Recoil of Lycoris and Lilybel 作:小鳥遊 小佳夏
「千束、マガジンが」
「しっ、黙って。あいつは地獄耳だ」
「アリス、お前は上に行って吉さんを探して。後は孤児院の方よろしく」
「了解です」
「弾切れか?」
五人が固まる。
「っ!」
真島が後ろに捨てられているキアッパ・ライノを取りに踵を返し、S&W M&P45を投げ捨てる。たーちゃんがS&W M&P45を拾いに行き、ちーちゃんはスカートのポケットに入れていた最後のマガジンを抜き取りリロード。そのまま真島に走り寄る。俺もHK.45のマガジンを交換し、真島に接近。アリスは穴から外に飛び出し、上昇した。
真島がキアッパ・ライノにたどり着き、こっちを撃つが俺にもちーちゃんにも当たらず、逆にちーちゃんの弾丸がキアッパ・ライノに直撃。真島が取り落とした。今だ!
更に打撃を与えようと俺が接近し、左手を握るも、真島は後退し暗闇に隠れてしまう。しまった。慌てて暗視機能を入れようとするがそれよりも前に暗がりから伸びてきた足が横凪に払われ吹き飛ばされる。
「つー君!」
「人の心配している場合かよっ!」
意識がこちらに逸れたちーちゃんのお腹に真島の蹴りが入り、ちーちゃんも吹き飛ばされる。
「!?」
DAMDAMDAM
たーちゃんがS&W M&P45を連射するがそのすべてを躱し、また真島は暗がりに消える。左右を見て探していると真横から勢いよく真島に蹴り飛ばされ、手すりに背中から突っ込む。
「うぐっ!」
「このぉっ」
俺よりも早く復活したちーちゃんがしゃがんだまま背負い投げみたいに真島を背中に抱え、真島の耳の真横で一発。耳元でした発砲音で苦しむ隙に腕をひねって体制を変え、反対側の耳元でも一発。
「っ、ぐあぁぁぁぁ、ぐぅぉ、っ、あぁぁぁぁぁぁ」
苦しみ立ったままもがく真島。落ち着いて息を整えようとするが、もう遅い。
PAN
DAM
立ち上がった俺とちーちゃんがそれぞれの獲物で一発。命中。
PANPAN
DAMDAM
続いて命中。当たるだけでも悶絶するほどに痛いプラスチック・フランジブル弾を食らう度に悲鳴が上がりつつ後退する真島。そしてたーちゃんが叩きつけられた手摺りまで追いやられたところで、両腕を二発ずつ、たーちゃんがボーララップで手摺に縫い付けた。
「はぁっ、はぁっ」
「ふぅっ」
「はぁ、はぁ」
三人共息を切らしていた。これで、終わった。
終わったと思うと力が抜けて、床にばったりと倒れこんだ。
「はあ・・・」
「DAはどうしたんだよ」
「辞めてきました」
「辞めたってたーちゃん・・・」
「はっ、馬鹿だねぇ」
とりあえず通信で司令部に真島捕獲の報告を入れた。
ーーーーーー
たーちゃんが配電盤を操作し、シャッターを全て開けた。これで全部見える。
「ヨシさーん?」
「吉さんなら、上にいるらしいぞ。アリスが補足した」
「おぉ、さすが。私ちょっと行ってくるね」
「俺も行くよ」
「私は後で行きます。千束、マガジンが無いのを忘れないように」
「わかってるよ、たきな」
「同じ銃だったら俺のと互換性あったんだけどな」
俺とちーちゃんは走って上に上る階段を探し、上の展望台に駆け上がった。
上に上がると、すぐに吉さんが見えた。
「ヨシさん」
ちーちゃんが駆け寄る。
「大丈夫? 撃たれてないですか?」
「あぁ、掠めただけだ。来てくれたんだね、千束」
「だってあんな写真見たら。・・・あぁ、携帯ないんだった」
「奴は死んだか?」
「え?」
「私をこんな目に合わせた真島を殺したか?」
ちーちゃんは答えない。
「殺してくれたんだろう?」
はぁ。溜息が出る。
「ちーちゃんが殺すと思うか?」
