『最新技術はなぁ…使うだけ使って早いうちに慣れとくんだよ!』
『使いすぎだと言っている!!』
セシルのパンチは空を切り、勢いを利用されてウィリアムズに裏投げを取られる。
『うまい!ウィリアムズ選手はただの頭でっかちではない!』
『力が足りない分だけ相手の甘い攻撃にはしっかり対応していくつもりのようですわね』
アルテミシア様すげぇ鋭いな。
心の中でセシルは突っ込んだ。
だが鋭すぎるが故にこちらのヒントにもなった。
要するにウィリアムズは俺に自発的に大技を仕掛けてくることはないわけだ。
あくまで小技で誘ってこっちが反撃に出たところで大技を狙う。
そうと決まれば慌てる事はない。
ゆっくり立ち上がろうとしたセシルの後頭部に強烈な浴びせ蹴りが入る。
『そうやってすぐ油断するところも私は気にくわない!』
考えが甘かった。
こっちがモタついたらそれはそれで大技を仕掛けてくるらしい。
勢いが必要な分だけ向こうにもリスクはあるだろうが、こちらの空振りを待つつもりはないようだ。
だったらこっちのやる事は…
『金なんざ稼げばいい。船員達の経験こそがうちの財産だ!』
セシルは中距離で拳を振りかざしウィリアムズを追い詰めていく。
迂闊に大技を狙えば反撃を喰らうが、こうやって地道に細かい攻撃を重ねていけばジリ貧になるのはウィリアムズの方だ。
徐々に追い詰めていきコーナーへ誘導していく。
『いかん!ウィリー!コーナーから逃げるんだ!』
セコンドのホセがウィリアムズに指示を送る。
アンタそんな喋れたっけ?それと何その愛称。絆?絆なの?俺でも呼ばねぇのに?
心の中でツッコミながらも的確にウィリアムズを追い詰めていく。
今日のウィリアムズは油断して勝てる相手ではない。
セシルも本気だった。
(で、追い詰められたお前のとる行動はこれだろ?)
ウィリアムズが素早く腕を突き出し反撃に転じるがセシルがそれをかわす。
魔眼の力ではない。純然たる戦闘経験の差だ。
伸びきったウィリアムズの腕を掴むと力を利用してテコの原理でウィリアムズを背負い投げる。
『見たかイズクレイ!俺だってやりゃ出来るんだよ!』
『はいセシル君が司会に暴言吐いたのでマイナス10点』
『んなルールねぇだろ!』
海賊団コントに会場が湧く。
イイ感じに関西プロレス風に盛り上がっている。
そのままセシルがウィリアムズを抑え込みにかかる。
わざわざ特訓までしてきたところすまないが、ここで倒しておかないと面倒な事になる。
セシルがウィリアムズを完全に抑え込んだその時、セシルの視界の隅に一人の少女の姿が目に映る。
パシャッ!
フラッシュが焚かれた。
マナがリングに上がって撮影していた。
その瞳は腐った色をしている。
『…お前ドサクサで何やってんだよ!』
『違います。これは船団の公式記録として残すためです』
『後でデータ見せろ!検閲してやる!』
ニヤリと笑うと素早い動きでマナは立ち去っていく。
(データをどこかに保存するつもりだ、やべえ!
ここで試合を終わらせて追いかけないと、アイツの頭の中で俺達が大変な事になる!)
『レフリー!カウントしろぉ!』
セシルが大声で叫ぶとレフリーらしき足音がこちらに歩み寄ってくる。
そういえばさっきはリング上にいなかったがレフリーは誰なのか。
セシルが顔を上げるとそこにいたのはレフリー服を着たコボルトのジローだった。