ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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味方へのオートバフ、敵へのオートデバフ、ステータスは限界突破、幸運値カンスト、普通は100レベルでカンストなのに主人公だけ上限が1000レベル、おまけに取得経験値増加の特殊能力持ち……うん、天武くん完全にバグキャラだわ。もしゲームで出くわしたら負けイベかと思っちゃうね。こんなの人間じゃねえ!!

主人公をボコボコにした後に崖から落ちたのを見て「この高さだ、助かるまい」とか言い出しそうな最強キャラポジションになりそうだ。


騎馬戦……騎馬戦?

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の競技は二人三脚となる。ここで問題となるのが誰が俺の相棒になるかであった。

 

 悲しいことに付いていける訳がないとクラスメイトたちに恐れられているので、練習相手を決めるのにも苦労した覚えがある。

 

 仕方が無いので清隆を強引に巻き込むかと考えた辺りで、練習中に須藤がこんなことを言い出した。

 

「思ったんだけどよ、相棒を担いで一気に走り抜けたら、足が遅い奴と組んでもいいんじゃねえか? それなら他のペアに足の速い奴を回せるしよ」

 

 完璧だ、須藤、お前は天才だ。これ以上ないくらいの最適解じゃないか。確かにそれならば俺や須藤のペアが必ずしも同等程度の身体能力じゃなくても構わないし、須藤の言う通り他のペアに足の速い奴を配置することもできる。

 

 もしかしたら須藤は天才なのかもしれない、俺は半月ほど前にそんなことを思ったことをよく覚えている。

 

 なので二人三脚の本番では俺と須藤はそんなペアとなった。須藤は池と組んでおり、俺は幸村と組むことになったのだ。

 

「よし幸村、一気に行くぞ」

 

「だ、大丈夫なんだろうな?」

 

「俺の力は知っている筈だ、安心しろ、誰よりも早くゴールする」

 

「そこはもう疑っていないが……振り落とすのだけは止めてくれ」

 

「何も問題は無い。しっかり固定して必ず一位になる、お前を引き連れてだ」

 

 それこそがこの体育祭で俺が目指す結果であり、クラスから求められている立場だ。人一人背負って世界記録を出すくらいでなければ、何の証明にもならない。

 

 実際に、俺より早く競技に出場した須藤は池を側面に張り付けるような形で走って見事に一位を記録した。この作戦が完璧であることを証明するかのように。

 

 ならば俺も続かなくてはなるまい、スタートの合図と同時に横にいた幸村の腰に手を伸ばして側面にグッと張り付けると、そのまま全てを置き去りにするかのように走り出す。

 

 ハードルも無ければ障害物もない、ただ人を側面に張り付けて走るだけだ、師匠に散々背負わされたバカでかい仁王像より遥かに軽い幸村程度ならば、何の苦にもならない。

 

 こうして俺はまた世界記録を更新することになる。やる気が漲っていることに加えて体も温まっており、師匠モードの深度も序盤より強まった結果、なんと百メートル走の時よりも僅かにだが記録が良かった。

 

 二人三脚で百メートル走の世界記録を更新したことになる……もうお約束になってしまったかのようにグラウンドには沈黙が広がった。

 

「意味が分からない……お前の体は科学的ではないな。近代スポーツ科学を何だと思っているんだ」

 

「幸村、効率的か非効率的かといった数値を信奉するのは良いが、それが全てではない」

 

 実際に師匠はスポーツ科学が掲げる効率というものを鼻で笑うかのような過酷な訓練と改造をこちらに押し付けて来た。その結果が俺で、俺が世界記録を更新しているのだから、師匠のやったことは正しいということになる。

 

 効率的な食事管理、効率的な訓練、効率的な筋肉、効率的な睡眠。その先にある最適化された肉体。

 

 それはそれで大いに結構、俺は仁王像を背負って、熊と戦い、師匠とひたすら実戦を繰り返すだけである。そうすれば世界記録は更新できるのだ。

 

「そうか、お前のような人間も世の中にはいる……数字では語り切れないか、世界は広いな」

 

 眼鏡を整えながら、幸村はどこか悟りを開いたかのような顔でそんなことを言った。どうやらカルチャーショックを受けているらしい。

 

