八神視点
始まりは下駄箱の中に入っていた一枚のラブレターだった。ホワイトルームで一般的な高校生活の参考として渡された少女漫画の中に似たような状況があったことを思い出す。
これがそうなのかという新鮮さと、これは罠だろうなという冷静な部分が僕にはあった。嬉しさや恥ずかしさよりも先に警戒心が出て来るのはホワイトルームの教育のおかげだろう。
そう、あの場所で鍛えた体と、学んだ知識に間違いはなく、完全完璧な天才としての一歩を踏み出した僕には、このラブレターが文字通りの意味ではないと察した訳だ。
いや、ある意味ではラブレターなのだろう。僕にとって最も憎らしく警戒すべき相手が垂らして来た糸だと考えれば、なるほどこれはラブレターと言えるのかもしれない。
綾小路清隆、僕にとって世界の頂点で、越えなければならない壁であり、完成系。
僕にとっての世界とはホワイトルームであり、綾小路清隆なのだ。
僕の人生とはつまり綾小路清隆と比べられることであり、一から百までそれで完結していることでもあった。
一挙手一投足が、思考の全てが、努力の積み重ねが、ありとあらゆる行動と成果が「綾小路清隆の方が凄かった」で完結することになる。
それを世界の全てと断言しても過言ではないだろう。僕にとってあの男は壁であり月であり太陽であり……やはり世界の全てであった。
悍ましい、憎らしい、気持ちが悪い……そんな感情の中にほんの僅かにある恐怖を見ないふりをしながら、僕はまた綾小路清隆の姿を思い浮かべる。
朝起きて綾小路清隆を憎み、登校中に唾棄して、授業中に呪詛を垂れ流し、昼食の時に吐き気を催し、放課後になって綾小路清隆の写真に釘を打つ。
そして夜寝る時に、背筋が震えるような恐怖を抱きながら眠りに落ちる。
この学園に来てからずっと繰り返したルーティン、歯を磨くようにあの男を思い、風呂に入るように憎み、食事をするように恐怖する。
僕の全て、僕の日常、僕の人生、その全て。
いつになったら終わるのだろうか、どうすれば終わるのだろうか、考えた所で行き着く先は綾小路清隆から完膚無き完全勝利を得ることしかなかった。
だから戦う、ホワイトルームで培った技術と知識と磨き上げた才能の全てを使って、それだけの話でしかない。
綾小路清隆に勝つことができれば、それはつまり世界で最も優れた存在であることの証明に他ならない……ホワイトルームではそう教えられて来た。
きっと僕の細胞の全てはその為にあるのかもしれない、そう思えるほどに何度も何度も何度も何度も言われてきた、あの男を超えろと。
下駄箱の中に入っていたラブレターは、綾小路清隆に挑む為の第一歩なのかもしれない。中に入っていた手紙を読み取り、そこにあったアナグラムを解析してそう理解した。
これはラブレターであると同時に、挑戦状とも言えるのかもしれない。お前に読み取れるのかという侮りと、来るなら来いとでも言いたそうな傲慢な内容だったけど、面白いじゃないか。
構わないとも、どうせ遅かれ早かれぶつかりあう宿命であり運命なのだ、僕と綾小路清隆はそういう星の下に生まれてきているので寧ろ対峙するのは自然なことだろう。
互いを敵と認識して戦う、このラブレターという体裁の挑戦状を始まりとしてだ。
だから僕は僅かな緊張と共にその日を待ちわびた、文化祭も後半、手紙で指定された日時を今か今かと焦らされながら待ち続け、いよいよその日が訪れる。
これもあってかクラスでは午後三時から休憩を取れるように調整もしておいた、無駄な雑音を宿命の戦いに紛れ込ませたくはなかったからだ。
思い描いた戦いと、宿命と運命に彩られた聖戦を、僕はこれから始めることになる。
そんな考えと共に、文化祭の賑わいが広がる校舎を歩いていき、辿り着いたのは生徒会の扉の前だった。
無人島で怪我をしてからはあまり訪れなかったのだが、勝手知ったる場所でもある。だがこの扉の向こうにいるのが宿命の相手だと考えると僅かな緊張も走ることになってしまう。
そんな怯えを見なかったフリをして、僕は宿敵がいる生徒会の扉を開くのだった。
「八神? 何故お前がここにいる?」
だがその扉の向こうに綾小路清隆はいない。生徒会室にいたのは二年Aクラスの担任である真嶋先生と茶柱先生であった。生徒会に属していたことから教師陣とは面識があるのだが、それでもこの教員がここにいる理由がわからない。
そしてもう一人、この生徒会室には僕の想定に無かった人物がいる。こちらの支配下にいる筈の駒の一つ、櫛田桔梗の姿が。
真嶋先生、茶柱先生、そして櫛田桔梗、この三人がここにいる理由はなんだ? 綾小路清隆との宿命の戦いはどこにいったんだ?
