士道くんは中二病をこじらせたようです   作:potato-47

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13.終わりなき戦い

 精霊の力によって巻き起こる暴風が、山林に身を隠すASTのもとまで襲い掛かる。鼻の奥を突くような鉄の臭いによって、<プリンセス>と<アポルトロシス>の戦闘の激しさが、外野である彼女たちにも伝わってきた。

 惨劇を物語る血風と呼ぶに相応しく、折紙は何度も飛び出そうとしては制止を掛けられ、最終的には拘束されてしまった。

 

「邪魔を、しないで」

 

 まるであの時と同じだ。士道の傍から、どれだけ危険でも離れるべきではなかった。

 破壊の権化となった<プリンセス>の刃は、ASTの装備とは比べ物にならない程に強力だ。再生能力の速度を上回り、士道を苦しめていることだろう。

 必死で藻掻く折紙を、隊員たちの随意領域(テリトリー)が押さえ付ける。

 

「私を、行かせて、このままでは……またっ」

 

 手足の自由を奪われて地面に叩き付けられる。ワイヤリングスーツの腕部に、無力を嘆く自分の顔が歪んで映った。

 

「…………」

 

 折紙は後のことを考えるのはやめた。

 突然、折紙が抵抗を止めたことに怪訝な顔をする。

 

「――ッ!」

 

 刹那、随意領域で自分を押さえ付ける隊員を弾き飛ばした。

 脳への負担が大きく、眉間に皺を寄せて頭痛を堪える。

 

「折紙! 馬鹿な真似は――」

 

 燎子の声が掻き消えるぐらいにスラスターを全力稼働。周囲の者からは掻き消えたように見えるほどの高速で上空に移動した。

 そのまま破壊の嵐の中を突き進む。不規則に荒れ狂う漆黒の稲光に、折紙は何度も襲われた。その度に脳への負担を無視して、防性随意領域を展開して強引に突破した。

 

 長大な剣が天を穿つ。雷鳴を轟かせるように光が迸り、夜闇の輝きが夕日を塗り潰して、暗黒時代が到来する。

 <プリンセス>が空に舞い上がるのを見て、折紙は止めを刺すつもりなのだと恐怖した。

 

 上空から士道の姿を発見して目を見開く。士道は血塗れで這い蹲り、<プリンセス>に向けて手を伸ばしていた。

 折紙は瀕死の士道のもとへ急降下する。入れ替わるように二つの影が上空へ駆けていくが、それを無視して士道の救出を最優先に行動した。

 

「ここから離脱する」

 

 士道の身体を抱え上げて、そのまま高台から離れようとすると、士道の手が弱々しく折紙の腕を掴んだ。

 

「折紙……頼む、十香のところへ運んでくれ」

 

 上空の<プリンセス>を見上げると、<ベルセルク>の二人に羽交い締めにされていた。入れ違いになった人影はどうやら、気絶から目覚めた二人だったようだ。

 

「俺たちなら、きっと……あの時みたく、上手く行く筈だ」

 

 士道の言葉に、来禅高校の上空で繰り広げた一瞬の共闘を思い出す。運命の皮肉なのだろうか。あの時とは別の形で、折紙の心は試されていた。

 

 

    *

 

 

「我が眷属に、生殺与奪の権利を与えた覚えはないぞ」

「阻止。それ以上の攻撃は夕弦たちを倒してからです」

 

 十香の自決を止めたのは、夕弦と耶倶矢だった。朦朧とする意識の中で、二人は士道のもとへ駆け付ける折紙を目にして、自分たちの為すべきことに気付いたのだ。

 精霊中最速の機動力を以って悲劇を回避する。誰もが幸せになれる真実を求めるのは、士道だけではない、八舞姉妹も同様だった。

 

「夕弦、耶倶矢……何故だ……」

 

 十香は止めどなく涙を流す。

 

「くくっ、あれだけ耳元で騒がれたのだ。おちおちと寝てはおられんよ」

 

 耶倶矢の軽口に、しかし十香は応じる余裕はなかった。一瞬でも遅ければ己をすべてを終わらせていたことを悔いているのではない。更なる悲劇を恐れていたのだ。

 

