新しい季節
熱狂と歓喜に包まれた体育祭も終わって暫くたち、いよいよ残暑が消え去って肌寒くなって来た頃、これまでこの学校を牽引してきた生徒会長である堀北学先輩が生徒会を引退することになった。
全校生徒を体育館に集めて引退式を行い、同時に新しい生徒会長である南雲先輩の挨拶も行われることになる。
正直、俺には何の関係も無いので、完全に他人事として眺めていることしかできない。そんなことよりも部屋で色々と彫刻させろと内心では思いながらも、黙って聞いていることしかできないでいた。
資金稼ぎは順調である。高円寺から貰った紹介状も大いに役立っている。やっぱりネットオークションで暇な時に作った小さな作品を5000円とか数万単位で売ったりするのとは訳が違う。
お金ってある所にはあるんだなぁと、自分の作った作品が買い取られる度に思うことになる。俺は芸術は好きだがそこに大量の資金を投じる感覚がわからないので尚更そう考えてしまうのだ。
作る側と、買い取る側で価値観の違いがあるということらしい……まぁ資金集めは順調なので何も問題はないだろう。
加えて言うのならば、師匠の仕事を手伝っている時に稼いでいた報酬を、マネーロンダリングしてポイントに変換する作業も順調であった。
いや、うん、俺はよくわからないけど、よく知らないけど、投機目的で作った作品を買い取ってくれる懐の広い会社や企業があるらしい、俺とは何の関係もないけどね。
そんな、俺とは何の関係も無いけど、何故か学園の外にある俺の資金を使って俺の作品を買ってくれる都合の良い会社のおかげで、ポイント長者になることができた。
体育祭の後、ノリと勢いと僅かな冷静さで、龍園に持っていたポイントの全てを丸投げしたことで一時的に財布は空になっていたが、何も問題はないくらいにポイントは集まっている。
でも24億にはまだまだ足りないから、引き続き資金洗浄と品評会への出品に励むとしよう。
そのせいで頻繁に職員室に足を運んで学校側が用意した両替用の契約書類にサインすることになっているのだが、仕方がないことなんだろう。茶柱先生の視線が契約書にサインする度に鋭くなっているが。何も言っては来ないので黙認してくれるらしい。
違和感を抱いていても確固たる証拠がないからね。同じように俺が大量のポイントを稼いでいることを知っている生徒会長も南雲先輩の対抗馬として期待してくれているらしいので、ここで煩くは言ってこない。
目標は24億、欲を言えば有事に備えてそれ以上が理想だ。まだまだ足りないが、あの手この手で外から資金を引っ張り込むしかない。普通のやり方では24億なんて絶対に集めることが不可能なのだから、邪道だろうがなんだろうが突き進むしかないだろう。
自分のクラスをAクラスに正攻法で上げることは目指すべき大前提であり、当然の目標だ。しかし何もかもが理想通りとはいかないし、何もかもが都合よく動くとも思えない。
だから色々な作戦や考えを同時に走らせておく必要があった。どれか一つでも目標に届けば十分だろう。
試験で勝つこともそう、ポイントを溜めることもそう、それ以外にも様々な方法を模索して作戦を考えなければならない。
師匠曰く、勝利とは一つではないとのこと。
「堀北生徒会長、今までありがとうございました。それではここで、新しく生徒会長に就任する2年A組南雲雅くんより、お言葉を頂戴いたします」
俺が金策と戦略立案を脳内で行っていると、いつのまにか生徒会長のあいさつは終わっており、壇上には南雲先輩の姿があった。
