Recoil of Lycoris and Lilybel   作:小鳥遊 小佳夏

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Attract balance

たーちゃんからグループ通話がかかってきたのでちーちゃんと出た。

「え? リコリスが?」

『四人共、単独任務中に大勢に襲われたらしいです』

「ん~? なんで特定されてんだぁ?」

『わかりません。例のラジアータのハッキングと関係があるのかも。

「別の可能性も排除できないし、何とも言えないなぁ、これは」

「しばらくよ、単独行動は控えなさいよ。それと、今月の検診昨日よ」

と山岸先生が』

「あぁ、そうだった・・・」

「まーたすっぽかしたの? 相変わらずちーちゃんは」

「わーーーー!!! それは黙ってて!!」

『? 行かなかったんですね』

「んふ、だってぇ」

『早速今日から三人で行動しようと思います』

「ん、いや三人って、毎日お店で一緒じゃ?」

と、そこにインターホンが鳴る。ちーちゃんと玄関に行き扉を開けると。

「『夜は交代で睡眠をとりましょう。安全が確保されるまで、24時間一緒に居ます。って、え』」

「「え」」

あからさまに超ラフな格好、千束はTシャツを羽織っただけ。俺もTシャツにパンツを履いただけ、後眼鏡をつけただけの姿で、扉の外にはたーちゃん。

「たーちゃん!?」

「うちに泊まんの!♪」

「なんでつーさんが千束の家に居るんですか!? しかもそんな恰好で!?」

二人は驚き、一人はたーちゃんが来たことに目を輝かせていた。

 

何はともあれ、説明の前に中にとたーちゃんを迎え入れる。リビングに入ると、何もない殺風景が広がっている。

「プロの部屋だぁ」

「あー、そっちじゃないよ、こっち」

廊下の先の壁を押すと、真ん中を軸にくるりと周り隠し階段が現れる。

「え?」

階段を降りると下の部屋に繋がっている。その部屋のリビングは、俺とちーちゃんが昨日夜通しで見ていたアクション映画と広げたお菓子の山。ついでに色々しみ込んでるタオルが何枚か。

「その辺座ってー」

「アイスコーヒーでいいかー?」

「足はもう平気ー?」

「えぇ・・・」

「よかったぁ」

「俺の骨折も早く治ったしな。ほんと襲撃事件中に負傷してなくて良かったよ」

「何なんですか、これ」

「長く仕事してると色々あるのよ」

「ちーちゃんの場合は特殊事情もあるしなぁ。あ、たーちゃん。個室使うなら、隣の部屋にまだ空きがあったはずだから、廊下から行けるよ。壁ぶち抜いてあるから」

「は??」

「まあそれは後で説明すればいっか。ってあ、タオル片付けないと」

「ここは、セーフハウス1号。他に3つあるんだ」

「俺が予備に持ってるのは4つ。あとは移動用が二つだな」

「セーフハウス?」

 

「共同生活を送るうえで、公平な家事分担です」

「つまんなーい」

「別に決めなくてもいいんじゃないの?」

「つ、つまらない? 決めなくてもいい?」

たーちゃんの声が震えている。

「でも、決めないと誰かに集中するかもしれませんし・・・では、じゃんけんとかが、良いですか?」

あーあ、たーちゃんやーっちゃーった。

「いいね。それいいね! じゃんけん!」

「じゃあそうするかぁ」

俺とちーちゃんが顔を見合わせる。悪いけどたーちゃん、俺も分担したくないし、この勝負もらった。

「「「最初はグー、じゃんけんぽん!!」」」

俺とちーちゃんはチョキ。たーちゃんはパー。

「「「最初はグー、じゃんけんぽん!!」」」

俺とちーちゃんはパー。たーちゃんはグー。

「「「ポン! ポン! ポン! ポン! ポン! ポン! ポ~ン!!」」

途中からたーちゃんの声が小さくなっていくのがわかる。すまんたーちゃん、これも戦争なんだ。

「は??」

そして家事、洗濯、掃除。月曜日から日曜日まで、全ての担当者に決まったのはたーちゃん。分担表のすべてのマスにはたきなの文字。

絶望した、唖然とした顔で分担票を見つめるたーちゃん。

「とはいえ、毎日はやらなくて大丈夫だよ。いつもやってくれてるのがいるから」

俺が出したフォローも、たーちゃんには届いてなかった。でも今日は来ないから、たーちゃんよろしくね!