「違う! 【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】の制御を誤ったのだ! このままでは周囲のものすべてを破壊し尽くすぞ!」

「はあっ!? は、早くどうにかしなさいよ!?」

「焦燥。解決方法はないのですか」

 

 八舞姉妹の拘束を解かれた十香は、【最後の剣】を解除しようとするが、精霊すらも殺し切るために注ぎ込んだ霊力は、主である十香ですら制御できなかった。

 

「普通であればどこかに放てば良かったが、これは力を凝縮して、その場で展開されるようになっているのだ。……既に臨界状態、早く、シドーを連れて逃げろ。それまでは、なんとか持たせる!」

 

 既に死を覚悟していた十香は、必死で力の放出を押さえ込みながら、耶倶矢と夕弦に笑顔を送った。

 

「最後に話せて良かった。二人にも感謝する。カラオケにゲェムセンター……どれも楽しかったぞ」

「ふざけんじゃないわよ! そのぐらい、気合でどうにかしなさい! あんたは私の眷属なんだから!」

「請願。諦めないで解決手段を考えましょう」

「無理だと言っているだろう! 逃げてくれ……二人をこの手で殺させないでくれ!」

 

 十香の死を回避する未来はないのか。一人を犠牲にして他のすべてが救われれば本当にハッピーエンドなのか。

 

 ――違う、断じて間違っている。

 

 士道だったら、きっとそう言ってくれる。そして絶対に諦めない。勧善懲悪の脚本だって、全員救済の物語に書き換えようとするぐらいの我侭なのだから。

 ほら、噂をすればなんとやら、お姫様抱っこされたヒロインにしか見えないヒーローの登場だ。

 

「十香には誰も殺させない、俺はそう言った筈だ」

 

 折紙の腕から下ろされて、十香の首に両腕を回して抱き着いた。

 

「シドー! こんな時に何を――んんっ!?」

 

 悲鳴を上げる十香の口を、士道は口で強引に塞いだ。キスをする時はいつだって突然だった。耶倶矢には不意を突かれて、逆に夕弦と十香には不意を突いた。もっとロマンチックなものを想像していたが、これはこれで、ドラマチックでいいのかもしれない。

 そんなくだらないことを考えていたが、十香の唇に触れた瞬間、余計な思考は消し飛んだ。

 

 ――<王の簒奪(スキル・ドレイン)>が発動する。

 

 十香とのキスは、涙と血でしょっぱくてほろ苦くて――最後にきなこの甘みが広がったのが、なんだか泣きたくなるほど嬉しかった。

 悲劇だけじゃない。きちんと十香の中で思い出は生きている。そう思えたから。

 

 いつまでも堪能したい柔らかな感触が離れて、十香と見詰め合った。涙でくしゃくしゃになった酷い顔だ。士道の顔も血で真っ赤になっており、折角の霊装はボロ布になって、着るというよりは付けていると言った方が正しい状態だった。

 

 ――荒れ狂う闇色の輝きが収束していく。光を失った大剣がぼろぼろに崩れ去り、きらきらと夕暮れを彩りながら霧散した。

 

「な、何をしたのだ?」

 

 制御を失った【最後の剣】は消え去り、十香の顔に安堵と戸惑いが広がる。それは霊装のドレスが消失していくことで羞恥に変わった。

 士道は真っ赤に染まった顔の十香を抱き竦める。身体を密着しているお陰で裸体を見られないで済んだ。

 

「こうすれば問題無いだろう?」

「う、うむ……感謝するぞ、シドー」

 

 夕弦の時の経験が生きており、すぐに庇えるように抱き締めただけなのだが、二人の間では認識の齟齬があった。

 八舞姉妹の複雑な心境を隠した笑顔と、折紙の突き刺すような視線に見守れながら、ゆっくりと落下していく。

 