「2年A組クラスの南雲です。堀北生徒会長、本日まで厳しくも温かいご指導のほど、誠にありがとうございました。歴代でも屈指のリーダーシップを発揮した最高の生徒会長にお供できたことを光栄に思うと共に、敬意を表したいと思います」
観察している限りでは、南雲先輩のその言葉に嘘はない。本心でそう思っているんだろう。彼は堀北先輩を尊敬しているらしい。
かなり歪んだ敬意ではあるが、尊敬であることは変わらない。年齢こそ一つ違うが、二人の間ではある種のライバル意識があったのだろう。
この人に勝ちたいと、負けたくないと、そう思うのは高校生らしいのかもしれない。
だいぶ拗らせているようではあるが……堀北先輩ももう少し構ってあげた方が良かったんじゃないかな。いや、まぁ、男のストーカーなんて気持ち悪くて遠ざけたいと思うものなのかもしれないけど。
複雑な感情が入り混じったねっとりとした視線を壇上の隅に捌けた堀北先輩に向ける南雲先輩は、その視線を今度は俺に向けて来る……おい止めろ、こっちを見るんじゃない。
彼はそのまま自分が生徒会長になった際に、これまで当たり前とされていた常識を打ち破り、新しい学校を作るのだと大きく主張していく。真に実力のある者による、新しい学校を。
こうやって見ると、やっぱり優秀な人なんだろうな。堀北先輩とは方向性が異なるというか、力を注ぐ分野が違うようだが、どちらも誰かを率いることに長けている印象だ。
どちらが正解であるのかは、未来が決めることなので俺にはわからないが……。
天才の証明と同じだ。どんな指導者が正しかったかなど、未来だけが決めてくれる。このまま南雲先輩の言う改革を推し進めて結果が伴うのならそれは正解であったということである。
逆に何か致命的な歪みが生じてしまったのならば、彼が間違っていたということなのだろう。ここでどれが正しかったのかと議論することにあまり意味はない。
未来が楽しみだ、それくらいの感覚が一番良いのかもしれないな。
「近々大革命を起こすことを約束します。実力のある生徒はとことん上に、実力のない生徒はとことん下に、この学校を真の実力主義の学校に変えていきますので、どうぞ宜しくお願いします」
スピーチの最後はそんな形で締めくくられる。次の瞬間には二年生を中心に大きな拍手と歓声が広がった。そして三年生たちはどこか苦い面持ちでそれを眺めることになる。
新しい波が来ている、そんな予感は一年生全体に伝わったことだろう。
俺も頑張るとしよう。24億貯めないといけないからな。それが一番カッコいい勝ち方だと思っているから、精一杯努力しないと。
実力主義がどうのとか、伝統や改革がどうのとか、こちらとは関係がない場所でやっていて欲しい。結局それらの先にあるのは妥協と諦めの上にある勝利でしかない。
こちらが目指すのは完膚無き完全完璧な勝利である。ただただ努力あるのみだ。
だから南雲先輩、こっちを見るんじゃない。男のストーカーなんて絶対にごめんだからな。面白い相手なら龍園とか清隆がいるから、付きまとうならそっちでお願いします。俺は金策に忙しいので。
後、今から卒業作品も作るつもりなので暇がない。ポイントに余裕が出来たら学園の土地の一部を買い取って、そこに神社を建てるつもりなんだ、一から百まで俺が手掛けて。
まだ卒業まで時間はあるからな、神社を作る為に色々と準備するつもりである。きっと最高の卒業作品となることだろう。今から楽しみである。
まぁ、そんな相談を茶柱先生にしたら、もの凄く呆れられたけど……。
俺はそんなこんなで金策と戦略立案に奔走する毎日であり、美術部員としてもしっかりと活動する日々である……充実した高校生活と言えるのではないだろうか?
