2ラウンド、3ラウンドと互いに全力を尽くした一進一退の熱い攻防が続いた。
そしてついに…
『必殺、セフィドカタストロフ!!』
『おぉーっと!ミスセフィドの大技が決まったぁー!これは立てないか!』
『カタストロフとは悲劇的結末を指します。今の一撃でまさしく…』
『さぁレフリーがカウントに入ります!』
『ワン、ツー、スリーだワン!』
試合終了のゴングが会場内に大きく鳴り響く。
レフリーに手を繋がれリング中央でミスセフィドとウィリアムズが高々と両手を挙げる。
会場の盛り上がりは試合後も続いていた。
その焦点はミスセフィドの正体についてだ。
『あれはやっぱりアルテミシア様なのかなぁ?』
『ああ、あれはアルテミシア様に違いない。格闘技ファン歴40年の私は前々から思っていたのだ。アルテミシア様は見た目によらず格闘タイプの…』
台詞の途中で男達は糸が切れたように倒れる。
すぐさま黒子が現れて倒れた男達をどこかへと運んでいく。
そして代わりに現れた男たちが口々に言うのだった。
あれは断じてアルテミシア様ではないだろうと。
口を挟める者は誰一人としていなかった。
『くそぅ、なんて恐ろしい技なんだ。セフィドカタストロフ、まさにセフィドが崩壊する様をイメージしたかのような一撃だ』
『皇女がやる技じゃねぇな。でも、悪くない気分だぜ』
一方リングではセシルとベルクが立ち上がり共に戦い抜いたライバルと握手を交わす。
『見直したぜウィリアムズ。まさかお前がここまでやるなんてな』
『だが同じ手は二度と通用すまい。勝てるのは今回限りだろう。』
互いを称え合うと2人は強く抱きしめ合う
『だからこそ今日の勝利くらいはたっぷり味合わせてもらうとしよう』
『あぁ、そして明日からお前が船長だ』
『そう、私がせんちょ…え?』
ウィリアムズが硬直する。
『だって下剋上デスマッチって書いてあったじゃねぇか。下剋上成功したんだから次の試合まではお前が船長だ』
『ま、待ってくれ。私はセフィドの名門貴族で海軍所属だぞ!?その私が海賊団の船長なんて出来るわけが…!』
『はい観客のみなさんもご一緒に!ウィリアムズ船長バンザーイ!海賊ウィリアムズバンザーイ!』
『海賊ウィリアムズバンザーイ!』
『新船長の誕生だぁー!』
会場は大いに盛り上がっている。
もはや辞退など出来そうもない空気だ。
ウィリアムズはまたも膝から崩れ落ちた。
『わ、私は…一族の名誉を…誇りを…汚してしまった…いっそこれが夢であれば…』
『夢の方が良いのですか?』
ポーチがウィリアムズの顔を覗き込むように尋ねてきた。
いや、まさかそんな。
しかしポチ姫ならばもしかして…
ウィリアムズは藁をも掴む思いで声を絞り出した。
『…は、はい…』
『(*「・ω・)ノ わかりました。では、コボルトマジック!ちょいやぁー』
世界が真っ白に染まってゆく
気が付くとポチはホワイトシャーク号の船内にある自室のベッドの上だった。
きょろきょろと辺りを見回す。
窓から入る心地よい風がカーテンを揺らしている。
デスマッチとは程遠いのどかな空気が部屋中に満ちている。
(このような空間で見られる夢とは思えないのですが…やはり夢だったのでしょうか。楽しい夢だったのですが残念です)
まだ少し眠たい体を無理やり起こすと、ポーチは着替えを済ませ外へ飛び出していった。
外へ出ると雑談をしていたコボルト達がすぐに整列する。
フリップを片手に今日の作業についてポーチは説明を始める。
『なっ!』
横から声がした。
声の方を振り向くとウィリアムズがこちらのミーティング風景を見て驚愕していた。
その様子にデジャブを感じながらポーチは少し考えた。
(ふむむ、夢で終わらせなくても良いのでは)
ポーチはウィリアムズに話しかける事にした。