Recoil of Lycoris and Lilybel   作:小鳥遊 小佳夏

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Set a thief to catch a thief

たーちゃんがDAに戻って。残りのメンバーでリコリコは営業を継続していた。俺は普段通りに生活しているが、たまに口を覆う強制呼吸器をつけないと苦しくなる時が出るようになってしまったがそれ以外は変わらず。ちーちゃんも電圧が下がるのか、たまに胸を抑えて苦しそうにすることがある。でもそれ以外は今まで通り。そんなある日。

「ほんっとに論文から追えるの?」

「あんな人工心臓と人工肺なんて、治験も難しいだろう」

「まあ、入れてみて失敗、とか大事だ」

「非合法に実験できる機会をアラン機関が与えたんだ」

「なるほど。戸籍のないリコリスはうってつけってわけかぁ。睦月だって戸籍は持ってるけど表と関わりを持ってるわけじゃない。失敗してもどうにでもなる」

「アランが研究者を見つけたきっかけがどこかにあるはずなんだが」

そんな話をしてるのを知らずに、クルミに用があったちーちゃんが襖を開けた。

「クルミ」

「わぁっ!?」

慌てて画面を二人が隠そうとするが、腕の間から心臓と肺のモデルが見える。まだ探してたのか、二人共。

「やっぱもう終わりにしようかねぇ」

「だなぁ」

たーちゃんが行った後、ちーちゃんと二人で話し合って決めた事。決行はちーちゃん任せにしたけど、二人で決めた事。

「「リコリコは閉店しまぁす」」

 

「あんまり私の事で皆の時間取るのも悪いし」

「このお店は最後まで楽しい場所じゃないとな」

「二人は良いのかよそれで」

「元々そうするつもりだったのよ。考えてたより長かったくらい。ねーつー君」

「まだ孤児院での研究が始められる前の事だけどな。いつかは閉めようと話してたんだ。だから規定プランだ」

先生とミズキは何とも言えないって顔をしてる。辛気臭いなぁ、二人共。

「さぁ、皆もたきなを見習って、自分の道に戻り給え。Hay you.ミズキはどこへ行きますか?」

「へ? 婚活サイトで知り合ったVancouverのイケメンに会いに行こうかしら」

「良いじゃん!」

「わーお、どれどれ・・・ムッキムキだな。Hay、クルミは?」

「ボクはこの国じゃお前が居ないと命が危ない」

「あんたDAに狙われてるしね」

「ボクはこの国から離れるよ」

「それなら、うちの孤児院に来ないか? アリスシステムの保守管理はクルミ位のプログラマでないと頼めないし、アリスシステムを使えばクルミの知識欲も少しは満たされるだろ」

「そうだな。そうさせてもらおうか。睦月と千束も来るのか? 千束の旅券位作ってやるよ」

「おっほっほ、それもありだなぁ。でも、先生が寂しがるからやっぱだめー」

「俺は戻ったら体の事がみんなにバレるだろうし、何より向こうに長く行っちゃったらちーちゃんが寂しがるだろうから、行かないことにするよ」

「いつか、たきなを誘ってあげて」

「たーちゃんにとってもいい刺激になるだろうしな。孤児院の子達は強いから」

「・・・あぁ」

 

数日後。二人の出発準備が整い、タクシーを呼んでトランクにスーツケースを押し込んだ。

「今度はケースに入らず空港に行けるねぇ」

ちーちゃんが茶化すが反応が無い。

「どうした可愛い顔が台無し」

ほっぺをつままれると流石に反応してきた。

「世話になった」

「なぁにぃ、らしくないなぁ」

「言ったろ、ここは最後まで楽しいとこにって」

「ミズキも達者でな」

「おうよ」

ちーちゃんとミズキが拳を合わせる。

「じゃ、千束の事任せたから」

「おう、任された」

「あんま二人に無理言うなよ千束。おっさんも年なんだから。睦月も、無理するなよ」

「へいへい」

タクシーが走り出した。

「さ、片づけを始めますか、先生、つー君」

「だな。色々処分しないとなぁ」

 

