ようこそ未熟者がいく教室へ   作:にやまな

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既に結末がネタバレされているので、ここから先は南雲パイセンが喋る度に「でもこの人もう負けてるんだな」と思いながら御覧ください。


そして引き金に指がかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トンネルを抜けるとそこは雪国だった……という表現を一度くらいはどこかで使いたかったのだが、残念なことに雪深い光景といった風景はなく、寧ろ白い色は少ない方であった。

 

 三学期が始まって間もなく、俺たちはクラスだけでなく学年すら飛び越えて全校生徒が一堂に会することになる特別試験に挑む為にバスで移動をしている。

 

 ちょっとした旅行気分になるのも仕方がないのだろう。実際に俺もこうしてバスで長距離移動していると、少しばかりワクワクとした気分になってくるものだ。

 

 夏に豪華客船に向かう時もバスの中で同じ気分になったことを思い出す。ただこの学校は見事にそんな期待を裏切ってくれたのだけれど。

 

 そして今回もまた同様だ。このバスは旅行の為に走っているのではなく、俺たちを特別試験の会場に送る為に動いているに過ぎない。

 

 悲しいことに、この学校の異常っぷりはもう誰もが身に染みてわかっている。

 

「天武くん、どう思うかしら?」

 

「まぁそろそろなんじゃないかな……少し緊張しているようだね」

 

「えぇ、少しだけね……けれど程よい感じよ、固くなるほどではないわ」

 

「ん、なら何も心配はいらないかな。今回も頼むよ」

 

 隣の席に座っている鈴音さんにそう伝えると、彼女は微笑を見せてくれる。

 

 ここ最近、特に体育祭以降は、こうして彼女の微笑みを見る機会も多くなったと思う。普段のキリッとした雰囲気とのギャップでドキリとするのはきっと俺だけではないのだろう。

 

「どんな試験が来ても、貴方がいれば越えていけるわ。もちろん、私も全力を尽くす」

 

「あぁ、いつだって頼りにしているさ」

 

 日頃の感謝を込めてそう伝えると、彼女はまた小さな笑顔を見せてくれるのだった。

 

 ふと視線をバスの中に向けてみると、先程茶柱先生から説明された特別試験の内容に困惑しているクラスメイトたちの姿が見える。緊張だけでなく興奮も見えるのは成長したと言えるのかもしれないな。

 

 来るなら来いと、そういう心構えを持てるようになったということだ。入学した当初はDクラスで不良品の烙印を押された俺たちが、この位置にまでようやく来れたのは素直に嬉しい。

 

 ふと清隆はどうしているのかと探してみると、啓誠の隣でのんびりと窓の外を眺めていた。

 

 そんな彼の横顔を少し離れた位置からチラチラと見ているのは軽井沢さん、龍園との一線で色々とあって、その時に清隆から関係の解消を持ち出されてからはかなり複雑な関係となっているらしい。

 

 チラッと視線を清隆にやって、すぐに逸らし、しかし数分後にまた視線を向ける。さっきからずっとそれを繰り返している。

 

 そしてそんな軽井沢さんを、佐藤さんと松下さんがまた見ている、なかなかに複雑な感じとなっていた。

 

 佐藤さんとの交際は断ったらしいが、これからどうなるのやら……清隆の今後が楽しみである。

 

「今回の試験は、さっき茶柱先生が言ったように、男女にわかれることになる。鈴音さん、そっちは任せるよ」

 

「わかっているわ、貴方も抜かりのないようにね」

 

 最後に俺と彼女は拳をコツンとぶつけあってバスから降りることになる。高速道路を下りたバスが辿り着いたのは山深い田舎だ。

 

 こういう雰囲気は師匠と暮らしていた神社を思い出すな。あそこも麓に下りればこんな場所が広がっていた。

 

「あーさみぃ!」

 

 池のそんな言葉に思わず納得してしまうほどに寒くはあるな。吐き出す息も白く濁っている。

 

 バスから降りた俺たちの前に広がっているのは大きくも古めかしい校舎が二つ。全校生徒を受け入れるだけあって校舎もグラウンドもなかなかに大きい。

 