 

ーーーーーー

 

次の日、リコリコにて。

「おはよう。労働者諸君」

「おはようございます」

「おはよーです」

「聞いたよー? えらいことになってるわね」

「あー、私らDAじゃないから大丈夫だよ」

「可能性は0じゃありません」

「備えておくに越したことはないよなぁ」

更衣室に向かい、二人が先に着替えるのを座敷で待っていようとすると、誰かと電話してる先生が見えた。

「次の被害を防ぐことにもなると思うが。あぁ、そうだ。わかった」

「楠木さん?」

「司令は情報をくれそうですか?」

「極秘だとさ」

「DA様は秘密の多いこって」

「勝手に覗いちゃうからいいよぉ」

「あ、じゃあクルミ。これバックドアのアクセスコード。一つやるよ」

クルミにUSBを投げる。いらないだろうけど、あれば何かの役に立つでしょ。

「お、いいの!? ありがとう!」

受け取りつつ、ごろごろと転がって自分の寝床に向かうクルミであった。

「俺もアリスに頼んで、情報集めさせないとなぁ」

 

ーーーーーー

 

今日も今日とてリコリコは通常営業中。

「抹茶団子、お待たせしました」

と、たーちゃんが接客に動いている裏で。

「ふい、じゃあこれもーらい」

「あぁ、そのタイル持ってくなよぉ」

クルミとちーちゃんがサボってボドゲにいそしんでいた。

「調査するんじゃなかったの?」

「情報をダウンロードして、後でゆっくり調べるんだよ」

「あんた、DAをハッキングしてんの!?」

「大丈夫だ。睦月が予め仕込んであるバックドアを使って忍び込んでるから見つからないよ」

「さすがはクルミさん、ヤバいね」

「ちょろいね」

そういってあんみつを掻き込むクルミ。

「たきな、おかわり~」

丁度通りがかったたーちゃんにお代わりを頼むクルミだったが、帰ってきたのは冷たい目線だった。・・・あれ、こっち向いてる??

 

その日の営業終了後。

「買い物? いいよしないで。と言うか今日は家の事担当が来るからたーちゃんは何もしなくていいよ」

「何も? え、でも」

「いいのいいの。と言うかきょうはたきなが来た歓迎会やるんだし、気にしない気にしない」

あんな理不尽な分担でも役割を果たそうとするたーちゃんを家に直行させる。先に準備してるだろうな。

家に入ると、上の階にまでいい匂いが漂ってきている。

「先に誰かいる、侵入者!?」

「違う違う」

「おちついて、たきな。敵じゃないから」

下に降りると。

「あ、お帰りなさい、お父さん。お母さん。あとたきなさん」

金髪ロングの巨乳高身長の女性が料理をしていた。あれだけ出かける前に荒らした部屋もきれいになっている。

「・・・・・・・・・は??」

「ただいま、アリス」

「ただいまアリスちゃん。今日のご飯もおいしそうだね♪」

「今日はたきなさんの歓迎会って言うから、腕をふるっちゃったよ♪ さ、早く手洗って着替えてきて。その間に並べておくから」

「「はーい」」

二人で洗面台に行こうとすると。岩のように固まったたーちゃんが居た。

「たーちゃん?」

「たきな? どうかしたの?」

「何なんですかこれはああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

色々許容を超えたたーちゃんの叫び声が響き渡った。

 

「なるほど、大体理解しました・・・あ、これ、すっごく美味しい」

「でしょー♪」

「アリスの料理はほんと美味しいからな」

「本部の総料理長よりおいしいもんね♪ アリスはすごいよ」

「えへへ~♪」

食事をしつつ、アリスについて説明した。

俺が作ったアリスシステム内蔵のアンドロイド。全世界のネットワークを覗き見できて、ラジアータなんか目じゃないくらいの処理能力を誇る最強AI。そしてこの家の家事すべてを取り仕切ってくれる最強の娘。なお本体は幼女なのだが、家事をするにあたってはそれで不便が出るので、大人体の筐体も用意してある。それがさっきの体である。たまに二つ動かして、倍速で掃除とか進めていたりする。