神社を建てる土地の候補も見つけたし、その土地の購入に幾らかかるのかも茶柱先生から教えて貰った。建築関係の知識も図書室で仕入れて頭にダウンロードもした。何も問題は無い。
問題があるとすれば学校側から許可が下りるかどうかであるが、俺が買った土地をどうしようが俺の勝手だろうという理論で攻めるべきか、それともうまい具合に説得するかで迷っていたりする。
まぁ簡単に結論の出ないことだ。仕方がないので俺は今日も神社を建てる為に必要な設計図を部屋でチマチマ作るのだった。
うん、趣味と部活動と金策に励み、試験に悩んでクラスメイトたちと交流する、完璧な高校生活だな。
クラスメイトとの交流も順調だ。体育祭以降は特に顕著になったと思う。
これまでも色々と暴れまわっていたので、特殊な尊敬というか、立ち位置のようなものを確立していたのだが、あれだけわかりやすい暴れ方をすれば更にそれがわかりやすくなったと思う。
クラスメイトだけでなく、学年全体で、そして学校全体で似たような感じになっている。
廊下を歩いていると自然と道を譲られて、食堂で食事をしているとコソコソとした噂話や、観察するような視線が多くなったと思う。
学校全体で、一目置かれるようになったということだ。そうなるように暴れまわったので仕方がないことではあるが、寂しさもあったりする。
そしてどうやら対人関係の変化で同じ悩みを持つ者もいるらしい。それが清隆である。
「ほう、佐藤さんに交際を申し込まれたと?」
「いや、違う、連絡先を交換しただけだ」
「気になっていると言われたんだろう? もう告白みたいなもんじゃないか」
いつものお昼休み、俺と清隆は教室の隅っこで机を引っ付けて昼食を楽しんでいた。
清隆の隣の席である鈴音さんもぜひ机を引っ付けようと提案したのだが、彼女は僅かに照れた様子で拒否してしまう。いつものように俺と清隆の会話に聞き耳を立てながら、ここぞと言う時に口を挟んで来るスタイルだ。
ただ一学期と違って恥ずかしいからというのが拒否の理由である。仲良くしていると思われたくないから机を引っ付けなかった彼女はもういないのだろう。
「見る目が無いわね、よりにもよって綾小路くんだなんて……」
隣の席でサンドイッチを上品に食べる鈴音さんにとっても、佐藤さんと清隆の話は口を挟む理由になったらしい。
「堀北、それはどういう意味だ?」
「貴方は裏で暗躍して邪悪な笑みを浮かべて悦に浸る人間だと、佐藤さんは知らないと言うことよ」
「……堀北が久しぶりに辛辣だ」
どうやら鈴音さんは、あの龍園に送られたメールの主が清隆であると確信しているらしい。あの後、俺も問い詰められて少し口を滑らしてしまったのも悪かったな。そのヒントを辿って最終的には確信に至ったのだろう。不完全ながら師匠モードを習得した彼女の思考力は凄かった。
「恋愛に現を抜かしている暇なんてありはしないのよ? 不本意ながら貴方は私のライバルなのだから、しっかりとして貰いたいものね」
「その話、まだ続いていたのか」
彼女にライバル心を向けられる清隆は相変わらず困惑気味である。脈絡も無くそんな感情を向けられれば当然ではあるか。
「しかしアレだな、オレにもモテ期という奴が来たのかもしれない」
「ふッ」
「……鼻で笑われた、だと?」
この二人の会話はこんな感じである。別に仲が悪い訳ではないし、険悪な訳でもないのだろう。変な噛み合い方をしながらいつも会話が続いていく。
これも一つの友情なのだろうか? いや、鈴音さんはライバル心と懐疑心を清隆に向けているのでアレなのだが……。
「それで、もし佐藤さんに本当に告白されたら交際するのかい?」
そう尋ねると、同じように教室の隅っこで食事をしていた佐倉さんの耳がピクピクと動いたことを、俺は見逃さなかった。
「どうだろうな、よくわからない」
「大丈夫よ、そうなる前に呆れられるでしょうから」
「堀北、お前も同じようなことにならないと良いけどな」
「……何が言いたいのかしら?」
「いや、別に。ただなんとなくそう思っただけだ……もしかして心当たりがあるのか? だとしたら人を煽る前に自分のことを考えた方が良い」
珍しく清隆が鈴音さんを挑発するような感じになっている。これはこれで見ている分には面白い。
彼女は清隆の言葉に、少しだけムッとした顔になっていた。
「安い挑発ね」
「かもしれないな……そう言えば天武、最近櫛田から名前で呼ばれているようだが、なにか切っ掛けがあったのか?」
「……え?」
「確かにいつの間にか名前呼びされてたな……体育祭が終わった辺りからだと思うけど」
「……」
鈴音さんの聞き取り辛い呟きを耳にしながらも、櫛田さんのことを思い浮かべる。
