ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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サバイバル試験 8

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三日目、四日目、そして五日目も特に大きな問題も無く進んだと思う。探索班の頑張りで食料は充実、拠点は何も問題は無し、何よりスポットの独占で大量ポイントが確保できるんだという安心感と余裕が、クラスメイトたちに良い影響を与えたらしい。

 

 その頃になると拠点は完成している、島だって大半が探索済みになる。つまり生徒たちの多くが暇になってしまう訳だ。

 

 川で泳いだりする者もいれば、昼寝をする者もいる。そしてそれを咎めるような人もいない。やるべきことは既に終わっているからだ。

 

 トウモロコシも取り尽くし、スイカだって同じ、どれだけ掘り起こしても芋一つ出てこない、地図だって完成して、本当にやることがない状態だった。

 

 後は節約しつつ試験の終了を待つだけ、そんな雰囲気が広がるのも仕方がないんだろう。

 

 俺がその間にやったことと言えば、巧妙にカモフラージュされていたスポット装置を見つけて引っこ抜いたり、Aクラスがスポットの更新をする前に一時的にフリーになったスポット装置を持って帰ったりだ。他にも引っこ抜いたり、引きちぎったり、壁から取り外したり、後は海辺で魚を確保したり、クラスメイトに誘われて一緒に遊んだりと似たような感じである。そして夜になれば暇つぶしの文化活動に勤しむ。

 

 嬉しい誤算だったのは、試験開始直後は十個くらいを集めることを目標としていたのだが、それ以上の数を集められたことだろうか。

 

 多分、この島に設置されたスポット装置は九割以上がDクラスが独占しているんじゃないだろうか。

 

 暇つぶしの文化的活動も順調である。夜を越える度に狐が増えていく。クラスメイトたちは朝起きる度に数が増えてる狐を見て少し怖がっているようにも思えたが、縁起物なのでそこは喜んで欲しい。ついでに清隆に製作を頼んだこぢんまりとした祠も完成間近であった。

 

 試験が終わって帰る頃には、良い感じになっているんだろうな。

 

 因みに龍園だが、やはり島に潜伏していたと清隆が報告してきた。どうやら一人で偵察に出て彼を発見して速やかに帰って来たらしい。清隆こそNINJAなのかもしれない。

 

 無線機片手にスパイからの報告を待ちわびている龍園を憐れむしかないだろう。もうこの試験の着地点や終わらせ方は決まっているのだから、彼の執念は空振ることになる。

 

 何も問題は無い。ぶっちゃけ清隆の作戦と俺の作戦が組み合わされば無敵の状態だった。

 

 大量ポイントを得られるのは間違いないし、最後の最後でリタイアさせてしまえばリーダーが看破されることもない。つまりスポット回収作戦で得たボーナスポイントが吹き飛ぶ心配もないのだ。

 

 龍園は今頃干からびているかもしれないな。いや、Aクラスに保護されている場合は思っていた以上に寛いでいる可能性もあるのか?

 

 既にこの試験をどう乗り越えるかではなく、どう終わらせるかを考えているのがこちら側である。その時点でもう勝敗はついているのだ。

 

 色々と考えられることも多いので迷い所だろう。清隆と相談してAクラスに多少の花を持たせつつ……どうして彼らを介護する方向性になっているんだろうか、Aクラスは敵なのに。

 

「なぁ……ちょっと話があるんだけど、良いか?」

 

 どう着地させるかを考えている六日目の夜。つまりは明日の点呼で試験は終わりとなる最後の夜だ。俺は相変わらず石を削って狐を作っており、その隣で清隆がどこか満足気な顔でこぢんまりとした祠を眺めている時に、とうとう伊吹さんが動き出す。

 

 四日目や五日目辺りでかなり焦った様子を見せていた伊吹さんだが、遂に最後の夜となったことで後が無くなって動き出すことを決めたのだろう。

 

 昼間は人目があってなかなか動けない。でも夜は俺が不寝番をしているので動けない。せっかくスパイとして潜入したのに何一つ動けないまま最後の夜である。盛大に焦っているのが伝わって来た。

 

「伊吹さん……どうかしたのかい?」

 

「えっと……できれば、二人で話したい」

 

 彼女の視線は満足そうに祠を眺めている清隆に向いている。

 