 男女にわかれてそれぞれ動き出す。それも全校生徒なのでやはり試験の規模はとても大きく複雑なものになるのだろう。クラス単位での行動も不可能で、だからこそ目が届かない場所や角度も出て来る。

 

 まさに、堀北先輩の視界から橘先輩を遠ざけるには持って来いの場所と言える状況だ。

 

 同時に、南雲先輩の視界から朝比奈先輩を遠ざけるにも持って来いの場所であると、きっと気が付いてはいないんだろうな。

 

「バスの中の事前説明で、各自、試験の内容は理解できていると判断させてもらう。よってこの場で改めての説明は行わない。ではこれより、小グループを作る為の場、時間を儲けさせてもらう。各学年、話し合いのもと6つの小グループを作るように」

 

 全学年の男子生徒は校舎に隣接されている体育館に集められる。そこで他学年の教師と思われる男性が壇上に立つと、拡声器を使ってそう指示を出した。

 

 今回の試験は全学年で、そしてクラスを問わずに挑むことになる形だ。グループ分けに関しても生徒の自主性に丸投げであり、おそらく女子側も似たような説明を受けていると思われる。

 

 さてどうグループ分けをするべきか、この体育館に集まった男子生徒たちがそれぞれ牽制するかのように迷う中で、ただ一人この男だけが前に出た。

 

「我々Aクラスは、見ての通りこのメンバーで一つのグループを構成するつもりだ。現在のグループの人数は14人で、あと1名が参加すれば必要な面子が揃う。それでは参加を募集しよう」

 

 その男とは葛城であった。Aクラスの代表としてドッシリと構えて俺たちにそう言った。

 

「葛城、それがAクラスの方針なのかな?」

 

「そうだ」

 

「理由を聞こうじゃないか」

 

「見ての通りだ。今回の試験は複雑極まる。可能な限り同クラスで纏まりたい」

 

 彼らしい安定志向な考えであり、これもまたこの試験に挑む上で一つの回答でもあるのだろう。

 

 実際に同じクラスの面子で集まれば、連携も簡単で不測の事態にもすぐさま対応できる。そう考えると悪い判断でもない筈だ。

 

「おいおい、何勝手ぬかしてんだよ。お前らだけズルいだろうが」

 

 葛城の提案に須藤がくってかかるが、彼は特に気にした様子もなく受け流す。

 

「そうでもない筈だ。こちらの提案では一グループを構成する人間が最大で2クラスの生徒だけになる。ならば1位を取った時の倍率も低い。こちらにだけメリットのある強欲な提案ではないはずだ」

 

「そうだね、けれど完全に納得できないこともわかって貰いたいものだ。葛城にだってそれはわかっているようだから、君の方針を受け入れるメリットを提示して欲しい」

 

「うむ、代わりと言ってはなんだが、こちらのグループに入ってくれる者には一切の責任を負わせないことを約束しよう」

 

「道連れにはしないってことだね?」

 

「その通りだ。もちろん、明らかに足を引っ張らなければという条件は満たして貰うつもりだがな」

 

「ん……悪い話でもないね」

 

 こっちの失格ラインにいる者を保護して貰うとも考えられる。成績不振の生徒を安全圏に置けるということだ。

 

「神崎、君はどう思う?」

 

「メリットもデメリットもあるが……問題なのは龍園クラスだ」

 

 ウチのクラスと神崎のクラスで残ったグループを作ることは問題ないと彼は言う、やはり気になるのは龍園の動きであるらしい。

 

「ククッ、随分とまぁ警戒されたもんだ」

 

「当然だ。これまでのお前の動きを考えれば警戒しない方がおかしい」

 

「だそうだぜ笹凪、お前の考えはどうだ?」

 

 清隆に散々ボロボロにされた体を癒した龍園は相変わらず蛇のようなしつこい雰囲気を漂わせており、以前より鋭さが増したかもしれない。

 

 既に開き直っているな、手強くもあるが同時に面白いとも思う。

 

