ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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推薦競技

 

 

 

 

 

 

 

 

「清隆、少しいいか? ちょっと相談があるんだ」

 

 一之瀬さんとわかれた後、日陰で佐倉さんと昼食後のお茶を楽しんでいた清隆に声をかける。

 

「ごめんね佐倉さん、彼を借りていくよ」

 

「う、うぅん……大丈夫」

 

 申し訳ない気分になりながらも清隆を連れ出してグラウンドの隅っこ、特に人気のない場所に移っていく。

 

「実はさっきAクラスの坂柳さんと話してたんだけど」

 

「Aクラスのリーダーの片割れか、何か交渉を持ちかけられたのか?」

 

「いやそうじゃない、世間話をしただけさ。その中で君の話題になったんだ……彼女が言うには清隆と自分は幼馴染らしい」

 

「ふむ……」

 

 顎に指を当てて考え込む、そのまま数秒ほど過ぎ去って彼はこう断言する。

 

「俺の記憶にはない、何かの勘違いじゃないか?」

 

「いや、確信があるような感じだったよ……俺はホワイトルームの内情やどんな場所であるかを詳しくはしらないが、同じ施設出身ってこともありえるんじゃないか?」

 

「印象には残っていない。それにホワイトルーム出身ということもありえない。確か坂柳という生徒は先天的な疾患で体が不自由なんだろう? その時点で候補から落ちる、カリキュラムに組み込まれることはありえない筈だ」

 

「ふぅん、それはまたどうしてだい?」

 

「ホワイトルームが作りたいのは万能の天才。いや、この表現は今となっては正しくないな……全てにおいて弱点の無い人間だ」

 

「となると体が不自由な彼女がホワイトルーム出身という可能性はとても低くなると、なるほどね。しかし彼女は以前の清隆を知っている様子だったよ」

 

「……だとしたら、ホワイトルームの出身ではなく、その関係者の可能性があるかもしれないな」

 

「運営側かぁ……ありえなくはないのかな? 俺はてっきり、君が言っていた刺客か何かかと思ってたんだけど」

 

「その可能性も否定はできないだろうが、そういった連中が来るとしても来年以降だろうな」

 

「それは腕が鳴るね。楽しみだなぁ、清隆みたいな奴が沢山くるかもしれないんだろ? 一人二人と言わずに、百人くらい来て欲しいよね」

 

「……」

 

「何故、黙るのかな?」

 

「いや、同情していただけだ……可哀想にな、と」

 

 清隆は俺を何だと思っているんだ。仮にも君の後輩なんだから殺したりする訳ないだろう、ただちょっと腕試ししたいだけなんだから。

 

 一目見ればその人がどれだけ強いかはわかるから、見つけるのも簡単だろうし、俺はとても仲良くしたいとも思っているんだ。壊したりなんてしない。だからそんな目で俺を見るんじゃない。

 

「まぁ何であれ坂柳には注意しておこう。天武が言うには、厄介な相手なんだろう?」

 

「そうだね、並の相手ではないのは間違いない」

 

「要警戒か……今はそれしかないか」

 

「今はクラスでの派閥争いもあるからまだ派手には動けないだろうから、暫くはそれで良いんじゃないかな」

 

「あぁ、今は体育祭を乗り越えることに集中しよう」

 

「体育祭と言えば、龍園の動きはどう思う?」

 

「隙があれば仕掛けてくるだろうな。隙が無くても強引に挟み込んで来るかもしれないが……問題は無い、もう決着は付けている」

 

「ん、なら何も問題はないか」

 

「そうだ、お前は正面から叩き潰してくれ。結局は、それができる奴が一番強い」

 

 清隆の言う通りだ、策略でどうにかできるラインを超えた力でぶん殴るのが一番だろう。

 

「午後の部も頼んだぞ」

 

「あぁ、全力で行くとしよう」

 

 午後の部、一発目は借り物競走となる。単純な足の速さだけでなく運も試される要素が大きい。

 

