Recoil of Lycoris and Lilybel   作:小鳥遊 小佳夏

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Engage in fierce competition

荷物をまとめた俺たちはロボ太の指示で車に乗った。どうやってか知らないけど車は既にハッキング済みのようで、画面にロボ太のアイコンが出ている。

『携帯は置いてきたな』

「あぁ」

『以降はこの通信だけを許可する。誘導に従え』

「ちっ、わかったからさっさとしろロボ太」

『! 僕の事知ってるのか!? 今やウォールナットを超える最強のハッカーだからな!』

ロボ太のウザさにちーちゃんがキレそう。あ、ウィンドウ蹴った。

「は・や・く・し・ろ」

『発進しろ・・・』

先生の運転で車が走り出す。お店の中ではちーちゃんの携帯が鳴り響いていた。頼むぞアリス。たーちゃんにうまく繋いでくれ。

 

ーーーーーー

 

『真島一味は、起爆予想ポイントの第一展望台を制圧。現在は第二展望台でエレベーターを切断。籠城中だ』

私はバスの中で作戦の説明を聞いていた。

『選抜隊は非常階段で第二展望台を急襲する』

選抜隊のメンバー表。その中に、千束と睦月の文字。思わず映像の司令に詰め寄った

「千束と睦月を呼んだんですか!?」

もうこの先長くない二人を呼んだというのか。作戦の為に、自分たちの都合で。

『席に着きなさい』

秘書が何かを言っているが、耳に入らない。

「司令! あの二人は!」

『奴らは来ない。連絡がつかなくなった』

「連絡が? 店長もですか? 何故です?」

『知らん。我々には関係ないことだ』

「会議中だぞ!」

相変わらず状況を掴めないやつが何か言っている。

「この状況で連絡つかないなんておかし・・・」

耳にしていたリコリコ用のインカム。そこにある人から連絡が入った。

「司令、アリスからです。睦月から緊急電。急襲を受けた、以後の連絡不可。詳細を話したいのでセキュリティクリアランス4のホットラインへの着信許可を求めています。」

『どこから番号を知ったんだ・・・。通信を許可すると伝えてくれ』

「了解だそうです。私はリコリコの様子を確認してきます」

『良いだろう。事態急変につき会議を中断する。作戦開始予定時刻に変更はない。それまでには戻れ』

「了解しました。リコリコに着き次第連絡します」

私はバスの扉を開け、リコリコに走った。何があったのか、それを知れる手掛かりが残っていると信じて。

 

ーーーーーー

 

携帯電話は常にいろんな電波が飛んでいる。音声通話、インターネット、位置情報etc。それは途切れることもあるが、基本的には繋がりっぱなしの事が多いだろう。そして俺の携帯には、必ず切断されない3本の通信ラインがある。それは何があっても接続され続けるライン。切断されたときはその数によって俺が緊急事態に陥ったことを表せる指標になっている。

俺は装備を整えようと倉庫に行ったとき、スマホの電源ボタンを複数回押した。それによって2本のラインが切断された。1本は緊急事態発生。2本は緊急事態発生、以後の通信不可、即座に増援を送れ。3本は身体への影響あり、最悪の可能性も考慮せよ。いろんな電波を発信し続けている携帯だからできる非常用の通信手段である。これが使われると即座にアリスにアラートが飛び、アリスが切断数によって対処することになっている。さて、後はアリスからたーちゃん経由で司令にも連絡が行くはず。それで何とかなってくれればいいのだが。

 

ーーーーーー

 

つーさんからの餞別であるバイク。それでリコリコに戻った私は、鍵が開いているのに気づいた。扉には閉店の文字。一体。戦闘の痕跡はない。でも先生を含めたあの三人が纏めて無力化させられる事なんてあるのか?

