転生者は破壊したい   作:ヒブナ

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第4話 -再会-

 

「周囲からの印象を良くする方法?」

 

 デビュー戦の数日後、私の問に、白子は少し驚いたような顔をする、おい、なんだその顔は、私だって機械じゃない。人間だぞ。

 

「君は、勉強を教えるのが上手く、クラスメイトと仲良くやれていると、担任の教師から聞いているが…何か不安な部分でもあるのかね?」

 

 白子はそう聞き返して来る、担任の人間関係分析力に関してはまだまだ疑問が残るが、どうやら今回は私の認識と一応の一致を見たようだ。 

 

「クラスじゃなくてそれ以外、地元住民やトゥインクルシリーズのファンとか」

 

 クラスの方は勉強を教えるという基盤作りの方法を確立している。だが、ファンはどうだろう。前世、スポーツを健康のための運動手段としか見ていなかった私は、競技者としての振る舞いを、一切学んだことがない。

 

 ということで、ウマ娘紹介雑誌を見て参考にすれば良いじゃないかと思い、デビュー戦の賞金を使って売店で買ったのだが、これに挙げられているのはレースプランや日常生活の一部で、ファンとの交流は写真にちょろっと写るのみ、全く役に立たないので古紙回収に出しておいた。

 

 アレが教科書になるのか、ノートになるのか、はたまたトイレットペーパーになるのか、私は知る由もない。

 

 いや、役に立たないは言い過ぎかもしれない、あの古紙のお陰でブン屋さんが発信したいものと私が欲しいものは一致しないということがよーく分かった。

 

 そして、回想はここまでにして、白子を見る。

 

「む……私も専門家では無いからな…だが、一つアイデアがある。君がグラウンドで行っている自主トレーニング、それを公園などで行ってみるのはどうだろうか?」

「ここでやっているのを、公園で?」

「ああ、アイドルグループが握手会を行うものと例えて良いだろう、身近さをアピールするのだよ、親近感が増す」

「なるほど、良いかも、ありがとう」

「ああ、では、これからのトレーニングについての話をしていこう、スタートダッシュについてだが…」

 

 デビュー戦を終えた私は、トレーナーと共にそれを振り返る、暫くはデビュー戦の戦訓をこれからに活かすためのトレーニングを行うことになるだろう、取り敢えず、黄金世代の詳しい調査はお預けだ、二兎追う者は一兎も得ず。

 

 コツコツやって行こうじゃないか──いつでも壊せるように。

 

 

 

 

 

 

 

「10……11……12……」

 

 そして、数日後の今日、白子は新人向けの説明会のため放課後もしばらく学園内にいるらしく、私は自主トレを指示された。

 

 なので、ジャージに着替え、飲み物を入れたボディバッグを持ち、この前彼から提案された、公園での基礎の自主トレをしてみた。どうも、周りからの視線が気になる、鉄棒に逆さにぶら下がりながら腕のストレッチをしているだけなのに。

 

 今は奇っ怪な目で見られてはいるものの、私が名を上げれば、これも変わるのかもしれない。

 

「…59…60!」

 

 ストレッチを終え、元の体勢に戻る、次は懸垂と行こうか。

 

 

 

 

 そして、一通りやり終えた後、私は河川敷を歩いた、クールダウンのためというよりかは、探しものである。

 

「見つけた」

 

 求めていたもの──たんぽぽを見つけた私は、それを掘り出し、ボディバッグから出したビニール袋に、それを入れた。

 

 傍観が破壊の伴侶ならば、このたんぽぽは、私の伴侶と言える。前世でも、この世界でも、たんぽぽには世話になっている。花と葉は食べられるし、根も飲用できる。

 

 特に、ヨーロッパ史の勉強をしていたときに知り、興味が湧いて試してみたたんぽぽコーヒーは、腸内環境の改善や、肝機能のサポート、カフェインを含まないという特性を持っていた。

 

 それはたまに金欠を起こしていた前世の私だけでなく、競走ウマ娘というアスリートの肉体を持つ私にとっても、コスパ抜群の理想的な飲み物だったのだ。

 

 そして、私は川沿いを歩きつつ、たんぽぽを採取していた……その時だった。

 

 どういうわけか、川沿いのベンチに、一人のウマ娘が座り込んでいる。私物であろうトレーニングウェアを着た彼女は、どういうわけか、俯いているのだ。そして、その姿は酔い潰れた人の姿に見える。少し様子が気になった私は、彼女に近づく。

 