お店の入り口に張り紙を張った。テレビでは延空木の完成についてやっていた。ちーちゃんは片付けの腕を止め、アルバムを広げている。俺も隣で小休止。小さい頃のちーちゃん。小さい頃の俺。二人で映ってる写真も。

先生は転がり込んできた俺を、ちーちゃんと同じように愛情を注いでくれた。だから俺とちーちゃんは今ここにいる。と、先生がテレビを消した。

「んぁ、見てたのにぃ」

「もぉ、片付けてんだぞ」

「あ、リッキーだぁ、可愛かったなぁ♪」

「懐かしいねぇ。そうか、あれからもうこんなに経ったのか」

リッキーは昔リコリコで買っていた柴犬。人懐っこい、可愛い奴だった。

「ねえ先生。これからどうするの?」

「明日朝、不動産屋かな」

「そうじゃなくて。バイト雇ったりしてこのお店続けたりとかさ」

「そうして欲しいのか?」

そうじゃないんだけど、ね。

 

「この店ともちゃんと、お別れしないとなぁ」

「俺とちーちゃんと先生と。三人でずっとやってきたお店だからなぁ」

・・・。

「あまり、無理するな」

「っっは、せんせにはお見通しかぁ。やっぱり、寂しいですよ。つー君と先生が居ても」

「ちーちゃん、ほんと寂しがり屋だからなぁ」

「の割にはつー君も寂しがってるよね?」

「ちーちゃんにはお見通しか」

・・・。

「コーヒー、入れるか」

「じゃあお茶菓子出すよ。まだリコリコセット、三人分残ってるのがあるから」

「ん~♪ 是非!」

暗かったリコリコに、電気が灯った。

 

ーーーーーー

 

「ちょっと、これ何、何でよぉ!!」

「いやぁ、ちょっと・・・」

「これから私はどこで漫画書けって言うのよ! こんなに静かなお店は他にはないし!」

 

「ちょっと急じゃないマスター!」

 

「閉店なんてやめようよぉ」

 

「ま、まじで!?」

 

お店の張り紙を見た常連客の一人が拡散した結果、ボドゲ常連の方々が次々とお店にやってきた。

「つ、疲れたぁ・・・」

「愛されてるのはわかったけど、しんどい・・・」

対応に当たった俺とちーちゃんはぐったり。カウンターにべちょっとなっている。

「まあでも、なんか嬉しい」

「俺達が消えても、皆の記憶には残るだろうからな」

「そうだな」

 

地下にある倉庫。先生に言われて地下に荷物を取りに来たけど、ずっと放置されてたのか埃が凄い。

「その箱だ二つ、両方共」

「いつから触ってないのよ・・・。ライフル?」

大きくてかさばる箱をホールに上げる。

「お前たちのだ。開けてみろ」

「鍵閉める? またお客さん来るかも」

「いや、良いんだ。武器じゃない」

蓋を開けると。

「・・・着物?」

「・・・袴?」

「お前達の晴れ着だ。成人式にはちょっと早いがな」

俺もちーちゃんもまだ17歳。予定通りに進めば二人共問題なく成人式に出られただろうが、そうはならなかった。だから先生は出してきてくれたんだろう。

「っ!!!」

「お、おい」

感慨極まったちーちゃんが先生に抱き着く。

「俺のまで、ありがとう、先生」

「お前も千束と同じ、大事な息子だからな」

俺はちーちゃんと違い、途中から転がり込んだ。でもそんな俺にもちーちゃんと同じ愛情を注いでくれたと思うと、感動で涙が止まらない。

早速二人で着て写真を撮ってもらった。ちーちゃんは白い着物。俺は黒い袴。

「どうどう?」

「あぁ、ちゃーんと撮れてるぞ」

「いやそうじゃなくて、先生の感想を聞いてるの」

「娘と息子の晴れ姿、どう?」

「あぁ、もちろん素敵だよ。千束。睦月。すっかり大人の女性と男だな。そうしていると夫婦みたいだ。苗字も同じだし、な」

「ふえっ!? だからそれはやめてよぉ、先生ぃ///」

「俺は悪い気しないけどな。ちーちゃん可愛いし。アリスも居たら子供がいるみたいで尚更夫婦に見えてただろうな」

残念ながら、アリスはクルミが行く準備等で孤児院に帰っているところである。

「もぉ、つー君までぇぇ///」

顔を赤くしたちーちゃんだった。

 

