ストレッチを終え、地面を軽く踏みつける。
今は晴れているが、正午ごろに通り雨があったので、少しばかり地面がゆるい。とはいえ、このぐらいは問題ない、私は雨の日も雪の日も、地面が砂だろうが草地だろうが、アスファルトだろうが、イノシシやシカの使ったヌタ場だろうが、走り抜けてきたのだから。
ひと呼吸をして、ゲートに向かう。
私を見る視線を、多く感じる。だが、怖くはない。出来る限りのトレーニングをした。ドンと来い、全力で私に感情をぶつけてみろ、こちらも全力でその努力を破壊させてもらおう。
『12人の選ばれたウマ娘が、次々とゲートに入っていきます』
ゲートに入る、いつものルーティン、あくびのような深呼吸も、忘れない。
「…」
ガシャコン!!
『スタートしました!出遅れはとくに見られません』
ぐいっと前に出る奴は…無し。
『キングヘイロー、ステイゴルディオン、ともにじわじわと前に』
なるほど、だが、逃げるウマ娘はいない、ペースメーカーがいないので、少しばかりもっさりした進みだ。
私は内を避けた、別に進めないからとかいう訳ではない。今回のレースは出走人数が少なく、道中での消耗も小さいだろうから、最終局面は激戦になるはずだ、内にいると最後に出られなくなるかもしれない。
そして、体が軽い、あの重量トレーニングのおかげである。スタミナも余裕が確保出来そうだ。これは、状況を確認する好機。辺りを見回す。
前にはスペシャルウィーク。現在彼女は三番手。
左前にはプレーンクラウド、その後ろにスエヒロデストロン。
イン寄り、私の後ろにグラスワンダー、その外側にオースミブリトー。
真横、ローゼカボット。
マチカネフクキタル、インターフロック、アサヒクリークは後ろ。
こう見てみると、全体的に外寄りである。2200mなので、外回りは不利だ。しかし、インにいるのが少ないのは、内が荒れやすいこのレース場の特徴と、剝がれた芝に水を注入した通り雨のせいだろう。ただ、このシチュエーションの中でも内を走って来るグラスワンダーは警戒しなければならない。彼女は蛮勇をやらかすようなウマ娘ではないからだ。
『各ウマ娘、第一コーナーのカーブに入っていきました』
ただ、ここから先はコーナーがきつい、外ならともかく、内ならば.…消耗は避けられないはずだ。
(ふむふむ…やはり、内を避ける傾向になりましたか、ここまでは…予想通りですわね。)
アサヒクリークは、最後尾を走りつつ、前の様子を伺う。彼女の作戦は追込だった。彼女の才覚は、中央のウマ娘達のペースについていく事を可能としていたのである。
(外を走ることで、遠心力はゆるい。ですがそれは他のウマ娘も同じ、スタミナも大切ですが、それよりも最後の末脚が、勝負を分けますわね、タイミングをしっかりと見極めませんと)
通常の阪神2200mのコースは、長く脚を使う事が重要とされている、しかし、バ場の荒れと通り雨は、最後の末脚をレースの勝敗を決める最重要事項としていたのである。そして、そのことは、アサヒクリークだけでなく、“彼女”ら、出走ウマ娘全てが、理解していることであった。
「グラス先輩以外、内側を避けているんですね」
レースを見ているメイショウドトウは、そうつぶやく、彼女はこのレースに出ていないが、勉強のために自ら白子に頼み込み、連れて来てもらっていた。
「ああ、だが、グラスワンダー君はつけたスタミナで無理矢理内を走っているようだ、だが、あのような奇策も、時には役立つことがある。あれを生で見ることができただけでも、今回の君の見学は、価値のあるものになるはずだ」
「はい、でも、勉強だけじゃなくて、クロ先輩の応援も、しっかりとやりますね」
「ああ、よろしく頼む」
「おい、お二人さんよ、話してるところ悪いが…何か、胡散臭いことになって来やがった
ぜ?」
白子とメイショウドトウの会話に割って入ったのは、同じ場所で観戦していたアサヒクリークのトレーナー、矢座である。
「…!位置か?」
「ああ、それも、どうも奇麗すぎるな」
その時、ウマ娘達は向正面─ちょうど観客から最も遠い位置を走っていた。
『各ウマ娘、ステイゴルディオンを先頭にして各自第2コーナーへ』
グラスワンダーは、殆ど動かない、私の横に来たぐらいである。コーナーで彼女を観察し続けていたが、彼女は内を脱しようとしなかった。スタミナを消耗しても末脚は残しておける自信があるということか。
ならば…
「させない!」
「─ッ!」
…少し外に位置を変更しようとしたところを、スエヒロデストロンに邪魔をされた。仕方ない、もう一度トライだ。
「ふっ!!」
だが、その動きは、コーナーで少し後ろに控えていたローゼカボットに防がれた。
タタタタタタタタタッ!
