ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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天武「±ゼロ!! ±ゼロだから!! 絶対に損させないから!! いや、寧ろこれは君に利益のある話だから!! だからこの契約書にサインしようね」


船上試験 3

 

 

 

 

 

 

 堀北さんと清隆を交えて今後の方針を語り合い。最終的にこんな形に着地させられたら良いなって感じの決着を共有した段階で時間が来て、それぞれが指定された部屋に向かいいよいよ特別試験が始まることになった。

 

 平田と櫛田さんと合流して、四人で部屋の中にはいると既に何人かは席に座っているのが確認できる。

 

 俺たちが席に座ると最後に時間にルーズそうな龍園たちがギリギリでやって来てニヤニヤしながら席に座った。

 

 そして船内放送が試験の開始を告げた段階で、遂に特別試験が始まるのだった。

 

「とりあえず自己紹介から始めるかい? もしかしたら互いの名前や顔が一致していない人もいるかもしれない」

 

 平田がまずはそう伝える。話し合いの滑り出しとしては無難で何も問題はない。ただしここに集った面子が最悪という点を除けば百点だろう。

 

「はッ、この面子でか?」

 

 ほら見ろ、さっそく龍園がケチ付けだしたぞ。

 

「うん、学校側からの指示でもあるし、仮にそれを無視した場合は何らかのペナルティが与えられる可能性だってゼロではないと僕は思う。せめて自己紹介くらいはした方が良いんじゃないかな」

 

「平田に同感だ。最低限、それくらいは行うべきだろう」

 

 葛城は試験が始まったばかりなのに目を閉じて渋面を作っており、龍園はニヤニヤと馬鹿にするかのような笑みを浮かべている。そんなリーダーたちの対応に引っ張られているのかそれぞれのクラスの生徒たちも似たような感じである。こんな所にも性格が出るな。

 

 そんな中であっても神崎だけはいつもの冷静沈着な表情と佇まいである。あまり表に出る男ではないが物静かな雰囲気は女子たちの中で評価が高いらしい。平田に同調して会議を進めようという意思も高評価であった。

 

「そうだな、では自己紹介くらいはしておこうか」

 

 部屋に入ってきてからずっと仏頂面だった葛城も重たい口を開く。そこからようやく自己紹介が始まる。

 

 それぞれの名前と所属クラスを説明して、特別試験のスタートが切られるのだった。

 

 しかし、あれだな、龍園が自己紹介している光景は変な感じだ。あまりにも似合っていない。熊が可愛らしい声で喋っているかのような違和感すら感じてしまう。本人に言ったら怒るだろうけど。

 

「さて、こうして集まってそれぞれの結果を追い求める形になるけど。意見はあるかな?」

 

 ここから先は俺と平田がバトンタッチする。彼にもこっちの思惑や考えは伝えてあるので任せてくれと言うと納得してくれた。

 

 信頼が厚い気もするが、とてもやり易いのでありがたい反応である。

 

 部屋の中にいた全員の視線が俺に集まった。瞳に宿った感情や評価は様々ではあるが、誰もが総じて一定の評価を向けているのがよくわかるな。警戒もあるが侮りは皆無なのは喜ぶべきなのかもしれない。

 

 少なくとも侮られるよりはマシなのだろう。

 

 なにせお利口ゴリラだから。普通の人間はゴリラを前にしたら驚くものだからこの場にいる全員の反応は何も間違っていない……自分で言ってて悲しくなってくるな。

 

「それぞれのクラスの方針とか、求める結果とか、何かあるだろうか?」

 

「笹凪、お前はどうするつもりなんだ?」

 

 神崎の問いかけに俺は少し考えてからこう返す。

 

「ぶっちゃけるとそこまで大きな結果は求めてないかな。俺たちが欲しいのは意思と覚悟を固める時間ときっかけだからね」

 

「どういうことだ」

 

「そのままの意味さ。こう言っちゃうとあれだけど、俺たちのクラスは学年で最も総合力が低い集団だと思っている。一時的な個人技や奇抜な発想で試験に勝てたとしてもそれが長続きするだなんて思ってないんだ……そう考えると今の立ち位置は凄く良い。Aクラスの背中が見えて、他のクラスからも追い抜かれるかもしれないという危機感が同時に味わえるからね」