 まぁ、俺よりも師匠の方がだいぶアレなんだけどな、あの人を見た全ての人は今の幸村みたいな顔をする。世界は広いんだなとでも言うかのように。

 

 うん、視野を広めるのは良い事だ。テストの点数に拘るのも大切だが、それだけが世界の全てではないのだから。世の中には師匠のように腕っぷし一つで全てを黙らせるような人間もいるのだ。

 

 あの人はこの国の誰よりも強い、武力で脅せないし法で裁くことも出来ない。そんな人間もいると知れば、視野は確実に広がるだろう。

 

 幸村と一緒にクラスのテントに戻って一息つくと、過去無い位のやる気を漲らせた堀北がこちらに近づいてくる。

 

 

「勝ったわ、どうかしら?」

 

 

 女子の障害物競走で見事に伊吹に勝利して、小野寺との二人三脚でもしっかりと結果を残した堀北は、興奮と達成感で頬を僅かに赤く染めながら報酬を要求してくる。

 

 どうにも彼女は師匠モードで鋭くなった俺の雰囲気を生徒会長と重ねているらしい。あの人は徹底的に遠ざけて時には暴力すら行う様子であったが、俺はそんなことはせずに褒めて伸ばす説を押しているのだ。

 

 しっかりと褒めて堀北のやる気を漲らせるとしよう。生徒会長の代わりというのは少し不満ではあるが、褒められて喜ぶ様子はとても可愛いので良しとする。

 

 次の競技である騎馬戦まで僅かに時間があるので、ここで報酬を渡しておくべきだろう。

 

 ただクラスメイトの視線が多くあるテントでするのはさすがに注目を集めるので、俺と堀北は僅かな休憩時間の隙を突いて二人で校舎裏へと移動する。

 

 人の気配がないことをしっかりと確認してから、俺は師匠モードを僅かに高めて彼女と向かい合った。

 

「よくやった」

 

「……んッ!!」

 

 モジモジと体を震わせる堀北は俺がそう声をかけると何故か変な声を上げた。そんな反応をされるとやましいことでもしている気分になるので止めて欲しい。

 

 だがこれは彼女への報酬だ、せっかくなのでしっかりとサービスしておこう。

 

「お前は凄い子だ」

 

 そこで彼女の顔は真っ赤になる、体は小刻みに震えて呼吸も荒くなり……なんというか、こんな表現はしたくないんだけど、危険な薬物にでも手を出しているかのようにも思えてしまう。

 

「も、もっと、ちょうだい……できれば名前を呼び捨てにして欲しいの」

 

「鈴音、お前は俺の誇りだ」

 

「ぁ……こ、これは……駄目ね……こんな……ふ、ふふふ」

 

 普段の冷静で怜悧な雰囲気をどこかに放り投げ、だらしない笑顔を必死で抑えようと唇をモニョモニョと動かして、身悶えする体をなんとか落ち着かせようとする堀北……うん、ちょっと怖い。

 

 彼女はこんな感じの子だったかな? 兄が関わると途端に頭が悪くなるように感じた。

 

「あ~……少し落ち着け、まだ競技は続く、ここで気を抜くべきではない、そうだろう?」

 

「もちろんよ……当然、全力を尽くすわ……だから、その、またお願い出来るかしら?」

 

「あぁ、何度だって褒めてやる……だからお前は、何度だって一番になれ」

 

「は、はいッ!!」

 

 よしよし、いい感じだ、堀北は完全に覚醒した感じがある。やはり人は褒めて伸ばすべきなんだ。コンクリに叩きつけるのは悪手だよ生徒会長。

 

「さて、次は騎馬戦だ、ここも勝ちに行くぞ」

 

「えぇ、当然よ、必ず勝つ」

 

 いつのまにか堀北は普段のキリッとした顔に戻っている、ついさっきのだらしない顔が嘘みたいだ。

 

 そんな彼女はこちらに拳を差し出して来た。

 

「私も頑張るから、貴方もカッコいい所を見せて」

 

「言われるまでもない、カッコつけるのが俺の仕事だからな」

 

 俺もまた拳を前に出して軽くぶつけ合う。どうやらやる気が漲っているのは彼女だけではないらしい。

 

 グラウンドに戻ると既にクラスメイトたちは集まっており、それぞれ集中しているのがわかった。

 

 まず最初に行われるのは女子の騎馬戦である。大将はちょっとありえないくらいのやる気を迸らせている堀北だ。あまりにも集中を高めているので、ちょっと師匠モードになりかけているのは気のせいだろうか?