「あ~……邪魔か?」

 

「どうやら俺と二人で話したいらしい。清隆、すまないが」

 

「わかった、俺はもう寝るよ」

 

 彼と視線が結び合う。こちらの意思や思惑は伝わったのだろう。清隆は頷いてこの場から離れていく。

 

「どうぞ、座って」

 

「あぁ……」

 

 清隆が去ったことで伊吹さんは俺の正面にある丸太に腰かける。

 

「それで、話ってなにかな?」

 

「……」

 

 伊吹さんは無言だ。視線は忙しそうに右往左往しており、最終的に迷いながら篝火の向こうにいた俺と視線が結び合った。

 

「その……」

 

 とても言い辛そうに、それでも言葉にするしかないのが彼女の状況だ。

 

「私はさ……スパイなんだ」

 

「そうなのか」

 

「驚かないんだな?」

 

「別におかしなことでもないしね。この状況で他クラスの人がいればどんな人だって一度はそう考える……疑問なのはどうして今、それを打ち明けたかってことだ」

 

「……」

 

「当ててあげようか? せっかく潜入したのに何もできないまま最後の夜になって、焦ってるんだろう?」

 

「ッ……」

 

 彼女の視線が鋭くなる。こちらを射貫くかのように。

 

「最初から、全部わかって……だから一度も寝なかったのか」

 

「そうだね。ただ別に伊吹さんがいなくても俺は寝なかったよ。他所のクラスから工作員が来るかもしれないからさ」

 

「滅茶苦茶だな、アンタ」

 

「俺にできる範囲で最善を尽くしているだけだ……知りたいのはそんなことじゃないんだろ。伊吹さんは何が知りたいんだい?」

 

「……リーダーを教えて欲しい」

 

「無茶を言う」

 

「アンタは龍園がどんな男か知ってるだろ? 何も成果が上げられないと……私はきっと」

 

 そこで伊吹さんは視線を下げて打ちひしがれた雰囲気を見せて来る。

 

 

 

 なるほど、俺をお人好しと判断して泣き落としに出てきたか。いや、もうそれ以外にできることが無いのかもしれない。大胆なのか雑なのかよくわからない作戦だった。けれどこれは朝も夜も監視の目が絶えない彼女にできる唯一の手段とも言えるのだろう。

 

 

 

 

「きっと、酷いことされる……絶対に……だから、助けてほしい」

 

「……」

 

 おそらく本音が半分、同時に策略半分の発言なんだろうな。

 

 伊吹さんのCクラスでの立ち位置や龍園との距離感はハッキリとわからないし、このスパイ作戦に彼女が納得しているのかもわからないが、絶対に協力しないと言わずに手伝っているのは事実だ。

 

 内心ではふざけんなと思っているのかもしれないが、冷静な部分では賛同もしている、そんな所だろうか。

 

「やれやれ、女性にそんな顔されると、辛いものがあるな」

 

「なら……教えてくれるのか?」

 

「さてね。その前に色々訊いてみたいことがある。例えば伊吹さんは誰がリーダーだと思うんだい?」

 

「平田か、櫛田、アンタか堀北……後は、名前は知らないけど、アンタとよく一緒にいる男子」

 

「なるほど、五分の一にまで絞れてる訳か……博打をするには心許ない数字だ」

 

「あぁ」

 

 スポットを更新する時はクラスメイトで壁を作り、その中に今言ったメンバーが必ず入る形だったので、そこまで絞り込めるのは不思議なことでもないな。

 

 でもそれ以上を詰めることができないまま最終日の夜だ。泣き落としに出てくるのもわからなくはない。

 

 もし俺が眠っていたら色々な妨害行動に出ていたのだろうか、だが一度も熟睡しなかったので動きたくても動けなかったらしい。

 

「……」

 

「……」

 

 俺と伊吹さんの視線が篝火を挟んで結び合う。ここで教えないと言った瞬間に殴り合いでも始まりそうな雰囲気だな。

 

 どうしたもんかな、別にリーダーを明かしてしまうことは問題はないけど。その場合は着地点が大きくズレることになりそうだ。

 

 Aクラスの派閥争いを長引かせたいので、彼らには今回の試験で二位になって欲しい。

 

 だがここで伊吹さんにリーダーを明かした場合、その情報は協力関係にあるAクラスにも流れて葛城はこちらのリーダーを指名してくるだろう。

 