「基本はアリスが色々やってくれるから、アリスが処理に集中してて家事出来ない時にたーちゃんがやってくれればいいよ」

「わかりました。ここまでできるかはわかりませんが、全力を尽くします。ところでなんですが、なぜアリスは二人の事をお父さん、お母さんと呼ぶので?」

「お父さんは私を作ってくれましたから、生みの親ですし。お母さんは、なんとなくでしょうか」

「なんとなく・・・」

「俺もそう呼ばせようとプログラムは組んでないんだけどね。気づいたらそう呼んでたんよ。原理は一切不明」

「へぇ、つー君にもわからないことあるんだ」

「そりゃそうだよ。俺がわかるのは、俺がわかることとアリスがわかることだけ」

 

丁度デザートを食べ終えた時。暴走族の鳴らすような音がスマホから鳴った。画面には。「Intruder Alart」の文字。

「おぉぉ、チンピラがまた来た」

「先週も来なかったっけ? 最近多いよなぁ」

「は?」

俺とちーちゃんは、よくわかってないたーちゃんを横目に、デトニクス.45コンバットマスターとHK.45を持って、後俺はセンサーゴーグルとアーマーを装着して上に上がる。

「おいいねーぞ!」

「でも、さっき確かにこの部屋に入ったはずだ」

「どこだクソ」

隠し扉から顔をのぞかせる。

「二人だな。三下だろう。適当に終わらせようぜ」

「あいさー♪」

 

適当にリビングに強襲をかけ、適当にプラスチック・フランジブル弾を撃ちながら追い回す。そして最後は!

「せいっ」

「うりゃぁ」

二人同時にチンピラ二人まとめて窓に蹴り飛ばす。チンピラは窓を突き破るようにしつつ外に投げ出され、下のごみ置き場に落下する。

無言で二人で銃を向けると、チンピラは泣きながら逃げていった。

『あ、お父さん。外にドローン』

「こいつか、後をつけてきてたのは」

アリスがセンサーゴーグルに表示したドローンに向かって射撃する。アーマーの補助があるので、当てるのは造作もない。

「また窓注文しなきゃー」

「もういっそ、割れやすいプラスチックでも探してつける? ガラスよりは安いでしょ」

「このためのセーフハウスですか・・・」

「まあね。あんな連中ならいいんだけど、昔はリリベルも来てたから」

「リリベル?」

「男版リコリスみたいなもんだよ」

「それ、普段何してるんですか?」

「何してるの?」

ちーちゃんがこちらを向いて聞いてくる。確か・・・。

「あんまり覚えてないけど、リコリスと同じように暗殺任務やったり、訓練やったりしてたなぁ」

「だって」

「・・・・・・・・・は??」

「「??」」

またたーちゃんが固まった。

「え、え・・・?? つーさんが、リリベル??」

「あれ、言ってなかったっけ」

「だよぉ。つー君は元リリベル。私を暗殺しにも来たよねぇ♪」

「あれが無かったら俺今こうしてないもんなぁ」

「ふにゃぁ」

「たーちゃん!?」

「たきな!?」

情報過多になったのか、たーちゃんがダウンしてぶっ倒れた。

 

「なるほど、そういうことがあったんですね」

アリスが用意した氷嚢でクールダウンしたたーちゃんに、色々説明した。

俺がここに来た理由。そこからちーちゃんを制圧して先生を紹介してもらって、リリベルを脱退。あとはリコリスとリリベルを追い払いつつ一緒に生活。ついでに住んでるマンションを大規模に魔改造。ついでに孤児院を設立。そして今に至る。

「ほんと、何なんですか、つーさんは」

「こうしてみると、俺ってなんなんだろうなぁ」

「元リリベルで、抜けたのに銃の使用許可持ってて。それで孤児院も経営してて。今はリコリコのキッチン担当兼お仕事担当?」

並べてみてもよくわからんな。

 