 

 うん、不完全だけど師匠モードになってるな、そんなにお兄さん風に褒められたいとか、どれだけ飢えていたんだ。

 

 生徒会長、貴方は罪深い人だと俺は思う。あんなに妹さんを飢えさせるだなんて。

 

「堀北の奴、なんであんなにやる気になっているんだ……」

 

 Bクラスのテントで女子たちの騎馬戦を眺めていると、隣に座っていた清隆も堀北の雰囲気を感じ取ったのか呆れたようにそんなことを言った。

 

「良い事だ、貫禄さえ感じる。ああなるといよいよ手が付けられなくなるぞ」

 

「少しお前の雰囲気に似ているな」

 

「そうだな、よく集中できている」

 

 その証明をするかのように女子の騎馬戦ではまさに人馬一体の動きで相手を翻弄することになる。堀北の雰囲気に引っ張られているのか女子チームの動きはとてつもなく鋭く力強い。ちょっと相手に同情するほどである。

 

「囲まれた」

 

「問題は無い、今の彼女ならば大した壁ではないだろう」

 

 それこそ龍園クラスの小賢しさを正面から叩き潰せるほどに今の堀北は覚醒している。不完全であっても師匠モードだからな、もしかしたら目に映る全てがゆっくり動いているのかもしれない。

 

 或いは動きの予測が容易くなっているのか……何であれ迫る手を簡単に弾いてカウンターとばかりに相手の鉢巻きを奪い去る。これで執拗な包囲網の一角は脆くも崩れ去ってしまう。

 

 反則に近い距離の詰め方にも騎馬はしっかりと耐え、その僅かな硬直の間に二つ目の鉢巻きも確保した。

 

 二つの壁が崩れればもう集中砲火など意味はない、寧ろ崩れることなく耐え凌いでカウンターを食らった相手クラスは堀北を少し恐れているようにも見えてしまうな。

 

 そりゃそうだ、四対一の戦力差を簡単に覆されてしまったんだ、怖いに決まっている。

 

 おそらく龍園クラスは騎馬戦に乗じて堀北を叩き落とそうとした筈だ。そう思えてしまうほどに強引な距離の詰め方だった、ここでアドリブを入れて来たか。

 

 しかし空振りに終わってしまう、今の堀北は手が付けられない状態だ。

 

 彼女の騎馬が二つの騎馬を落とせば、もう執拗な集中攻撃は完全に崩壊してしまい、勢いを無くした相手を今度は背後に回った軽井沢の騎馬が襲い掛かった。

 

 そして正面には堀北の騎馬、囲んでいた筈がいつのまにか挟み撃ちの形になっており、決着がつくことになった。

 

 完封だ、見事というしかない。小賢しさの全てを実力でねじ伏せた、文句無しだ。

 

「良いぞ堀北ぁッ!!」

 

 須藤も堀北の活躍に声を上げて興奮している。気持ちはとてもわかる。今の堀北はとてもカッコいい。

 

「凄いなアイツ……」

 

 清隆はちょっと引き気味になっているな。活躍は素直に受け止めているようだが、師匠モードになりかけている堀北をちょっと恐ろしいと思っているのかもしれない。

 

「これは男子チームも負けてられないね」

 

「おぉ、ここまでやられたら情けねえ結果は残せないよな」

 

「なんか堀北怖くね?」

 

 平田も池も山内も女子チームの活躍に思う所があったのだろう。士気が上がっていた。

 

 そしてそれは俺も同様である。あそこまで活躍されてしまったんだ、それ以上の完全勝利を持ってこなければ笑われてしまうだろう。

 