 だがそうなった場合こちらのリーダーは変わっているので彼らは大きなマイナスを受けることになる。どうせ龍園も裏切るだろうから更にマイナスになってしまう。おそらく彼らが初期から保有している270ポイントは全く使っていないので、この時点で170までポイントが下がることになるのだ。

 

 もしここでDクラスがAクラスのリーダーを指名すると更に下がることになる。葛城の立場を維持する為にはそこまで追い込むことはできないけど。

 

 170ポイントか、二位にはなれるか? 一之瀬さん辺りと拮抗しそうな数字だろうか。

 

 うん、こんな感じで良いのかな。二位なら完全な失態とは言えない。多分だけど。

 

 いや、葛城は慎重な男だ。確実にリーダーだと証明できるような証拠でもない限りは指名してこないか?

 

 だとすると、伊吹さんにリーダーであることを明かして、それ以上の情報は与えないのがベストかもしれない。鞄の中にあるカメラで撮影とかされてそれがAクラスに渡ると絶対に指名してくるだろうし。

 

 ここは、葛城の堅実さと慎重さに賭けるとするか。

 

 清隆も、1パーセントでもリーダーが看破されている可能性があるのならば、終了直前にリーダーを変更させることに賛成だろうしね。30ポイントのペナルティなんて今となっては大した損でもないしここは万全に対処すべきだろう。

 

 Aクラスにはこちらのリーダーを指名させない。そしてこちらからはAクラスのリーダを指名して、そこに龍園の指名も合わさってマイナス100ポイントとスポット占有で得たボーナスの全損で二位……ギリギリ擁護できなくはないか?

 

 ここで更にAクラスのリーダー指名失敗が加わればマイナス150ポイントで致命的になるだろうけど、そうなればおそらく三位で終わるだろうな。

 

 

「アンタはその……お人好しって言うか……優しい、男だろ? だから私を、助けてほしい、このままだと……」

 

 

 この子は意外にも演技派なのかもしれない。本当に暴力に怯える感じの雰囲気が上手い。ただ本音は違うんだろうけど。

 

「ん……確かに、龍園は女性が相手であっても容赦はしないかもね」

 

「……なら」

 

「俺としても、こんなことで理不尽な暴力を振るわれる君を見たくはない」

 

「良いのか?」

 

 少し驚いた様子の伊吹さん。もしかしたら彼女自身もこんな泣き落としが通じるとは思っていなかったのかもしれない。本当に最後の最後にとっておいた無茶な作戦みたいな位置付けなんだろうか。

 

「良くはない、でも君が困るんだろ?」

 

「あぁ……」

 

「なら、助けるさ」

 

「お人好しだな、ほんとに……」

 

「あぁ、お人好しさ……でもその方が、カッコいいだろ」

 

 龍園が女性が相手であっても容赦しないのは事実だし、伊吹さんが成果を上げられない場合は制裁されてしまう可能性も完全には否定できない。

 

 そして俺が彼女の立場や身を案じているのも、嘘偽りない事実だ。スパイであるかどうか、この泣き落としが本音であるかどうかはあまり関係が無い。

 

 だからここは、伊吹さんではなく龍園の判断ミスという形に落ち着かせるとしよう。

 

「Dクラスのリーダーは堀北さんだ」

 

「……」

 

「でも提示できる証拠は何もない。彼女がカードキーを管理しているからね。俺の言葉だけだ」

 

「嘘じゃないんだな?」

 

「信じるか信じないかは、伊吹さん次第だ……後の判断は他人に任せれば良い。それでCクラスがどうなるのかなんて責任はそいつが背負うものだろう。君は無茶な仕事を押し付けられながらも成果を持ち帰った、それをどうするかは君に関係が無い」

 

「……」

 

 篝火の向こうにいる伊吹さんはかなり悩んでいるようにも見える。さっきまでの泣き落としと言うか、弱った演技はどこにやってしまったんだと言いたくなる様子だ。

 

 やはり写真で残すとかして確かな証拠が欲しいんだろうか? でもそうなったら葛城の失態が致命的になって派閥争いが終わりそうなんだよな。

 

「俺は、君が心配だ……そこに嘘偽りはない」

 