 ただ心配はいらないだろう。あの占い師さん曰く、俺には使いきれない程の幸運があるらしいから。

 

 お昼休憩の終わりと午後の部の始まりを告げる放送がグラウンドに響き渡ったので、俺たちはクラスメイトが集めるテントに帰っていった。

 

「借り物競走か、こればっかりは運も絡んで来るからな、さすがに不安になるぜ」

 

 テントに着くと須藤がストレッチをしながらそんなことをぼやいていた。ここまで出場した競技の全てで一位を記録している男ではあるが、こればかりは不安になるらしい。

 

「面倒なお題が出ないことを祈るしかないだろうな。それに上手く行かなくてもお前はこれまでの競技で八面六臂の大活躍だったんだ、誰も文句は言わない」

 

「だな、けどここまで全部一位だったんだ、やっぱ全部で勝ちたいだろ」

 

「その意気は良し、勝利を手繰り寄せて来い」

 

「おう」

 

 彼の背中を押して一組目が並ぶコースにやる気と共に走っていくのを見送って、俺も出場に向けて心と体を整えていく。

 

 ストレッチをしながら集中力を高めていく。堀北のおかげでより深い場所まで進めるようになった師匠モードに切り替わると、その時には須藤はクラスメイトから靴を借りて堂々の一位を記録するのだった。どうやら運にも恵まれたらしい。

 

 完璧だな、文句の付けようがない結果を須藤はこの体育祭で出している。運すらも呼び込んだか。

 

 続く俺は二組目、気合を入れながらスタートラインに近づくと、そこにはまたもや龍園が待っていた。

 

「チッ」

 

 こいつ、俺の顔を見た瞬間に舌打ちするとはどういう了見だ。

 

「龍園、運に自信はあるのか?」

 

「はッ、そういうテメエはどうなんだよ?」

 

「幸運な人生を歩んでいると思っている……特に人との出会いに恵まれた」

 

 師匠と出会えたことは俺の人生で一番の幸運だと思う。それこそこれからの人生でどれほどの不運と困難が立ち塞がろうともおつりが来るくらいの。

 

 だから俺は幸運な男なんだと思う。あの人に出会えなかった人生なんて考えられないから。

 

 競技の開始を告げるピストルの音が鳴り響いた瞬間に、誰よりも早く何十メートルか進んだ場所にある箱に手を突っ込んだ、そこから一枚の紙を取り出して書かれている内容を確認する。

 

「百キロ以上の荷物を担いで持ってくることか」

 

 これを誰かから借りて来いと? 完全にネタ枠だと思う。誰がこのお題を作ったのか知らないけど、突破させるつもりがないだろう。普通の生徒ならばここで三十秒を消費してお題を変更する筈だ。

 

 けれど問題は無い、ようは百キロ以上の物体をゴール地点まで運べと言うお題なのだ。こんなに楽な話もないだろう。

 

 作った本人はネタ枠気分だったのかもしれないが、これ以上俺に合ったお題もない。

 

 俺はすぐさま自クラスのテントまで走って行って、クラスメイトに協力を呼びかけた。

 

「笹凪くん、何が必要なのかな?」

 

「なんでも言って、ここまで来たんだから笹凪くんもしっかり一位を取って欲しいんだよね」

 

 応援してくれていた櫛田や松下たちに、お題の紙を広げて見せつける。

 

「お題は百キロ以上の物体だ、それをゴール地点まで運ばないといけない」

 

「えぇ……バーベルとか?」

 

「誰がそれを持ってるのよ」

 

「いや、百キロ超えてればいいんだから別に物でなくても構わないだろう。背負っていくよ。須藤、背中に乗ってくれ、池と山内を小脇に抱えていくぞ」

 

「そういうことか、確かに百キロは超えるだろうけどよ」

 

「ほら、乗れ」

 

 グダグダ言っている時間が惜しいので俺は須藤に背中を見せて急かす。身長もあり筋肉もある男なのでこれである程度の重量は確保できただろう。

 

