魔法少女マジカルピーチ外伝 魔法少女マジカルストロベリー 作:青果 魔法露
これが私のキーフルーツ。
これからずっと一緒の相棒。
色とか形とかは殆どまんま苺なんだけど、それが高級な宝石みたいにピカピカ光っててとっても綺麗。
宝石はテレビとかお父さんとお母さんの指輪で見たことあったけどそれよりも断然綺麗な気がする。
ああ、何というかいつまででも見てられるかも...
「あら、凄い偶然!自分の名前とキーフルーツの形が一緒なんて、そうそう見ないわよ。たまにキーフルーツとの相性が悪いって子も居るんだけどこれなら心配なさそうね」
鎌華先生に声をかけられてはっと意識を戻す。
綺麗すぎて見入っちゃってたみたい。
確かにとっても綺麗でいつまででも見ていたいけど、今は我慢!
ミカンや鎌華先生の感じからしてまだ何かありそうだし。
「そうなんですね!良かったぁ。で、鎌華先生これで終わりって訳じゃないですよね?」
「ええ、まだ専用のキーフルーツが出来ただけですもの。次はキーフルーツを起動させて、変身するところまで行ってみましょうか」
「変身...!」
変身、さっきも言ってたけど何というか凄く魅力的な響きだわ...
例えもしそれが今まで節々感じてきた現実っぽい夢のないものだとしても、その響きだけで世界中の子供は興奮すること間違いなし!
勿論私も例にもれずドキドキワクワクが止まらない。
コスチュームのデザインはどうしようかしらとか必殺技は何て名前にしようかしらとか、もう既にそういう事が頭の中をぐるぐるしちゃってる。
「ふふ、やっぱり苺ちゃんくらいの子だと変身ってワクワクよねぇ。でも、そう簡単にできる訳じゃないのよ。力が暴走しちゃうことだってあるんだから」
「え、そんなこともあるんですか...?」
「うん、だからとりあえずもしそうなっちゃっても大丈夫な所に移動しましょうか。あ、ミカンちゃんも付いてきて。お手本になってもらいたいから」
「ええ、分かりました。私で良ければ」
そんな感じでなんだか真っ白で凄い広い体育館みたいなところに移動してきた。
確かにこんなに広ければ暴走とかしちゃっても大丈夫そうだ。
「さて、早速ミカンちゃんお手本お願いできるかしら?あ、まずは待機モードでお願いね」
「はい、では...起きなさい、
ミカンがどこからか私と同じように名前と同じ蜜柑の形をしたキーフルーツを取り出すとそれが光る。
光り終わるとキーフルーツはミカンの手を離れふよふよと浮き始めた。
〚おはようございます、我が主。キーフルーツ、個体名【柑】ただいま起動しました〛
喋った!?喋るんだ、キーフルーツって...
柑って名前らしいけど、やっぱり何というかミカンに似てそこはかとなくおとなしい感じみたいだ。
でもカッコいいミカンにそれこそ似合ってて武士の姫様とその家臣みたいな感じで凄くいいかも...
私のキーフルーツはどんな風に喋るんだろう...
「柑、苺の前でかっこつけるのは良いけど正直ずっとその調子だとやりずらいから戻しなさい。...!あいや、今のはなしだ!そのままでいろ!」
ミカンがそう言うと柑から何というかおどけた感じの雰囲気が漂ってくる...あれれ...?
〚おっとっと、小生主殿の溺愛する苺姫の手前、空気を読んで大人しめ忠臣キャラを頑張って演じていたというのに。他ならぬ主殿からそう言われてはキャラを解除しなければいけませんなぁ〛
何かいきなり饒舌に喋りだしたからびっくりしていると柑はずずっとこちらに向かって飛んでくる。
〚お初にお目にかかります苺姫。小生、主殿のキーフルーツの柑と申します。正直主殿と名前だだかぶりで呼びづらいと思います故、気軽にカンちゃんとでもお呼びください。あ、後お近づきの印にパンツ見せtあ痛ったぁ!何をするでありますか主殿!〛
「何したもこうしたもあるか、このスケベキーフルーツ!苺を標的にするなど...今度という今度は許さん!お前に節度というものを分からせてやる、表に出ろぉ!」
〚ああ、良いでしょう!やってやるでありますよ!こっちこそ幼子のパンツの恨み、小生が居ないとろくに魔力制御もできない主殿に分からせてやるであります!〛
「あ、お前言ってはいけないこと言った!そこまで言われたらもうこっちも引き下がれないぞ!今日は泣かすからな!」
〚べー!そんなこと言っても全然怖くないでありますよーだ!〛
そんな感じで言い争いながら二人は出て行った...