 結び合った視線は途切れてはいない。ただ伊吹さんは俺の言葉と視線にどこか居心地が悪そうにしているようにも見える。

 

「わかった……アンタの言葉が本当かどうかはわからないけど、そう報告する」

 

「因みに誰に報告するんだい? Cクラスは全員がリタイアした筈だ。島に残っているのは君と……Bクラスに保護されていた生徒もいたか、確か金田だったかな?」

 

「あ、あぁ、そいつだ……」

 

「もしかして他にもいる? 誰がリーダーをしてるのかな?」

 

「そこまでは、わからない……私はただ、わかったことがあれば金田に報告しろって言われてるだけだから」

 

「そっか……俺は金田がリーダーかと思ってたんだけど」

 

「アイツは頭が良い……もしかしたらそうなのかもな」

 

 伊吹さんに嘘を付かれてしまった。こっちは素直に教えたのに。ちょっと悲しい。

 

 だがまぁ明日の朝にはこの試験も終わる。伊吹さんには後がないし時間もない、真偽を確かめることもできないのだ。後は龍園に丸投げだろうな。

 

 彼女からの報告を受けて龍園はどんな判断するだろうか? もしかしたら罠と疑って指名してこない可能性もあるだろう。

 

 だが龍園がどんな判断をしてどう行動しようが、リーダーは絶対に終了直後に変更になるので意味が無い。

 

 もう終わり方は決まっているんだ、Dクラスの一位という形で。

 

「その……ありがと」

 

「お気になさらず。女性には優しくするものだって尊敬する人が言っていたから、俺はそうありたいと思ってるだけだ」

 

「変な奴だな」

 

「カッコつけたいお年頃なのさ」

 

 その言葉に伊吹さんが少しだけ笑ってくれた。馬鹿にしたような感じではあったけど好意的な感情も見えたのは気のせいではないだろう。

 

 彼女は腰かけていた丸太から立ち上がってDクラスのベースキャンプを離れていく。おそらく隠した無線機で報告する筈だ。

 

 彼女の気配が完全に森の中に消えた段階で、清隆がこちらに戻って来た。

 

「話は聞いていたのかい?」

 

「ある程度はな」

 

 それなりに距離があった筈だけど、身を隠していた彼にも話の内容は聞こえていたらしい。耳が良いのだろう。

 

「まさかスパイであることを暴露するとはな……」

 

「後が無いんだろう、そして時間もないから、とても焦っている様子だった」

 

「だから泣き落としで同情を誘ったのか……まぁ、一週間も寝ないまま見張りをしている奴がいるんだ、動き辛かっただろうな」

 

「かもしれないね……さて、リーダーの変更はどうしようか? もしかしたら龍園は曖昧な成果だから指名してこないかもしれないけど」

 

「いや、1パーセントでも危険があるのなら変更すべきだ。このまま交代しなかった場合の不安要素とペナルティが大きすぎる」

 

「指名されるとマイナス50ポイントに加えて、スポット回収作戦で得たボーナスポイントも全部無効になっちゃうし、やらない訳にはいかないか」

 

 このリタイアによるリーダーの変更は、相手を勘違いさせて貶めるというよりは、自分たちが稼いだポイントを確定させることの方に重きがあるリタイアなのかもしれないな。

 

「あれだけお前が大量のスポットを独占したんだ。リタイアによるマイナス30ポイント程度は惜しくはない」

 

 やらない場合のリスクが大きすぎて、やった場合はほぼほぼ利益を確定できるんだからな、リタイアさせない理由がない。

 

 やっぱりスポット独占作戦と、リーダー変更作戦のコンボが強すぎだ。他所のクラスが何をどうしようが勝ち目がない。

 

「堀北はそっちで説得してくれ。おそらくオレが言っても納得しない筈だ」

 

「わかった……時間もないからさっそく動こうかな」

 

「宜しく頼む」

 

 清隆はそう言って男子チームのテントに戻っていく。おそらく寝るんだろう。

 

 逆に俺は女子チームのテントに近づいていく。そして少しだけ咳ばらいをして声をかけた。

 

「あ~……夜中に失礼する。誰か起きている人はいるかな?」

 

 時間帯的にはそろそろ皆寝ていてもおかしくはない時刻である。そんな時間に男が訪ねて来ると不安にさせてしまうかもしれないが、必要なことなんだと納得するしかない。

 

