『お~ま~え~は~!』
『痛いのです!痛いのです!』
ポチ姫の元に戻るとセシルが両手を握りしめポチ姫の頭を強く押さえつけていた。
『セシル、やれろ!』
『や、やれろ?』
やれとやめろがミックスしてしまったがセシルの手は止まりポチ姫の頭は解放された。
本音が出てしまったのかも知れない、落ち着こう。
セシルは言わずもがなセシル海賊団の船長である。
白いコートと白い帽子、片目の眼帯が印象的な若い海賊だ。
だが実力はセフィド中の人間が知る所であり国民からの人気も高い。
ウィリアムズはセシルの肩を抱いて小声で語り掛ける
『私に考えがある』
いまさら中止には出来ないが何も私達が戦う事はないのだ
私はプロレスなど出来ない、そもそも興行として成り立たないのだ。
その辺りを訴えかければポチ姫もセロットも納得せざるを得ないだろう。
要するに興行は続行させ、私とセシルが闘わず、より質を向上させる案を出すのだ。
『なるほど、わかった。ここはお前に任せるぜ』
『あぁ、任せてくれ。ポチ姫、少しお話があるのですがよろしいですか?』
ウィリアムズはポチ姫の手を引いて船室に入っていった。
ウィリアムズの提案はポチ姫に配慮され1分ほどで終わった。
ポチ姫は椅子に座りながら腕を組み深く考えているかのようなポーズを取って話を聞いている。
たかが1分の内容です、ポチ姫。
『ふむ、代役ですか』
『ええ、その通りです。私はプロレスなどできませんし、ましてセシルと素手で戦うなど不可能です。』
事実だ、自慢にもならないが秒で負けるだろう。
『私達はセコンドとしてリング横に立ち代役が戦うのです。いわばセシルの人を見抜く眼力と私の知略が戦うわけですね』
ポチ姫は相変わらず腕を組んだまま悩んでいる。
悩んだところでどうしようもないでしょう。
全ては事実だ。
この問題はどうにもならない。
まさに、やれるものならやってみてくださいと言ったところだ。
『それに私は貴族です。民衆の前で取っ組み合いなど出来ません』
そこまで言うとポチ姫は静かにこちらに視線を向ける。
どうやら睨みつけているようだ。
『それはプロレスが恥ずかしいという意味でしょうか』
少しばかりイラつかせてしまったが想定内だ。
『そういった文化があるのは知っています。ただし我が国の文化とは合わないと言う話です』
『アルテミシア様は私によくフランケンシュタイナーしますが?』
『あれは断じてフランケンシュタイナーではありません!転んだ拍子にポチ姫の首に両足が挟まって180度回転し偶然に地面に叩きつけた形になるだけです!』
ポチ姫はフランケンシュタイナーと主張するがそれはポチ姫の被害妄想である。
聡明なウィリアムズがこう言っているのだからウィリアムズが正しいのだ!
アルテミシア様は断じてフランケンシュタイナーなどなさらない!
『これをご覧なさい』
そう言うとポチ姫はリモコンのスイッチを入れる。
テレビジョンと呼ばれる映像を映し出す異世界の機械が作動し画面にプロレスの試合が映し出される。
だがいつもと様子が違う。