「っ、殺してないのか!」
苛立たし気にちーちゃんを押す吉さん。
「ヨシさんの期待に応えられなかったのはわかってる、でも」
「なんだ! マザー・テレサにでもなったつもりか!」
「「だって、人に救われた命で誰かの命を奪えるわけないじゃない」」
俺がちーちゃんの声にかぶせる。
「えっ?」
「ちーちゃんはあんたに命を救われたから。だからその才能を活かそうとした。自分の思う形でその才能を」
「君達はわかっていないようだ。人生の役割は明確な人間は少ない。だが君にはある。これほど幸せなことは無い」
「勝手に決めつけておいて何が幸せだ。ちーちゃんが人を殺すことが、本人の意思をゆがめて行う才能の行使が幸せだとでもいうのか!!」
「そうだ。それによって千束は人類に貢献できるのだから」
「私は、結構幸せだった。できれば誰かの役に立ちたかったんだけど。あなたが私にしてくれたみたいに」
「私はそんなことの為に死にかけの人形のゼンマイを撒いたわけじゃないよ」
っ!! 思わず殴りかかろうとしたが、すんでのところでちーちゃんが俺の服の裾を掴んで止めた。
「君にその銃は相応しくない。返してくれ」
ちーちゃんが銃を差し出すと、奪い取ってマガジンを抜く。
「ミカめ。こんなものを。君には実弾がふさわしい」
プラスチック・フランジブル弾が入ったマガジンを投げ捨て、懐から実弾の入ったマガジンを取り出し、デトニクス.45コンバットマスターに装填する。
PAN
吉さんがちーちゃんに向け撃つが、いつも通りに躱す。
「素晴らしい」
ちーちゃんの後ろ。入口には、後から駆け付けたたーちゃんが立っていた。
DAM
S&W M&P45が火を噴き、吉さんの顔の横に着弾する。
「動くな。次は眉間に撃ち込みますよ」
「たきな! 銃を下ろして!」
「吉松。お前が真島と共謀して千束をここに誘い込んだのはわかっている。いや、真島も利用したんでしょう。睦月まで呼ぶつもりはなかっただろうけど。真島に武器を渡したのもお前。ウォールナットにラジアータをハックさせたのも殺したのもお前。あぁあと松下もお前だ。そして、千束の心臓を壊したのもお前。だけど、そんなことはもうどうでもいい。そのケースさえ手に入れば」
吉さんが持ってきたケース。
「クルミが掴みました。その中に千束とつーさんの命がある」
「はっはは、物知りだねぇ、たきなちゃん」
吉さんは不意にネクタイを解き、シャツの前を開けた。
「千束。お前を生かす心臓は、今はここだよ。睦月君の肺もね」
「「「っ!?」」」
確かに吉さんの正中線には切開と縫合の跡がある。そこまでするのか。
「私を撃って手に入れなさい」
吉さんがデトニクス.45コンバットマスターをちーちゃんの手に握らせ、自分の額に当てる。中身は実弾。そのまま引鉄を引けば、吉さんは死に心臓と肺が手に入る。
「これでまだまだ君は生きられる。睦月君もだ。君自身の為に撃てなくても、睦月君の為なら撃てるだろう? さぁ、ためらうな。君自身の価値と人生を取り戻すんだ。それで仲間の命も救えるんだ。そのためなら、私は命を捧げるよ」
「狂ってる」
アラン機関のため。千束の勝手に決めた才能を肯定するため。命も全てをかける。まさに狂信者だ。
「千束!!」
他人の為。責任を誰かに押し付けて。どれだけ理由をつけても、結局吉さん、いやアラン機関が千束にさせようとしてるのは、自分の為に、できなければ誰かの為に人を殺せという責任を誰かに押し付けさせること。普通の人ならそれで引鉄を弾けるだろうけど。あんたの前に居るのは錦木千束だぞ。そして押し付ける先は錦木睦月。俺達を、甘く見るな。
「馬鹿にしないで撃てるわけないでしょ!!」
