士道くんは中二病をこじらせたようです   作:potato-47

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『9.二つのデート』のカラオケでの出来事。
マッハで書いたので、本当に雑です。後で加筆訂正します。


番外編 耶倶矢が至る真実

 天宮市某所のカラオケ店。

 リクエストされた曲をBGM代わりにして、八舞姉妹の過去話は始まった。

 

「回想。あれは四月の中旬でした。夕弦たちは士道に会ったのです」

「ふむ、いつものように二人で勝負をしていたのだが、そこに士道が……いや、<業炎の咎人(アポルトロシス)>が現れた」

 

 最初は真面目な雰囲気だった。

 十香も静かに聞いていられた。

 どのぐらいからだったろうか。徐々に八舞姉妹の語り口は熱を持ち始めて、発言が食い違うようになった。

 

「ん? 待て、夕弦……その話は我の記憶と矛盾しておるぞ。破壊と再生を司る十柱は、我が手で完全に滅ぼしたあの日、士道の缶ジュースで間接とはいえ、契約を交わしたのは我が先だった!」

「訂正。ボーリング対決をした日、夕弦が先に士道のジュースで間接キスをしました」

「馬鹿な、あの時に貴様は別の場所で休憩していたであろう」

「辟易。逆です。あの時、耶倶矢は一人でボーリングを続けていました」

 

 耶倶矢が犬だったならば、グルルと聞こえそうな唸りっぷりであった。夕弦も夕弦で表情は変わらないが、内側から溢れ出る威圧感が半端ではない。

 十香はうんうんと唸って、物凄く単純な結論に至った。

 

「二人が話しているのは、別のことではないのか?」

「疑問。どういうことでしょう」

「ん? だから、同じ日でも別の時間の話をしていると思ったのだ」

「あっ」

「唖然。盲点でした」

 

 八舞姉妹はぼそぼそと二人だけで話し合う。

 

「結論。士道が誤解を招いたのです」

「我が盟友は、迫られれば断れぬからな」

「んむ? よく分からないが、士道が悪いのだな」

「違うぞ」「否定。違います」

 

 即座の反論に十香は戸惑う。

 

「夕弦が目の程を弁えずに迫ったのが悪いのだ。士道も士道で、此奴を甘やかすから付け上がる」

「反論。士道の優しさに甘えているのは耶倶矢です」

「ほう、大きく出たな。貴様には士道の何が分かるというのだ?」

「冷笑。お子ちゃま耶倶矢には分からない、士道の秘密をたくさん知っています」

「……秘密だと? なんだ、言ってみるがいい。大したことではないのだろう?」

 

 今度は喧嘩を始めてしまい、十香はおろおろし始めた。話の内容について行けてないので、止めようにも止められなかった。

 夕弦は立ち上がって胸の下で腕を組んだ。まるで耶倶矢に見せ付けているようであった。果たしてそのポーズにどれだけの効果があるのか――耶倶矢がその場に崩れ落ちている。

 

「くっ……貴様、またその駄肉で誘惑したかっ!」

「愉悦。持たざる者からの僻みは気持ちいです」

「ぐぬぬ」

 

 耶倶矢は眷属である十香に助けを求めてきた。

 十香は一方的に負けている耶倶矢を助けようと、立ち上がって傍に行こうとして足を止めた。

 耶倶矢の目が十香の立ち上がった仕草の時に胸元に集中し、そして絶望に染まったのだ。

 

「揺れた、だと」

 

 この世界についてまだまだ無知である十香は、目立たないように表面上は服を生成しているが、下着を着ていなかった。中々に豊かなものをお待ちなので、拘束さえなければ、それはそれは元気な姿を見せてくれる。

 耶倶矢は視界が真っ暗に染まる。眷属に負けている主なんて、憐れ過ぎる。なんて無様なのだろうか。

 

 いや、待て……本当に胸が大きいことは救いなのか?

 例え世界の価値観が、巨乳万歳と叫ぼうと、士道一人がちっぱい万歳! と叫べばそれでいいじゃないか。

 

「くく、くははははっ! 危うく術中に嵌るところだったぞ。だがな、我が魔眼の前ではいかなる神算鬼謀も透けて見える!」

「憐憫。遂に胸だけでなく脳にも栄養が行かなくなりましたか」

「ふんっ、いつまでも調子に乗っておるなよ。すぐに貴様の妄想を打ち砕く、絶対の真実を披露してやろうか!」

 

 耶倶矢は個室から出ると、<ラタトスク>のサポートを受けるためにつけていたインカムで、琴里に連絡を取る。

 

『こっちでは特に異常は確認されてないけど、何か問題でもあったの?』

「琴里、士道は胸にこだわりはあるか?」

『……は? な、なんでそんなことを訊くのよ』

「これは重大な問題だ。同じ家で過ごしてきた貴様には分かっている筈だ。まさか士道は、巨乳信者ではあるまい? あんな脂肪の塊は戦闘行為には邪魔になり、日常でもただの荷物であろう?」

『…………』

「なあ、そうだと言ってくれ……琴里!」

 

 

    *

 

 

 <フラクシナス>の艦橋にて、琴里は眉を寄せていた。未だかつて無いほどの苦悩を抱えて、耶倶矢への返答を考える。

 令音が耶倶矢の感情の乱れを報告してきたことが、琴里に決断の勇気を与えた。

 

「――ええ、士道は根っからの貧乳主義者よ。寝言でちっぱいちっぱい叫んで、今でも私と一緒に風呂に入りたいなんて言っちゃうほど見境がない薄胸派で、まな板を見るだけで興奮しちゃうぐらいの微乳好きなのよ!」

『やはりか! くくっ、夕弦に目に物を見せてくれる。感謝するぞ、琴里』

 

 通信が切れて、艦橋に沈黙が広がった。

 

「…………これは、苦渋の決断よ」

 

 うん、そうそう、これは耶倶矢のためだもの。ええ、私の願望なんてこれっぽちも入ってないわ。当然よね。<ラタトスク>の司令官が、私情に流されるなんてことがある筈が無いのよ。

 

 でもなんでだろう、涙が止まらない。

 ああ、そうか、間接的に自分の胸が小さいって……考えるのは止めましょう。今は十香の攻略が最優先なのよ。

 

 

 ――こうして士道の性癖は、愛すべき義妹によって決め付けられるのであった。

 




 本当は本編を更新するつもりだったんだ。
 でもだめだったよ……。

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