さらに、後ろからは足音が2人分、そして1人が私の左後ろに来た。インターフロックだった。
「
「…!」
彼女は、声を聴き、振り返った私の顔を見て、笑った。それと同時に、私は確信した。
“囲まれた”
と…
『向正面に入り一番人気マヴェリッククロウ、多くのウマ娘にマークされて苦しい状況。石見の烏天狗はどうする?どう動く?』
(やっぱり、トレーナーさんの予測は当たってた)
スペシャルウィークは、心の中でそうつぶやく。彼女の作戦は、“彼女”をマークせず、先行策をとり、勝負は後半で行うというものであった。スペシャルウィークのトレーナーは、“彼女”の強さに着目し、多くのマークを受けると予測、それによる混雑を避けるため、敢えてマークしないという作戦を、スペシャルウィークに取らせたのである。
(あとは、スパートまでペースを維持、そうしておけば、もし、マヴェリッククロウさんが出てきても、私がふたになってさらにスタミナを消耗する)
スペシャルウィークは、冷静にペースキープをしていった。
(どうやら、前に出てみたのは正解だったようね……今日は、ダービーの時とは違うわよ、クロさん、さあ、ここまで上がっていらっしゃい)
キングヘイローは、日本ダービーの時と同様に、前に出ていたものの、その作戦はダービーの時のように“彼女”だけを意識したものではない。
(今日は逃げ適性のある娘はいない、だから、ダービーの時のような速いスピードは要らない。今日の距離は2200m、私の得意な距離。今日の出走人数は12人、前に出ようとしても、そんなに激しい争いにはならない……策は、張り巡らせたわ。)
出走ウマ娘の適性、距離、レースの特徴から、多角的に判断したのである。
(まさか、囲んでしまうとは…)
一方、グラスワンダーは、スペシャルウィークと対照的に、“彼女”をマークしていた。しかし、囲んでしまう展開になるのは予想できていなかった。
(内は空いている、進めば容易に──ですが、今前に進んでしまっては、スパートの時に体力は持たない…本望ではありませんが、コーナーまでは…この囲いに加わるしかありませんね…)
グラスワンダーの内を進む作戦は、容易に抜け出してスパートをかけることができるという状態を作り出していた。しかし、その代償として、早すぎる仕掛けは大きな不利となっていたのである。
「はわわ…クロ先輩…」
「…オイオイ、こりゃあ、大ピンチだな」
レースの状況を見ていたメイショウドトウは焦り、矢座は、“彼女”の現状を分析する。
「……かなり原始的なやり方だな、だが、その分効果は高めやすい」
「他人事みたいに言ってるが、お前の担当はこのままだと負けちまうぞ?」
矢座の指摘は的確だった。“彼女”は、誰が見ても明らかに、追い込まれていた。
「分かっている。一つ質問をしよう。君の眼の前に、自分のために用意された大好物が置かれていたとする。それが、縁もゆかりも無い他人に食べられたとする…君はどうする?」
「当然、腹が立つに決まってるだろ?」
「そうか、ならば、君と性格が似ているアサヒクリーク君……クロウ君に宣戦布告をした彼女は、アレにどういった感情を抱くのだろうな?」
「ほう…俺の担当頼みってことか?」
「半分はそうだ、内はグラスワンダーで蓋がされ、外は多くのウマ娘、あの隙間の小ささでは、無理やりこじ開けようとすると反則を取られる。そして、スピードを落として脱出することは、致命的な遅れを意味する、こうなれば、クロウ君に宣戦布告をした君の担当が何かやってくれるのを期待するほかはあるまい、だが、もう半分は、クロウ君が、私の教えを活かしてくれるかどうかによるだろう」
『向正面に入り一番人気マヴェリッククロウ、多くのウマ娘にマークされて苦しい状況。石見の烏天狗はどうする?どう動く?』
(……)
アサヒクリークは、“彼女”と、それを囲むウマ娘達をじっと見つめている。普段は手をパーにして走っている彼女は、今はグーにして走っていた。何故か?