試しに千束の携帯を鳴らすと、カウンターの上に纏めて放置されているのが見つかった。状況を把握した私は即座に司令に連絡を入れた。

「司令、たきなです」

状況を報告。推察だが、何かを人質に取られて無傷で連行された可能性もあると伝えた。

『状況は理解した。アリスからも聞いたが、三人の行く先が不明な以上、我々は目の前のことに対処するしかない。真島は延空木に居る。やつが死ぬ前に情報を聞いてこい』

「わかりました」

『あと30分で突入する。二人の穴は別のサードが埋める。すぐに戻れ』

「了解しました、すぐに戻ります」

私は置いてあったスマホをまとめて鞄に投げ込み、急いでバスへと戻った。

 

ーーーーーー

 

ボクは孤児院行きのプライベートジェットが整った連絡を聞き、駐機場へと向かった。これはHONDA JETか。いいのに乗っているな。中ではアリスが専用の端末から何かにアクセスしていた。

「すみません、ちょっと立て込んでいて。それに離陸が中止されているようで、暫くは足止めになるかもしれません」

「わかった。じゃあ丁度いい。千束の心臓を追ってみる。使える回線はあるか?」

「これを使ってください」

持ってきたPCを起動し、ゴーグルを被る。良いところまでは追えていたんだ。もう少し、あと少しでたどり着けるはず。

「一番千束の心臓に近いのどれ」

音声認識をかけて、人工心臓の形状から論文を検索する。

「これの著者、洗い出して。そうそ、どうせ名前変えてるから。メタデータよりフェイシャルイメージ」

名前なんて記号でしかない。容易に変更ができる。でも顔は? 整形手術をしないと変えもできないものだし、それならピースとしては残っていると考えられる。

「お! 当たりか」

胸に梟のピンバッジを付けた同じ顔の写真。目に映る風景から場所を推察する。

「場所お願い」

立体の地図データから同じ場所を探す。が。

「何もない」

その場所には何もない、空き地。

「10年前」

じゃあ千束の心臓が作られたはずの10年前は? 復元されたのは町工場。

「町工場か。なんかある?」

監視カメラの記録が出てきた。

「なんか吉松っぽいの」

映像が流れ、吉松の後姿っぽいのが出てきた。

「それじゃ、振動解析。音出して」

こういう事もウォールナットならできる。さぁ、何を喋っている?

『直接会うのは御法度では、ミスター吉松』

『ドク。・・・・・救世を誓ったんだ』

「ビンゴ!!」

ここで間違いない。あとは。

「この骨格で、その後10年照合して」

次に吉松がこの周辺に現れたのは9年後。

「去年?」

音声記録を聞いてみよう。

『我々は手助けをしただけだ。少女の命一つであなたの才能が結実するなら、安いだろう』

『その子にこれを。救ってあげて』

『君が心配すべきは、これからの幾多の患者だ。被験者の事は私に任せてくれ。君同様、アランの子だからね』

『もう一つも、お願いできるのよね?』

『ああ。こちらの被験者はまだ見つかっていないが、必ず見つけて役に立てよう』

吉松が開いたアタッシュケースには、心臓の形の機械と、"肺"の形の機械。

「あったあ!!!」

「何があったんです?」

「二人の臓器だ!!! これで助かる!!!」

「っ!? すぐに孤児院に連絡します! 医者はこちらが最高の術者を用意しますので!!」

「ああ、ボクはすぐにミズキを呼び戻してくる!!」

「呼んだらここではなく、ヘリに乗ってください。今お父さんから緊急電を受信。増援を要請しています。私は延空木の方をモニタリングするので」

「わかった。すぐに呼んでくる」

「お願いします。お父さんなら、呼ばれなくてもこうしたと思うから」

「本当にあいつのことが好きなんだな、お前は」

「もちろん。私はあの二人の娘ですからね。あ、クルミさん。私はこの後別行動しますので、機体が来たらすぐに行ってください。操縦はミズキさんに」

「わかった」

ボクは機材を首にかけたまま空港内を爆走。生き別れの娘が呼んでるとミズキを呼び出してもらった。

「バンクーバーの彼に連絡しなきゃ」

「まだ付き合ってないだろ!」

ミズキが出した携帯を奪い、たきなに電話をかける。

「千束の心臓、もう一つあるぞ」

『! どこに?』

「多分吉松が持ってる。それに喜べ。人工の肺も一緒だ」

『えっ?』

「アランの支援を受けた研究者が、改良した心臓を作ったんだ。多分それを応用して、肺も作ったんだろう。その二つと脳があれば人間は生きられるからな、作られていてもおかしくない。それを吉松が持ち出してる」