「もう何も怖がることはない。俺は生きている、十香も生きている。みんな生きている。世界は、十香を歓迎するよ」

「……本当に私は生きていてもいいのか?」

「もちろんだ」

「そうか、私は……生きてていいのだな」

「ああ、一緒に生きよう。……そうだな、まずは一緒にきなこパンを食べよう。それから、もっと世界を見て回ろうか。この世界にはまだまだ、楽しいことが、美味しいものがたくさんあるぞ」

 

 十香の唇が柔らかな弧を描く。幸せそうな笑顔を間近で目にして、士道の心臓がドクンと跳ねた。

 

「デェトか、また行きたいな」

「いつだって何度だって行ってやる」

「そうだな……シドーとまた、デェトに行けたら……きっと、楽しいな」

「十香……?」

 

 目の前に咲いていた笑顔が苦痛に歪んで、呼吸が乱れていく。

 不吉な生温かい感触が腹部を浸した。それは十香の脇腹を抉った<CCC>の置き土産だった。精霊の肉体を蝕んで再生を阻害する。特殊な治療を受けない限り、止め処なく血が流れ続けるのだ。

 

 士道は着地すると、八舞姉妹から服を借りて十香に被せる。地面に横たえた十香の傷口を確認するが、自分の手では治療は不可能である現実を改めて突き付けられるだけだった。

 

「俺にできないからといって、誰にもできない訳ではない」

 

 以前に治療を受けたことのある<フラクシナス>の設備を使えばいいと気付く。

 

「琴里、聞こえているか?」

 

 いつものように叩こうとして、インカムが無くなっていることに気付く。戦闘中にどこかへ行ってしまったようだ。

 

「譲渡。夕弦のを使ってください」

 

 幸いにも<ラタトスク>のサポートを受けていた八舞姉妹もインカムを身に着けていた。

 改めてこちらの状況を伝えようとするが、ノイズ音しか聞こえない。こんなタイミングでトラブルとは、何か嫌な予感がした。

 

「……折紙」

 

 背後から聞こえたスラスターの稼動音で、士道はまだ何も終わっていないことを改めて理解する。

 

「二人は十香を頼んだ」

 

 八舞姉妹に十香を任せて、士道は滞空したままの折紙を見上げた。

 

「折紙、三人をまだ狙うのなら、俺はそれを止めるぞ」

「私が<プリンセス>の封印に協力したのは、あなたを助けるため」

 

 折紙は銃口を十香たちへと向けた。

 

「例え精霊の力を失っても、取り戻す可能性があるのなら――私は、完全に精霊を殺し切る」

 

 復讐に取り憑かれた折紙を救う方法。現実から乖離した真実では、その心を動かすのは不可能だ。例え成功したとしても、今度こそは完全に信頼を失うことになる。

 だから、隠された優しさに気付かせて、その先で待っている真実まで導くのだ。

 現実のその先へ、絶望を越えた未来を掴み取る。

 

「折紙、お前は復讐鬼に堕ちるには優し過ぎる。だから、お前は俺の<王の簒奪>に縋った。そうだろう? <完璧主義者(ミス・パーフェクト)>のお前が、他人の裏付けさえない力に頼ったのは、復讐をやり遂げる意志が無かったからだ」

「違う。私にとって復讐がすべて。もう、あなたの言葉に騙されない」

「そうか……だったら、証明してみせろ! この俺を殺して!」

 

 あと少しだけいい、力を貸してくれ<業炎の咎人(アポルトロシス)>!

 士道は風と炎と光を纏う。それは今までに封印してきたすべての精霊の力だった。

 

「お前は精霊を殺すと言った。だったら、俺を殺してみせろ。<ベルセルク>であり、<イフリート>であり、<プリンセス>であるこの俺を!」

「……ッ!」

「俺を殺せば、簡単に復讐を終えられるぞ」

 

 折紙の手が震える。銃口は狙いを定められない。彼女は無表情の奥で怯えていた。

 最初から折紙は、その優しさ故に矛盾していた。この躊躇いこそが、復讐がすべてではない証明。彼女にとって復讐よりも士道と生きる未来のが大切ということだ。

 

