次に日から厳しい特訓が始まった。
ライスの目指すところは長距離レースだ。そのためには抜群なスタミナが要求されるのだ。
「厳しいとは思うが耐えてくれ。」
ライスを前に頭を下げる飯塚。
「お兄様!頭を上げて!ライスは大丈夫だから。」
全然平気だよ、と笑顔で答えた。
「いくらなんでも厳しすぎるだろ。」
「あれじゃあの娘が潰れちまうよ。」
周りから多くの反感と非難を浴びせられたが、飯塚は自分の方針を曲げなかった。
「お!やってるね!」
そんなトレーニングが続いたある日、松田がトレセンに取材のため訪れた。
「お久しぶりです!松田さん。どうです?彼女の走りは。」
指さす方を見ると汗をかきながら必死に走るライスがいた。
模擬レースの時とは比べ物にならないくらいいい走りになっていた。
「素晴らしい指導です!早く公式戦で走る姿を見たいですよ。」
鴨田も写真を撮りながら頷く。
「だが、気を付けてくださいよ。他の娘たちもレベルを上げてきている。」
松田の顔が少し強張る。
「特にミホノブルボンだ。」
「彼女はまだ力をつけるのか!?」
驚く飯塚に松田が続ける。
「あの黒沼トレーナーだよ。彼のトレーニングメニューは群を抜いている。」
飯塚さんあんたよりもだ。心の中ではここまで言い切る。
「黒沼さんがトレーニングの鬼というのは有名な話だ、だが彼の練習に着いていけるウマ娘が今までいなかったんだよ。」
「その通りだ。だが彼女は違う。ブルボンは彼のメニューを全てこなすんだ。あのメニューを全部だ。」
生唾を飲む松田。そこに鴨田が呟く。
「まるで、サイボーグだ。」
トレーニングを終えたライスがこちらにやってくる。
「あ、松田さん来てたんですね。」
笑いながら挨拶をする。松田と鴨田も軽く頭を下げる。
「どうだい?飯塚さんは厳しいだろ?」
「いえ、お兄様はライスのことを思っての厳しさだと思うの。だから全然へっちゃらだよ。」
へへへと笑うライスに癒される男3人。
「大丈夫そうで何よりだ。今日も少しだけ取材させてくれ。」
「はい。」
数分間取材をした後、松田たちはその場を去っていった。
「おい松田、なんだこの記事は!」
ライスシャワーのことを書いた記事を指差す編集長は怒っているようだ。
「なんですか、編集長。ライスさんの記事を書いただけですよ。」
「馬鹿野郎!こんな記事書くならもっとブルボンのことを書け!!彼女こそが今年のクラシック制覇する逸材だ!!他のメディアはこぞって彼女のことを記事にしてるぞ!」
咥えているタバコが口から弾けんばかりに叫ぶ。
「俺が誰の記事を書こうが俺の勝手だろ!周りが騒ごうが俺には関係ない!!」
行くぞ鴨田!と叫びながら編集室を後にする。
「いよいよ、明日ですね。松田さん。」
「だな。」
いつもの屋台で酒を飲みながら松田と鴨田が話し合う。
「勝てますよね?」
「あったりまえだ!あんなに頑張ってたんだから!!」
「疑ってるわけじゃないんですけどね。」
「確かに他の娘たちも仕上げてくるだろう。だがライスさんのトレーニング量に勝るウマ娘はいない!!」
グイっと熱燗を飲む。
飲みながら談笑をするうちに時間がどんどん経って行った。
「おやじ!勘定だ!」
「あいよ。」
酔った松田が千鳥足になりながら立ち上がる。
「明日遅れないでくださいよ。12時の4Rですからね!」
「わあってるよ、じゃあな鴨田~」
そう言って、屋台で鴨田と解散する。
帰りながら空をふと見上げる。綺麗な星々が輝いていた。
「勝てよ、ライスさん。」
鼻をすすり上げ家に向かうのであった。
明日はいよいよデビュー戦だ。