「俺の為ならちーちゃんが引鉄を引けるとでも? そう思ってるなら俺達を甘く見過ぎだ、吉さん。そんなこと、もう相談済みだ」
もし仮に、アラン機関が俺の肺を持っていたとして。誰かを殺さなければそれが入手できないとして。その時にちーちゃんが迷わないように。俺の為に信念を曲げるなと言ってある。一緒に行こう、って。だからそんな事じゃちーちゃんは引鉄を引かない。
後ろからたーちゃんが近寄ってきて俺達を押しのけ吉さんに銃口を向ける。そして迷わず引鉄を引いた。
DAM
すんでのところでちーちゃんがたーちゃんの腕を押し上げて銃口を吉さんから外した。
「何してんの!」
「千束ができないなら私がやります!」
「そういう事じゃない! 落ち着いて、落ち着いて!!」
「だぁもう暴れるなたーちゃん!!」
二人がかりでたーちゃんを押さえつける。なんて力してやがる。
「はっはっはっは。千束の前で君が私を撃つことなどできないよ、たきなちゃん」
「その心臓と肺、私が引きずり出してやる!!」
「話して千束、つーさん!!」
「「!?」」
横から殺気とセンサーの反応を感知し、ちーちゃんも何か見たようで慌ててたーちゃんを押しやる。間に刺さったのは、一本のナイフ。
「お前!」
「千束の心臓を壊した偽看護師!!」
天井の梁にいたそいつが降りてきて、たーちゃんに蹴りかかる。二回蹴られたたーちゃんはガラスに押し付けられる。慌ててデトニクス.45コンバットマスターのマガジンをプラスチック・フランジブル弾に変えようとするちーちゃんだが、最後のマガジンは吉さんの足元。
「っ!?」
俺は動こうとしたところで急に胸が苦しくなる。くそっ、こんなところで!
「実弾を使え。友達が死ぬぞ」
怯んだたーちゃんに女が膝蹴りをかまし、ガラス毎たーちゃんを外に飛ばした。でも、ちーちゃんに実弾なんか使わせないよ。
「これ持ってけっ!」
今出せる力を振り絞り、HK.45をちーちゃんに投げ渡す。後ろを見ずにキャッチしたちーちゃんは、そのあとから外に飛び出していった。俺は腰に付けたマスクを口に当て、強制的に酸素を吸引する。これで少しは生きながらえる。
外に出た私はたきながぶら下がっている鉄骨に飛び降りた。女に後ろから接近し、横をすり抜けるようにして位置を変える。すかさずHK.45を接射。衝撃で後ろに下がったところでボーララップを使って腕と体を固定する。よし、これでいい。
と、上から弾が飛んできた。上を見上げるとヨシさんだった。
「やめて!!」
弾は止まらない。
「ヨシさん!!」
HK.45を撃ってヨシさんを止めようとするが、風と距離のせいでプラスチック・フランジブル弾が全く当たらない。
PAM
私はもう一丁の銃。デトニクス.45コンバットマスターでヨシさんを撃った。実弾はプラスチック・フランジブル弾よりもしっかり飛ぶ。それを、咄嗟に狙ったお腹めがけて。
「そうだ、それでいい」
「あああああああああああああああああああああああああああああああ」
遂にやってしまった。その思いから、叫び声をあげた。後ろでたきなが鉄骨をよじ登っていた。
「行って!!」
その声に弾かれるようにして私は、ヨシさんの元へと走った。
遂にちーちゃんがやったかぁ。吉さんが撃たれて倒れるのを見た俺は、マスクを装着したまま吉さんのところに這っていった。よし、弾は貫通してる。壁にもたれかからせて急いで服を脱がせ、持っている救急キットを使って止血する。これくらいじゃ人は死なない。残念だったな、吉さん。
間を置かずにちーちゃんが駆けあがってきた。
「つー君!」
「大丈夫。弾は貫通してるよ。ダムダム弾とかだったらヤバかっただろうけど」