「や、八神くん……な、なんでここに?」
生徒会室に入って来た僕を見て、櫛田桔梗は怯えたような表情を見せる。
そして真嶋先生と茶柱先生は視線を合わせてどうしたものかと考え込んだ。なんだ、僕がここに来るまでに何を話していたんだ?
「茶柱、良い機会だ、八神にも事情聴取をすべきじゃないか?」
「……そうだな」
教師の二人はそんな話をしながらも僕を警戒するように見つめて来る、そして生徒会の席に座るように勧めて来るのだった。
なんだ、これはなんだ、うなじに変な悪寒が走っている。綾小路清隆はどこにいるんだろうか。
「八神、話がある、席に座りなさい」
茶柱先生がそう言って生徒会室の席を引く、すると真嶋先生は生徒会の扉の前に立ってこちらの逃走を防ぐかのような位置取りをするのだった。
「……なんでしょうか?」
抵抗は……得策ではないか、まずは情報収集だな。
そんなことを考えながら指定された席に腰を下ろす。嫌な予感はまだ消えない。
何よりこちらを見る三人の視線が強い警戒と疑念が含まれているのだ。警戒しない方が難しいだろう。
「八神、お前には今、カツアゲとイジメの容疑がかかっている」
「――――」
茶柱先生の説明に一瞬頭の中が真っ白になった。一つたりとも心当たりが無かった――いや待て。
僕には毎月櫛田桔梗からポイントが送られている、まさかそれをカツアゲされたとこの女は教師に訴えたのか?
不可能だ、イジメやカツアゲがあったなんて証明できる筈がない。いつだって監視カメラの位置は気にしていたし、わかりやすい暴力だって振るったことはない、体に痣でも残せばそれが証拠になってしまうからだ。
落ち着け、証拠はない、今はまだ疑いの段階でしかない筈――。
「八神くんが脅して来たんです。もしポイントを渡さないと、クラスメイトを傷つけるって……私、怖くて」
櫛田桔梗ッ!? お前はどの面下げて被害者側に立っているんだ!!
「ま、待ってください、誤解があります。そもそも僕はそんなことはしていません。何かの間違いです」
「櫛田はポイントを脅し取られていると訴えているぞ。そして現に、櫛田のスマホからかなりの額のポイントが八神に振り込まれていることを学校側は把握している。勿論それだけでカツアゲしたと確定する訳ではないが……訴えがある以上は、調査しなくてはならない」
生徒会室の扉の前に立っていた真嶋先生がそう言った。
「なので事情聴取を行いたい。八神、お前はカツアゲの事実を認めるか?」
「いいえ認めません、僕はそんなことをしていませんので」
「ではなぜ、櫛田からポイントが振り込まれている? そして櫛田はカツアゲされたと訴え出ている?」
「……それは」
櫛田桔梗は顔を両手で覆って大層嘆き悲しんだ様子を見せつけていた。その姿を見れば大半の者が可哀想な被害者であると思うのだろう。
そして事実として、僕にポイントを渡しているという状況とデータを学校が把握している以上は、その立場は決して間違いではないということだ。
やってくれたな、もう少し賢い女だと思っていたのだけれど……所詮はホワイトルームの外の人間、愚劣が極まっている。
落ち着け、まだ焦るような状況じゃない。確定ではなく疑惑の段階、冷静に対処してこの場をやり過ごしてから後々櫛田桔梗に報復すればいいだけの話だ。
まだだ、まだ状況はイーブン。
「まず誤解を解かせてください、僕は――」
話の主導権をこちらに戻そうと話を組み立てようとするのだが、生徒会に新しく入って来た第三者の存在によって出鼻をくじかれてしまう。
「邪魔するぜ」
生徒会に入って来たのはあの龍園とそのクラスメイト、そして担任教師である坂上先生であった。
また嫌な予感がうなじを走り抜ける……これは、誰が思い描いた状況なんだ?