 振り落とされないようにしっかりと掴まっているように伝えると同時に、右手に池を抱えて左手に山内を抱える。二人を脇に挟んでいざゴールを目指す。

 

「ぐぇ、速すぎて死ぬ」

 

「何で三人抱えてこの速度で走れるんだ……おいヤバいぞ、龍園がゴールに向かって走ってるって!!」

 

 池が慌ててそう叫ぶ、視線の先には龍園の姿があった。

 

「走れ笹凪ィッ!! あんなやろうに一位を渡すんじゃねぇぞ!!」

 

 確かに龍園はゴールに向かって走っていく。どうやらクジ運に恵まれたらしい。

 

 奴は三人抱えている俺に視線を向けて邪悪な笑みを浮かべている。勝機とでも思ったのかもしれないが、その程度のリードで勝てると思われていることは少し意外だった。

 

 確かにこっちは百キロ以上の重量を担いでいるが、師匠が背負わせた仁王像はそれ以上の重さだったし、それを担いだ状態で険しい山を走る毎日だったんだ、これくらいならば何の苦にもならない。

 

 全力で踏み出してゴールに向かう龍園を追いかける。クジ運に恵まれて一足早くそちらに向かっていてリードしていたのは間違いないが、だからといってその程度の優位性で勝てる筈もないだろう。

 

 全力で走れば瞬く間に龍園の背中が近づいて、次の瞬間には彼を置き去りにしてゴールテープを切ることになった。

 

 他の面子はまだクジを選び直していたり、お題を探すことに必死になっている状態だ、この競技でも一位となることができた。

 

 こちらに遅れて龍園は二位となる。三人を抱えて全力疾走をしていた俺に、龍園は相変わらず気持ちの悪い生物でも見たかのような視線を向けて来る。お前、それ本当に止めてくれ。

 

「お、下ろしてくれ……吐きそうだ」

 

「おっと、すまないな山内。それと吐くならグラウンドじゃなくてトイレでするべきだ」

 

 背負っていた須藤と、脇に抱えていた池と山内を地面に下ろす。男三人なので確実に百キロは超えていることだろう。もしかしたらこのお題を作った人はネタ枠として箱の中に入れたのかもしれないが、俺にとってはとても簡単なお題だったので感謝しかない。

 

 だって仁王像より軽いからな、とても楽であった。

 

「へッ、どうよウチのゴリラ様はよッ!!」

 

 何故か池は龍園を煽りだす、しかし邪悪な形相で睨み返されてすぐに涙目になってこちらに帰って来る。やるならやるでもっと根性を見せて欲しい。

 

「笹凪ィ、アイツ怖えよ!!」

 

「そうだな、だからあまり近寄るな、絶対に怪我するから」

 

 そんな当たり前のこともわからずに煽りに行くもんじゃないっての。お前は殴られればちゃんと怪我をする人間だろうに。

 

 まぁ何であれ借り物競走でもしっかりと結果は残すことができた。お題も簡単だったのでありがたいことである。同じ組で走った面子の中では未だにクジを引き直している者もいれば、無理難題に絶望する者もいる。

 

 そう考えると恐ろしい競技だな、ここでは運動能力はそこまで重要ではないのかもしれない。三組目に出場した堀北は三位となっている。とても悔しがっていた。

 

 荷物代わりに担いで運んだ三人と共にテントに戻ると、三位になって絶望した顔の堀北がこちらにフラフラと近づいて来た。

 

「さ、笹凪くん……三位は、十分に好成績よね?」

 

「かもしれないな、けれど俺は一位になったお前を見たいんだ」

 

「くッ……」

 

 どうやらお兄さん風に褒めて欲しかったらしいが、さすがにそれは考えが甘い。俺はタダで褒めるほど安い男ではないのだ。

 

「まだ競技はある、期待しているぞ」

 

「わかったわ……見ていなさい」

 

 四方綱引きには参加しないが、男女混合リレーと二人三脚には出場することが決まっているので、そこでしっかり結果を出してくれることだろう。

 