『吉松は、今どこに?』

「わからない。ここ数日の足取りがさっぱりだ」

「さよならだぁりん!」

「ミズキうるさい!! また連絡する」

『あ、待ってクルミ! リコリコに行ったんですが』

「あー、閉店してたろ。すまん。千束と睦月の希望でな」

『スマホだけ置いて、千束もつーさんも先生も居なくて。しかもアリスに緊急電が行ったそうで』

「緊急電は聞いたが、詳細まではつかめてないんだ。たきなは何か知ってるか?」

『いえ。でもスマホは回収しました。解析できますか?』

「わかった。ちょっと待ってろ」

降りてきたのはUH-60JAの見た目をした機体。どうせ孤児院の機体で中は魔改造されているんだろう。よし、すぐに電波塔へ向かおう。

 

ーーーーーー

 

非常階段を上って目標地点へ向かっている最中。クルミから連絡が来た。

『たきな! 千束のスマホを見ろ!』

慌ててみると、縛られた吉松の写真。

『その画像が送られて、吉松からの着信が入ってた。今、ミカの車は押上だ。恐らく三人は旧電波塔に向かってる。つまり心臓の持ち主のところに千束と睦月が行くってことだ! たきな、万事解決だぞ!』

「そうでしょうか」

『ん?』

「嫌な予感がします。罠かもしれない」

いや、これは罠に違いない。千束とつーさんを呼び出すための。それはなんで? 延空木に来られると困るから? それもあるかもしれない。だが真島はセーフハウスで遭遇した時こう言っていた。

「またな、電波塔のお二人さん」

真島は二人に執着している。そんなあいつが、自分が延空木に居るのに二人を旧電波塔に呼び出したりするだろうか。

それに、吉松は千束に殺しをさせようとした前歴がある。写真に写るケース。多分これに心臓が入っているんだろう。なぜ吉松はこれを持って捕まっている? 疑問だらけだ。

『千束なら大丈夫だろ』

「絶対、何かある」

例えば、吉松は千束と真島を戦わせて、真島を殺させることで千束の殺しの才能を証明し、それをもって再度支援する為に心臓を持っている、とか。

「さっさと来いよぉ。他チームに負けちゃうだろ」

『おい、たきな?』

真島に近づくため。そしてゆくゆくは千束の心臓とつーさんの肺の為に私はDAに戻った。でもそのありかはもうわかった。更に二人は今ここに居らず、心臓も肺も真島も吉松も延空木にいない。それなら私がここにいる理由はない。

「すみません、私はここで」

「またかよお前」

「たきな、どういう事」

一応私のわがままなので仕立てに出る。早く行かせろ、私が居るべき場所はここじゃないんだ!

「千束と睦月のところに行きます」

「馬鹿が移ったか? 任務中だぞ!」

「すみません」

あぁ、周りが煩い。いいから、早く!

もう周りの言葉も入ってこない。とにかく動こうとしたら、突然エリカが抱き着いてきた。え、何事? と思ったらすぐに上に行ってしまった。訳が分からない。

「この任務を降りれば、もうDAには戻れんぞ」

「わかってます。そもそも、私がDAに戻ろうとした理由も今なくなりました」

「お前・・・。最後のチャンスなんだぞ」

「ここでは千束とつーさんを救えない。それだけです」

「・・・行けよ」

私はお辞儀だけして走ろうとしたが、ジェット機のような切り裂く音が近づいてきた。そして通信。

『たきなさんならそうすると思ってました! お迎えです!!』

「っ!?」

「なんすかあれは!?」

急速に接近してきた物体が私の前で止まって浮く。それはアリス。幼女体に手足と頭、後背中にメカメカしい装備がついている。

「打撃魔法使い装備です。さ、掴まって」

「は、はい」

私が柵を乗り越えジャンプしてアリスに抱き着くようにしてしがみつく。

「しっかり捕まっててくださいね!」

すると足先と背中に着いたバーニアから炎をと爆音をとどろかせ、そのまま旧電波塔に向かって空を駆けた。これなら下を行くよりも早い! 待ってて二人共、今行きますから!!

