Recoil of Lycoris and Lilybel   作:小鳥遊 小佳夏

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Return,he is ours!!

リコリコに逃げ帰って。私達はつーさんが行方不明になったことを知った。

クルミのドローン映像では、最後の最後で不運に見舞われ、海に吹き飛んだ。その衝撃でつーさんがつけていた各種センサー類は全滅。いつもなら位置情報を発信する発信器も、通信用の端末も、こちらから遠隔操作できるセンサーゴーグルさえも接続が途絶えているらしい。

今アリスが全力を持って捜索に、孤児院も全人員を投入しているとのことだが、いつ見つかるかもわからない。何よりも心配なのは千束だ。いつも彼と一緒だった。リコリコにいる時も、セーフハウスにいる時も。最早つーさんは彼女の一部と言っても良いだろう。そんな千束からつーさんがいなくなればどうなるか。答えは目に見えていた。

 

ーーーーーー

 

「今日も千束ちゃんと睦月君休みなの?」

「はい、二人そろって重い風邪をひいてしまったようで・・・。しばらくはお休みする予定です」

つーさんが居なくなって数日。千束が病んだ。

セーフハウスの布団の中から一切出てこなくなり、食事も睡眠もまともに取れなくなっており、ただただ天井を見上げてぼーっとして反応を返さない。食事は無理矢理ゼリー飲料で流し込ませなんとか生きてはいるが、それだけだ。そのうち思い余って自殺しないかとも感じているため、クルミがカメラを設置し24時間体制で監視。夜は私が警護を兼ねて同じ部屋で寝泊まりしている。刺激になるかと思い何度も話しかけているが、それでも反応はない。

そして肝心のつーさんを探す手も、あまり進んでいない。私達はもちろん、孤児院の方は私達よりも力を入れすぎた結果、何人もの人が寝不足と疲労でダウン。クルミも睡眠時間を削って、冷えピタで粘っている。アリスも頑張って少しずつ足取りを追えてはいるが、まだ現在の居場所まで把握できてはいない。とにかく早く探さないと。これ以上千束の状態が悪化したら、取り返しのつかないことになるかもしれない。それだけは避けなければいけない。

 

そして、あの日から一週間が過ぎた。相変わらず千束は何せず、ただただ布団に横になっているだけ、目の隈も凄く、このまま死んでしまいそうな気配すら感じる。

リコリコに来る任務は私が一人でこなしている。千束の戦力を必要とする任務も多く、予め千束やつーさんにファースト昇格試験に向けて鍛えてもらってなかったら、どうなっていたかと思うような任務もあった。そんなある日。吉報が舞い降りた。

 

「たきなさん!!」

リコリコの扉を開けて入ってきたのはアリス。

「お父さんの居場所がわかりました!!」

それを聞いた私とミズキは、すぐに奥で仕込みをしていた店長を呼び、半分寝ながら捜索していたクルミを引っ張り出してきた。

「それで、つーさんは今どこに!?」

「それが・・・」

歯切れが悪い。

「お父さん、リリベル本部に捕まっているようです」

リリベルの本部・・・。この前聞いた、つーさんが前に居た組織で、暗殺や脱走したリコリスの殺害など、リコリスよりも更に裏の任務にあたる集団。

「そんなところに・・・」

「はい。あの後お父さんはある海岸に漂流。そこで地元に人に拾われたのは良いのですが、それをラジアータが検知。楠木司令はこちらに伝えようとしてくれたのですが、それよりも早くリリベルがその情報にたどり着き、楠木司令以下司令部のメンバーは緘口令が敷かれ、お父さんはリリベルが回収していったそうです。クルミさんが他のデータとは違う断片を見つけて、こちらに解析を依頼してくれたのを分析して、更にそれを組み合わせて裏付けをとれたのが今日です。どうやら楠木司令もこちらに伝えようとしてくれてたみたいですが、リリベルの方で止められていたのでしょうね」

そんなことになっていたとは・・・。

「だからラジアータからの情報に仕組まれたものがあったのか・・・。妙に情報のプロテクトが固いからボクよりもアリスがいいと思って投げたんだが、正解だったようだな」

「それでどうするのよ。リリベルの本部と言えば、DA本部のさらに奥よ? そこから睦月のやつを救出して帰ってくるのって相当よ?」

「今回リコリスの助力は当てにならんしな。私達だけでは正直無理だ」

「でも! つーさんを助けないと!!」

「わかっています、たきなさん。私達孤児院もお父さんは何としても救わなければなりません。ですが、私達も決定的な戦力が不足しています。前線に出せるメンバーを全て投入しても、リリベルとは拮抗してしまう。なので、皆さんの力を貸してください。お願いします」