「良かった」
「これじゃ死なんぞ」
まだちーちゃんに殺しをさせようと、ちーちゃんが持つデトニクス.45コンバットマスターを胸に向けさせようとするが。
パァン
千束が吉さんの顔をひっ叩いた。
「命を粗末にするやつは嫌いだ!!」
力が抜けたちーちゃんは吉さんの前に蹲る。
「嫌いだ・・・」
涙声が混じっている。
「君の為なんだ。なぜわからない」
「違うだろ。アラン機関の為、世界の為だ。本当にちーちゃんの為を想うなら、ここまでしないで放っておけばよかった」
「同じ、ことだ」
「私には世界よりも大切なものがいっぱいあるんだ。ヨシさんがくれた時間でそれに気づけた」
「ちーちゃんの手に世界は大きすぎるんだよ」
ちーちゃんが首にかけていた梟のアクセサリーを外す。
「これは返す」
そして吉さんの手に置いた。
「ヨシさんにはほんと感謝してる。だから私の代わりに元気で居て」
「あんたにはまだ支援しなきゃならない人がたくさんいるだろ。もう俺達に、死にかけの人形に関わらないでくれ」
「あ、先生の弾は返してもらう」
足元に転がっていたプラスチック・フランジブル弾が入ったマガジンをデトニクス.45コンバットマスターに装填、コッキングする。そして後ろに一発。後ろにいたのはちーちゃんの心臓を壊した女。まともにプラスチック・フランジブル弾を食らって悶絶して倒れた。
「たきなはどうした」
ちーちゃんが女を掴みつつ聞くと、ガラスの音で答えが返ってきた。
「たーちゃん」
外から入ってきたのは顔を血で赤くしたたーちゃん。よし、無事だ。
「よかった」
外から入ってきたたーちゃんは確かな足取りでこちらに歩いてくる。これは・・・。
「ちーちゃん!」
「行って!!」
たきながまだ吉さんと女を殺そうとしているのに同時に気づいた俺たちは、女を吉さんの方に押しやる。走り出したたーちゃんが落ちていたS&W M&P45を拾い射撃するが、血で視界が悪いのか吉さん達には当たらない。
「たっきな! もういい!」
「たーちゃん!!」
俺とちーちゃんはまた二人がかりでたーちゃんを押さえつける。
「離して! 心臓と肺が逃げる!!」
最後の一発を外し、スライドストップしたS&W M&P45の引鉄を引き続けるたーちゃん。でももう弾は出ない。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「ヨシさんを殺して生きても! それはもう私じゃない」
「もう二人で決めたんだ! このままでって」
「・・・いやだ」
一気に力が抜けたのか、もう抵抗することもなく声からも力が抜けた。
「ヨシさんの代わりに生きるのは、私には無理だよ」
「嫌だ・・・千束とつーさんが死ぬのは嫌だ・・・」
「ありがとう。でも私は本当はもう居ないはずの人。ヨシさんに生かされたからたきなにも出会えた」
「ああ。俺だってちーちゃんが吉さんに生かされたからここに居れるんだ。そしてたーちゃんにも出会えた。だからここまでで十分だ。それにちーちゃんを一人にすると寂しくて泣くだろうからな。俺も一緒について行くんだ」
「私だけじゃない。お別れの時はみんなにも来るよ。でもそれは今日じゃない。そうでしょ?」
「もう少しだけ俺とちーちゃんは生きられる。だから、それまでの間を有意義に。だよ」
たーちゃんを二人で説得していると、外にヘリが飛んできた。あれは孤児院のUH-60JA改?
スライドドアが開くと、そこにはクルミとミズキ、あとアリスの姿。
「おーい! お前ら無事かー? ミズキが煩いんだよ早くしろー! これ風凄いな口も目も乾くんだよげほっごほっげほっごほっ」
え、飛び乗れってことですか?