「本当に殺したいのは精霊じゃない。精霊に心を許そうとしていた自分自身だろう」

「う、あっ……」

「お前は強い人間だ。だから、間違っていても、どんなに困難でも、突き進める力がある。でも……そんな生き方で何が得られる? お前は何が欲しい? 答えろ、鳶一折紙!」

 

 折紙の震えが止まる。復讐鬼の暗い瞳を覗かせて、レイザーブレイドを引き抜いた。

 

「あなたの『仮面』は弱さ。勝手な都合を押し付けているのは、あなたも同じ」

 

 ああ、いつだって、お前は正しいよ。中二病や妄想は紛れも無く弱さだ。余りに強大な現実に弱さを押し付けて、強い自分でいようとする。それこそが何よりも弱さの証明であり、強くあろうとし続けた折紙とは正反対の境地。

 

「だがな、弱さが強さに勝てないって誰が決めた」

 

 士道は右手を胸の前で構えて、左手を折紙に向けて突き出す。腰を半身になるように逸らして、両足を肩幅に開く。これぞあらゆる攻撃をカウンターで沈めた『供喰みの陣』である。もちろんただの妄想だ。

 

「絶対に、この手で……迷いも、甘えも、すべて断ち切って、精霊を殺す」

 

 折紙の振るう光剣が士道に襲い掛かった。

 光で迎え打つことも、風で逸らすことも、炎で再生することも――何の抵抗も示さない。

 その必要がなかった。

 刃は士道が避けずとも空を切ったのだ。

 

「あ、ぐ……ッ!」

 

 折紙は悲鳴を上げて崩れ落ちるのを士道は抱き留めた。

 短時間とはいえ士道、十香との連戦、無茶な随意領域展開の連続――類稀な才能を持とうとも人体には限界が存在する。随意領域が完全に消失することで活動限界を示していた。

 重さを取り戻した身体が士道により掛かる。

 折紙の身体は震えていた。

 

「私は、精霊を……!」

 

 士道に縋り付かなければ立っていることすらできない姿は、もはや復讐鬼ではない。孤独に怯えるただの少女だった。

 

「復讐を諦めても、誰もお前を責めたりしない。それでも、折紙は自分を責めるんだろう」

 

 こんな小さな身体に、どれだけの悲しみを背負っているのか。どれだけ自分自身の優しさを蔑ろにして、復讐に捧げてきたのか。折紙は中二病に逃げた士道には想像できない、苦難に満ちた日々を独り生きてきたのだ。

 

「隠し事をしていてごめんな。傷付けてごめんな……。いや、正直に言うよ。俺はお前にまだたくさん隠し事をしている」

 

 信じてくれなんて、許してくれなんて、言える筈もなかった。

 士道は未だに折紙を騙しているのだ。

 

「精霊の封印は不完全だ。精霊の感情が乱れれば、精霊の力は俺から逆流する。だけど、それはつまり、彼女たちを苦しませたり、悲しませたり、怒らせなければ――力を取り戻すことがないってことなんだ」

 

 沈み行く夕日を眺めて、士道は目を細める。

 

「それってさ、人間と何が違うんだろうな」

「…………」

「人間も怒ったり、悲しんだりすれば、普通では考えられない力を発揮するし、常軌を逸した行動を取ることがある。……詭弁かもしれないけど、俺は精霊が特別な存在だなんて思わない」

「…………」

「違うな……もう言い訳はやめるよ。折紙に誰かを傷付けてほしくない。だって、俺は折紙のことが好き――」

「好き?」

 

 え? そこで急に反応を示すの?

 やっぱり馬鹿みたいに小難しい説得の言葉なんて考えるものじゃない。

 

「ああ、折紙も十香も、耶倶矢も夕弦もみんな好きだ。傷付け合うのなんて見たくない」

「…………」

 

 折紙はよろめきながら、なんとか自力で立ち上がった。こちらに向けた背中は肩を落としており、士道は何か期待を裏切ってしまったようだ。

 

「士道のように考えることは……できない」

 

 空を見上げた折紙の瞳には、復讐心が息を潜めて、代わりに決意の輝きを宿していた。

 

「でも、私には、それよりも優先するべきことがある」

 