アリスが頭を下げた。

「もちろんです。一緒につーさんを救出しましょう」

リコリコのみんなを見渡して、みんなが頷くのを見た。

「作戦はこちらで立案済みです。決行は明日。早くしないとお父さんがどうなるかわからないので。皆さんは、千束さんを何としても連れてきてください。彼女の力が無いと」

リコリコの最大戦力は千束だ。彼女がいるだけで成功率が何倍も上がる。

「私、千束を起こしてきます」

「ああ、行ってこい」

「これだけ寝てた寝坊助、そろそろ叩き起こさないとね」

「ボクもアリスと詳細を詰めておく。ミカ、手伝ってくれ」

私は急いでリコリス制服に着替え、千束のセーフハウスへと走った。

 

ーーーーーー

 

「千束! 千束起きてますか!」

部屋に飛び込むと、布団の中に相変わらずぼーっとしている千束がいた。

「千束! 起きてください! つーさんが見つかりました!」

反応はない。

「千束!!」

やっぱり反応はない。

「千束!!! つーさんは今リリベルに囚われているんです! 早く救出しないと!!」

でも反応はない。私は勢いあまり、千束の上に馬乗りになり、首元を掴んで揺さぶった。

「あなたが、あなただけが頼りなんです! 孤児院のみんなも、私達も、みんなつーさんを助けようと準備に走っています! でも千束がいないと助け出せないんです!!」

正直、千束がいないといけないのが悔しい。もし私がもっと力をつけていたら。一人でもつーさんを助け出せたら、それで済んだのに。でも私にはそんな力がない。だから、千束に頼るしかない。千束を説得しながらその悔しさで涙があふれてくる。

「私一人じゃ無理なんです・・・。だから千束、早く、起きて・・・」

千束の胸元に顔を押し付けて泣く。無拍動の人工心臓。音がしないし拍動も感じないので、千束が死んでしまったように感じる。

「たき・・・な・・・」

私の後頭部に誰かの手が当てられた。その手は暖かく私を包む。

「千束!」

慌てて顔を上げると、千束がこちらを見ていた。

「つー君、見つかったんだって?」

「はい! でも助け出すには、あなたの力が!」

「うん、わかった。私の力でつー君を助け出せるなら、私は行くよ」

私は先に布団から降り、千束が布団から出るのを手伝う。寝たきりだったのが災いし、立った後ふらつく千束を抱えるようにして支える。

「作戦の決行は?」

「明日です」

「おっけー。じゃあちょっと感、取り戻してくるね」

そこからの千束は凄かった。地下につーさんが用意したという訓練場。そこでアリスを模して造られた訓練用の機械を相手に訓練を行い、1週間のブランクが嘘のように、すぐに元の動きに戻った。そして翌日。私達は入間基地から孤児院が所有するC-2改高速輸送機に乗って空の住人となっていた。

 

ーーーーーー

 

『作戦を再度説明します。私がラジアータ及び施設のセキュリティを無力化します。次いでリリベル本部の正面より、まずは航空機による奇襲攻撃を敢行。それに合わせて攻撃ヘリコプターによる援護を受けた孤児院実働隊がヘリコプターにより強襲を仕掛けます。それを陽動とし、裏からお母さん、たきなさんが高高度降下低高度開傘によって本部裏側に降下。リリベルが正面に集中している間に裏から潜入し、お父さんを救出。ミズキさんが操縦するオスプレイでピックアップして帰投となります。裏の帰投を確認次第、再度航空爆撃を敢行。それに合わせて孤児院側もヘリにより退散します』

普通のリコリスにはいらない空挺降下技術。それをつー君は、何が役に立つかわからないからと言って私とたきなに覚えさせた。それがこんなところで役に立つとは。

『そろそろ降下地点ですね。ではお母さん、たきなさん。お父さんをよろしくお願いします』

「まかせなさい!」

「はい、他の皆さんもご無事で」

たきなと顔を見合わせる。

「たきな、怖くない?」

「つーさんがしっかり仕込んでくれましたので。千束は?」

「わたしはそれよりも、早くつー君を助け出したいって気持ちで一杯」

「ふふ、いつもの千束ですね」

『ハッチ開きます! 降下1分前!』

今日はリコリス制服ではなく、つー君が作ってくれた潜入服を来て、その上から降下用の防護服を着こみ、ヘルメット、武器の入ったケースを背負っている。この潜入服、ぴっちりしてるから体のラインが出るのが少し恥ずかしい。だがつー君曰く、防弾と耐衝撃に優れて動きを阻害せず、行動音を一切立てないのだとか。それはさておき、ヘルメットを被って酸素マスクを装着。ハッチが開くと、冷たい風が機内に流れ込んでくる。

『降下10秒前!』

たきなと手を握る。さぁ、勝負だリリベル!!

『3、2、1。降下降下降下!!』

合図で私とたきなは一緒に空に飛び出す。空中の滞在時間は2分とかそんなもん。腕に付けた高度計の針がぐるぐるとすさまじい勢いで回っている。3千、2千、1千、今!!