 

「さっきの、なんだったんすかねぇ・・・」

「私が知りたいよ・・・」

「司令部になんて報告するんすか?」

「アイデア募集中だ」

突然現れたメカ少女がたきなを連れて行った。爆風で吹き飛ばされそうになったが、それは何とかこらえられたものの、あまりにSF過ぎてしばらく固まっていた二人だった。このまま司令部に報告しても信じてもらえるか。なおその結果、他のチームに大きな差をつけられて第二展望台に到着した。

 

ーーーーーー

 

新宿。渋谷。テレビ。全ての放送でリコリスの存在がばら撒かれた。それに対処できるラジアータは絶賛ダウン中。私は孤児院への指揮を出すのと空を飛ぶので精一杯。まだ試作装備レベルのを持ち出したから、バランス計算に大幅な余力を割かなくちゃいけない。孤児院の後方支援部隊も電波妨害に努めているけど、放送を23区内に圧し留めるのが限界。だから頼れるのはクルミさんだけ。クルミさんなら、根本から何とかしてくれるはず。あとは孤児院の仲間たち。きっとお父さんならこうする。だから、お願い!!

 

ーーーーーー

 

新宿駅東口。リコリス制服を着たサードがピンチに陥っていた。近くにいた男が銃を所持。本部からは発砲禁止命令が来ているけど・・・。

「はい、お疲れ様!」

突然スモークが炊かれ、視界を失ったところに誰かに手足を拘束された。そのまま肩に担がれて、何かに放り込まれる。

「出して!!」

そのまま急発進。一体何が。

「大丈夫? ああ手荒な方法になっちゃってごめんね。でもああしないと、君撃たれてたかもしれないから」

どうやら私は助け出されたらしい。声の主を見ると、黒いスーツに身を包んだ、女性?

「あなたは、誰ですか」

「私は孤児院の前衛。名前は内緒だけど、あなたをリコリスのセーフハウスに連れて行くのがお仕事」

確かにこの道を行けば私達のセーフハウスは近い。嘘じゃないのかな?

その後私はセーフハウス前で降ろされ、中に戻った。最初は私だけだったが、次々と先ほどの車がやってきてはリコリスを置いてまた出かけていく。

 

都内23区内で放送に出たのと同じ制服の子達が次々と車で拉致され、近くのセーフハウスに届けられた。おかげでリコリスの損害は0。身近にリコリスが居るという真島の発言は真実と思われなかった。

「司令、これは」

「孤児院、だろうな。おかげで大きな借りができた」

睦月が居なくても即座に行動するとは。彼らの能力、見誤っていたかもしれんな。

少なくともこれで23区内の外出中のリコリスは居なくなった。人間見たものは信じるが、映像や写真の世界などはは情報操作で何とでもなる。そういう人種だからこそ、私たちの存在は秘匿できていたのかもしれんな。

「さぁ、彼らに負けてられる場合ではないぞ! ラジアータの状態は?」

「再起動には時間を有しますが、実行しますか?」

「今再起動するのはまずい。それに再起動したところですぐにまた乗っ取られるだろう。接続元をマニュアルで検索、大本を探せ!」

『了解!』

こちらも早く方をつけなければな。私達は幾年もこの日本を守ってきたという自負がある。こんなところで深山に負けてられるか。

だが、事態は悪化の一途をたどった。

「延空木のリコリスと通信途絶!」

掃除用ドローンに見せかけた爆弾。してやられたな。

 

ーーーーーー

 