(そうですか、そうですか、あなた方は、あの方が勝てなければ、それでいいのですか、あの方に、勝負をさせない、おつもりなのですか)
理由は簡単である。彼女は怒っていた。囲む状態を維持し続け、自分と“彼女”の対決の舞台を破壊している❘ウマ娘《邪魔者》達に。ただ、彼女は怒りに支配されていたわけではない。
(ですが、あなた方はあなた方、私は私。そう、私がここに来た目的は…マヴェリッククロウさんと、ガチンコ勝負をするため、そのためにスタミナをつけてきたのですから、それに…)
アサヒクリークは、息を吸いこむ
(恩を返さなければ、いけませんからね)
「マヴェリッククロウさん、勝負ですわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして、彼女は叫び、ロングスパートをかけた。
相変わらず、囲みは解かれないままである。そして、インターフロックは
と挑発して来た。しかし、私の沸点は低い方ではない、白子の言葉を思い出してみる。
『対戦相手を、一つの塊と思ってはならない、所詮は人の集まりだ』
レースは勝負、結局は、最後はどのウマ娘も自らの勝利を目指す。
だがそんなことは分かっている、だから諦めていない。トレーニングで鍛えた肉体をもってすれば、これを突破する事は可能だろう。だが、あまりにもギチギチすぎる。これを無理矢理こじ開ければ、反則となるだろう。
…かと言って、この囲みを形成しているウマ娘達が全員過ぎ去った後に仕掛けるのも駄目だ、勝ち目が薄い。
ならば、どうすれば──
「マヴェリッククロウさん、勝負ですわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「!?」
アサヒクリーク、ロングスパートか…!?
『800を通過したところでアサヒクリークがスパートをかけた、それとほぼ同時にスペシャルウィークも動いたぞ!!グラスワンダーも周囲を警戒してタイミングを伺っている!!』
だが、彼女とて、私の現状は分かっているだろうに。私なんかに付き合っていては、遅れるだけだ、互いに残念だけど、勝負はお預──
「きゃあっ!!」
そんな私の思考は、悲鳴によって遮られた。
驚き、向いた先には、大きく走りを乱したスエヒロデストロン、それに巻き込まれたローゼカボット、そして…
大きな隙間に、茶色の尻尾、そして、その少し先を走る、
なるほど、そういう事か。約束を守ってくれるという事か。
そして、白子の言葉の意味も、やっと理解できた。
『対戦相手を、一つの塊と思ってはならない、所詮は人の集まりだ』
そう、私が戦っているのはただの人間に過ぎない、ならば、予想外の事態には、すこぶる弱い。それも、視界が突然奪われるという、かなりのレアケースでは。そして、私を囲んで安心していた者に、混乱は伝播していくのだ。
隙ができた、私は迷わない。
行ける場所があれば行き、狙いをつければ徹底的に調べ上げ、壊せそうなものがあれば壊してきた。
そして、今日のこれは、最大の
受けて立とうじゃないか。
『600を切ってマヴェリッククロウ、囲みを脱して遅れて追走!!』
(ふふっ、貴女ならきてくださると、信じていましたわ)
アサヒクリークは、心のなかで笑った。彼女はロングスパートをかけながら、尻尾を操り、スエヒロデストロンの視界を、一瞬遮った。反則行為の当て身や蹴り上げた土をぶつけるということはせず、ウマ娘の尻尾は、意図せず動くという常識を逆手に取ったのである。
