松田がレース場に着くと既に何個かのレースは終わっていた。
「短距離ならバクシンオーがすごかったな。」
「何言ってるんだよ!小柄だがニシノフラワーも負けちゃいなかったぞ。」
記者たちの話す内容から察するに今短距離のレースが終わったみたいだ。
「ということはライスシャワーの出る中距離がもう始まっちまう!」
人ごみをかき分けて鴨田の元へと急いで向かう。
するとアナウンスが流れる。
「模擬レース第11R中距離の部が始まります。」
アナウンスが終わるや否や一際大きな歓声が起こった。
それもそのはずこのレースには注目ウマ娘が多く出走する。
「松田さん何やってたんですか。レース始まっちゃいますよ。」
「悪い悪い、紙が思ったより飛んじまってな。」
カメラを構えながら松田に話しかける鴨田。
「でも、いい収穫もあった。俺の中のスターをまた見つけたんだ。」
全力で走って来たせいで下を向きながら喋る松田。そのせいと周りの歓声でかき消されてしまいその声は鴨田には届かなかった。
「みんなゲート前につきましたよ。すごい迫力ですね。」
写真を撮りながら鴨田が呟く。
「あぁ、デビュー前とはいえ今年の新入生はレベルが違うな。」
腕を組みながらゲートを眺める。
「頑張れよ、ライスさん。」
「今、ゲートが開かれました!」
結果はミホノブルボンの逃げ勝ちだった。ライスシャワーは3着。
「ミホノブルボンすごい逃げでしたね、他の子を全く引き寄せませんでした。」
「そう、だな・・」
撮った写真を確認しながら興奮気味に話す鴨田に生返事で返す松田。
「ライスさんは3着か・・・」
スターになると思ったんだけどな。
肩を落としながら歩いているとレース場では人だかりができていた。
トレーナーによるスカウトが始まっていた。
「最後に誰と誰がコンビを組むのか見てから帰ろうぜ。」
「そうですね、松田さん。」
最初に目を引いたのはブルボンの周りの人だかりだ。
「すごい人だかりだな。」
「当然ですよ、あんなレースを見せられて彼女に声をかけないトレーナーはいないですよ。」
次々に声をかけられているブルボンは少し困惑しているような顔をしていた。
「俺と組め。後悔はさせない。」
そう言って彼女の前に現れたのは白いジャージに黒いハット、サングラスをかけた筋骨隆々な男が立っていた。
ジャージは羽織っていただけで前のチャックは閉めておらずシャツも何も着ていないため厳つい胸筋と腹筋がチラチラと見える。
「黒沼トレーナーだ。」
開いた口が塞がらない松田に鴨田が聞く。
「誰なんです?」
「彼はトレーニングの鬼だ。「精神は肉体を超えられる」を信条に、決して手を上げないものの常に等しく厳しく指導するスパルタ派のトレーナーだ。」
無知な鴨田に説明する松田は彼女たちからは目を離さずに話す。
「私の目標はクラシック三冠です。そのために今まで頑張ってきました。」
そう宣言するブルボンの周りでどよめきが起きる。
「俺ならその目標を達成させることができる。ただトレーニング量はすさまじいぞ。」
ついてこれるかというような瞳で彼女を見る。
「はい、どんなトレーニングであろうとこなしてみせます。マスター。」
そう言って黒沼の元に一歩近づく。
「よし、では早速トレーニングだ。」
そう言って彼女たちはレース場から姿を消した。
「とんでもないトレーナーが就いちまったな。」
これはスクープのメモをとる松田。
「おっとこうしちゃいられない!黒沼トレーナーも来ているんだ、リギルやスピカのトレーナが来ているかもしれないぞ!!」
「あぁ!ちょっと松田さんどこ行くんですか!!」
「そんなの決まっている、行くぞ鴨田!」
走り出す松田。鴨田もそのあとを追う。
3着もすごいことじゃないか。それなのに俺はライスさんの元に行こうともしなかった。なんて馬鹿野郎なんだよ、俺は!
彼女の元に急いで走る。
しかしそんな松田の想いとは裏腹に彼女の周りに人だかりはなく1人でポツンと立っていたのだ。