「じゃあ、行ってくるよ」

「後は頼みます、先生」

「本当に二人だけで行くのか?」

「大丈夫。店戻ってお茶飲んでて」

「先生は狙撃手なんですから。どこよりも高い所に行くんです、先生じゃ文字通り足手纏いですよ」

「そうか。シンジによろしくな」

「うん」

DAM

ちーちゃんがノールックでKSGを一発。命中したのはロボ太のドローン。

「「行ってきます」」

「ああ! 行ってこい!」

 

中に入るとちーちゃんが非常ベルを押した。

「はい皆さん逃げてー」

「逃げるような奴が残ってるとは思えないけど、ちーちゃんらしいね」

続いて俺たちはエレベーターで行けるところまで行く。整備用にまだ残してあって助かった。

「こうしてると、10年前みたいだね」

「あの時と同じように背中は任せたからな、リリ」

「おう、任された、リコ」

エレベーターで上がれるところの上は銃撃戦で多大な被害が出たところ。そこまでは非常階段で登らないといけないが、これも途中までだ。真島の野郎が派手にぶっ壊すから。

非常階段に入って上に向かう。階段にはちーちゃんの足音だけが響く。

(上4人、縦列)

(私が前二人、君が後ろ二人、私が先に仕掛ける)

(了解)

センサーゴーグルに出た反応をハンドサインで共有、仕掛ける順番を決める。

「いらっしゃいませー」

まず一人、ちーちゃんが階段の裏にへばりついてKSGの12ゲージプラスチック・フランジブル弾で昏倒させると同時に引っ張り込む。と仲間を巻き添えにするのを厭わず銃弾が撃ち込まれる。

「おぉうおいちょいちょいちょい!」

「酷いことするもんだねぇっと!」

反対側の隙間から上に上った俺は手に持ったHK.45で二人を気絶させ、ちーちゃんも残りの一人を気絶させる。っと、落ちそうになったテロリストをちーちゃんが抱き留めた。

「階段は下手すっと死ぬからねぇ。気をつけなはれや?」

「よし」

「次に行こう」

ハイタッチをして上に上がる。

非常階段で行けるところまできた。このうえは骨組みが歪んでいるので外から回らないといけない。

「ここからはっと」

ちーちゃんがKSGのチューブを変えてコッキング。KSGは銃弾を入れておくチューブが二つあり、それぞれに別の弾種を装填できる。そしてそれは自由に切り替えが可能。プラスチック・フランジブル弾から入れ替えたのは、障害物破壊用に入れてある12ゲージスラッグ弾。これで人を撃ったら大穴が開くね。

DAM!カチッ DAM!カチッ

装填していた弾を使い扉を撃つも破壊できず、二人で蹴り飛ばしてようやく扉が開いた。歪んでたんかな。っとおおおう!?!?

勢い余って外に落ちそうになるも、ドアノブを掴んだちーちゃんが支えてくれた。

「つー君大丈夫?」

「死んでんじゃない?」

「まだ生きてるよ」

「まだ、ね」

さて、と

「上にも歓迎パーティーの賓客が居るみたいだね」

「丁重におもてなししなきゃ」

「私は右。つー君は左」

「おーけい!!」

二人で柱に飛び移り、上を駆ける。気づいたテロリストが射撃してくるが、開けた場所で風もあり、命中しそうな弾は全く来ない。

DAM!カチャ DAM!カチャ

「いやっばぁ!」

DAM!カチャ

「ごめんちゃ~い」

落ちそうになった敵をプラスチック・フランジブル弾をもう一発当てることで通路の上に戻すちーちゃん。流石だね。

「俺も負けてられないなっと!!」

俺はいつも通り接近し、至近距離から!

DAMDAM

ヘッドショットで敵を気絶させる。よし。

「ふぇ? あ、あ、あー! ちょいちょいちょいちょい! ふおぉ、んああ、んぎっ!」

見ると、敵の銃撃でバランスを崩したちーちゃんが、KSGのスリングベルトを鉄骨に通してぶら下がっていた。あーもう!