 暗闇に紛れて、ASTの部隊が展開されている。既に全方位から取り囲まれていた。ずらりと並ぶ銃口は、躊躇いから放たれることはないが、逃れられぬ死を暗示しているようであった。

 折紙のインカムに燎子の冷たい声が吹き込まれた。

 

『<プリンセス>の消失を確認。総員、配置についたら攻撃命令があるまで警戒態勢を維持』

 

 個別チャンネルに切り替えて、燎子は折紙にのみ通信を送った。

 

『今すぐに退きなさい……上は、前回の洗脳の件もあるからね、あんたごと始末するつもりよ』

「それはできない。やるべきことが残っている」

 

 折紙はもはや魔術師として機能しない状態でありながら、士道を守り通すことを選んだ。

 その先に惨たらしい死が待っていたとしても構わない。元より五年前に終わった命。士道のために使えるのならば本望だった。

 オペレーターから、ASTに上層部の最終決定が下される。

 

『――ターゲットは、霊波反応の有無を問わず殲滅との命令です』

 

 

    *

 

 

 円卓会議に啖呵を切った琴里は、特別通信室を立ち去る前に皮肉を込めて最敬礼を送った。

 

「では、失礼します」

 

 立ち去ろうとする琴里に、ブサ猫が溜息をついた。

 

『……仕方ない、きみの要望を受け入れようではないか。封印を施した三体の精霊を回収後、現場を離れてもらおう』

 

 ブサ猫の声に、今までは違う陰湿な響きがあった。

 

「士道を見殺しにしろ、と?」

 

 そもそも、どうやって、リアルタイムで情報を得ている? 十香の封印はインカムで令音から聞いたばかりだというのに。他にも気になる点がある。令音から続報が来ていないのだ。

 

『立て続けの精霊出現に、<フラクシナス>の追加人員の確認を怠っていたようだな。<ベルセルク>の空間震に巻き込まれた際に、今後はすぐに復旧できるように、私が手塩を掛けて育てたエンジニアを送らせてもらったよ』

「まさか……!」

『通信機器と転移装置の調子はどうかね?』

 

 最初から仕込みを終えていたからこその余裕だったのだ。

 琴里は奥歯を噛み締めて怒りを堪えた。

 

「……精霊の力を抜き出した彼女たちを回収しても無駄では?」

『都合良く<ベルセルク>が制御下に置かれる程度の力を持っているではないか』

 

 精一杯の反論も、男は一蹴する。

 

「こんなことをすれば……どうなるのか、分かっているのですか」

『必要なものが手に入れば、私は大人しく隠居させてもらうよ。すべては我が社の発展のために』

 

 この男は確かCR-ユニットの開発に関わる企業の役員だった。私欲にしては、自己犠牲が過ぎると思ったが、なるほど、こいつにも自分より大切なものがあったようだ。見上げた忠誠心である。

 ブサ猫の高笑いが響き渡る特別通信室から、琴里は足早に立ち去る。

 最初から自分の保身など考えていない男が相手だったとは、交渉の余地がないのも同然だ。奴はずっと機会を伺って待っていたのだ。

 

 政治的なやり取りや、精霊の移動手段など、すべての算段が整えられていると考えるべきだろう。混乱を利用して<ラタトスク>を出し抜くつもりなのだ。

 計画を挫くタイミングは今しかない。

 

「これ以上、好き勝手にさせたりはしないわ」

 

 琴里は黒のリボンで結んだツインテールを揺らして、艦橋に駆けて行った。

 

 

 誰もが幸せになれる真実は遥か遠く。

 想いと想いがぶつかり合う戦場を、貪欲な私欲と穢れた保身が覆い尽くす。

 かつて、士道が敗北した『機関』がより強大な力をもって立ちはだかった。 

 




機関「真打ち登場」
AST「帰って、どうぞ」
ラタトスク「帰って、どうぞ」

<第一部からの難易度上昇例>
①士道くんの体力赤ゲージ
②折紙さんのMP枯渇
③八舞姉妹の疲労度限界
④十香の寿命がマッハ
⑤転移装置使用不可
⑥『機関』の殺る気MAX

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