 

「なるほど、今はAクラスを目指すのではなく、地力を付けることを優先しているのか」

 

「その通りだよ神崎、何せまだ一年の夏だ。焦るような時期でもない。だからこの試験はマイナスになりさえしなければ良いとさえ考えてる。もちろん、利益を確保できればそれに越したことはないだろうけどね」

 

「ふむ、ではどんな結果を望むんだ?」

 

「やっぱり結果1かな。これが一番大きなポイントが貰える……まぁ簡単ではないんだろうけど。神崎はどうだい?」

 

 因みに、結果1を目指しているというのは完全に嘘である。いや、できたら良いとは思ってるけどほぼほぼ不可能だから別の道を模索した結果としてそうなってしまった。

 

「結果3だ。笹凪には悪いがな」

 

「構わないさ。戦略目標としては当然だ。君たちのクラスはウチと違って地力も意思も覚悟もあるだろうから。Aクラスになったとしてもプレッシャーに押しつぶされることも無ければ、慢心することもないだろう」

 

 Aクラスに続いて総合力の高いクラスだからな、一之瀬さんクラスは。

 

「それじゃあ龍園はどうだい? 求める結果とか、方針とか何かしらあるだろう?」

 

「それをお前に教える必要がどこにある?」

 

「話さないってことかい? まぁ会議の内容は生徒に一任されてるからそれも一つの戦略なんだろうけどさ……もしかしてAクラスも同じ方針なのかな?」

 

 これまでずっと仏頂面で黙りこくっていた葛城に視線をやると、彼は当然とばかりに頷いて見せた。

 

「Aクラスは沈黙とさせてもらうつもりだ。この試験はそれこそが必勝方法だろう。何より誰も損をすることなく大量のプライベートポイントを得ることができる。下手に疑い裏切り者を出すことは絶対に避けなければならない」

 

「だから沈黙か」

 

「そうだ。笹凪も同意見のようだが?」

 

「……大量のプライベートポイントが手に入るのは嬉しいね。ただそれが実現できればの話だけど」

 

 絶対に無理だろう。必ず裏切りものが出るし、そうなるように学校側が仕向けてる試験だぞ? そもそもAクラスには葛城を失脚させたい勢力がいるのでどれだけ黙ろうが必ず情報を横流しされるだろう。

 

 彼はその辺をわかっているのだろうか? これだと慎重ではなくて臆病なだけになっている。

 

「貴方の主張は、他クラスから距離を詰められたくない思惑が透けて見えるわね」

 

 堀北さんの言葉が全てである。全員が損をしないと言うが、結局はそこに葛城の主張は集約されるのだ。

 

「何と言われようとこちらの方針は変わらないAクラスは沈黙とさせてもらう」

 

 その言葉を最後に、葛城とAクラスの生徒たちは完全に黙ってしまう。この感じだと他のグループも似たような感じになるんだろう。

 

「さてどうしたもんかな。4クラス中、2クラスがだんまりだ。これじゃあ話し合いが成立しそうにない」

 

 別に個人的にはそんな状況も悪くない。この会議で確認したかったのは各クラスの優待者ではなく方針や考え、そして現状への焦りである。

 

 それさえ確認できれば後はだんまりでも問題はない。

 

 仏頂面の葛城率いるAクラス、にやけ面の龍園、そんな両者を何とも言えない顔で見つめる神崎、そして苦笑いする平田と櫛田さん。

 

 うん、わかってはいたことだけど、この面子で会議だなんて無理だ。

 

 まぁ構わないさ。どう勝つかではなく、どう終わらせるかをこちらは考えているんだから。そもそも話し合いなんて茶番であり無駄なことでしかない。

 

 俺がこの会議で確認したかったことはただ一つ。それは優待者の存在ではなく、各クラスの、正確には葛城が感じている危機感である。

 

 それがわかったので、もう俺の中で特別試験は終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍園は面白いと俺は思う。これは別に侮っている訳でもなければ煽っている訳でもなく、純粋な賞賛であり評価でもある。

 

 俺は無人島試験でどれだけ効率的にスポットからポイントを吐き出させることをゴールとして動いていたが、彼はリーダー当てに焦点を当てて、かつそれが失敗した時の保険としてAクラスからポイントを毟りとる作戦も同時に走らせていた。