DAMDAMDAM

「せいっ!」

HK.45で牽制しつつ、テロリストに接近し背負い投げをして意識を刈り取る。

「ちーちゃん捕まって!」

左手に持ったボーララップの片方を手に持ち射出。ちーちゃんがそれを掴むと同時にKSGのスリングベルトが切れ、ちーちゃんは放り投げた。

「後ろ!」

「はいよっと!」

後ろから狙っていた敵が出たので警告すると、デトニクス.45コンバットマスターを鞄から抜いて一発。

PAM

それでテロリストは昏倒した。あとはちーちゃんを引っ張り上げるだけ。

「もうちょい踏ん張って!! せーのっ!」

ワイヤーを引っ張る俺と上に登ろうとするちーちゃん。勢いを合わせてちーちゃんを引っ張り上げた。

「ありがと、つー君」

「よく頑張れました」

 

「またここかぁ」

「俺たちの始まりの場所にして、終わりの場所かな」

「お、かっこいいこと言うねぇ」

「だろ? さぁ、行くか」

傾いた展望台。そこに続く道はもうない。だから、外から。割れた窓から中に入り込んだ。

 

「吉さーん?」

「ヨシさーん」

「千束ですよー」

声にひかれてテロリストが出てきた。

「右のカウンター裏に二人」

「オーケー、左の二人は任せた」

PANPAN

DAMDAM

分担してプラスチック・フランジブル弾を叩き込む。よし。

「「っ!」」

二人は同時に互いに向けて射撃。そして射撃と同時に顔をそらすと、それぞれの背後から狙おうとしていたテロリストに命中する。

「ありがと」

「こちらこそ」

こうして二人あの時と同じように、次々とテロリストを制圧していった。

 

「千束!」

吉さんの声が聞こえる。俺とちーちゃんは頷いて上に走った。

吉さんを見つけてちーちゃんが駆け寄ると同時に、指パッチンが聞こえてシャッターが下りた。設備まだ生きてたのか。

「よぉ、ヒーロー」

「真島ぁ!!」

出てきた真島がキアッパ・ライノを2発撃つ。いつものように躱した俺らだが、一発が吉さんをかすめた。

「ぐあっ!」

「ヨシさん!」

「ちっ!」

「はっはははは。避けると大事なヨシさんに当たっちゃうぜぇ!」

続く射撃はちーちゃんの鞄の防弾と、俺の左腕の防弾カバーを展開することで全て防ぐ。

暗いので何も見えない。俺はセンサーゴーグルの暗視機能を起動し、ちーちゃんはフラッシュライトを鞄から取り出す。気づけばヨシさんが連れ去られていた。誰が・・・。

「あんた、なんで!!」

「ここにいるんだってかぁ?」

「俺達との勝負つけようってか?」

ちーちゃんと二人で棚を押して廊下に出し、即席の遮蔽物とした。また指パッチンが聞こえると、テレビが点いた。

『映像は、延空木からの中継です。武装した少女が発砲を繰り返しています!』

負傷したフキ、サクラ、他多数のリコリス。

「フキ・・・」

「あっちのリコリスは今や全国デビュー中だ。っはは、これでお前らは終わりだ」

ちーちゃんが棚の陰から狙うが、逆に真島がちーちゃんを狙う。視界が悪くぎりぎり躱す。また狙おうとするも、画面も消され真っ暗闇に。

「俺が」

「お願い」

暗視装置を付けた俺がちーちゃんのポジションに着き、真島を探す。そこか。

DAMDAM

発砲炎で真島が一瞬明るみに映る。目前に構えて射撃していたのもあり、暗視装置の視界が煙で遮られる一瞬。真島は飛んでこちらに突っ込んできた。

「っ!」

バリケードにしていた棚を足場に、ちーちゃんが殴り飛ばされる。格闘戦に入ると俺は援護射撃できず、HK.45をしまって殴りかかろうとするが、躱され逆に一発顔に食らった。