「あいつ!もし使うなら最終直線まで取っとけって言ったのに…」
「あれは…?」
アサヒクリークの行動と、矢座の反応を見たメイショウドトウは、恐る恐る、白子に問う。
「あれはアサヒクリーク君が編み出した技だ、今回は経緯が経緯、クロウ君と全力勝負をするという約束を果たすために使ったのだろう」
「…」
「ドトウ君、覚えておくといい、時にはああいった戦い方も、必要なのだ」
「時には…ああいう風なやり方も…」
「そうだ、余程の事がない限りという、条件付きではあるがな」
白子はメイショウドトウに疑いを持たせないよう気を払いながら、そう言った。
『グラスワンダーが満を持して内から行った!!』
私があれから脱出した後、グラスワンダーは、混乱に乗じて内から上手く抜け出したようである。そして、私の前にはアサヒクリーク、キングヘイロー、ステイゴルディオン、プレーンクラウド、グラスワンダー、スペシャルウィークがいる。
距離はそれなり、追いつかなければまずい、それもスタミナを温存しながら。
しかし、地面のぬかるみがそれを邪魔する。何としても、前──
その時、前世の記憶がフラッシュバックした。
『お嬢ちゃん、ここは始めてかい?』
『はい』
『…ここからは気を付けてな、冬じゃないからって、油断は禁物だ。ここからしばらく上ると、溶け残りの雪がある。いいか?絶対に“わだち”を走るんだ、オートバイは、滑っちゃオシマイだぜ』
『ありがとうございます』
私は集中力を高めて、少し視線を下にやる。目に見えるのは…足跡。それも、くっきりと残っている。
通り雨によって、確かにコースは荒れた、しかし、所詮は通り雨、芝が削られていない箇所では威力不足だ。つまり、そこの下は蹄鉄でしっかりと捉えられる、硬い土が残っている。そして、アサヒクリークらは、最終コーナーでの強い走りで、芝を剝がしてくれた。
そうしてできた窪みが、その硬い土が、私を待っている。
サクラステラレクスは、それで脚を取られた、だが、私はそれを─轍を利用する。
『ここでマヴェリッククロウ、驚異的な追い上げを見せる!!前方ではグラスワンダーとアサヒクリークがスペシャルウィークに追いすがる!』
硬いところを足がかりに、飛び移るかのように前を目指す。因幡の白兎も、義経の八艘飛びも、こんな感じだったのだろうか?そして、外からアサヒクリークをロックオンする。
「さあ、勝負!!」
「来ると思っていましたわ!!」
相手の戦意は衰えていない、それどころか、むしろ高まっている。ぶち壊してやる。
『最終直線に入り、外からマヴェリッククロウが来た!!アサヒクリークに並びかける!競り合う二人!スペシャルウィークとグラスワンダーを交わした!』
「まだまだ、最後まで楽しみますわ!!」
「なら倒すまで!!」
『残り200m、二人のガチンコ対決、スペシャルウィーク、そしてグラスワンダーを躱したキングヘイローが必死に追いすがる!』
よし、ラストスパートだ。重量トレーニングの成果が、一番発揮されるのは、このタイミング。
なかなか一歩前に出れない者に、悠々と一歩前に踊り出る姿を、見せつけてやる。こんなに屈辱的な事は無いだろう。
『ここでマヴェリッククロウ、さらにスパートをかけた!!抜け出した!抜け出した!その勢いのまま、ゴールイン!!』
ワァァァァァァァァァァッ!!