「提案なんだが、俺たちと神崎たち、そして龍園と残ったAクラスの面子でグループを作ろう。それぞれ4クラスで面子を埋めるんだ」

 

 ここでどれだけ悩もうが結局はそうするしかない。葛城の方針を受け入れた時点でだ。

 

「まて笹凪、CとBでグループを作って、Aクラスの残りは龍園に丸投げするという選択肢もある筈だ」

 

「あぁ、けれどそれだとポイントが狙えなくなってしまう」

 

「だとしても、龍園を懐に入れることになるんだぞ?」

 

「それなら、問題児は俺が引き受けよう」

 

「笹凪が抑えるという訳か……出来るのか?」

 

「そうじゃなきゃいつまでも話が終わらないだろう。俺のグループに龍園と石崎と山田、Aクラスからも何人か入れて、神崎たちからは無難な奴を寄こして欲しい。面倒な奴は俺が引き受けるよ。それならそっちも受け入れやすいんじゃないかな?」

 

「それは、多少はマシになるだろうが」

 

 神崎の龍園に対する不信感が凄まじいな。当然のことではあるんだろうけども。

 

「しかし大丈夫なのか? もしもの時はお前が責任を負わされるんだぞ?」

 

「問題ないよ」

 

 別にこの言葉は楽観視して言った訳じゃない。龍園には俺に損害を与えられない理由がしっかりとあるからだ。

 

 龍園は体育祭で俺がノリと勢いで渡したポイントをこっちに全て返してきたので、それが答えだ。

 

 つまり俺は、龍園クラスがAに上がれなかった時の最終手段となっている。ならばここで無駄に損害を与える可能性は低い。俺の首が飛べばそのまま最終手段も吹っ飛ぶからだ。

 

 だから龍園は俺を裏切れない。それを行うほど馬鹿ではない。

 

 もちろんこれは龍園を警戒しない理由にはならないが、今は問題ないだろう。

 

「笹凪、お前に提案だ、今回のグループの責任者は全て俺のクラスで仕切らせろ」

 

 ほら見ろ、クラスポイントを露骨に取りに来た。

 

「ふざけるな。そんなことを認めるとでも思うのか?」

 

「テメエには聞いてねえよ三下……で、どうなんだ?」

 

 神崎の主張を完全に蹴り飛ばして龍園は俺にだけそう言って来た。やっぱりこいつ開き直ってるな……面白いじゃないか。

 

 ならば彼はきっとこの提案に乗って来る筈だ。

 

「はいわかりました、とはいかないかな。相応のメリットを提示して欲しい」

 

「はッ、葛城と同じように道連れする奴を自分のクラスから選ぶなってか?」

 

「加えて、今回の試験で得たプライベートポイントをこちらに譲ってほしい」

 

 以前の龍園ならばこんな提案は一笑にして蹴ったことだろう。大真面目に8億貯めようとしていた彼ならば。

 

 しかし今は違う、龍園はその役目を俺に任せた状態である。プライベートポイントよりもクラスポイントを優先する戦略に切り替えたのだ。自分のクラスをAに上げて俺たちを蹴落としこちらの完全勝利を否定する為に。

 

 ならば、重要視するのはクラスポイント、プライベートポイントではない。

 

 こう言った方が良いだろうか、龍園は俺にプライベートポイントをやるからクラスポイントを稼ぐ機会を寄こせと主張しているのである。

 

 だから彼は俺の提案を受け入れる筈だ。だって彼は俺の財布を当てにして行動する気であり、そこを完全に開き直っているのだから。

 

「構わないぜ、今回の試験で得たポイントは全てお前にくれてやる」

 

「な、正気か!?」

 

 こちらの事情を知らないので神崎の驚く声も自然なことではある。

 

「笹凪、あの龍園だ。どこで裏切るかわからない」

 

「大丈夫さ」

 

「その根拠はなんだ?」

 

「俺と彼は、ライバルだから」

 

「……」

 

 訳がわからないといった顔を神崎はした。こればかりは理解が難しいだろうな。

 