その後。

「え、なんでお風呂に二人で入るんですか」

「「・・・いつもの習慣?」」

 

「え、なんで二人一緒に寝てるんですか」

「「・・・いつもの習慣?」」

 

「・・・なんで夜寝付くまであんなにうるさいんですか・・・」

「・・・いつもの習慣?」

「たきなも来ない? 気持ちいいよ?」

「お断りします」

「って言いつつ、たきな興味あるでしょ」

「それは・・・まぁ・・・」

「大丈夫、つー君痛くしないから♪」

「え、ちなみに毎晩あんなことを?」

「翌朝早く起きたりするんじゃなければ、そうだな」

「千束、できたりしないんです?」

「私は心臓の病気を遅らせるお薬の副作用でできなくなってるからなぁ」

「え・・・」

なんてやり取りがあったらしい。

 

ーーーーーー

 

数日後、リコリコにて

「地下鉄襲撃犯とリコリス襲撃犯は、例の銃を使ってるみたいだな」

「例の?」

クルミが銃取引の画像を出す。

「あぁ。じゃああん時のDAハッキングしたのもこいつら?」

「あ、あぁ、それは、どうかな」

クルミの声がめっちゃ震えている。俺はジト目でクルミを見る。

「?」

「あ~、いや、もうちょっと調べてみる」

「にしても、どうやってリコリスを識別してるのかなぁ」

「さぁなぁ、まだわからんけど、その制服がばれてるんじゃないのか。」

「やっぱりそれも可能性の一つだよなぁ」

「お、なるほど」

「普通制服は学校ごとに違うし、セーラー服とかブレザーって大まかな分類は一緒でも、細部まで同じってのはなかなかないはずだ。んで学校も基本複数の地域に2校3校なんてのはほとんどない。なのにリコリスは全国どこでも1年中その制服だからな。ファースト、セカンド、サードでも色が違うだけで意匠は同じ。となると気づく奴は気づくだろ」

 

ーーーーーー

 

と、睦月達がそんな分析をしている間。リコリコのフロアではたきなが唸っていた。

「どったのあんた」

「勝てないんですよ」

「へ?」

「家事の分担をじゃんけんで決めてるのですが、一回も千束にもつーさんにも勝てませんね。良くてあいこ。それに何故か二人共全く同じ手を出すんですよね」

思わずミズキとミカが顔を見合わせる。

「最初はグーでやってるでしょ」

「それじゃあの二人に勝てない」

「え!?」

「二人が、相手の服や筋肉の動きで、次の行動を予測しているのは知ってるだろ」

「グーから始めちゃうと、次の手を変えるかどうかを読まれちゃう。変えずにグーだと、当然パーを出されるし、変えるとわかれば二人はチョキを出せば絶対負けないでしょ。つ、ま、り、あいこにできる確率が3割」

「勝つ確率は0だ」

「二人にじゃんけんで勝つには、最初はグーをやめて、最初の勝負で勝つしかない。あいこになったらもう勝てないし、ましてあいこから始めたら一生勝てないよぉ。二人共それをやってるから手が同じになるの」

わなわなと震えるたきな。

「え、でも、つーさんはセンサーゴーグルで強化して千束と同じことをしていましたよね!? じゃあなんでゴーグルしてない時でもできるんですか!?」

「あいつ、私服の時は眼鏡しているだろ?」

「あれ、センサーゴーグルと同じなんだって。だから、あれをしてる時は戦闘時と同じように見るだけなら千束と同じになるよぉ」

「素の視力が良くないらしいからボドゲの時に眼鏡を外せとも言えなくてな。だからあいつはボドゲに参加しないんだ。千束は自重しているらしいが、睦月はついやっちゃうそうでな」

「じゃあこの前の松下さんの護衛任務の時は!? センサーゴーグルしないで眼鏡もかけてなかったですよね!?」

「あれはコンタクト。まだただのコンタクトらしいけど、そのうち、コンタクトにゴーグルと同じ内容を投影できるものを開発するとか言ってたわね」

そんなからくりが。思いもよらない原因に、たきなは足元から崩れ落ちそうになった。

 