ーーーーーー
ヘリコプターに備え付けの救助用のスリングを使いつつ何とか飛び移った俺たちは、機内で次の依頼を聞いていた。
「依頼? リコリスの救出が? 誰の依頼よ」
「それはミカに聞け」
「いや聞かなくてもわかるだろ。リコリスの救出を頼むようなのは一人しかいないよ」
あのマッシュルーム頭。どうにもならないとなるとこっちを頼ってきおる。
「孤児院にも正式な依頼として来ていますね。今、実働隊がC-2で接近中です」
「俺らの進入と合わせて降下させて。後はアリスに任せる」
「先生は?」
「用事があるそうだ。あぁ、これ預かったぞ」
中を開けると、予備マグが数本。
「おぉ、マガジンだぁ。助かったぁ、鞄落っことしちゃってぇ」
「私が預かります」
「あぁ、よろしくぅ」
「俺も補充しておかんとな。アリス?」
「はい、こちらに」
「サンキュ」
これで次の戦いの準備は整った。
「依頼はこれだ」
クルミが見せてきたのは延空木の映像。報道されたやつ。
「そうだどどどどどうする? り、リコリスばれちゃってるぅ」
「それですが、映像は都内23区で食い止めました。うちの子達が奮闘してくれまして」
「お、孤児院の子達やってくれたかぁ。さすがうちの娘達」
「でも区内には緊急事態宣言も発令されちゃいました。それを何とかしないといけません」
「DAは延空木のリコリスを処分するつもりだ」
「えぇ?」
「リコリスを? どうやって」
「リリベルしかおらんだろ」
「リコリス狩りをやるなら奴らだ」
「今更リコリスを殺したところで、じゃあそれをやったのは誰だって話になるだけだろうに。だからDA嫌いなんだよ。そもそもラジアータの弱点そのままにしておかなかったらこうにもなってないっつうのに」
「昔はよーく店にも来てたよぉ。千束と睦月を殺しに」
「俺もちーちゃんの家に行ったのはその任務だしなぁ」
「なんで来なくなった?」
「おっさんと楠木が上と交渉したのよ」
「その材料は俺とアリスで揃え上げた」
「はい、頑張りました」
「DA手伝わないといけなくなったけどね」
「とはいえ、最後の手段にしてくれてるみたいだけどな、司令は」
「なんだ、良い奴じゃないか、楠木」
「フキたちがやばい」
「ちーちゃんだから対処できたようなもんだ。俺の後釜は居ないにしろ、そうでない連中でもフキたちは簡単に死にかねない。武装も違うしな。あいつらAR使いやがるから」
早く延空木に着かないと。あまり猶予は残ってない。
「ラジアータのカバーはどうなってんの?」
「動作不良でダウン中だ。ロボ太だな」
「私が使っているバックドアもダウン中で。外からでは制御できません」
「それじゃあどうしようも」
「まだだ」
USBを投げ渡される。
「それを延空木の制御室に差してこい」
「あとは私とクルミさん、それから孤児院の子達で何とかします」
「でも、ラジアータが動かないんじゃもう偽装もできな」
「あぁもうそんなポンコツ。ウォールナットに任せろ」
「あとはアリスにもですよ。それを考慮した服にみんな着替えてますから」
「どーすんだー千束ー」
「よし、リコリコ営業再開だ! 行こう!」
「ばっちこーい! どこに~むかうか~はたじるし~」
「・・・ミズキ、酒飲んでないだろうな?」
「そういえばさっきファーストラウンジでワイン飲んでたよな、お前」
「ミズキぃぃぃぃぃいいい!!!」
ーーーーーー
『降下よーい降下よーい、降下降下降下!』
通信先ではC-2からウイングスーツをつけた孤児院の実働隊が次々に延空木に向かって滑空を始めた。格好は忍者。なんとなーく偽装プランが見えた。孤児院組はそのまま展望デッキから侵入し、内部の完全掃討を目指す算段。