 

 面白い発想であり、同時に無駄のない作戦でもある。結果的にリーダー当ての方は失敗してしまったが。だからといってこの作戦が完全に誤りであったとは思えない。

 

 結果論で全てを語れないということだ。そこは凄く評価できるし、清隆も同意見だった。

 

 だからこそ今回はそれを参考にしようと思う。

 

 師匠曰く、参考にできる所はしっかり盗めだ。

 

「葛城、少し話が……いや、取引があるんだが、耳を傾けてくれないか?」

 

「……」

 

 一回目の会議が終ってすぐ、先に退出して廊下を歩いているずっとだんまりだった葛城に声をかける。相変わらず仏頂面のままであり。何も話すことは無いと視線で訴えていた。

 

 この状態では何を言った所で彼の表情が変わることはないだろう。せっかくなのでお茶でもしながら話し合いたいんだけどな。

 

「お茶でもしながら話さないかい?」

 

「……」

 

 何か喋ってくれよ。ゴリラと会話はできないと思ってるのかな?

 

「君と俺たちにとって重要な話をしたいのさ。もちろん、嫌ならこのまま去ってくれて構わないんだけど」

 

 やはり話すつもりはないのだろう。俺がそう言うと葛城は仏頂面のままその場から去ろうとする。

 

 そんな彼に、俺はAクラスの優待者の名前を小さく告げた。

 

「ッ!?」

 

 驚いてるなぁ、当たり前のことだけど。

 

 そして同時に、俺たちの優待者推測が正しいことをこの瞬間に確信するのだった。

 

「わかりやすく動揺しちゃ駄目だよ。こういう時は例え図星でも不敵に笑って何のことだって言い返さないと」

 

「どこから情報を得た? また坂柳派か?」

 

 そう言えば無人島では坂柳派のリークでリーダー指名に成功したことになってるんだったか、嘘なんだけどとても都合が良いので押し通す。

 

「さてね……重要なのはそこではなく、俺たちが今すぐこの試験を終わらせられるってことだ。それもAクラスの大敗という形で……話を聞く気分にはなったかな?」

 

「解せないな。仮にお前の情報が事実だったとして、わざわざ俺と話などしないままさっさと終わらせることもできる筈だ」

 

「応とも、ウチのクラスの状況次第ではそうしていただろうね。でも今はまだその時じゃないってことさ」

 

「……」

 

「まぁゆっくり話そうよ。遊戯室でさ」

 

 歩き出して船内にある遊戯室に向かう。さすがに葛城も無視を決め込むことが出来なかったのか黙って付いてきてくれる。

 

 昨晩に清隆と一緒にビリヤードを楽しんだ遊戯室は閑散としていた。試験の緊張と雰囲気で和やかに遊ぼうとはならなかったのだろう。人がいないのは好都合だった。

 

「ダーツでもしながら話そうか」

 

「さっさと本題に入れ」

 

「せっかちな人だ……これから協力関係を結ぶんだから穏やかに行こうよ」

 

 ダーツの矢を借りて的に向かって投げると、上手にど真ん中に突き刺さる。この手の暗器の扱いは師匠から叩き込まれているので、おそらく外すことはないだろう。

 

「俺たちは既に全てのクラスの優待者を把握している」

 

「不可能だ」

 

「でもAクラスの優待者は正解だっただろう? あれは坂柳派のリークじゃなくてこちらが地力で辿り着いた結果だ」

 

「……」

 

 葛城の渋面が留まる所を知らない勢いだ。苦虫でも噛んでいるのかもしれない。

 

「さっきの話し合いで言ったと思うけど、Dクラスの総合力って学年で最下位だと思うんだ。信頼、団結、意思、そして学力や覚悟……こんなことは言いたくないけど、Aクラスに上がった所で必ず調子に乗って慢心すると思う」

 

 誰がとは言わないけどね。

 

「俺たちが欲しいのはそういった欠点を補い埋められるだけの時間なんだ。だからBクラスって立場は凄く良いと思う。追う側と追われる側を一度に体験できるからね。ずっとDクラスにいるよりは総合力の向上に役立つだろう」

 

「だから今はAクラスになる必要はないと?」

 