紐をぐいっと引き、バックパックから迷彩の入った落下傘が展開。上にグイっと引っ張り上げられるも、潜入服のおかげか痛みはない。

がさがさっと木をかき分けるようにしつつ地面に近づき、五点着地を使って衝撃を逃がす。よし、降りれた。

「たきな?」

「大丈夫です。それよりもこれを」

「了解っ」

落下傘や降下用ヘルメットなど、もう使わないものをまとめてテルミット弾で一気に燃やす。

「よし、じゃあいこ・・・ってたきな? それは?」

「つーさんが作ってくれた私の装備ですが?」

「えー、私作ってもらったことないんだけど!?」

「千束は素の能力が高いのでいらないだろと言ってましたよ」

「なんか、複雑な気分・・・」

たきながつー君がしているのと似たゴーグルをつけていたので問い詰めたら、何とも褒められてるけど何か悔しい結果になった。ぐぬぅ。

「とにかく、行きますよ。建物の向こう側がドンパチうるさいことになっていますので」

「だね。早く助け出そう」

私達は静かに、でも素早く建物の中に向かった。

 

中に入ると、リリベルにはほとんど遭遇しなかった。

「誰もいない、ですね」

「それだけ陽動が成功してるってことじゃない?」

まれに誰かに会うも、私のプラスチック・フランジブル弾であっさりと無力化できる。多分後方の人に遭遇したとかそんなのだろう。でもつー君凄いなぁ。私の銃はストライクフェイスがついてるからサプレッサーって簡単につかないのに、ねじ込み式とはいえ合うやつ作ってくれたんだから。

そしてアリスの誘導に従って地下に降りると、映画とかであるようなTHE牢屋という感じの部屋に出た。

「これは、映画のまんまですね」

「事実は小説より奇なりって言うけど、本当にこんなのがあるとはねぇ」

そこを警戒しながら進んでいくと、奥に鋼鉄製の扉が見えた。あそこか。

「たきな」

「はい」

たきなが持ってきた爆薬を蝶番とドアノブにセットする。そして爆破と同時に私がドアを蹴り破って中に入った。

「っ!!」

爆風で怯んでいた中に居た二人に4発ずつプラスチック・フランジブル弾を叩き込み、無力化。天井からつるされて血だらけ、傷だらけのつー君に駆け寄る。

「つー君!!」

「千束、足場になってください。上の鎖を切ります」

私が急いでたきなを肩車すると、小型の専用鋏を使って鉄の鎖を切り落とす。つー君は力なく崩れ落ちるが、私がうまくそれを支えた。

「容体は?」

「うん、大丈夫。ちゃんと生きてる」

持ってきた腕輪をつー君に付けると、それで今のつー君の状態をスキャンできる。少なくともまだ生きてる。

「アリス、目標を回収した。これから脱出する」

『了解です。こちらも撤収準備に入ります』

たきながつー君を背負い、私は前に立って施設内を駆け抜ける。入ってきた裏口から外に出ると、丁度ミズキのオスプレイが降下してくるところだった。

「早く乗れ!!」

後ろのハッチから、椅子に座ってグレネードランチャーを構えた先生がこちらに手を伸ばしている。その手を掴んで私は機内に。たきなも機内に入った。

「ミズキ、出してくれ!!」

「ばっちこいっ!!」

後部ハッチが閉まるのと同時に機体が浮き上がり、ローターが前を向いて加速し始める。丁度旋回したときに正面側が見えたので窓から覗いてみると。

「うわぁお」

二回の爆撃で施設はぼろぼろ。それに中から私達と同じ服を着た少女が出てきてはヘリに乗り込んでいる。あれが孤児院の実働部隊か・・・。え、何あのメカメカしいロボットは。あれ、金髪が見えるってことはアリス!? あ、腕からロケットが放たれて施設が更に壊れてる・・・。

「これ、私達いらなかったんじゃない?」

「なんとも、凄いですね・・・」

『そんなことないですよ。思ったより戦力が少なかったので押し込めましたが、当初の予定ではここまでにはならないと思ってましたから。おかげで損害はいつもの通り0でしたけども。それよりも、お父さんのこと、後よろしくお願いします。私たちの医療施設は遠いので』

「任されたよ。急いで根岸先生に届けるから、安心して?」

「必ず、助けます」

 

オスプレイは私のセーフハウスの屋上に設けられたヘリポートに着陸。そこから私が運転する車ですぐに根岸先生の元に送り届けられた。診察の結果、拷問を受けた形跡があるものの、救出が早かったこともあり見た目に傷は残らない層。体内の事までは精密検査待ちだが、これなら問題ないのではないかとのことだった。

 

ーーーーーー

 

目を開けらたそこは知らない天井だった。

確か俺はリリベルに囚われて、拷問を受けていたはずだったのだが・・・。

でも何だろう、夢の中で二人が駆け付けてくれたような・・・。

「いっつ」

体を起こそうとしたら痛みが走り、その大本の右腕を見ると、二人の少女が俺の腕を掴んだままベッドに突っ伏していた。

「そうか、あれは夢じゃなかったか。ありがとう、二人共」

俺は優しくちーちゃんとたーちゃんの頭を動く左腕で撫でた。

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