その間に俺、ちーちゃん、たーちゃん、アリスは直接延空木にヘリからのファストロープで降下。制御室を目指す。道中は誰かがきれいに掃除していてくれたのであっさりとたどり着き、制御室前にたどり着くと、フキ達がピンチに陥っていた。
PAN
DAM
二人いる大男の頭をめがけて、ちーちゃんと俺でプラスチック・フランジブル弾を叩き込む。
「「いぃよっと」」
そのまま体の各所にプラスチック・フランジブル弾を叩き込み、最後は下から顎に撃って気絶させる。よし、これで二人を制圧。
「フキ!」
ちーちゃんが叫んでるのを見て振り向くと、フキが大男を殺そうとしていた。
「ふーきー」
「なんだ!!」
「やーめーて」
「お前らの現場じゃない!」
「残念だけど、今のリコリコはリコリス救出の任務で動いてるんだ。多分依頼元は楠木司令」
「リリベルが来てる」
「なに・・・? くそっ、なんで」
苛立ち紛れに大男を蹴りつけるフキ。おーおー、凶暴なこって。
「そういう組織だからな、DAは」
『はやくしろー。お出ましだぞ』
っとそうだった。早くUSBを刺さないと。
俺達はフキに説明しつつ制御室に駆け込み、USBポートを探す。
『千束、リコリスがやばいぞ。急げ』
「えーないないないないないない。え、どこ? どっこ? あれぇぇぇ???」
「必死に探してるけど見当たらない。もうしばらく稼いでくれ。見取り図かなんかないのか?」
「今検索してます、少し待って!」
「お前USBもわからず探してたのか!?」
「これを刺す穴位わかるもん!!」
「乳繰り合うな! やばいのが来てるんだろ!」
『うぉおい! いつまでも飛んでらんないんだぞ!』
「うるっさいこっちは必死にやってんだ最悪空中給油で持たせろそれ受油装置付いてるし今向かわせてるから!!」
『やったことないのにできるわけないだろ!』
「お前今まで何やってた酒飲み! たーちゃんとちーちゃんには教え込んだぞ!!」
『あーもう怒鳴るなわかってる。まだかー・・・』
少しして、アリスが機器の設置要領を見つけ、俺に送ってきた
「来た! ちーちゃん、フキ! その奥のカバーの奥にある!!」
「ここ? どれだ!?」
ちーちゃんとフキが探してもう少しという中、制御室への廊下の扉がぶち破られた。
「アリス!!」
「はい、お父さん!!」
即座に俺とアリスが扉に向かって、持ってきたゴム弾のM249を斉射する。この撃ち合いならまだ時間を稼げる。っと。
グレネードが投げ込まれるが、即座にM249で撃ってお返しする。向こうで爆発と悲鳴が起きたけど自業自得だ。
「ぬ~~~~~~~~~~もうちょちょちょちょちょい、ちょいっ!!!」
ちーちゃんの威勢のいい声と共にUSBが刺された。
「アリス!! クルミ!!」
「はい!!」
『任せろ!!』
アリスが即座に放送がストップさせ、ロボ太をクルミが補足。
『世界一のハッカーとか、百年早いわ!』
クルミのニヤッとした声が聞こえてくる。ロボ太が世界一とか言ったんだろうな。そもそもクルミの偽装死を見抜けない時点で三流じゃボケナスハッカー。
『特定した! やーれやれやれやれやれどっこいしょ。あー、もしもしポリスメン?』
これでロボ太は警察が捕まえるだろう。
『さて、次はラジアータか。世話が焼けるなぁ』
「今度勝手に、アップデートしようかねぇ!! アリス、弾!」
「これが最後です、お父さん」
即座に弾薬箱を入れ替え、射撃。そろそろ下がらないと危険か。撃ち切ると同時にスモークグレネードを数発ドア先に投げ込み、制御室に撤退する。
「もう無理っすよぉ」
「泣ーき言言うな。ファーストになりてぇんだろ! で、こっからどうなる」
「さぁねぇ」
「こうなったら、俺とアリスでもうちょい時間稼ぐかぁ。ロケランでも持ってくればよかった」
と、その時。演歌が流れ始めた。
『どこに~むかうか~はたじるし~』
『こんにちは。びっくりした? びっくりしましたよねぇ』