「その通りだ……まだ一年の夏だからね、焦るような時期でもない。まぁこんな悩みは入学した段階でAクラスにいた君たちには考えられないことかもしれないけど」

 

 またダーツの矢を投げる。するとまたど真ん中に突き刺さった。

 

「無人島試験で大きくポイントを稼ぐことができた。心と財布にもある程度の余裕ができた。そんな今だからこそまずは意思と覚悟を問いかけて一致団結したいんだ。今のままAクラスに上がった所で先が見えてるからね」

 

「……お前の考えはわかった。本題に入ってくれ」

 

「あぁ、そうだね……ん、俺と君とで、つまりはAとDでこの特別試験を談合で終わらせようじゃないか」

 

「……」

 

 渋面が解けないな、もうそのまま帰ってこれないんじゃないだろうか。

 

「こちらが提供するのは優待者の情報、求めるのはプライベートポイント、どうだろうか?」

 

「具体的には?」

 

「今回の試験でプラスになったクラスポイントと同価値のプライベートポイントを、Aクラスの生徒全員から毎月支払って貰いたい。もし200ポイントなら2万だから全員で毎月80万だね」

 

 今度は渋面だけでなく眉間に皺が寄った。龍園を参考にして提示した契約だけど、彼の中では考えたくない出費なのだろう。

 

 当然だ、龍園の裏切りによって無人島では200ポイントを下回る成果しか得られなかったんだ。警戒しない訳がない。

 

「葛城、君は無人島で龍園と取引していた。物資を横流しして貰ってそれで乗り越えようとしていた、そうだね?」

 

「知っていたのか……」

 

「もしかして君はAクラス以外の生徒は馬鹿だと思っていないかな? 少し考えれば誰にだってわかることだよ」

 

「……」

 

 とりあえず黙るのは止めて欲しい、話が進まないから。

 

「ただ一つ言わせて貰うけどね。俺は君が取った戦略がそこまで酷いものだとは思っていない。結果こそ振るわなかったかもしれないが、だからといってその作戦が間違いであったとは思わないんだ」

 

 今度は少し距離を離してダーツの矢を投げる、吸い込まれるように真ん中に突き刺さった。

 

「君の決定的なミスは一つ、取引した相手が龍園だったというそれだけだ。そこだけが誤りだった……或いは、契約を結ぶ際に、互いのリーダーを指名しないという形で結ぶべきだったかもしれないね。石橋を叩いて渡るとはそういうことさ」

 

「お前は違うと?」

 

「少なくとも他者と接する時は誠意と敬意を持ちたいと思っている。それに後ろから突き刺すより正面からぶん殴った方が俺の場合は早い」

 

 それに、そういった役目は清隆が受け持ってくれているからな。俺は正面からぶん殴るだけである。とても楽だ。

 

「そうだね、石橋を叩くなんて言葉を使ったのはこちらだ……だからこんな契約を盛り込むのはどうだろうか? 例えば、もしこの取引でAクラスが損失を被った場合は、その補填としてウチのクラスがポイントを支払うとか。これなら君も安心だろう?」

 

「それは、そうだが……」

 

「もしマイナス100ポイントならこっちが同額のポイントを、200でも同じだ……どうかな?」

 

 顎に手を当てて小さく唸る葛城……この感じはあともう少しって感じかな。

 

「もしかしたら君はこう思ってるんじゃない? これではポイントによる買収で試験を乗り越えようとしているリーダーと思われるんじゃないかって」

 

「事実、そうだろう……クラスメイトからそう判断されてもおかしくはない」

 

「それは違う。君がどういう姿勢で試験に挑んでいるのかはしらないが、ポイント力、つまりは資金力を背景にした作戦や戦略は持てる者の基本戦略だ。それをなせるだけの立場と状況を誇って堂々と押し通すべきなんだよ」

 

 実際、資金力でぶん殴るというのは、とても単純で強力だ。根本的な対処が難しいほどに。

 

「確かにこの契約を結んだら相応のプライベートポイントが流出するだろう。けれどクラスポイントは確実に増えるんだ……±ゼロと考えるか、それとも+と考えるのか、それは君次第だ」

 

「……」

 

 渋面を解いて、目を閉じた状態で深く考え込む葛城は、暫くしてからこう言った。

 