「ぐおっ!」

「見えてるの?」

「聞こえるのさ」

「あっ!」

ちーちゃんがまた殴り飛ばされた。

そういうからくりか。真島が暗闇でも動ける謎。音。潜水艦、イルカなど、水中に居る生物やものは音波を利用して周りの状況を探っている。潜水艦に搭載されたソーナー。パッシブソーナーは音を聞いて、アクティブソーナーは音波の反響を解析して周りの状況、敵の位置を探す。それと同じことをできるんだ、真島は。その才能でアラン機関が支援したのか。

「チッ」

真島が舌打ちした。アクティブソーナーか。俺の潜入服は極限まで音を無くすようにできている。が、完全に無音にできるわけじゃない。呼吸、体の動く音、素材の擦れる音。まずい、この状態じゃ不利だ。KSGがあれば、スラッグでシャッターに穴をあけられたんだが、今は下のどこかに落ちていることだろう。

「相手の微細な動きで射線と射撃タイミングを判断する。すげぇ能力だ。そしてそれと同じことを切空きで再現する。これもすげぇ能力だ。アランが興味持つわけだぜ」

「ちーちゃん、音」

「そういう事か」

「正解っ!」

俺が真島を探すよりも早く、あいつはちーちゃんに近づいて蹴りを叩き込んでいた。お返しに足をひねって至近距離からデトニクス.45コンバットマスターを射撃するが、見えない中じゃ制度が甘く躱され、ついで弾が切れる。

また腹に一発蹴りこまれた。その足を掴んでまたひねり、手放したキアッパ・ライノをちーちゃんが掴んで突き付けた。

「いぃのかぁ? そりゃ実弾だぜ」

「っ!」

怯んだ一瞬の隙をまた真島に蹴り飛ばされた。

「ちーちゃん!」

やっと復活した俺はちーちゃんに駆け寄り、体を起こす。くそ、駄目だ。もう格闘のキレが無い。肺が悪くなってからこれだ。

「聞いたぜ、ヨシさんからよ。詰まんねぇ縛りで才能を枯らしてんだってなぁ。けど俺はお前のそういうとこ好きだぜぇ。人に生き方を強要されるのは俺も嫌いだ」

「一緒にすんな!!!」

「三人でアラン機関を叩かねえか? ヨシさんは痛めつけても中々口を割らねえんだ。お前らとなら組めるかもしれねぇ」

俺が見ていたのとは逆側に来た真島に数発ちーちゃんが発射するが当たらない。

そのまま二人で下がると、吉さんの携帯が鳴った。3コールの後の1コール。

「来たか」

「これで、形勢逆転、かな?」

アリス経由で伝えたからいつかは来てくれると思ったよ。

二人揃って牽制射を入れつつ走る。目標は、延空木に一番近い所!

ドンドンドン!

シャッターが外側から歪む。次の瞬間。

ドカァン

大きな音と共にたーちゃんを抱えたアリスが突入してきた。待ってさすがにそれは想定してない。

すぐさま格闘戦から至近距離でたーちゃんがS&W M&P45で射撃するが、全て避けられる。

「お前には用はないって言ったろ」

「でも視界は逸れたな」

すぐさま暗視機能を切ってちーちゃんと駆け寄り、デトニクス.45コンバットマスターとHK.45で射撃、2発命中。

「うぇっ!?」

真島が抑えているたーちゃんの手をひねり、持ったままのS&W M&P45でこちらを狙うが、明かりがある俺達には当たらない。

そのままたーちゃんに膝蹴りを入れて銃を奪いつつこちらに押しやり、俺がキャッチ。そのままS&W M&P45で射撃するがが、ちーちゃんが手に持った鞄で全て防ぐ。こちらに飛んできた銃弾はアリスが両手に展開した防弾シールドでカバー。ちーちゃんの鞄は最後には衝撃に負けて吹き飛ばされ、下に落ちていった。

アリスが開けた大穴を挟んで、俺、ちーちゃん、たーちゃん、アリスの四人が向かい合った。

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