そして流れ出す機械音声。クルミの工作か。
『リアルで、私もほんとかと思っちゃいましたー。延空木では、今紹介した秘密結社リコリスのアトラクションを開催決定、手加減なしのアドベンチャー一杯、お助けには忍者も登場。年明けは是非延空木へ』
そういうので収めることにしたのね。無理がありそうだけど今までもコントロールしきれてたアホな日本人相手ならこれでも十分騙されてくれそうな感じがする。
でもお助けの忍者ね。これの演出の為の布石だったんだろうな、孤児院組が忍者の格好してリコリスの援護に入ったのは。
「ラジアータ復旧、ネット上と各メディアのカバーを開始したそうです。非常事態宣言は誤報にするようですね」
「ま、それがいいとこだろうなぁ」
さて、あとはこっちの始末をつけようか。
「行こう、ちーちゃん」
「おう、つー君」
二人で廊下に出る。アサルトライフルで撃たれるが、いつも通り全て躱す。はっ、全く射撃が性格じゃない。腕落ちたな、リリベル。
「行くぞ」
「おう!」
「撃ち方やめ!!」
と、突っ込もうとしたところで射撃が止まった。は? そしてそのまま撤収していった。
あれ、あの赤服。
「あれ、俺がファーストやってた時サードだった奴だよ。うわぁ、あれがファーストやれるとか、ほんとリリベル質下がったなぁ」
「いやあれだよ。私達がつー君救出するときに人員いなくなったらしいから。それでだよ」
「恨みを買ってそうな目でしたものね」
「うっそまじ!? もしかして昔何かやったかなぁ?」
「つー君自然と何かやってそうだもんねー」
「千束かもしれませんよ?」
「えぇまじ? スマイルした方が良かったかなぁ?」
『おぉい、もういいのかぁ。墜落するぞぉ!』
「おっとやべぇ。ミズキじゃ空中給油できねえんだった。ちーちゃん、たきな、アリス。早く戻ろうぜ」
制御室に居たみんなで展望台に降りてエレベーターへと向かう。
「店に居たちっせぇやつか?」
「そお、面倒くさいから楠木さんには黙っててねー」
「はっ、じゃあなかったことになるんすか!? よかったぁ。あっしの出世に関わりますから」
「でもこれが無いことになったら、制御室奪還の功績もなくなるけど、いいの?」
「うわ、それは、あー・・・」
「お店の制服は何色がいい?」
「あ?」
「今回はフキも待機命令を破ったので、リコリコ送りの可能性が♪」
「ちっ、たーく、馬鹿なこと言うな」
「ま、私の使ってくれればいいけど」
「じゃあサクラまで移動になったら、俺の使ってくれればいいか」
「エレベーターが来ますよぉ♪」
「相変わらずテンション高いなぁ、あいつは」
エレベーターに乗り込む。
「下へ参ります♪ !」
あれ? ちーちゃんの鞄?
「あー! 私のバッグ!!」
「おーい、千束ぉ」
「ほらこれ、たきなに貰ったやつ」
「おい待て、何でそれがここにある!!」
ちーちゃんが鞄をこちらに見せるが、そもそもあれは旧電波塔で落としたやつの筈。それが何でここに。慌ててちーちゃんに駆け寄ると、俺の死角の方から、ロングコートの男が出てきた。
「「っ!!」」
真島が銃口を向けているのを見てフキが即座に鞄の防弾カバーを展開。だが位置が悪くサクラがそこから飛び出てしまう。それを見た私は袖を手で掴み、萌え袖のようにして腕を完全に袖の中にしまったうえで顔の前でクロス。そのままサクラの前に出て盾となる。そして銃弾が止み、扉が閉まろうとしたところで、最後にころんと何かが投げ込まれた。
「っ、手榴弾!!」
つーさんのボディーアーマーのおかげで衝撃しか食らわなかった私はまだ動ける。つーさんの防弾性能を信じた私は手榴弾の上に覆いかぶさり、直後お腹の下から響く衝撃と激痛で意識が飛んだ
「よぉ」
「やっ」
「生きてたか、死にぞこない」
「死にぞこないはお前らの方だろ? 電波塔のお二人さん」