 堀北に引っ張られるように俺の師匠モードも深まっていく。ちょっと自分でも怖いくらいの深度だ。まだ先があったことに驚いてすらいる。

 

 ありがとう堀北、お前のおかげで俺はまた強くなれたらしい。

 

「次は貴方の番よ」

 

「あぁ、そこで見ておけ、完全勝利を掴み取って来る」

 

 次は男子チームの騎馬戦だ、女子チームと入れ替わるようにすれ違う瞬間に、俺と堀北はハイタッチを交わす。

 

「調子が良さそうだな」

 

「えぇ、でも少し変な感じなの……今までの自分じゃないみたい」

 

「一つ壁を超えたということだ、その感覚を忘れるな」

 

 その集中状態をこれからも引っ張って来れるかどうかは堀北次第ではあるが、一度経験すると割とすんなり入れたりするので可能性はゼロではないだろう。

 

 プロスポーツ選手であったり、プロの棋士の一部であったりは、集中を高めるとそうなる者もいるらしい。別に俺だけの特権でもないのだ師匠モードは。

 

 ただ深度を深めるのは止めた方が良いし難しいだろう。師匠モードが一定のラインまで深まると、吐き気と頭痛が止まらなくなるからだ。

 

 俺はそれを師匠の鍛錬を繰り返すことで乗り越えたが、肉体的にはそこまででもない彼女が耐えられるとも思えなかった。

 

 まぁ不完全な現状が一番彼女に合っているのかもしれない、

 

 そんなことを考えながら俺もまたグラウンドに向かうのだった。 

 

 

「遅いぜ大将、待ちくたびれたっつうの」

 

「悪いな須藤、少し一人で集中していた」

 

 クラスメイトたちを見渡してみると程よい緊張とゆとりを感じられた、完璧な状態だな。

 

 俺もまた集中力を高めて師匠モードをかつてない程に深めていく、そして彼らの意識と士気を引っ張っていく。

 

 これなら大丈夫だと、あの背中に付いていけば問題はないのだと、そう思わせることもまた俺の仕事であった。憧れを示すとも言うだろう。

 

 だから俺は精一杯、成果と結果で彼らを導くのだ。

 

 誰よりも早く、誰よりも力強く、この背中を後に続く者に見せつける。それもまたリーダーの形であった。

 

「女子チームの奮闘は見たな? 俺たちも精一杯カッコつけるぞ」

 

 そう力強く伝えれば、彼らもまた力強く声を返す。うん、良い雰囲気だ。

 

「須藤、本隊の指揮は貴様に任せる」

 

「おう!!」

 

「三宅、平田は須藤の側面を常に固めろ、脇から手を伸ばさせるな」

 

「おぉ」

 

 

「わかったよ」

 

「他は後方から様子見だ。もし三宅班、平田班が崩れたらすぐに割り込んで穴を埋めろ」

 

「「了解」」

 

 師匠モードでそう命じると、軍隊にも負けない程に整った返答がグラウンドに響く。ここだけ見れば一つの統率された部隊のような練度であった。

 

「清隆、お前はこっちだ」

 

「本当にやるのか?」

 

「応とも、これが一番機動力がある編成だろうからな」

 

「それはそうだが……はぁ、仕方がないか。まさかこんなことになるとは」

 

 クラスメイトたちはそれぞれ騎馬を作っていく。ただしその編成は少し歪だ。

 

 何故なら俺と清隆だけは肩車の形だからだ。本来数名で騎馬を作る筈なので何名か余ることになり、余った面子は運動能力の無い班の補助に回らせた。

 

「どうだ、そこからの視点は?」

 

「悪くはない、龍園もよく見える」

 

「よし、振り落とされてくれるなよ?」

 

「それはこっちのセリフだ。振り落とさないようにしっかり支えてくれ」

 

 グラウンドではザワザワと困惑する雰囲気が広がっている。騎馬戦で騎馬を作らずに一組だけ肩車をしていればそりゃそうなるだろうな、何もおかしな反応ではない。

 

「神崎、準備は良いな?」

 

「……」

 

 もう彼は色々と諦めてしまったのか、肩車をしている俺と清隆を見てただ疲れた顔でコクリと頷きだけを返す。幸村と同様にカルチャーショックが大きいのだろう。

 