ーーーーーー

 

たーちゃんがそんなことになってるとは思いもせず、奥の座敷からフロアに戻ると、たーちゃんのジト目が待っていた。なんで。

「組長さんのとこに配達いくわ~」

続けて出てきたちーちゃんもジト目で見られる。

「なんだぁ」

「なによぉ」

「いいえ、別に」

「え~、なになに」

「い~から、早く配達行ってきな~」

「あー、俺はちょいアリスと打ち合わせがあるから、たーちゃん頼む」

「すぐ支度します」

「あぁ、大丈夫。制服がばれてるんだろうってクルミとつー君が」

「リコリス制服ですか?」

「そそ。これなら~ぜった~いわかんな~い♪」

いつもの制服の上から黄色いポンチョか。それなら制服は隠れるな。

「私服じゃ銃は使えないんだぞ」

「警察に捕まっちまえ」

「んなこたわかってるよ。下に着てます~ほら」

待ったそのたくし上げはなんかえっちいからやめんしゃい。

「じゃあ私もそれで」

「あぁ、大丈夫。たきな、今日は夕飯楽しみにしてる♪」

元々今日はアリスが作りに行けないからな。こういう時はじゃんけんで負けてるたーちゃんの出番だ。

「いってきま~す」

 

ーーーーーー

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!!!!」

俺とアリスが向かい合って情報共有。他の面々がのんびりとしていたリコリコの中に、クルミの悲鳴が響き渡った。手にタブレットを持ってこっちに走ってくる。

「見てくれ! これは銃取引の時のDAのドローン映像! 殺されたのはこの4人だ。これが犯人に流出して顔がばれてたんだ」

「なーんでそんなもんが流出するのよ」

「あの時のハッキングか」

「あんたの仲間じゃないの? さっさと調べなさいよ!」

「・・・あの時のは、ボクだ」

「どういうことだ!!」

「依頼を受けてDAをハッキングした、そのクライアントに近づくためにはそうするしか仕方なかったんだ」

「ちょっと、あんたが武器をテロリストに流した張本人ってわけ!?」

「それは違う!! 指定の時刻にDAのセキュリティを攻撃しただけだ!!」

「そうですか! おかげで正体不明のテロリストが、山ほど銃を抱きしめて、たきなは首になりました。たきなも何か言ってやればぁ?」

「いえ、別に。私はもう知ってましたし」

「「「え?」」」

先生、ミズキ、クルミの目が点になる。この前たーちゃんと二人っきりになったときに全部話しちゃったんだよねぇ。

「いえ、つーさんが、この前ハッキングの詳細まで教えてくれまして。犯人とか、攻撃の手段とか。それでわかりました。クルミがハッキングを仕掛けた犯人ですが、それは銃取引を止めようとするリコリス妨害を狙っての事ですし、そもそもあの時間に取引が行われていたのをクルミは知らなかったはず。結果的には銃取引の詳細が有耶無耶になってしまいましたが、それはクルミが狙ってやったことではない。いわばクルミも巻き込まれた被害者ですから」

「たきなぁ」

クルミがたーちゃんを救世主を見る目で見ていた。たーちゃんがいいと言った以上、ミズキもこれ以上は何も言えないようである。

「それよりも、映像はそれで全部ですか?」

「おい、千束はどこだ?」

「配達に行きました」

「全部じゃないんだ・・・」

クルミが切り替えた画面には、俺とちーちゃん。そう言えばあの時俺達も応援で出てたな。たきな含むメインの襲撃組は映ってないらしいけど。くそっ。

「いかんな、これは」

 

『もしもしもしもし?』

「千束! 敵はお前を狙ってるぞ!」

『え? うわぁぁぁちょいちょいちょいちょいちょいちょいちょ~い!!』

「千束! 千束!!」

「なんかすごい音したよ!」

「とりあえず、たーちゃん! 組事務所に向かうぞ!」

「はい!!」

「アリス、すぐにここ数分のカメラのデータ、市内の全部洗い出せ! 見つけ次第鷲に連絡! クルミ、これ使え」

この前のとは別のUSBメモリを渡す。

「アリスとの接続回線だ。クルミもこれでアリスシステムの一部を使える、衛星の写真にもアクセスできるからそれで探せ!」

「わかった!」

最後に・・・。

「つーさん、電話は後で!」

「Hyakuri base? Request hot scramble. Two eagle. Ground equipment limit dummy round. Augmentor available. ASAP」