「龍園、とりあえず君と石崎と山田、ウチからは俺と清隆と……後は高円寺かな。残りのメンバーは君と神崎に任せるよ」

 

 今挙げた面子は、グループ決めの際に避けられるであろう存在。つまりはババ抜きのジョーカーであるのでこちらで纏めておきたい。後は適当で良いだろう。

 

 こいつらを放置しておくといつまで経ってもジョーカーの押し付け合いで話が終わらないだろうからな。

 

「神崎、俺は龍園の提案に乗るよ。君はどうする?」

 

「……龍園はお前が抑えろ、良いな?」

 

「任せてほしい」

 

 最終的には神崎もこの提案を受け入れることになった。全く納得していない様子であったが。

 

 こうして1年の小グループ分けは終わることになる。こちらが所属することになったグループは龍園を責任者にして石崎と山田、俺と清隆と高円寺、Aクラスからは橋本と戸塚、そして神崎たちのクラスからは墨田と森山が選出される。

 

 一番可哀想なのは、この面子に放り込まれたCクラスの2人だろうな。今も龍園たちから放たれる不良オーラにビクビクとしていた。

 

 龍園も面白い奴だ。ここまで開き直られると、いっそ清々しいとさえ思ってしまう。

 

 きっと彼はこれからも俺の財布を当てにして、前提にして動く筈だ。プライベートポイントなんてくれてやれ作戦とも言える。

 

 自分のやらかしで減ったクラスポイントをある程度のラインまで上げるまでは、こちらにも利益を提示しながら大人しくしている筈だ。

 

 なにより龍園には、Aクラスとの取引もあるからな。今はまずクラスポイントといった感じなのだろう。

 

「グループの指揮はテメエがやれ」

 

「君が責任者だろうに」

 

「表向きはな。最低限はやるが、俺はゴリラの飼育員じゃない、三頭も面倒見れるかよ」

 

 そのゴリラとは俺と清隆と高円寺のことだろうか?

 

 開き直るのは良いが、あまり調子に乗ると三頭のゴリラが暴れ出すことを忘れない方が良い。

 

 まあ龍園も、高円寺を制御できると思ってはいないのだろう。

 

 そんなことを考えていると、同じくグループ分けが終わった二年生や三年生が合流してきて、南雲先輩が声をかけてきた。

 

「もう少し時間がかかるかと思ったが、意外に早かったな……お前たち1年に提案がある。これからすぐに大グループを作らないか?」

 

「南雲先輩。それは今日の夜に決めることなのでは?」

 

「それは学校側の配慮だ。早めに全学年がグループを作れたんだから、このまま移行しても大丈夫だろ」

 

 内心では早く堀北先輩に構って欲しいんだろうな。慕っているのか貶めたいのかよくわからない人である。

 

「構いませんよね、堀北先輩」

 

「あぁ、こちらもその方が都合が良い」

 

「それならどうスかね。ドラフト制度みたいな感じで決めるのも面白くありませんか。一年の小グループの中から代表者六人がじゃんけんして指名順を決める。勝った順に2年と3年のグループを指名していけば、大グループの完成です」

 

「1年の持つ情報量は少ない。公平性に欠けていると思われるが」

 

「公平に決めることなんてそもそも不可能ですって、結局持っている情報に差はあるんですから。笹凪、お前はどう思う?」

 

 何故、俺に訊いてくるのやら……まぁ俺は何でもいいんだが。

 

「俺はそれでもいいですよ」

 

 そんな訳で代表者たちがそれぞれ指名する形になった。そこで俺は龍園の背後に回って小声でこう伝える。

 

「俺たちのグループは南雲先輩の方で頼む」

 

「理由は?」

 

「監視の為だ」

 

「チッ……」

 

 舌打ちしながらも龍園は南雲先輩のグループを選んでくれた。やはりツンデレである。

 

 こうして大グループが結成された訳だが、ここで南雲先輩はどこか楽しそうにこんな提案をしてきた。

 

「堀北先輩、偶然にも別々の大グループになったことですし、一つ勝負をしませんか」

 

 きっと1週間以上前からこの展開を想像していたんだろうな。もしかしたらセリフ回しの一つ一つまで考えていたんだろうか?

