うん、任せて……あ、その前にこの場所のスポットの確保と、リーダーを決定しないといけないよ」

 

「あぁ、そうだったな」

 

 この拠点の近くにある岩には機械が埋め込まれている。どうやらこれがスポットと呼ばれる装置らしい。カードを差し込むような場所もありどこかATMみたいな感じであった。

 

「ここにリーダーがカードを差し込んで操作すればスポットの占有ができる訳か……なぁ博士、質問があるんだけどいいかな?」

 

「おや、笹凪殿が拙者に質問とは、なんでござろうか?」

 

「この機械ってどんな感じで動いてるか知りたいんだ。ケーブルらしき物はなさそうだけど、充電とかどうしてるのかなって思ってさ」

 

「ふむふむ、確かにケーブル類はござらんな。島の中にも電柱や電線は見当たらぬので、となるとバッテリーが内蔵されているのか、太陽光などでの発電となるか、或いはその両方でござろう」

 

「それで一週間も持つものなのかい?」

 

「充電ケーブルなどが無い以上はそうとしか。それに言ってしまえば簡単な情報の送受信が主な役割、スマホでもできることなので、常に充電しなければならないような装置ではないかと」

 

「ん、ありがとう」

 

 メール機能しか使わないスマホに車のバッテリーを繋いでいるような装置ってことか、それなら充電しなくても一週間くらいは持ちそうだな。ケーブル類が必要ない訳だ。

 

 これで複雑極まる繊細な機械だと、途端に面倒なことになりそうなので、良かったと言えるのかもしれない。

 

「問題なのは誰をリーダーにするかってことだけど……」

 

 これに関しては誰がやっても良いと俺は思う。最悪の場合でも清隆の言うリーダー変更作戦でゴリ押せるだろうし。

 

「私も色々考えたんだけど、平田くんや笹凪くんだと絶対に目立つと思うの。でもリーダーなら責任感のある人が良いだろうし……そう考えると堀北さんが適任かなって」

 

 櫛田さんの意見にクラスメイトたちの視線が堀北さんに集中していく。

 

「えぇ、わかった。反対意見がないようなら私が引き受けるわ」

 

 体調は大丈夫だろうか? そんな思いを込めて堀北さんを見つめると、彼女は問題ないとばかりにこちらに頷きを返した。

 

「それじゃあ堀北さんに任せようか、茶柱先生に報告しよう」

 

 監督役である茶柱先生に堀北さんがリーダーになったことを伝えると、すぐにカードキーが渡される。

 

「これを差し込めばスポットの占有ができる訳か、堀北さんさっそく頼むよ。皆、輪になって壁を作ってくれ」

 

 視界を遮るように人で壁を作る。その内側で堀北さんが作業をするとほんの数秒でスポットの占有は完了した。

 

「これでこの場所はDクラスの拠点になった訳ね」

 

「あぁ、本格的に試験の始まりだな」

 

 俺も久々の自然を謳歌しよう。実家というか、師匠の拠点は田舎の山奥にある神社だったのでこの木々に囲まれた感じは実は馴染み深いものだったりする。

 

 平田率いる設営班に拠点製作を任せて。探索班となった俺はパートナーとなった清隆と行動することになった。

 

 他の組も二人一組となって東西南北に散っていく、方針通りにスポットの発見を主としているので、今日中にそれなりの数を発見できるだろう。

 

「清隆、さっき言った俺の作戦を説明するよ」

 

「あぁ、聞かせてくれ」

 

 俺の相棒は清隆である。二人しかいないから彼は躊躇なくその身体能力を披露してくれるので、移動が非常に楽だった。

 

 木の枝から木の枝に飛び移っても難なく付いてきてくれる。清隆を師匠に紹介すればもしかしたら興味を持つかもしれないな。

 

「さっきのスポットを占有する機械を見て確信できたんだけど――――あれって動かせそうじゃないか?」

 

「……うん?」

 

「リーダーが島中を動き回ってスポットを確保するのは手間がかかる上に、リーダーであると露見するリスクが大きくなる。リスクとリターンがなかなか釣り合わない……だがスポットを一ヶ所に集めれば、動き回る必要も無く露見の危険性もグッと少なくなる」

 

「……」

 

「だから、あの機械を片っ端から俺たちの拠点に持って帰ろう。見た所ケーブル類は無いみたいだし、博士が言うには単純な装置らしいから多少動かした程度で壊れはしないだろう」

 

 何故か清隆は無言である。とてもクレバーな作戦だと考えるんだが、何か見落としがあるだろうか?

 

「お、あったな」

 

 暫く走っていると、スポットの一つを発見することができた。俺たちが拠点としていた場所にあった機械は岩に埋め込まれていたが、こちらは木造で作られた建物の内部に置かれている。

 

 当然ながら動かせないように固定されていた。鎖と、ボルトナットで台座に縫い付けられており、専用の工具でもないと本来は難しいだろう。

 

 当然ながらそんな都合の良い工具はここにない、なので全て素手でやるしかなかった。

 

 鎖は、そこまで太くないな。これくらいなら問題ない。

 

「よいしょっと」

 

 鎖を引っ張って強引に引きちぎる。

 

「こっちは指で摘まんでいけそうだな」

 

 機械と台座を繋ぐボルトナットは指で摘まんでクルクルと回していけば、すぐに外すことができた。工具要らずである。

 

 鎖とボルトナットを外すとスポット装置は簡単に動かすことができるだろう。実際に少し持ち上げてみると何の抵抗も無く台座から外すことができてしまう。

 

「よし、問題なさそうだ」

 

 これでケーブルが伸びるようなら引きちぎるのも流石に躊躇したが、博士の言う通りバッテリーか太陽光発電式らしい。持ち運びやすくて大変結構。

 

 咎められはしないだろう。俺は糞尿をまき散らして環境汚染をしている訳でもないし、厳密に言えばこれは「他クラス」への破壊工作でも略奪行為でも器物破損でもないのだから。

 

 ルールにも、スポット装置を動かしてはならないと書かれてはいなかった。

 

「こうしてスポット装置を回収して拠点に持って帰ろう。さすがに他のクラスが占有している奴は暴力行為とか器物破損って判断されるだろうから難しいけど、フリーのやつなら他クラスへの攻撃にはならないから問題ないだろう。スポット装置を持って帰ったらペナルティになるとは説明されてないしな」

 

「……」

 

 清隆は無言である、それどころか何とも言えない顔をこちらに向けている。

 

 この顔、どこかで見たことあるな―――あぁ、そうだ、これは。

 

「清隆、どうしたんだ? なんかチベットスナギツネみたいな顔になってるぞ?」

 

「そうか……いや、問題はない。天武、お前は下手なことを考えずにそれで良いんだと思う」

 

「褒められているんだろうか?」

 

「あぁ、勿論だ……オレは今、お前を尊敬している」

 

 

 おぉ、友人から褒められるのは、やっぱり嬉しいものだな。

 

 

 

 

 

 

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