 でも、この形が一番早いと俺は思う。数人で一つの騎馬だとどうしても足並みを揃える必要があるので、機動力が落ちるのだ。

 

 だが俺が清隆を肩車する姿勢なら何も問題はない。最速の騎馬がここに完成したことになる。完璧な作戦だな。

 

 小賢しさは、速度で潰す。兵は神速を尊ぶのだ。

 

 僅かな困惑の中、それでも騎馬戦の始まりを告げる合図がグラウンドに響き渡る。それを確認した瞬間に俺は清隆の足をしっかりと支えながら全力疾走で進みだす。

 

「清隆、予定通りこのまま最速で龍園と葛城を潰す。すれ違う瞬間に全部掠め取れ!!」

 

「了解した、進め黒王号」

 

 今のは清隆なりの冗談だろうか? まぁ最強の騎馬であることは間違いない。

 

 他の騎馬とは比べものにはならない速度で俺は走り出す。あらゆる者を置き去りにする速度で突っ込み、慌てて龍園との間に割って入った石崎と他の男子たちの騎馬を迂回することなく、その上を飛び越える。

 

「んな馬鹿なッ!?」

 

 そうでもないぞ石崎、迂回するよりも飛び越えた方が早いんだから、そりゃ飛び越える。着地地点付近に龍園の騎馬もあるんだからな。

 

「おぉ、なかなか悪くないな」

 

 俺が飛び上がって石崎たちを見下ろす高さまで行った瞬間に、清隆のどこか上機嫌な声が耳に届いた。彼もこの体育祭というか、この状況を思っていたよりも楽しんでいるのかもしれない。

 

 騎馬の壁を乗り越えた先にいるのは龍園である。相変わらず彼は俺を気持ちの悪い生物でも見たかのような視線で見つめて来る。本当に失礼な奴であった。

 

「清隆、取れ」

 

「あぁ」

 

 着地してまた加速する。慌てて向きを直そうとする龍園の騎馬の側面を疾風のように駆け抜けた。

 

 すれ違いざまに清隆が龍園の鉢巻きを奪い去る。競技開始から十秒ほどの出来事であった。

 

 速度で小賢しさを潰す、これで龍園はこの競技は脱落となり、何もできなくなってしまったということだ。

 

 次は葛城だ。Aクラスのリーダーも最速で潰す必要があるだろう。

 

「ん?」

 

「どうした清隆?」

 

「いや、龍園の鉢巻きにワックスのような物が塗られているようだ」

 

「滑りやすくしている訳か、つまらん小細工だ」

 

「そうだな」

 

 まぁどんな方法だろうと勝ちに繋がるのなら徹底するという姿勢は好感が持てる。それもまた戦いの作法の一つだからだ……結局は清隆の握力で奪われてしまったが。

 

 グラウンドを世界記録を更新できるような速度で駆け巡り、目指す相手は葛城である。大回りして背後を突く形となった。

 

 彼らは慌てて騎馬の方向を変えようとしているが。複数人で作る騎馬の為にこちらと比べて鈍間と言わざるを得ない。

 

 お前たちも肩車しろ、それが一番早い騎馬の形だ。

 

「頂いていく」

 

 またもやすれ違いざまに清隆が葛城から鉢巻きを奪い去る。良いぞ、他の奴だと速度に翻弄されてなかなか上手くいかなかったが、お前なら何も問題なく合わせてくれる。

 

 競技開始から一分も立たずにリーダー格の騎馬が落とされたことで、あちらの組は完全に士気と命令系統が崩壊することになってしまう。

 

「完璧だ、次々奪っていくぞ」

 

「あぁ、文句のつけようがない完全勝利だな」

 

 つまり後は蹂躙するだけだ。

 

 須藤率いる本体も混乱する相手の騎馬を次々と飲み込んで行き、俺たちの騎馬はそんな蹂躙劇の側面から速度を活かして鉢巻きを掠め取っていく。

 

 圧倒的で、徹底的な勝利とはまさにこれだ。

 

 あちら側は全滅して、こちら側は無傷、ケチのつけようがない完全勝利であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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