「坂上先生? どうされましたか?」
「いえ、実は龍園くんから訴えがありまして、事情を聴く為にとりあえず生徒会室で話でもと……えっと、茶柱先生と真嶋先生は何故ここに?」
「我々は櫛田からの訴えを訊いて、八神から事情聴取をしようと思いまして」
茶柱先生と坂上先生は、別に示し合わせてここに来た訳じゃないということか? だとするとこちらの問題とは完全に別口の話なのかもしれない……そんな希望的観測は、龍園がこちらを邪悪な笑みで眺めてきたことで霧散してしまう。
「ククク、踊らされてる感じはあるが……まぁ良いだろう、丁度良かったからな。おい小宮、木下、こいつで間違いないか?」
「うん、コイツだよ」
「間違いなくコイツだ」
まるで示し合わせたかのように、用意していたセリフを小宮と木下は言い放つ。
「……なんですか、これは?」
僕の心情はそれで埋められている。うなじの寒気はいつまでも静まらない。
「なんですかじゃねえぞ一年、やってくれたなぁおい!! 無人島でこいつらを突き落として重傷を負わせるなんてよ!!」
龍園が邪悪な笑みを浮かべてそう言った瞬間に、生徒会室に集まった全員の内心に新たな疑念が生まれることになった。
「おい、どう落とし前つけるつもりだ? そう言えばテメエはこいつらを蹴り落としただけじゃなくて、無人島では徒党を組んで二年生を襲撃しようとしていた一人だったか」
本当になんだこれは……これが綾小路清隆の絵図なのか?
いや、落ち着け、焦った所でなんの意味もない、まずはこの状況を互角に戻さなければ。
「龍園先輩、一体なんの誤解をされているんですか、僕には全く心当たりがありません」
「あぁん? だがテメエが襲撃を企てた一年の一人だってことは確定しているだろうが、そんな奴の言う誤解ってのはどれくらいの説得力があるんだろなぁ」
疑念は、より強い疑いへと変わっていく。一つ一つのミスならばこれまで生徒会役員として品行方正に積み上げてきた信頼で打ち消せるのだが、同じ数だけの不信が積み重なれば信頼も意味が無くなってしまう。
「テメエとはじっくり話し合わねえとな」
龍園の手が無遠慮に伸びて来て、僕の髪を掴んで引っ張り上げてきた。
「龍園!!」
わかりやすい暴力行為なのでこの場に集まった教師たちから制止の声が広がるのだが、この男はその程度で躊躇するような相手でないのは無人島での暴れかたを見れば明らかだろう。
いや、だが丁度いい、これで僕も被害者という立場を得ることができる。それをきっかけに話の主導権を取り戻す。
「ま、待ってください、痛い、やめてください……僕は本当に何も知らないんです!!」
「テメエがこの二人を突き落としたんだろうが!! ネタは上がってんだよ!! 木下と小宮が思い出したんだ、無人島で突き落として来た犯人はお前だってな」
「そ、そんな……八神くん、カツアゲだけじゃなくて、そんなことまで」
櫛田桔梗がここぞとばかりに合わせて来る……少し黙っててくれないかな。
「あん? カツアゲだ? クク、そいつは大胆だな、気に入らねえ奴を突き落とすはカツアゲするは襲撃を企てるわ……やりたい放題じゃねえか」
拙い、生徒会室にいる全員から疑念の色が強くなっていく。何より拙いのが相手の主張の多くが覆しようがない事実であるという点だ。
綾小路清隆、やはりお前が全ての元凶だな!!