愛らしい笑顔の裏にとても複雑な感情を覗かせる彼女は、色々な意味で魅力的な人だと思う。
「最近は、付き合う男女も多くなってきたそうだから、焦ってる奴も多いらしい……余裕に振る舞っている奴はさぞ自分に自信があるんだろうな。兎と亀の話を聞かせてやりたい」
やはり挑発的な視線を鈴音さんに送る清隆は、悔しさに震えるような感じになっている隣人を見て、どこか満足そうに鼻を鳴らす。
この二人って面白い関係だよな。案外、付き合ったりしたら相性が良かったりするんじゃないだろうか? あまり想像はできないけど。
「まぁまぁ、喧嘩しないでさ。今は清隆の春を応援しようじゃないか」
「春ではないがな」
「長続きする訳がないでしょう」
「おほん、いつまでもこうしてられないから話題を変えよう?」
このまま放置しているといつまでも煽り合いを止めそうにないので、強引に話題を変えるしかない。
そこで俺たちは声を潜めて内緒話に移行する。一応、教室をぐるっと見渡してみるが、お昼時は食堂に行く者が多い為に閑散としており、いるのは佐倉さんくらいのものである。そんな彼女には聞こえないくらいの声量でこう言った。
「櫛田さんのことだ」
彼女のことを話題にすると、二人の顔には緊張が走った。
「今後の試験でも妨害はしてくるだろうし、警戒した方が良いと思うんだけど。いつまでも放置はできないからそろそろ状況を動かしたい」
「そうね……えぇ、このまま放置はできないわね」
「具体的にはどうするんだ?」
「さてね、そこを相談したいんだ。俺が彼女について知っていることはあまり多くない上に、何を求めてどこを目指しているのかも定かではないんだ……だからこそ根幹を知ることから始めたい」
「そうだな」
清隆と俺の視線は鈴音さんへと向かう。櫛田さんと同じ中学だったとされる彼女へと。
「君と櫛田さんは同じ中学だった、そこで何かが起こった、そうだね?」
「まず前提として、私自身も詳しいことを知っている訳ではないわよ……ただ、ああ言ったことがあったと漠然と知っているだけだもの」
「だが、それがお前と櫛田の確執の原因なんだろ?」
「恐らくとしか言えないけど……」
「なら詳しく話してくれ。オレは天武と違って完全に初耳の話だからな」
「……えぇ、わかった」
少し悩んだ末に、鈴音さんは中学校時代のことを話す。そこで起こったとある事件のことを。
彼女たちが在籍していた中学で起こった事件、それは学級崩壊だった。
それ自体は決してありえないと断言できるようなことではないだろう。例えばインフルエンザの流行で多くの生徒が通学できなかったりとか、或いは生徒間の対立による不満の爆発であったりと、理由は様々に考えられる。
鈴音さんが言うには、当時は完全に他者に無関心である上に、学校側もかなり強引に情報統制を行っていたので、当事者以外に伝わってくるのは頼りにならない噂程度のものであったらしい。
だからなのか彼女の説明もかなり曖昧で的を射ない物も多い。けれど漠然とその学級崩壊に櫛田さんが関わっていることを察するには十分なものであった。
言ってしまえば鈴音さんは、櫛田さんの過去を知る唯一の人物とも言える。確執も仕方がないことだろう。
「教室は滅茶苦茶にされて、黒板や机は誹謗中傷落書きだらけだったとか、そんな噂が暫くは流れていたわね。けれど学校側はそれを徹底的に隠そうとしていた上に、私もあまり人と関わっていなかったから……」
「だが、櫛田が関わっていたことは間違いないんだろ?」
「噂の域を出ないけれど、そうなるわね」
「……」
清隆は鈴音さんの曖昧な説明に深く考え込む。櫛田さんはこのクラスの現状、最大にして最悪の爆弾でもあるからな、扱いは慎重になりたいんだろう。
「しかしわからないな。謎だらけで気味が悪いくらいだ」
「事件の内容?」
「あぁ、問題のなかったクラスに突然、学級崩壊なんて起こると思うか?」
まぁ難しいだろう。それこそよっぽど大きな衝撃を広げないことには。
「もし……貴方たちがクラスを崩壊させるとするなら、どんな手を使うかしら?」
「ん、暴力かな……良い悪いは横に置いておくとして、振り切った暴力は止めることが難しい。これは覆しようのない事実だ」
権力も立場も権威も、それら全てをねじ伏せられるだけの暴力は、究極の力だ。クラスどころか国家を黙らせることも出来てしまう。
まぁ俺や師匠と違って櫛田さんにそれができるとは思えないけど……。
「天武ならばそうだろう、だが櫛田に同じ手段が取れるとは思えない。アイツに実現可能で最も強力な武器は……嘘、或いは真実だろうな」
「全部ぶん殴ればそれでいいじゃないか」
「ここは文明社会だぞ、常識的な思考を捨てるんじゃない」
清隆、君が俺に常識を語ると言うのか?
