いっそ嫌になるくらい澄みわたった空を見上げ、俺は燦々と煌めく陽光に思わず目を細めた。
修道院の薄暗さに慣れると、この日差しが眩しくて仕方がない。とは言っても、日光浴は人間にとって必要な行為だ。日に当たることで、人間にとって必須栄養素であるビタミンDが生成される。また、日光浴は鬱病にも効果があるらしい。
こんな陰気な場所で暮らしていると、どうしても鬱々とした気持ちになってしまうので、俺は出来るだけ意識して日光に当たるよう心がけている。
「……掃除するか」
今日のお仕事は墓地の掃除だ。整然と等間隔に並ぶ墓石を眺めながらため息をひとつ。
ストーンハーストの墓地は広大で、掃除するのにも時間がかかる。本当はフランチェスコと掃除をする予定だったが、彼は急性腰痛症、所謂ぎっくり腰になってしまいベットの上でダウンしている。あの様子では、暫く起き上がることさえできないだろう。
フランチェスコは見るからにまるまるとした体型をしている。故に、腰に負担がかかってしまうの道理だ。しかし、フランチェスコは日頃から暴飲暴食をしているわけではない。
修道院での食事は1日2回、それも野菜、果物、パン、ワイン中心であり、肉や魚は大きな行事や祝い事がある時にしか出ない。それなのに何故あのように丸っこいのか。
―ー―まさか、また盗み食いでもしてるんじゃないだろうな。
いつぞやの夜の話だ。
尿意から目覚めてしまった俺は、アマルと一緒に修道院の外にある厠へ向かうため真っ暗闇の院内を歩いていた。
……念のために言っておくが、俺はアマルについてきてくれと頼んだことは一度だってない。むしろ、起こすのが申し訳ないのでそのまま寝ていてくれと言っても、
「私も一緒に行きます。やだやだ、ひとり寝なんてそんないけずなことおっしゃらないで下さい。アマルは寂しいです!」
と、駄々をこねるのだ。ひとり寝って、お手洗い行くだけだからね。すぐ戻ってくるからね。
全く子どもじゃないんだから……いや、まあ現代で言うと15歳は子どもの範疇にばっちり入るな。
あー、うん、これ以上はいけない。自分で自分の首絞めてる。俺がロリコンのクソ野郎になっちまう。
でも、待ってほしい。
アマルは全体的に華奢だが胸は大きいし、尻だって安産型をしている。身体だけ見ると大人の女だ。だから、俺はロリコンではないし、手を出したって問題ない。
そこまで考え、思わず神妙な顔になる。
自分で言っておいてなんだが、説得力の欠片もなかった。
(暫くは、自重しようかな……。いや、それはアマルが許さないか。アイツ、俺に抱かれないと拗ねるんだよなぁ)
遠い目。
ああ、畜生め。何て不毛な考えだ。
手を出したことには後悔していない癖に、ふとした瞬間現代の倫理観が顔を出す。
ぺちり、と頬を軽く叩いて思考を戻す。
……えっと、そうだ。
あの夜、厨房の前を通ると何やら中から、ゴソゴソと物音が聞こえた。まさか泥棒か。そう思い恐る恐る厨房を覗くと……そこには蜂蜜壺を片手に抱え、一心不乱に蜂蜜をペロペロしているフランチェスコの姿があった。
正直、空いた口が塞がらないとはまさにこの事だと思った。
アマルは俺の背に隠れながら、ぼそりと「なんて浅ましい人間だ。本当に穢らわしい」と毒気づいた。不機嫌さを隠さないその口調に苦笑する。アマルは、俺以外の人間にかなり厳しい。
アマルが側にいる手前フランチェスコに声をかけるわけもいかず、見なかったことにして俺はその場を去ったのだった。
盗み食いをしているフランチェスコの姿を見て呆れはしたが、不思議と悪感情は湧かなかった。むしろ、フランチェスコらしくて良いとすら思った。これもフランチェスコの人徳なのだろう。
「後で、蜂蜜湯でも差し入れでもしてやるか」
フランチェスコの喜ぶ顔が浮かび、自然と眼が和らいだ。
フランチェスコはストーンハーストのくまの◯ーさん。