魔法少女マジカルピーチ外伝 魔法少女マジカルストロベリー   作:青果 魔法露

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過去編です


原作開始前
出会いと別れと


 私は卯月苺、ごく普通の家庭に生まれたごく普通の女の子。

 とっても優しいお父さんと、ちょっと厳しいお母さん。

 一人っ子なのは寂しいけど、大好きな二人にその分沢山愛されてるんだなって思って毎日が凄く幸せだった。

 でも、そんな幸せな日々は冬のある日、唐突に崩れ去った。

 

「いやぁ! お父さん! お母さん! この、放しなさいよ!」

 

 私より少し年上の魔法少女に抱えられ、それから逃れるように暴れながら力一杯叫んだ。

 目の前で捕まっている大好きなお父さんとお母さんに向けて。

 捕まえてたのは人類の天敵。

 ニュースで被害を聞かない日はない災害、ベジタブルーン。

 運悪く、この町に現れたそれが二人を食べようと捕まえてた。

 

「苺、あんたはとっても賢くて良い子なんだからちゃんと魔法少女さんの話を聞いて無事で生きていくんだよ」

 

「魔法少女さん、娘を、苺をよろしくお願いします」

 

 待って、お母さん。

 そんなこと言わないで...そんな最後みたいな...

 待って、お父さん。

 この人にお願いしないでもこれからもずっとずっと一緒に居ようよっ...

 

「ええ、必ず! この命に代えても苺ちゃんだけは生かしてみせます...!」

 

 そう言うと魔法少女は凄い速さで私を抱えたまま走り出した。

 お父さんとお母さんがどんどん遠くなっていく。

 小さくなって、見えなくなって、このままじゃ二人ともいなくなっちゃう...! 

 やだ、そんなのやだよ!まだまだ一緒に居たいのに...! 

 

「戻れ! 戻りなさいよ! このままじゃお父さんとお母さんが!」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい...」

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 凄まじい速さで風が流れているのを感じる。

 お父さんとお母さんがずっと遠くなって暴れる気力もなくなってしまった頃、私を抱えてる魔法少女から目を閉じているように言われて、そうしたからしっかりとは分からないけど魔法少女は空を飛べるらしいから今は空の上なのかもしれない。

 15分ほど抱えられていると、目を開けていいよという言葉と一緒に降ろされる。

 どうやら高台にある中学校に運ばれて来たみたい。

 何かあった時の避難所になってたから人も沢山いる。

 でもそんなことは今は関係なくて、どうしても街の事が気になって少し見晴らしのいい所から町を見下ろすと、炎で夜なのにまるでお昼みたいに明るくて、お父さんと遊んだ公園も、お母さんに連れられてたくさん本を読んだ図書館も、二人との思い出が詰まった家も、みんなみんな燃えていた。

 見えてる景色が、現実に思えなくて目をそむけたくなるけど、町の方から流れてくる冬なのに少し暖かい風がそうじゃないって教えてきた...

 それだけじゃない、ベジタブルーン達も目で見てすぐに分かるくらいまだ沢山いた。

 そんな絶望しか無い景色から目を逸らしたくて、もしかしたら誰かが助けてくれてるかもしれないって思って、今度は中学校に行ってお父さんとお母さんが避難してきていないか探した。

 でも、居なかった。

 いくら探しても、誰に聞いてもどこにも居なかった。

 分かってた、助かるはずないって。

 もうお父さんとお母さんは帰ってこない。

 どうして...