「お、お願いします、待って……話を、僕の話を聞いてください」
「龍園くん、手を放しなさい。事情聴取が進みません」
「坂上、テメエはどっちの味方だ」
「まだ疑惑の段階です、それに弁明の権利はありますので」
「はッ、良く言うぜ」
だが龍園は僕の髪を手放す、相変わらず邪悪な笑みを浮かべているが、流石に疑念の段階でいつまでも暴力を振るっているのは分が悪いと判断したのかもしれない。
とりあえず言い訳を述べないと、ホワイトルームで培った人心掌握術を活かさなければ。
「八神くんと言えば……確か真嶋先生」
こちらのセリフを言う前に、龍園を止めた筈の坂上先生が疑念の瞳でこちらを見つめながらこんなことを真嶋先生に問いかける。
「あの日、木下さんと小宮くんが怪我をした際に、八神くんの腕時計の反応は消失していた筈だったのでは?」
「確かに、そうでしたね……学校側のデータでは腕時計の反応が消える直前までの動きしか把握できていないが、小宮と木下が付き落とされた地点からはそれなりに近かった筈です。怪我をした二人も一緒に行動していた篠原も犯人は誰かわからないと言っていたので事故として処理されていましたが――」
真嶋先生の瞳も疑念の色が濃くなっていく。
「その時はわからないと言ったのに今になって思い出して僕の名前を言った? ありえません!! 腕時計の反応がないことを理由にこの二人が口裏を合わせて僕の名前を出したに決まっています!!」
「口裏を合わせる? お前の腕時計が壊れていたことは一般生徒が知れる情報じゃない、それは学校側だけが把握しているものだ。あの時に腕時計の反応が消えていた生徒は二人だけ、その内の一人が八神で、事故現場からそこまで離れてはいないのは学校側もわかっている」
真嶋先生の言葉に、またもやこの場にいた全員から疑いの視線を向けられてしまった。
「ありえません!!」
「犯人を見たことを思い出した。それを疑う根拠はなんだ八神。言ってみろよ」
また龍園がこちらに手を伸ばそうとしてくるが、それを慌てて振り払う。
「誰にも見られる筈がない、完璧に上手くやったはずだ。テメエがそう思ってるからだろうが」
「本当に違います。僕は何もしていません、僕にそんな物騒な真似ができるとでも?」
「できるだろうさ、お前は無人島で徒党を組んで二年生を襲撃しようとした奴の仲間で、挙句の果てに上級生から堂々とカツアゲするようなヤツなんだからなぁ、お利口そうな顔をしながら内心じゃあ他人を見下してヘラヘラ笑ってたんだろうが……あぁ、わかりやすいぜ、自分以外は無能にしか見えねえって面してやがる」
お前に僕の何がわかるというんだ。その顔でこっちを見るのは止めてくれ。
「強引に話を進めないでください、僕の言い分も聞くべきだ、これじゃあただのリンチです」
「ほぉ、さぞ御立派な言い訳してくれるんだろうな」
「僕は無罪です、それを証明します」
まずは会話の主導権を取り戻さないといけない、全てはそこからだ。
だというのに、まるでタイミングを計ったかのように僕の言葉はまたもや遮られることになってしまう。
「ん? これはなんの集まりだ?」
生徒会室の扉が開いて、廊下から姿を現したのは元生徒会長の南雲雅だった。そのせいで全員の意識と視線がそちらに向いてしまい、僕が話を切り出すタイミングを逃してしまうことになった。
なんだ、これは……一体、何がどうなってる? 綾小路清隆はどこだ、僕とあの男の宿命の戦いはどこにあるんだ。
「櫛田に龍園に八神に、それと先生方……どうされたんですか?」
「事情聴取の途中だ、生徒会室が空いていたので臨時で使わせて貰っている、すまないな」
「あぁ別に構いませんよ真嶋先生、それに丁度良かったので……実は俺も八神に話がありまして」
そう言って南雲先輩は折れた足を庇うように松葉杖を突きながら生徒会室に入って来る。その瞳は僕に向けられていた。もう数え切れないほど感じたうなじの悪寒がまたもや感じられてしまう。