「え、つーさん、何を?」

これで備えは万全。

「よし、乗れ、たーちゃん!」

「は、はい!!」

愛車のバイクのヘルメットをたーちゃんに投げ、すぐにまたがる。セルモーターを回してエンジンをかけ、後ろにたーちゃんが乗ったのを確認すると、クラッチを繋いでフルスロットル、一気に走り出した。

 

ーーーーーー

 

「!」

組事務所に向かう途中の道中。黄色いものが見えたのでドリフトさせつつ緊急停止した。

「たーちゃん!」

たーちゃんがバイクから飛び降りてそれを拾う。

「千束のポンチョとスマホが!」

『お父さん! お母さんの居場所特定したよ!!』

こちらと同時にアリスがちーちゃんの居場所を特定した。

「おーけー、たーちゃん、飛ばすぞ!! 後アリス、武器の使用許可を出しとけ! 敵に当てないようにしろよ!!」

たーちゃんがまた飛び乗り、俺はアクセル全開でアリスが送ってくれたマップの場所を目指した。

 

ーーーーーー

 

車から落っこちた緑髪の男に近づく。

「あんたが一連の襲撃犯?」

後ろを取っていると、突如反撃され何かかけられた。目が見えないっ!!

すると途端に車が集まってきて、囲まれる。緑髪の男に殴られるけど、目が見えなくて対処できない。このままじゃっ。

とそんな時。空からジェット機の爆音が聞こえてきた。

ブオーーーーーーーーーー

そんな音が聞こえると同時に、周りの地面が吹き飛ぶ音がする。

「ちょいちょいちょいちょい!?!?」

わけもわからず、爆風で目を覆っていたものが取れ、少し視界が回復してきた。あれは、戦闘機?

上を通り過ぎた戦闘機は即座に旋回し、またこちらに向かってくる。

すぐに植え込みに向かって逃げようとするが、敵が多くて動けない。そんなところに、またさっきの音。今度は戦闘機から出たものだとわかった。それが敵の周りに着弾し、敵を混乱させていた。死んだ人はいないらしいけど、一体何が。そんな時、横から甲高いバイクのエンジン音が聞こえてきた。

「うちのちーちゃんに、何してくれとんじゃああああああああああああああああ!!!!!」

バイクに負けない声で叫びながら入ってきたつー君は、そのまま目の前で動けずにいた緑髪の男を前輪でぶっ飛ばし、私の横にバイクを止めた。

「ちーちゃん乗って!」

「うん!」

 

ーーーーーー

 

孤児院は自衛隊と協力関係にある。というのも、孤児院の隣の島には、本土との荷物輸送に使う大型輸送機や孤児院の子の訓練に使う戦闘機や練習機などを保管する大型格納庫、またそれを安全に運用するための巨大な滑走路が何本もある。だが常にそこを使うわけではないので、無駄を削減しようと米軍や自衛隊。また飛来する他国の戦闘機がそこを使えるように防衛省と契約。利用料をもらう代わりに一定時間の利用権を貸しているのだ。その見返りの一環で、孤児院の子が任務を行う際。何かあったときのための備えとして、専用にF-15Eを改造したF-15EJを千歳、百里、小松、新田原の基地に置かせてもらっている。その中から百里の機体にスクランブル発進を命じ、ちーちゃんの援護に当たってもらったのだ。

それで時間を稼いでいる間に俺が到着。たーちゃんは備えとして別の場所に行ってもらっているが、このまま逃げられれば出番はなく帰れる。そして丁度ちーちゃんの近くに緑髪の男、地下鉄銃撃事件の時にも見たやつを見つけた結果、俺はそいつが首謀者であると判断しバイクで突撃をかけたというわけだ。

 