 暗い色んな思いがぐるぐるして、でも最後に一つの思いに辿り着いた。

 もし今もずっと横についてきてるこの魔法少女が、あのベジタブルーンを倒していれば助かったのにって。

 こいつが、見捨てたからお父さんとお母さんは死んだんだって。 

 そう思うと一気に隣にいるこいつに腹が立って、両手で思いっきり殴りながらその気持ちを出来る限りきつい言葉でぶつけた。

 

「魔法少女はあいつらを倒すのが仕事なんでしょ! ならなんで倒してくれないのよ! なんでお父さんとお母さんを見殺しにしたのよ! あんたが...もっと強ければ、あんたがもっと、早く来ていれば! お父さんもお母さんも助かったかもしれないのに!...黙ってないで、何とか言いなさいよ、ねえ!」

 

 途中から堪えられなくなって涙を流しながら一方的にそう言い切ってから、気持ちを吐き出して少し落ち着けたのもあって初めて魔法少女の顔をちゃんと見た。

 その顔は悲しそうなの、後悔しているの、絶望しているの、とにかく沢山の後ろ向きの感情の色がごちゃごちゃに混ざっていたけど、私とあんまり変わらない女の子の顔だった。

 そうだ、こいつも、いやこの人も魔法少女だけどまだ私と同じくらいの女の子なんだ。

 なのに、あんな怖い怪物と戦って、戦って、戦っている。

 戦うという事はただ見ていただけの私よりきっと沢山怖い思いをしてるはずなのに、それを我慢して。

 今回みたいに救えなかった命もきっと一つや二つじゃない、その度にその重さを背負ってこんな顔をしてるのだろうか。

 それに私はこの子が来なければ今頃はお父さんとお母さんと揃ってベジタブルーンのお腹の中だったはずだ。

 そう思うと、私はこの人に感謝をしないといけないのに、とてもひどい事を言ってしまったってことに気づいた。

 だから謝ろうと思って、口を開けようとしたけどその前にこの人は泣きそうになりながら、わざわざ膝を折って目線を合わせ、まるで神様に罪を懺悔するみたいにこう言った。

 

「ああ、そうだ。君の両親が死んだのは全て私のせいだ。私が弱く、情けない魔法少女だったから、君を救うには君の両親を見捨てるしかなかった。君には私を恨む権利がある。どれだけ罵倒しても、殴ってもらっても構わない。私は、そのすべてを受け入れるつもりだ」

 

 ああ、この子はとっても強いんだなって、それを聞いた瞬間に思った。

 自分だって、今にも泣きそうなぐらい辛いのに、自分が助けられなかった命の重さに潰されそうになっているのに。

お父さんとお母さんを亡くした私が壊れてしまわないよう、自分を憎むことで生きる事が出来るように憎まれ役になろうとしてる。

 きっと私が同じ立場ならそんなことは出来なかった。

 私はそんな強いこの人がとっても綺麗で、輝いて見えた。私もいつかこんな強い女の子になれたらいいなって憧れた。

 だから私はそんな憧れた人が泣きそうになっているのが嫌でぎゅっと抱きしめながらこう言った。

 

「ごめんなさい、魔法少女さん。ついかっとなってとてもひどいことを言っちゃった。私の命はあなたに救われたのに、とんだ恩知らずだったわ。それにあなたは悪くない、悪いのはベジタブルーンよ...だから私はあなたを恨まない、もう罵倒したりもしないし殴ったりもしない、だからそんな泣きそうな顔をしないで...」

 

 そう言うと私に急に抱きしめられてビックリしていた顔を、更に驚いた顔にした。

 

「そんなことは無い...君は優しいからそう言ってくれるのかもしれないけど、君の両親は私が助けられたはずの命なんだ。だから...私を罰してくれ。他でもない君が私を...」

 

 罰なんていいのに

 でもこの人はとっても責任感が強いってことがここまでの会話からでも分かっていたから、何かしら罰というかそういうものを言ってあげないと駄目なのも分かっていた。

 ...良いことを思いついた!私のしたい事に繋がるし、きっととっても大変だから罰にもなるはず。

 

「...分かった。じゃあ私のお願いを聞いて欲しいわ。それが私からあなたへの罰よ、それでいい?」

 

 きっと断ったりはしないだろうけどどうだろう...ちょっと不安になって上目遣いになってこの子の顔を見る。

 