「実はタレコミがあってな、無人島で俺を突き落としたのは八神なんじゃないかって話だ」
「そんな馬鹿な!?」
他の話ならともかくその話に関しては完全に無関係だぞ、誰だそんなことを言い出したのは。
「ククク、おいおい八神。テメエ、本当にやりたい放題じゃねえか、カツアゲに襲撃に複数の生徒を蹴り落とすなんざ……お~、怖え怖え、大人しそうな顔して滅茶苦茶やりやがる」
「カツアゲ? 龍園、なんの話をしている?」
「櫛田が八神からカツアゲされてるんだとよ」
「……ほう」
南雲先輩の瞳もまた疑わしそうな色が混ざってしまう、いつまでたっても話の主導権が握れない。
「あぁ安心しろよ八神、俺は生徒会で働いているお前を知っているから、情報元もハッキリしないタレコミを信じて一方的に疑ったりはしないが……しかし、カツアゲ疑惑とはな、とりあえず話でもしようと思っただけだが、どうやら話はかなり複雑らしい」
疑わないと言っている割には、その顔は可哀想な相手でも見るかのように冷めきっている。既に南雲先輩の中では僕は容疑者の一人に入っているらしい……それだけは絶対に冤罪だというのに。
この場にいる全員が、僕を疑っている。既にこいつならやりかねないと言う印象を持たれてしまっている……その時点で学校側は調査をするだろうし、言い訳が出来ない状況だって作り上げるだろう。
なにより厄介なのは、僕がその状況や疑惑を覆せないという点だ。疑惑は幾らでもあるけど、証明は一つもなかった。
「お前か……お前がこの状況を作ったのか」
綾小路清隆……僕の宿敵、越えなければいけない壁、だというのにそいつはまだ姿すら見せていない。
なのに、僕はもう詰みまで追い詰められてしまっている。
「何故、こんな馬鹿なことが……ま、まだ彼と戦っても、いや、それ以前の状態なのに? こんなところで、終わる? 終わるなんて、そんな馬鹿なッ……直接相手するまでもないということか。はッ、はッ……ふざけるな、ふざけるなぁッ!!」
「落ち着けよ八神、まだお前が黒と決まった訳じゃないんだ、とりあえず話してみろよ」
「黙ってろ三下ッ!? これは僕とアイツの戦いだ、無関係の奴が水を差すな!!」
「……あぁ?」
落ち着かせようとこちらの肩に手をかけようとしてきた南雲の手を勢いよく叩いて遠ざけると、元生徒会長は苛立ちを露わにするのだった。
けれどここまで来れば有象無象の印象や認識なんてどうでもいい、重要なのはただ一つ、僕にとってはいつだってあの男だけだ。
「ははははッ!! いいさ、今から、今からアイツを、アイツをこの手でぶっ殺せばいいんだろう!! そうすれば僕はあるべき場所に帰れる筈だ、道連れにしてやるよ……何を難しく考えていたんだ僕は、最初からこうすれば良かったんだ!!」
複雑に考えすぎていた、もっとシンプルで良かったんだ。ウダウダ悩まずに、頭脳戦だなんて考えずに、最初からこれで良かったんだ。
もっと自由に生きれば良かった、それだけの話である。
あの男を叩き潰す、堂々と正面から殺しつくす、邪魔する者は全て吹き飛ばして、最後の最後まで暴れまわる。そうやって生きればいいだけの話を、なんでこんなに複雑に考えていたんだろうか。
全てをねじ伏せれば、それで証明になるんだ。
だから僕は、まずは手始めに目の前にいた南雲雅の顔面を全力で殴りつけると、そのまま脇腹を蹴り上げてからくの字に曲がった体を掴み、力づくで投げ飛ばすのだった。
宙を舞う南雲の体は、そのまま真嶋先生を巻き込んで生徒会室の扉を粉砕すると、二人一緒に廊下へと転がっていくことになる。
あぁ、気分がいい。暴力的な行動なんてらしくないと思っていたけれど、こんなにも気楽になれるのか。
僕は理解した、人間よりもゴリラの方が気楽に生きられると。
さぁ始めよう、証明になってくれ綾小路清隆、僕が本物の天才だってことを!!
因みに、原作で八神くんを止めて回収しに来たホワイトルームの人たちは、全員が綾小路にボッシュ―トされています。