士道くんは中二病をこじらせたようです 作:potato-47
書き始めたのが、22時過ぎなので、クオリティと長さは察してください。
鳶一折紙が二人の姿を発見したのは偶然だった。
学校とASTの仕事、表裏の休暇が重なって、来たるべき士道とのデートに備えて、デートコースを練っていたところ、士道と十香が商店街に向かって行く姿を見付けたのだ。
「…………」
物陰に身を隠し、心を落ち着ける。
手を繋いでいたが、あれは子どもが迷子になるのを防ぐため――いや、ペットが逃げ出さないようにするための首輪に結んだリールと同じに違いない。
購買部でやたらと突っかかってくる女子生徒が、士道に話し掛けていた。あの女も要注意人物の一人だ。一年の頃から士道に馴れ馴れしく接しており、あまつさえ過剰なスキンシップを図り誘惑しようとする。
色仕掛けなど言語道断。士道の意志を無視する行為だ。安っぽいハニートラップに引っ掛かると思う時点で、士道に対する冒涜とも言える。
折紙ならば、真っ直ぐに堂々とあの手この手を使って、士道が自らの意志で折紙を選んでもらえるように仕向け……げふんげふん、誘導す……ごほごほ――努力する。
折紙は二人の尾行を開始した。これは精霊攻略に協力している身としては当然の行為である。なんら疚しい思いなどない。当然だ。そもそも精霊の力を失っていない状態の十香は、世界を殺す災厄であることに変わりない。それを警戒するのは人として寧ろ当然で、別に自分よりも早く士道とデートをしているから恨んでいたりだとか、妬ましいだとか、そういう感情を持つ筈もなく、ただ純粋に士道が心配であり、命を懸けてでも守ると誓っているからには陰日向となって常に士道の傍に居るのは自然であり逆に傍を離れることは裏切り行為であるからして現状で二人に気取られないように行動するのはあくまで万が一の不意打ちを想定した選択であり決して士道のデートに於ける趣向を予め把握することで今後のデートに活かすためだとかこれっぽちも考えていなくて、とにかく尾行の必要があるから尾行しているのだ。
一瞬で言い訳を自己完結させた折紙は、表情を露とも変えずに歩き出す。以前に尾行がバレた経験もあるため、より細心の注意を払っていた。
「…………きなこ?」
十香が騒いでいるのが聞こえる。そういえば、ゲームセンターの時も、何やらこだわりがあるようだった。
二人がきなこを堪能している間、折紙は士道がきなこに塗れた姿を想像して暇を潰す。砂糖を混ぜ合わせた甘いきなこを舐め回す。士道の汗と混ざり合い、官能な味わいが堪らない。羞恥に歪む士道。細かな粒がざらざらと肌をくすぐり、何度も繰り返している内に、皮が剥けて肌が傷付く。士道の血が零れ落ちた。もちろん折紙は、その貴重な血をみすみす見逃す筈もない。ペロリと舐めとった。
「…………」
折紙は口元を拭った。少々トリップしていたようだ。士道と十香は移動を始めていたので、慌てて尾行に戻る。
食い倒れツアーでもやっているのだろうか。商店街にあるすべての食料を食い尽くす勢いで、十香の蹂躙は続いていた。
「…………」
自分と士道であれば、あんな野蛮なデートになったりはしない。もっとおしゃれで静かな、そう二人に相応しい大人のデートになる筈だ。
二人は公園で小休憩を挟むようである。折紙は一息ついて、小さな子どもたちがはしゃぐ様子を眺めていた。士道との家庭を想像して幸せに酔いしれる。結婚したら士道のことをなんと呼ぶのだろうか。子どもは何人がいいだろうか。
休憩を終えた二人が、ファミレスへと入っていった。
まだ食べるつもりらしい。
折紙は二人に気付かれないように近くの席に座り、会話を盗み聞きした。最初は何の変哲もない会話だったが、士道の問い掛けにガラリと空気が変わる。
「…………」
士道の力強い言葉が胸に染み渡る。
復讐が終わった瞬間を思い出した。彼は一度ならず二度も自分を救ってくれた。精霊によってすべてを失った折紙にとっては、もはや士道が生きるためのすべてだった。
ファミレスを出て行く士道と十香の背を見送り、折紙は改めて決意を固める。
――彼のためにこれからも生きていこう。
既に終わっていた命。すべてを捧げても惜しくはない。
士道と共にこの世界から精霊を完全に排除し、平和な世界を取り戻そう。彼の周りに女が増えるのは正直に言えば不満ではあるが、負けるつもりはない。
そのために、まずはこれから予定の空いているらしい士道をデートに誘わなければ。
幸せな記憶を胸に抱いて、折紙は携帯電話で士道に掛ける。
たくさんの感情を詰め込んで、それでもいつも通りに、直球勝負の誘い文句。
「――これから会いたい」
前半は突っ走りながら、後半で乙女アピを欠かさない折紙さん。
ジェバンニがプロット無しで一時間で書いてくれました。
明日には本編を更新いたしますので、もう少々お待ちくださいませ。