「お願いか、ああ勿論私にできる事なら何でも聞こう。私に出来ない事だとしてもこの命を懸けてでも叶えてみせる」

 

 やった...!嬉しくて、少し口がにやけてしまってるけど許してほしい、だって憧れた存在への最短切符を手に入れたも同然なんだから。

 

「じゃあ、とりあえず3つ! あなたの名前を教えて欲しいわ。ずっと魔法少女さんって呼ぶのも不便だしね」

 

 本当は憧れの相手の名前を聞いておきたかっただけ、でもそこは隠しておいた。

 ...だって恥ずかしいし。

 

「うん、分かったよ。私は師走蜜柑という。あと二つは何かな?」

 

 師走蜜柑...蜜柑さん...蜜柑ちゃん..ミカン...

 うん、ミカンって呼ぶことにしましょう! 

 この前読んだ本にも下の名前を呼び捨てで呼ぶと距離が詰まりやすいって書いてあったし...! 

 

「師走蜜柑ね、じゃあこれからはミカンって呼ぶわね。で、二つ目は私と一緒に住んでほしいの。うちは親戚付き合いも無かったから行くところが無いのよ。だから良かったら一緒に住んでくれると嬉しいわ。あ、勿論家事とかそこら辺はちゃんとやるわよ、これでもお父さんにはいっぱいお手伝い出来て偉いねって言われてたんだから」

 

 そう言うと、ミカンは少し黙ってしまった。

 ...もしかして駄目だっただろうか。

 それもそうだ、だってよくよく考えたら、いきなり一緒に住んでなんて言われてもいろいろ困ってしまう...

 だからやっぱり取り下げようとすると

 

「すまない、少し考え込んでしまった。勿論大丈夫だ。ここからは少し離れてしまうが、青果市という所であれば家を借りられる伝手がある、それを頼ることにしよう」

 

「本当に良いの...?」

 

「君のお願いを聞くと言ったはずだよ、その言葉に二言はない。罰から逃れるほど、まだ落ちぶれてないつもりだ」

 

「そ、そう...! じゃあ次は最後のお願い!」

 

 2つ目までは受け入れてもらえた、ついに最後のお願いだ。

 正直ここまでのお願いは前座みたいなもので次のお願いが本命...! 

 

「私を魔法少女にしてほしいの! 私みたいな子を減らしたいし復讐したいのよ、私の大好きなお父さんとお母さんを殺したあいつらに。だから、その為の力が欲しい。お願いできる?」

 

 一番大きい憧れの部分は隠した、さっきもだけど恥ずかしいから。

 でも、言った事も嘘じゃない。

 私みたいにお父さんとお母さん、大切な人をあいつらに奪われる人を減らしたいのも。

 大切な人を奪ったあいつらを、ころして、コロシテ、殺したいのも

 ミカンはさっきよりも深く考えているみたいだった。

 きっと色々ちゃんと考えてくれてるのだろう。

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 それからしばらく悩んだ後、ミカンはようやく口を開いた。

 

「...分かった。それが君の望みなら、私は全力をもって君を魔法少女にしてみせる。でも、とっても大変な道になる。それでもやるかい?」

 

 確かに全くの素人で、運動もあんまり得意じゃない私にとって魔法少女になって、あいつらを倒せるようになるのはきっととても大変なのだろう。

 でも、だとしてもそれは諦める理由にはならない。

 だって、私は憧れてしまったから。

 ベジタブルーンから、恐怖と絶望に常にさらされながら人間を守り戦う凄くカッコいいヒロインに! 

 

「ええ、勿論覚悟の上よ! よろしく頼むわ。ミカン!」

 

「ふぅ...ああ、よろしく頼むよ。苺」

 

 

 

 

 そうして、色々あった一日は終わって。

 大切な人と別れて、でも尊いモノを見つけて。

 私は魔法少女になるための一歩を踏み出した。

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