「考えてみろ、櫛田は多くの信頼を集めて、多くの人望を向けられている。きっと中には人に言えないような悩みや相談すら櫛田にならばと考える者もいる筈だ。それらを一斉に暴露されてみろ、大乱闘の始まりだ」
「なるほどね、それが櫛田さんの持つ武器……けれど、そんなことが実際に可能なのかしら?」
「そこまではわからない。だが実際に学級崩壊は起こったんだ……櫛田を起点にな」
「……」
黙り込む鈴音さんに、清隆はこう問いかける。
「お前はどうするつもりだ?」
「櫛田さんはAクラスに上がる為に必要な存在よ」
「いつ爆発するかわからない地雷みたいな奴でもか?」
「たとえそうだったとしても、私の言葉を否定する理由にはならないわね」
「ふむ……もし天武と櫛田が付き合っても同じことが言えるのか?」
なんでそんな表現をするんだ。雰囲気が悪くなるだろうに。
「な、な、なにを言っているのよ、貴方は……」
「わかりやすく動揺しているな」
「綾小路くん……つまらない冗談はやめなさい。いい加減にしないと、怒るわよ?」
「頼むからその雰囲気で睨むのは止めてくれ」
鈴音さんは不完全な師匠モードになって清隆を睨む。どうやら感情が昂ると偶にそうなってしまうらしい。恐ろしい成長である。
そんな力強い視線から逃れるように清隆はこっちを見つめて来る。お前は櫛田をどうするんだと言いたげな瞳であった。
櫛田さんのことは、どうだろうな……俺は別に彼女を嫌ってはいない。複雑な人というのはとても魅力的だと思うから。
ただクラスで最大の爆弾であるということは間違いない。
何より、その考えや目標を達成させる為の行動があまりにも杜撰で軽率だと思っている。
いや、組むにしても龍園はないだろう……。
だって、龍園だぞ? どんな見積りだったか知らないけど軽率に契約しちゃ駄目だろ。どれだけ視野が狭くなっていたのかわからないが、鈴音さん憎しで自分の心臓を握られてしまっていることに気が付いていないのだろうか?
もし龍園がその気になれば、多分退学させられると思う。下手したら鈴音さんを追い出す前に自分の居場所が無くなってしまう。あいつのことだから櫛田さんとの契約だったり会話なんかを押さえてるだろうから。
恋は盲目と言うが、憎悪もまた同じなのかもしれない。誰かを追い落とす為に悪魔と契約するとか、本末転倒も良い所だ。
それでも俺の最終目標に、櫛田さんが必要なんだよな……どうしようもないことならば仕方がないのかもしれないが、できるだけケチは付けたくない。
俺はビックリするくらいに、笑って終わらせられる結末が大好きだ。誰かが泣いているよりも笑っている方が好きだし、絶望よりも希望の方がずっと好ましい。
愛と希望の青春物語を真面目に目指しているんだ。そこに櫛田さんがいて欲しい。
そう思うのは贅沢なのだろうか?