「あの窮地からの逆転劇、スゲェ!!」
「惜しいなぁ~、もう少しで、レコードだったのによ!」
その声を聞き、私は掲示板を見る、審議のランプは無く、タイムはあと少しでレコードというものだった。
私は、観客達を見る。覚めぬ熱気に、観客達は支配されていた。観客達の目からは、サイレンススズカの影は消えていた。
キングヘイローがこちらにやって来る。
「…悔しいけど、また、学ばせてもらったわ、おめでとう」
キングヘイローは、私に向けてそう言い、地下道へと入っていった。
キングヘイローが泣いていなかった事は残念と思ったが、その思いもすぐに消えた。その理由は、スペシャルウィークの様子である。彼女は膝を屈め、涙を流しながら「あと、ちょっとだったのに!!」と自分の太股を殴り、グラスワンダーが止めに入っていた。
とても面白い光景である。そして、キングヘイローがあのやり取りに加わらなかった事が、私の気持ちをさらに高揚させていた。私も普通ならば、尻尾をブンブン振って、耳をピコピコとやっているだろう。だが、今は我慢だ。
「マヴェリッククロウさん」
「…!!」
しばらくスペシャルウィークを見ていた私に声をかけたのは、アサヒクリークだった。声をかけてきたから驚いたのではない、彼女の顔を見て驚いたのだ。
涙を流した跡は無く、誇らしげに笑っていたのだ。
「最高のレースでしたわ、ありがとうございます、ですが、勝負はまだまだ一回の表、首を洗って待っていて下さいまし!!」
私が言葉を返す暇もなく、あちらは先に地下道へと入っていった。私もファンとレース場にお辞儀を済ませ、地下道へと入る。駆け足に切り替える。アサヒクリークに追いつくためである。
「待って」
「あら、どうかされました?」
「何で私を助けたの?」
私は彼女にそう質問した。理由ぐらいは聞いておきたかったのだ。
「白梅賞の恩返しですわ、それに、私達“ガチンコ勝負”の約束を交わしたのですから、理由は十分ですわよね?」
「…!」
まさか、そう来るとは…
「そうだね、ねぇ、アサヒクリークさん」
向こうは「どうかされました?」といった顔をしている。最後に一つ伝えたいことが出来たのだ。
「また、機会があったら、お互い全力投球の勝負をしよう、ただし、勝ちは貰うよ」
「何の!」
向こうは、私の言葉に強く反応した。
「そう応えてくれると思ってた、私達、いい友達になれそうだね」
「いい友達?ええ、私達、気が合いそうですわね」
私達は、握手をする。こうしておけば、彼女は更に強くなる筈だ、そして再び、私の前に現れる事だろう。その時はしっかりと、叩き潰させてもらう。戦闘狂の泣き顔や敗北感に狂う姿も、見てみたいことだし。
ただ…私が彼女に友情を抱いていないかというと、そうではない。目的の為なら、グレーな手段にも出るという面に、私はシンパシーを感じていた。
アサヒクリークと別れしばらく歩くと、白子が待っていた。いつもはだいたい控室に居るのだが。まあ、ライブに行かねばならんから、控室に寄る手間が省けて良い。
「ご苦労だった」
「どうも…予想外の展開だったよ」
「ああ、私の認識も甘かった。今回の事は、アサヒクリーク君に感謝をしなければならないな」
「そうだね、でも…そっちから教わった事は、本当の事だった」
「ふむ…それならば良かった」
「じゃあ、私はライブに行ってくるから」
そう言って、彼の横を通り抜け、ライブ会場へ向かおうとする。
「待つんだ」
しかし、彼は私を呼び止めた。彼は向き直った私を見る。
「我慢のやりすぎは、良いとは言えないな、本当は…笑いたいのだろう?私は君のトレーナーだ、せめて私の前では、思い切り笑ってほしいものだな……ウマ娘達の姿を、思い出しながら」
「………!」
こちらを射抜くような目をして、白子はそう言う。
「……ライブの開始時刻が迫っている。時間をとらせてすまなかったな、では、この話は、後日、改めてやるとしよう、私もトレーナーとして、より大きなものに挑戦する君と、更に親睦を深めておかなければならないからな」
そして、そう言って控室の方向に歩いていった。
あの目に…
あの言い回し…
感づかれた。
お読みいただきありがとうございます。
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主人公のマークはこのような感じとなっております。
【挿絵表示】
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