君がヒーローになった日   作:天城 渚

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4話 前夜

 次に日から厳しい特訓が始まった。

 ライスの目指すところは長距離レースだ。そのためには抜群なスタミナが要求されるのだ。

 「厳しいとは思うが耐えてくれ。」

 ライスを前に頭を下げる飯塚。

 「お兄様!頭を上げて!ライスは大丈夫だから。」

 全然平気だよ、と笑顔で答えた。

 

 「いくらなんでも厳しすぎるだろ。」

 「あれじゃあの娘が潰れちまうよ。」

 

 周りから多くの反感と非難を浴びせられたが、飯塚は自分の方針を曲げなかった。

  

 「お!やってるね!」

 そんなトレーニングが続いたある日、松田がトレセンに取材のため訪れた。

 「お久しぶりです!松田さん。どうです?彼女の走りは。」

 指さす方を見ると汗をかきながら必死に走るライスがいた。

 模擬レースの時とは比べ物にならないくらいいい走りになっていた。

 「素晴らしい指導です!早く公式戦で走る姿を見たいですよ。」

 鴨田も写真を撮りながら頷く。

 「だが、気を付けてくださいよ。他の娘たちもレベルを上げてきている。」 

 松田の顔が少し強張る。

 「特にミホノブルボンだ。」

 「彼女はまだ力をつけるのか!?」

 驚く飯塚に松田が続ける。

 「あの黒沼トレーナーだよ。彼のトレーニングメニューは群を抜いている。」

 飯塚さんあんたよりもだ。心の中ではここまで言い切る。

 「黒沼さんがトレーニングの鬼というのは有名な話だ、だが彼の練習に着いていけるウマ娘が今までいなかったんだよ。」

 「その通りだ。だが彼女は違う。ブルボンは彼のメニューを全てこなすんだ。あのメニューを全部だ。」

 生唾を飲む松田。そこに鴨田が呟く。

 

 「まるで、サイボーグだ。」

 

 トレーニングを終えたライスがこちらにやってくる。

 「あ、松田さん来てたんですね。」

 笑いながら挨拶をする。松田と鴨田も軽く頭を下げる。

 「どうだい?飯塚さんは厳しいだろ?」

 「いえ、お兄様はライスのことを思っての厳しさだと思うの。だから全然へっちゃらだよ。」

 へへへと笑うライスに癒される男3人。

 「大丈夫そうで何よりだ。今日も少しだけ取材させてくれ。」

 「はい。」

 

 数分間取材をした後、松田たちはその場を去っていった。

 

 「おい松田、なんだこの記事は!」

 ライスシャワーのことを書いた記事を指差す編集長は怒っているようだ。

 「なんですか、編集長。ライスさんの記事を書いただけですよ。」

 「馬鹿野郎!こんな記事書くならもっとブルボンのことを書け!!彼女こそが今年のクラシック制覇する逸材だ!!他のメディアはこぞって彼女のことを記事にしてるぞ!」

 咥えているタバコが口から弾けんばかりに叫ぶ。

 「俺が誰の記事を書こうが俺の勝手だろ!周りが騒ごうが俺には関係ない!!」

 行くぞ鴨田!と叫びながら編集室を後にする。

 

 「いよいよ、明日ですね。松田さん。」

 「だな。」

 いつもの屋台で酒を飲みながら松田と鴨田が話し合う。

 「勝てますよね?」

 「あったりまえだ!あんなに頑張ってたんだから!!」

 「疑ってるわけじゃないんですけどね。」

 「確かに他の娘たちも仕上げてくるだろう。だがライスさんのトレーニング量に勝るウマ娘はいない!!」

 グイっと熱燗を飲む。

 飲みながら談笑をするうちに時間がどんどん経って行った。

 

 「おやじ!勘定だ!」

 「あいよ。」

 酔った松田が千鳥足になりながら立ち上がる。

 「明日遅れないでくださいよ。12時の4Rですからね!」

 「わあってるよ、じゃあな鴨田~」

 そう言って、屋台で鴨田と解散する。

 

 帰りながら空をふと見上げる。綺麗な星々が輝いていた。

 「勝てよ、ライスさん。」

 鼻をすすり上げ家に向かうのであった。

 明日はいよいよデビュー戦だ。

 

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