「もしこの話を断ったら、どうするつもりだ?」

 

「一之瀬さんクラスに話を持っていくね。俺としてはそれでも構わない。重要なのは時間稼ぎと今の立場であって。別にAクラスがどこであるかなんてどうでも良い。寧ろ彼女の方が話を通しやすいまである」

 

 これは事実だ。龍園との取引もあるAクラスはもしこの契約を結んだ場合は俺たちにも莫大なポイントを払う必要が出て来る。幾らクラスポイントが増えたと言っても良い気分にはならないだろう。

 

 だから一之瀬さんクラスでも構わない。けれど都合が良いのは間違いなくAクラスだ。もしどこかで葛城が失脚して坂柳さんが指揮することになったとしても、龍園とウチの二重苦の支払いで動きを鈍らせることができる。

 

 寧ろ、この契約の本質はそこにあるのかもしれないな。

 

「考えても見てくれ、Aクラスは毎月10万ポイントが入って来る立場だ。何不自由なく高校生が過ごすには十分な額とも言える。仮に龍園とウチにポイントを支払ったとしても、それは余剰分を吐き出しているに過ぎないから10万を下回ることはない」

 

「……」

 

 だから黙らないでくれ。

 

「加えてもしこの試験で損害が出た場合は、俺たちがポイントを支払う側になる立場だ、君たちにマイナス要素は何もない」

 

 これは事実。Aクラスに上がる為の準備と時間が欲しい俺たちと、今の立場を維持したい葛城の立場は、協力関係を成立させられる。

 

「どうかな?」

 

 俺は今度こそ握手をと願って掌を差し出した。

 

 彼の視線は何度も掌と俺の顔を行き来して、最後には右手を差し出すことになるのだった。

 

 つまり、ここに取引は成立することになる。

 

「ありがとう、これで俺はクラスを纏めることに集中できそうだ」

 

「契約書はしっかり作る。抜け穴の無いようにだ」

 

「もちろんだ。君も龍園に裏切られた経験をしっかりと反映すると良い。失敗から学べる人間は強くなれるよ」

 

「それともう一つ、得たクラスポイントがどれだけになるか現時点ではわからないが。最低でも50ポイント以上は保証して欲しい……いや、配慮して欲しい、だな」

 

「どういうことかな?」

 

「龍園と結んだ契約は200ポイント分の物資と同額のプライベートポイントを支払うことだ。しかし結果として200ポイントを下回る結果になってしまった、そこを補填したい」

 

 なるほど、無人島試験では170ポイントしか得られなかったので、確実にその不足分くらいは消したいのだろう。

 

「ん……具体的には?」

 

「もし、仮にこの取引で200ポイントを得たとしよう。その場合は150ポイント分のプライベートポイントの支払いにして欲しい」

 

「こちらだけが一方的に損をする要求じゃないか」

 

「そうだな、無茶を言っている自覚はある……」

 

「ん……どうしたもんかな」

 

「代わりに、この試験で得た報酬のプライベートポイントの一部を支払う形でどうだろうか?」

 

「それに加えて、できれば君の連絡先とか知りたいな」

 

「良いだろう」

 

「ならそれで行こうか、勉強代とさせてもらうよ」

 

 

 結び合った掌はそこで別れた。契約は完全に成立したことになる。

 

 

 しかしあれだな。

 

 

 契約を持ちかけた俺がこんなことを言うのはどうかと思うけど……彼は将来、特殊詐欺とかに引っかかって大ポカやらかしたりしないだろうか? 今は良いかもしれないがもしAクラスのポイントが1000を下回ったら、いよいよ地獄の始まりである。

 

 慎重で堅実な男という評価が、少しだけ揺らいでしまっている。まぁ龍園と取引するよりはずっと信頼できると思われているんだろうけど、それでも心配になってくるな。

 

 いや、別に裏切るつもりはこれっぽっちもないんだけれども。

 

 ただこれでAクラスには大きくポイントを吐き出させることができるだろう。もし坂柳さんがリーダーになってもAクラスとの契約は続くので、俺と龍園の二重苦を継続させることができるのだ。

 

 Aクラスは大変だな……他人事のように、そう思うしかない。

 

 

 

 

 

 

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