士道くんは中二病をこじらせたようです   作:potato-47

34 / 43
 『第二部 1.手に入れた日常』のIF展開です。

 疲れていると下ネタに走るらしいので、私がこの番外編を書くのはきっと疲れているから。
 よし、言い訳完了!

 まあ作者の都合を言うと、毎日更新を諦められず、かといって本編を書き切る時間がなかったので短めの番外編に逃げやがったのです。
 あ、明日はちゃんと本編更新しますから!


番外編 もしも耶倶矢が目覚めなかったら

 早朝。五河家の士道の部屋にて、静かにその戦いは幕を開けた。

 五河士道は試されていた。それは理性の限界への挑戦であり、未来までも左右する究極の選択だった。

 八舞夕弦の視線が士道を完全に捕らえていた。眠たげな目にはどこか期待をにじませている。大胆な攻めを展開して、士道の常人を遥かに超えた理性ですら一瞬で蜂の巣に変えられていた。

 

 

 ベッドの上で士道が夕弦に覆い被さっていた。夕弦の腕が士道の腕をがっしりとホールドしている。

 二人は見詰め合った。その距離は僅か二○センチメートル。お互いの吐息が頬を撫でてくすぐったい。

 

「期待。どきどき」

 

 羞恥心が湧いてきたのか、頬を赤らめて視線を逸らしてちらちらと士道の表情を窺ってくる。

 このままでは不味い。<無反応>なんて二つ名を投げ捨てて、エロゲー主人公に転向してしまう。伏せ字、ピー音、モザイク――ギャルゲーには無い素敵で愉快な世界が俺を待っている!

 

 救いはないのか。助けを求めようと、隣で眠る耶倶矢に目を向ければ、枕を抱き締めてだらしない顔になっていた。「我が盟友は甘えん坊だったのだな」とか寝言を言っている。幸せそうだ。一体どんな夢を見ているのか、考えない方がきっと士道は幸せでいられる気がする。

 

 現実逃避をしている隙を突かれて、夕弦の攻撃が再開された。両腕を背中に回されて抱き締められる。

 

「抱擁。ぎゅっです」

 

 更に近付く距離。少しでも顔を下げれば唇が重なる。睫毛の本数が数えられそうだ。

 しかし、それ以上の問題が別にあった。身体が密着したことで、士道の鍛え抜かれた胸板に夕弦の巨乳が押し潰される。柔らかな感触と熱がパジャマの薄布一枚越しに伝わってきた。

 

(っておい、ブラしてないのか!?)

 

 制限を受けない形の良い双球は自由奔放だった。力が加われば加わるだけ、逃げ場を求めて広がっていく。その変化がすべて士道には夕弦の鼓動と共に柔らかな感触となって伝わってくる。

 あっ、なんかもうドラマCD、漫画、ゲーム、アニメ、映画――網羅したから、後はエロゲー化しても良いと思うんだ。時代はエロだよ! やったね、士道くん、家族が増えるよ!

 

 ――おい、やめろ。

 

 危うく本能の誘いに屈するとこだった。

 一瞬の安堵は再び致命的な隙となる。

 目を逸らした間に、視界一杯に夕弦の顔が広がっていた。瞼を閉じて近付いてきている。士道の視線は唇に釘付けになった。

 

「くっ……」

 

 士道は顔を横に向けて回避した。それでも夕弦は追い縋る。体勢が崩れて、二人の身体はひっくり返った。今度は立場を変えて、夕弦がマウンドポジションを取った。

 

「ゆ、夕弦……もう、冗談はこのぐらいにして」

 

 ヘタレた士道は逃げの一手を打つが、それは寧ろ逆効果だった。

 夕弦の瞳に嗜虐を求める怪しい輝きが差した。

 

「訂正。冗談で迫るほど夕弦は自分を安売りしません」

 

 夕弦の手が士道のパジャマに伸びる。抵抗しようにも腰に馬乗りされ、身動きを取れない。瞬く間にボタンを外されて、士道の上半身が晒された。

 驚くべき早技だった。一体どこでそんな――鳶一折紙の無表情がすぐに浮かぶ。流石は『機関』の精鋭だ。ハニートラップだってお手のものという訳か。

 

「お、おい、まさか……」

「首肯。士道一人を脱がせるつもりはありません」

 

 夕弦は自分のパジャマに手を掛けた。まるで焦らすようにパチリ、パチリと一つずつゆっくりとボタンを外していく。しかも下からで、胸元に到達するまでじっくりと時間を掛けてだ。

 まず可愛らしい臍が覗いて、徐々に芸術品と見紛うシミ一つ無い白肌が顕になった。女神の水浴びを覗いてしまったような罪悪感を抱くが、もはやそれは興奮を高めるエッセンス程度の存在でしか無かった。

 

 遂に最後のボタンが外されて、窮屈なパジャマから両胸が解放される。士道の呼吸で腹が上下するのに合わせて、風と戯れるようにたゆんたゆんと波打った。

 

 ――士道の理性はその瞬間、神の領域に至った。

 

 なんと頭を横に倒して瞼を閉じたのだ。闇の中で衣擦れの音が聞こえようと決して目を向けなかった。

 もぞもぞと夕弦が動く。ぺたりと汗ばんだ肌が密着した。耳元で息遣いが聞こえた。

 

「吐息。士道が欲しいです」

「……っ!」

 

 パジャマを取り払われ、乳房とは違う僅かに硬さをもった別の感触が士道の胸板を転がる。

 

「懇願。もう我慢できません」

「…………うっ!」

 

 汗を拭おうと、夕弦の舌が士道の首筋を舐め上げた。その動作で自然と豊かに実った胸が擦り付けられて、士道をくすぐった。

 

「快感。……士道、士道っ」

 

 

 俺の戦いもここまでか。

 神は神でも、日本神話とかギリシャ神話とか乱痴気騒ぎが大好きな神々が手招きしている。もうそっちへ行くよ。やっぱり童貞が許されるのは小学生までだよね。

 

 捨てようぜ、理性。

 解き放とうぜ、本能。

 すべてが性欲に呑み込まれようとして――突如、士道の部屋の扉が開かれた。

 

「えっ……?」

 

 黒服サングラスの巨漢が二人入ってきて、夕弦に布団を被せると、押し倒された士道を引っ張り上げる。そのまま両脇を支えられて部屋から連行された。

 

 

    *

 

 

「…………な、なによ」

「いや、正直なのはいいことだと思ってね」

「ふんっ、あの程度の誘惑で負けちゃう士道が悪いのよ」

「…………」

「わ、私はただ、あのまま布団を汚されたりしたら、洗濯が大変だと思って。それにあくまで寝起きの対応を訓練するのが目的だから、それ以上の行為は不要だわ」

「…………」

「『ラ・ピュセル』の限定ミルクシュークリーム一〇個!」

「……琴里の指示はいつも正しいね」

 

 こうして、義妹の愛によって今日も士道の童貞は無事に守られるのであった。

 今日も五河家と<フラクシナス>は平和です。

 




 この番外編のためだけにR15を付けることになったぜ!
 ただ朝起きて寝惚けた二人が、寝相の悪さで服が脱げちゃって、重なり合ってもぞもぞしてるだけだから、まったく健全そのものですね。


Q.琴里の妨害も無いVerはまだですか?
A.R18とかマジ勘弁

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。