「ちーちゃん乗って!」

「うん!」

ちーちゃんを後ろに乗せ、アクセルを入れる。下が土なので、勢いよく土をまき散らしつつも発信するが、前から別の車が見えてきた。

「うおっとお!?」

その車に乗っているテロリストから射撃され、ドリフトしつつ方向を変える。俺がちょこまかと動いている以上、イーグルからの援護は受けられない。かといって、足を止めたら蜂の巣が待っているだろう。

「っ!?」

そして逃げようと苦戦するも、突然前輪の感覚がなくなる。

「ちーちゃん、飛び降りて!」

「わかった!」

慌ててバイクを寝かせつつ滑らせるようにして停車する。ぱっと見ると、前輪がぺしゃんこになっていた。これじゃ走れない。すぐ弾丸が飛んでくるが、バイクを立てて縦にすることで防ぐ。このバイクは修理できないかなxあ。

「つー君、このままじゃ」

「わかってる。大丈夫、少しで援軍が来るから」

だんだん包囲を狭めてくるテロリスト。だが次の瞬間。

「うがっ」

「うわっ」

「なんだっ」

敵の手足が次々と撃ち抜かれていく。

見れば黒髪の青い制服、たーちゃんが側面からの攻撃でテロリストを無力化してくれている。

「側面攻撃を頼んでおいたんだ」

「さすがつー君」

そして間髪を入れず、リコリコの赤い車が突っ込んでくる。

ちーちゃんと頷きあい、車に走る。

「千束! 睦月! 乗れぇ!!」

中から先生が手を出している。

「とりゃあ!」

まずちーちゃんが飛び乗った。

「たーちゃん!!」

俺がHK.45で援護射撃をしている間にたーちゃんがこちらに走ってきて飛び乗る。

「はい!!」

側面から攻撃してたたーちゃんが走ってきて飛び乗る。

「ふっ!」

「せ、狭い」

「詰めてください」

「睦月も早く!」

後は俺だけだが、見過ごせないものが出てきた。

「RPG! 射手を片付けて海から逃げる!! 先に行け!!」

動きながらの車からあれを狙うのは不可能。そしてあれがもし当たったら、防弾仕様に車とは言え耐えきれるわけがない。

「早くっ!!」

「くそぉ!!」

ミズキがギアを入れ、車を発進させる。俺は膝立ちでしっかりHK.45を構え、一発。

「ぐわっ!」

よし、射手の腕を潰した。そのまま逃走に入った俺は海へと走るが、遠くから数台の車が見えてきた。望遠機能で見る限り無人車両。なら!

「ミサイルの使用を許可する! 車を潰せ!!」

『Yes sir』

海沿いから再進入してきたストライクイーグルが、マーベリックミサイルを発射し、こちらに転がってきた無人車両を破壊しつくす。赤い車が公園から出て離脱するのを確認。俺も逃げようとするが、別のヤバいのが見える。

「今度は空飛ぶ日産マーチかよどうなってるんだ!!」

値段と製造していたメーカーから空飛ぶ日産マーチなんてあだ名がついているパンツァーファウスト3。自衛隊では110mm個人携帯対戦車弾の名称で採用されている対戦車兵器である。先程のRPGはまだテロリストが使う武器として有名だが、ドイツ開発のこいつがなんでテロリストに渡ってるんだ。

とにかく、水中に逃げてもあれで狙われたらまずいので、また膝立ちでしっかりと狙撃。今度も腕を潰した。同時に発射されたが、上に向かって撃たれたので大丈夫なはず。

別の方向から光が見えたので振り向くと、緑髪の男が車を運転してこちらに向かってきているのが見えた。ひき殺すつもりか!!

慌てて柵を飛び越えて海に入ろうとした瞬間、目の前に迫ってきた車に、さっきの上に撃たれた対戦車榴弾が落ちてきた。

「え?」

「あ?」

緑髪の男と一緒に茫然として、対戦車榴弾が車の屋根を突き破って炸裂するのをスローモーションで見た瞬間。榴弾が起爆して、車を粉々にしつつ、俺の体を遠くまで吹き飛ばした。そして爆風と体に刺さった破片の痛みで意識が飛んだ俺の体は、海の中に沈んでいった。

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