え、何どういうことなの?
全くもって状況がつかめない...
助けを求めて鎌華先生の方も見ても優しそうな眼をしながらうなづくだけ。
こう、ミカンに対する憧れがちょっとだけ崩れたような、そんな気がした...
それから30分後、ボロボロになったミカンとこれまたボロボロになったカンが帰ってきた。(確かに紛らわしかったけどカンちゃんとは呼びたくなかったので間を取った)
「腕を上げたな、柑。だが今日も私の勝ちだ」
〚主殿こそさらに強くなったご様子。まあそれはそれとして今回の勝負も小生の勝ちでありますが〛
「は?」
〚お?〛
またもや二人?が一色触発になっりそうになった時、ずっとニコニコしていた鎌華先生がパンパンと手を叩き
「仲が良いのは良いけど、苺ちゃんに教えるのが先よ?分かってるかしら?」
と凄い怖い笑顔で言うと二人ともそれまでが嘘のようにおとなしくなった。
こう、優しそうな人が怒った時って本当に怖いわね...
「ふふ、分かってくれたみたいで嬉しいわ。じゃあ変身、よろしくね」
「え、ええ。柑、今回はどんな感じか苺に見せるだけだからレベル2で行くよ」
〚相変わらず鎌華殿は恐ろしいでありますなぁ...とと、主様了解でござる。戦闘モードレベル2で起動、大変身!であります!〛
次の瞬間眩い光が辺りを包んだ。
さっき見たキーフルーツが起動する時の光を何十倍にもしたかのような凄い光、だけど目が痛いとかはなくてどことなく暖かい光だった。
その光が消えるとそこには白とオレンジ色を基調にした、お姫様のドレスのように綺麗で、それでいてそのお姫様を守る騎士が着ている鎧のようにカッコいい、そんな綺麗さとカッコよさの混ざったコスチュームを身にまとったミカンがいた。
思わず目が離せないくらい見惚れてしまう。私もあんな綺麗なコスチュームを...!
そう思うとさっきよりもワクワクしている気がする。
さてどんなのにしようかしら、やっぱりドレスは外せないわよね。それから...
「あらあら、確かに見惚れちゃうわよね。ミカンちゃんのマギ・コスチュームすっごい綺麗だもんね。あ、マギ・コスチュームって言うのは今のミカンちゃんの着ている衣装の事ね。M.A.G.I.Aに行けば詳しい機能とか色々習うと思うから今は名前だけ覚えてて頂戴」
「あ、はっはい!」
危ない危ない。また思考の海に沈んじゃうところだったわ。
ちゃんと集中しないと...!
「さて、じゃあお手本も見たところで早速変身まで行ってみましょうか。まずはキーフルーツの起動からね。ミカンちゃんの柑みたいに名前を決めて呼んであげて頂戴、そうすれば起動するわよ。あ、ミカンちゃんと柑はちょっとそこで大人しくして置いてくれると嬉しいわ」
「りょ、了解です」「了解であります、鎌華殿」
「名前、ですか...」
「そう、名前。これから相棒としてずっとやっていくわけだし、良い感じの名前を付けてあげて。まあでも、苺ちゃん見てる感じそこまで変な名前つける感じの子じゃなさそうだしファーストインプレッションでパッと思いついたやつにしちゃっていいと思うわよ」
「な、なるほど。ファーストインプレッションでパッと...えーと」
うーん、と言われても難しいわね...
ミカンを参考にしたいけど、苺は一文字だし...
あっ、良いの思いついたかも。
「ん、早速思いついたみたいね! さあ、呼んでみて!」
あなたの、私の相棒の名前は!