「でもほんと今までありがとうね、先生」

「俺からも。ありがとう、先生」

「お前たちに感謝されることなど、何もできてないさ」

「またまたぁ。私に名前を付けてくれたのもせんせだし、銃を教えてくれたのも、この店も、たきなと出会えたのも、何より私の為にヨシさんを探してくれたのも先生じゃん?」

「俺だって。いきなり転がり込んだのに受け入れてくれて、ここで働かせてくれて。色々失敗してもしっかりフォローして時には怒って。そうやってここまで育ててくれた」

「あ、さっきの写真ヨシさんに送ってよ。それが」

「そうじゃないんだ!!」

「な、なに先生大きな声出して」

「千束。シンジの事で、話す事がある」

俺は少し退散しましょうかね。静かに俺は下の射撃訓練場に向かった。

 

ーーーーーー

 

サイレンが鳴り響いた。

「何かあったか!」

訓練場に降りていた俺は慌てて階段を駆け上がり、二人に声をかけた。ちーちゃんがテレビをつける。

「なにこれ」

「真島・・・」

延空木が真島に乗っ取られた。その報道だった。

と、リコリコに電話がかかってきた。先生が出る。

「楠木か」

司令ということは、俺達に出ろってことか。と、同時にちーちゃんのスマホにも着信があった。

「! 先生貸して」

ちーちゃんが電話を変わった。司令と話しながら送られてきた写真を見せてくれる。それは吉さんが捕縛されてる写真だった。どういう事だ。なんでアラン機関が掴まっている?

『睦月と一緒に今すぐ本部に来い。我々と合流し、延空木の真島を撃て』

『お前が延空木に近づけばこいつの命はない。1時間で起爆する』

『お前のようなリコリスが必要な状況だ。多くの命がかかっている』

『お前のようなリコリスに来られると都合が悪い。こいつの命がかかっているんだぞ』

『誰かいるのか?』

「い、いえ」

「楠木。また後で掛け直す」

板挟みにあうちーちゃんに、先生が受話器を取って司令からの電話を切った。

『それでいい。下手なことするなよ? ずっとお前らを見ているからな』

お店のステンドグラスの奥に見えるのは一台のドローン。クルミかアリスが居ればもっと早く気づけたのだろうが・・・。

「罠だろうな」

「だからって見殺しにできないでしょ!」

「さっきも言ったが、シンジは」

「先生を疑ってるわけじゃない。けど、吉さんに会って直接聞きたい!」

「俺はアラン機関が嫌いだ。本音を言えばヨシさんなんかどうでもいいと思ってる。でも、俺はちーちゃんの相棒だ。今までも横にいた。だからこれからも俺もちーちゃんについて行くさ」

「武器庫の弾丸が処分できそうだな。ありったけ持ってこい」

「先生!」

「延空木は、たきなやフキが守ってくれる。あの二人もお前達同様、私の優秀な教え子だからな」

「うん!」

「よし、リコリコ最後の依頼だ! 存分にやるぞ!」

「「おーっ!!」」

俺たちは急いで着替え、武器弾薬を鞄に詰める。デトニクス.45コンバットマスター。HK.45。レミントンM700。おまけ。ついでに弾薬もたくさん。ちーちゃんはいつもの鞄に。俺は腰回りのホルダーにしこたま差し込む。

「では行こうか。ちーちゃん、先生」

「うん、横は任せたよ、相棒」

「後ろは私の役目だな」

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