「え、笹凪くん? なに、もしかして夜這い?」

 

「おいおい、女子チームのテントには大勢いるだろうに、堂々と夜這いに行く奴がいるものか」

 

「あはは、なにそれ、もし一人だけなら夜這いするみたいに聞こえるけど」

 

「さてね、その時のお楽しみとしておいてくれ」

 

 テントから顔を出したのは松下さんであった。他にもモゾモゾと動く気配があるので何名かは起きていたらしい。もしかしたらお喋りでもしていたのだろうか。

 

「それで、どうしたの?」

 

「悪いんだけど堀北さんを呼んでもらえないだろうか? とても重要な話があるんだ」

 

「告白するんなら時と場所を考えた方が良いんじゃない?」

 

「もちろんそうするとも……だけど今は告白云々じゃなくて、この特別試験を乗り越える為に重要な相談を彼女としたいんだ」

 

「わかった。堀北さん、笹凪くんが呼んでるよ」

 

「そのようね」

 

 どうやら堀北さんも起きていたらしい。テントから姿を現した。

 

「試験のことで相談……一体何かしら?」

 

「色々と説明するよ、まずは――――」

 

 そこから俺はこれまでのことを堀北さんに説明していく。主にリーダー変更作戦の重要性と、このままリタイアしなかった場合の危険性を中心に。

 

「そんな訳で、堀北さんにはリタイアして欲しいんだ」

 

「……」

 

 堀北さんは顎に手を当てて考え込む。少しだけ感心しているようにも見えるし、呆れているようにも見えた。

 

「スポット独占作戦といい、こんな作戦まで考えつくなんて……」

 

「いや、このリーダー変更作戦を考えたのは俺じゃなくて、清隆だよ」

 

「綾小路くんが?」

 

「あぁ、面白いこと考えるよ」

 

「……そう、彼が、ね」

 

 多分、彼女の中で清隆の評価はイマイチ定まっていなかったんだろう。テストを全て50点で揃えたりするので変な疑念はあったようだが、今回の件でよりそれが大きくなったようにも思える。

 

「事情はわかったわ、納得もした……確かにリタイアしてリーダーを変えないとリスクが大きいわね。30ポイントのペナルティで利益を確定させましょう」

 

 もしリーダーを指名されてしまうと、スポットの独占で得たボーナスポイントも無効扱いになってしまうからね。

 

 もしかしたら龍園は指名してこないかもしれない。伊吹さんの情報は曖昧だから。けれどそれでもと考えられたら最悪だし、例え情報が曖昧であっても五分の一の運試しをする可能性も否定はできない。

 

 考えたくはないが、一之瀬さん率いるBクラスが秘密裏に偵察を繰り返してこちらのリーダーを看破して指名してくる可能性だって、決してゼロではないのだ。

 

 だからどんな展開だろうとリーダーのリタイアは必須だ。指名されないかもしれないではなく、こちらの利益を確定させる為にと考えなきゃ駄目だろう。

 

「あぁ、だからお願いするよ……堀北さん、体調も悪いみたいだし、嘘にもならないしね」

 

「別に、耐えられないほどでもないけれど……」

 

「変に強がらなくて良いさ、熱は……それなりにあるじゃないか」

 

「ちょ、ちょっと……いきなり……ぁ」

 

 堀北さんの額に掌を重ね合わせる。そこから感じ取れる体温は平熱とは言えないものだった。

 

「よく頑張ったね、君は凄い人だ。体調が悪いのにしっかりとクラスの為に働いたんだ、誰も責めたりしないさ」

 

「ば、バカ……は、離しなさい……いつまで触ってるつもりなのよ、もう」

 

 前から思ってたんだけど、堀北さんは褒めて伸ばした方が良いんじゃないかな? 生徒会長は接し方を間違えていた疑惑がある。

 

 体温を測っていた掌を離して彼女と距離を取る。睨むでもなく怒るでもなく、羞恥に頬を染める彼女を見ていると、思わず笑みがこぼれてしまった。

 

「行こうか。森の中を一人で歩かせる訳にもいかないし、船まで送っていくよ」

 

「……えぇ、お願いするわ」

 

 こうして俺たちDクラスの特別試験は終わることになる。後は結果発表を待つだけとなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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