「次は四方綱引きでしょ? 頑張りなさい、まぁ貴方に勝てる人類が存在するのか疑問だけれども」

 

 うん、清隆だけでなく堀北さんもこんな感じの扱いをしてくるようになったか、それどころかクラスメイトの大半が似たような感じである。

 

 いや、違うな、体育祭で暴れまわった結果、全校生徒から「あぁ、アレね。あのゴリラね」という視線を向けられて、同じような評価を貰うことになった。

 

 さっきもブラついている時は、同学年はおろか上級生たちですら俺を見てヒソヒソと噂していたし、すれ違う瞬間にサッと道を譲られる始末だ。

 

 どうやら恐れられているらしい。それは作戦通りではあるのだが、人間扱いされないのはちょっと寂しくもある。

 

 だが自業自得だ、侮られるよりはマシと思うしかないだろう。

 

 グラウンドで行われる四方綱引きでもそんな評価が役に立った。他のクラスは俺が対戦相手だとわかった瞬間に顔を青ざめさせると、やる気をなくしてすぐに縄を手放してしまうからだ。

 

 下手に抵抗して引きずり回されて怪我をするくらいなら、さっさと諦めて体力を温存した方が賢い、そう判断したのだろう。

 

 そんな訳で四方綱引きは何の苦も無く勝利となる。俺とは戦いたくないと言う評価はこれからも付き纏ってくることになるのは間違いない。作戦通りであった。

 

 コイツとは戦いたくない、そう思わせることが出来たのならば、それがこの体育祭で一番の収穫と言えるのかもしれないな。

 

 それでも向かってくる相手がいるのだとしたら、それは負け戦を覚悟した時か、彼我の戦力を測れない愚か者か、それとも意地と覚悟を捨てきれなかった者になる。

 

 龍園はどうするだろうか? 向かってくるのならそれはそれで話が早くてありがたい、彼も力を振るうことに重きを置く男であるが、俺のような相手に挑むのはおそらく初めてのことだろう。

 

 どうなるかはわからない、ただ暴力を外交手段に使う相手は、その暴力が全く通じない相手には途端に無力になってしまうものだ。そこが龍園の真価が試される瞬間になるかもしれないな。

 

「笹凪くん、縄結んじゃうよ?」

 

「あぁ、頼んだ」

 

 四方綱引きで相手のやる気を奪い去ったことによる圧勝を終えてから龍園のこれからについて考えていると、すぐに推薦競技の一つである男女二人三脚が始まることになった。俺のペアは櫛田さんとなる。

 

「さっきの須藤くんと堀北さん、凄かったね。簡単に一位になってたし、やっぱりあの二人は相性抜群なのかな」

 

「そうかもしれないな、あのペアなら誰が相手でも負けることはないだろう」

 

 実際に須藤と堀北の走りは圧巻だった。二位と大差をつけての圧勝である。

 

「私たちも負けてられないね、一位を目指そうよ、ね?」

 

「あぁ、あの二人に負けないくらいの走りを見せないとな」

 

 俺がお約束とばかりに拳を差し出すと、縄を結び終わった櫛田もまた拳を差し出してくる。

 

 そしてコツンとぶつけ合う、櫛田の内心や考えは今は横に置いておくとして、少なくともこの競技は勝ちに行く筈だ。今更露骨に足を引っ張る理由はどこにもないのだから。

 

 クラスのテント付近から、こちらを睨んで来る堀北の鋭い視線を無視して、俺は櫛田と肩を組む。

 

 身長差で彼女は俺の腰付近を掴む形になったが、大きな問題はないだろう。

 

 そしてスタートラインに付く、もうすぐ競技が始まることになる。

 

「櫛田、色々とすまないな」

 

「え? 急にどうしたのかな?」

 

「いや、色々とクラスのことでいつも動いているだろう? お前は求心力があるから、頼りにしている部分も多い、つい甘えてしまうことも多かったかもしれないと、今更ながら思ってしまってな」