「起きて! ベリー!」
そう呼びかけると、さっきミカンが変身したときと同じように眩しいけど暖かい光がベリーから放たれ私を包んだ。
その光が無くなると、目の前にベリーがふわふわと浮いていた。
「起動成功ね。早速話しかけてみて」
話しかける…
まずは無難に自己紹介、かな?
「あ、えーと。初めまして、ベリー。私は、これからあなたの相棒になる卯月苺! よろしくね!」
大丈夫、よね?
そう心配になりながら返答を待つ。
ちょっとだけ間が空いた後、ピカピカと光りながら話し始めた。
〚
英語!?なのに分かる...
一体どういうこと!?
「驚いてるみたいね。キーフルーツと使用者には起動時に魔力的なパスが繋がれるの。それを通じてキーフルーツの意思が伝わるから言語が違くても意味が分かるのよ。まあ、キーフルーツと使用者の使用言語が違うの自体はかなり珍しいのだけどね」
パス、確かにベリーもそう言ってた。
なんというか便利で良いわね。
「さて、疑問も解決したことだし変身してみましょうか! キーフルーツと息を合わせて行けるなってなったら変身って叫ぶのよ!」
そうだ、ここまではまだ前座みたいなもの。
何か説明がふわふわしてるから出来るか不安だけどここで躓く訳には行かないわ!
お願い、ベリー!力を貸して!
〚
ベリーの気持ちが伝わってくる。
これなら、きっといける!
「変身!」
そう叫ぶとミカンの時と同じような眩い光が辺りを包む。
〚
光が消えていく。
自分の姿を見なくても成功したって分かる。
だって今最高に気分がいいんだもの!
今なら何でもやれそうな気がするわ!
「変身には成功したけど、ハイになっちゃってるわね。ミカンちゃん、お願い出来る?」
「ああ、分かった」
そう返事をするとミカンがこちらを向いて構えを取る。
「苺、今君は初めて変身し全身を魔力で包まれたことによる全能感でハイになっている。そのままだと危険だから申し訳無いが一度気絶してもらうぞ」
ミカンが何か言ってるが今はどうでもいい!
早くこの力を使いたい!
どこまでやれるのか、どんなことが出来るのか試したい!
あ!ミカンなら試すのに最適じゃない!
ふふ、となれば早速!
「ごめん、ミカン! 貴方で色々試させて頂戴! 今なら何でも出来る気がするの!」
そう言いながらミカンに全力で突っ込む。
瞬間風を切る感覚を感じる!
あはっ! こんなに速いなんて想像以上!
これならあんなことやこんなこともっ!
「御免」
いきなり視界がブラックアウトする。
何をされたの...?
全然分からなかったけど一つだけ分かったことがあった。
「ミカン、強すぎ...」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「強くなどあるものか」
気絶させた苺を寝かせて一つ呟く。
私は、強くない。
私が真に強かったのなら、苺が一人になることなど無かったのだから。
「ミカンちゃん、色々ありがと〜」
「いえ、こちらこそ」
後ろ向きな気持ちがバレないよう表情を正す。
とはいえ、鎌華先生とは長い付き合いだ。もうバレているかもしれないが。
「貴方から診てもらいたい子が居るって連絡があったときはびっくりしたけど、その入れ込みようじゃ納得出来るわね〜」
「そんなに、わかりやすいですか...?」
「だって、苺ちゃんを見る目が覚悟決まりすぎだもの。命かけても守るぞ〜!みたいな」
はは、流石は鎌華先生だ。何でもお見通しだ。
「その通りです。私はたとえこの命尽きようと苺を護り通します。そう、苺の両親に誓いましたから」
「はあ、相変わらず難儀ねミカンちゃんは。なら、護るためにちゃんと準備はしとかないとね。カンちゃん、久しぶりに診てあげるわ」
「はい、よろしくお願いします!」
これから苺はきっと強くなる。
私なんかよりもずっと。
でも、それでも追い抜かれるその時まで苺のことを必ず護り続けてみせる。
それが今の私の生きる理由だ。