 

 涙ぐましい努力とも言えるのかもしれない。約束された敗北に突き進んでいるだけなのに。

 

「南雲、これで何度目だ、いい加減にしろ」

 

「何度目とはどういうことでしょうか? 藤巻先輩」

 

「お前がそうやって堀北に勝負を挑むことに、これまで口出しすることはなかった。だが今回は1年を含めた規模の大きな特別試験だ。お前個人のオモチャにするような行為を認めるわけにはいかない」

 

「どうしてッスかね。この学校では1年も3年もありませんよ、誰が誰に対して宣戦布告することもおかしな話じゃないでしょ。ルールにも禁止とは書いていなかった」

 

「基本的なモラルの話をしているんだ……生徒会長になったからといって、何でも許される訳じゃない。越権行為だと自覚しろ」

 

「そう思うなら自覚させてくださいよ。なんなら藤巻先輩も相手にしましょうか? 一応、3年Aクラスのナンバー2ッスよね」

 

 一応、の部分を強調する辺り、敬意は欠片も感じられない態度である。

 

 多分、俺が知らないだけで2年と3年の間では恒例行事みたいなものなんだろう。堀北先輩の苦労が垣間見えるな。

 

 堀北先輩はそんな南雲先輩を見つめながら僅かに迷い、こんな言葉を返す。

 

「俺はこれまでお前の要望を断って来た。それが何故だかわかるか?」

 

「そうッスねぇ。友人たちは俺に負けるのが怖いからじゃないかと言うんですが。流石にそれはないでしょう。負けることを恐れたりしないし、そもそも負けるなんて思っちゃいない」

 

 だから俺が負かしたい。言外にそんな思いが込められているようにも感じられた。尊敬とライバル心とその他諸々が混ぜ合わさった、本当に複雑な内心が垣間見えてしまう。

 

「お前の好む争いは他人を巻き込み過ぎる」

 

「それが学校のやり方であり、醍醐味だと思うんですが……それに俺が求めているのは現生徒会長と前生徒会長との個人的な戦いだけですよ。先輩が卒業する前に貴方を超えることが出来たのかどうか、それを試したいんスよ」

 

「何をもって勝負とするつもりだ」

 

 堀北先輩も、台本通りに話を進めていく。ここが一つの分岐点でもあるんだろう。多少なりとも南雲先輩が顧みてくれるのならば、そんな願いがあるのかもしれない。

 

「どちらが多くの退学者を出せるか、というのはどうですか?」

 

「冗談はよせ」

 

「面白いと思うんですけど、今回は止めておきましょう。真面目に提案させて貰うなら、どちらのグループがより高い平均点を取れるか。シンプルにいきましょう」

 

「なるほど。それならば受けても構わない」

 

「先輩ならそう言ってくれると思ってましたよ」

 

 堀北先輩は、そこで最終確認を行う……この茶番劇を本当に進めるのかどうかという、最終確認を。

 

「南雲、これは俺とお前の個人的な戦いだ……そうだな?」

 

「勝つために堀北先輩の駒を攻撃する方法はなし、ということですね。それでいいスよ」

 

「こちらのグループに限らずだ……もう一度言う、他者を巻き込むような形ならば受け入れない」

 

「やたらと念を押しますね?」

 

「拒否するのならば、この戦いは引き受けん」

 

「はいはいわかりましたよ。本当にお堅いんですから。あくまで正々堂々、お互いの矜持をここに賭けましょう」

 

 矜持か、その言葉を使ってしまうのか……悲しいものだ。

 

「その言葉を、決して忘れるな」

 

 堀北先輩は最後に瞼を閉じて数秒ほど考え込み、覚悟を決めてそう返す。

 

 きっと最後の最後まで南雲先輩を信じたかったんだろう。けれど僅かな祈りと希望は届くこともなく、最後の引き金を引く覚悟を決めたらしい。

 

 茶番劇は始まった……相変わらず清隆だけはラスボスみたいな顔をしていた。

 

 

 

 

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