 

 別に嘘は言っていない。櫛田は友人も多くクラスの中心人物だ。それどころか他クラスにも顔が広く学年屈指の交友関係を持っている。以前の偵察でもそれが大きく役立った。

 

「だから、感謝している。このクラスにはお前が必要だ、いつもそう思っているよ」

 

「も、もう、急にそういうこと言うのは駄目だよ、恥ずかしくなっちゃうから」

 

「そうか、でも言葉にしなければわからないことも多いからな。内心でどんなことを思っていたとしても、伝わらないことも多い……だからこそ、言葉にして伝えたい、ありがとう」

 

「う、うん……」

 

 俺が嘘偽りない感謝を伝えると、櫛田は気まずそうに視線を逸らす。彼女の中にある複雑な考えや内心も揺れ動いているのが観察していれば読み取れた。

 

 後悔と、良心の呵責もそこにはある。けれどそれ以上の何かもそこにはあった。

 

 とても複雑な人だ。俺は素直にそんな彼女を面白い人だと思う。

 

 ピストルが競技の始まりを告げて俺たちは走り出す。何をどうしようが櫛田がこちらの全力疾走に合せることはできないので、やるべきことはただ一つ、こちらが彼女の最高速度に完璧に合わせる、それだけだ。

 

 共に走ることになるライバルたちは男女や身体能力の違いで必ず一人で走る時よりも遅いタイムとなるが、こちらのペアはそうはならない。

 

 当然だ、櫛田には俺のことなど何も考えずに一人で走っている時と同様にただ全力で走れと言ってあるし、そう練習もさせてきた。

 

 後は俺がそこに一切の乱れなく合わせるだけである。これで櫛田は百メートル走と同じだけの速度でゴールを目指すことが出来るだろう。

 

 そして実際にそうなった。二位と大差をつけての圧勝となっている。幸村と同じように側面に張り付けて走るという方法もあったのだが、さすがに女性に張り付けと言うのは憚られたので、常識的なタイムとなってしまう。

 

 個人的にはここでも百メートル走の世界記録を更新したかったんだがな、まぁ一つくらいはこんな記録があっても良いか。

 

 清隆からは二人三脚でそんなことを考えるのは明らかにおかしいと言われてしまったけど、最強を目指すにはそれくらいできないとダメだと俺は思う。

 

 まぁ櫛田を張り付けて走る勇気が無かったので、こればかりは仕方がないのだろうけど。

 

「はぁ、はぁ……やったね笹凪くん!! 一位だよ!!」

 

「あぁ、見事な走りだった、さすがだ」

 

「うん、私たちも相性ばっちりだね!! 須藤くんや堀北さんにも負けてないよ」

 

 やけにそこに拘るな……色々と複雑な思いがあるのだろう。

 

「リレーでもこの調子で行こう。大丈夫だ、俺たちなら必ず勝てる」

 

「笹凪くんがいるもんね」

 

「あぁ、そしてお前がいる。何も心配はしていない」

 

 今度は拳を合せるのではなくハイタッチとなった。

 

「この先も色々な困難があるだろうが、櫛田がいれば超えていけるだろう、頼んだぞ」

 

「……うん、大丈夫、任せてよ」

 

 一瞬、昏い顔を覗かせた櫛田だが、すぐにいつもの愛らしい笑顔に戻った。

 

 いつか本当に仲間となってくれることを期待するしかないだろう。俺は別に彼女の過去にも内心にも興味はないし、そこに拘ることに意味もないと思っている。

 

 それら全てを無視して、素直に櫛田のことは興味深い人だと思っており、好意的に見ていたりもするのだ。複雑な人間と言うのは、それだけで様々な魅力があると思う。

 

 この学校には魅力的な人が多い、師匠と俺と敵とで完結している世界では得られなかった縁が沢山あるということだ。

 

 それだけでも、俺はこの学校に来て良かったと思う。

 

 

 

 

 

 

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