 近づくと、だいぶ顔の様子が分かってきた、生気がない。放っておく訳にもいかないので、私は声をかけることにした。

 

「…大丈夫ですか?」

 

 と聞いたところ…

 

「…ふ、ふひぃ…」

 

 と返してきた。これはいけない、取り敢えず、救急車を呼ばねば。私は携帯を出し、白子にトレーニングに行けない旨のメッセージを送っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あのベンチでダウンしていたウマ娘は、携帯以外何も持っておらず、名前までは分からなかった。ただ、携帯のホーム画面がトレセン学園の入学式のものだったため、学園の生徒だという事だけは分かった。

 

 なので、私は担任に『なんかよく分からんウマ娘を病院に連れて行ったのでこれが誰か教えてくれ』という趣旨のメッセージを送り、返信を待った。

 

 そうするとすぐに、担任から返信が来た。それを見た私は「これは良いものを拾った」と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…んぅ…うーん……私…」

 

 先程ベンチでダウンしていたウマ娘は、目を開く。

 

 周りを見渡し、自分が点滴に繋がれている事を確認する。

 

「これ…誰かが…私を?」

「気がついたんだ。良かった。」

「わわっ!?」

 

 それと同時に、彼女は部屋に戻ってきた。ベッドの上のウマ娘は、驚き、バランスを崩す。

 

「危ない」

 

 それを察知した彼女は、ベッドの上のウマ娘の手を掴み、安定させた。

 

「大丈夫?」

「はい…ありがとう…ございます」

「どういたしまして、あと、敬語じゃなくて大丈夫、私達、同学年みたいだし。私は─────────、そっちが誰だか分かんなかったから、救急車を呼んで、ここに運び込んで貰ったの」

 

 彼女は、自分の名前を名乗り、簡単な経緯を説明する。

 

「そうだったんだ…私はツルマルツヨシ、助けてくれてありがとう」

 

 ベッドの上のウマ娘──ツルマルツヨシは、彼女に対し、礼を言ったのだった。

 

「ツルさん!良かった!」

 

 それと同時に、連絡を受けたツルマルツヨシのトレーナーが、病室へと入って来る。そして、白子も姿を現した。

 

「トレーナーも来たの?」

「ああ、駿川秘書から、君がここにいる事を教えてもらったのだよ、そして、ツルマルツヨシ君のトレーナーである彼女とともに、ここにやってきたという訳だ」

 

 白子の声を聞き、ツルマルツヨシのトレーナーは振り返り、彼女の前に出た。

 

「初めまして、私、ツルさんのトレーナーをしている、富士田と申します、今回はツルさんを助けていただき、ありがとうございます」

「ああっ、そんなに畏まらないで下さい」

 

 彼女は富士田に対し、そう言った。その後、ツルマルツヨシは3人に対し、ダウンしていた経緯を説明した。

 

「成る程、それで君はここにいる訳か」

「はい…今日は身体が軽くて…調子に乗っちゃって…」

 

 ツルマルツヨシは、あまり身体が強い方では無いウマ娘である。故に富士田は、彼女をスカウトしたは良いものの、そのトレーニング計画に難儀していた。

 

「デビュー戦までの調整…何か良い方法があれば良いのですが」

「………」

 

 彼女は、悩む富士田を見て、考えていた。そして、何かを思い出したかのように、目を開き…

 

「湯治はどうですか?」

 

 と言ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はい、登録したよ」

「ありがとう!──ちゃん!」

 

 私と連絡先を交換し合ったツルマルツヨシは、笑顔になる。私は、それに微笑みで返す。これが破顔一笑になるのは、果たしていつになるやら。

 

「ふむ……ここならば、距離も近い」

「白子トレーナー、ここはどうです?」

「ああ、そこですか?ここは有名ですが、アクセスに問題が…」

 

 白子と富士田は、話しながら、私の提案した湯治について調べている。湯治というのは、若い彼らにとって盲点だったらしい。古代からの伝統的な療法なのに。

 

 そして、なぜ私がこんな敵に塩を送るような事をやっているのかというと、それは、ツルマルツヨシの所属が理由だった。

 

 そう、彼女は── 

 

 コンコンコン

 

「…ノック音?誰か来たようだな…どうぞ」

 

 突然、ノック音が聞こえ、私の思考を遮る。白子が応対のため、病室の入口へと向かう。

 

「ツルさん!様子見に……あら…随分と賑やかなのね」

「あっ!キングちゃん!!」

「…!!」

 

 ツルマルツヨシの言う“キングちゃん”その姿を見た私の脳内には、電流のようなものが走っていた。

 

 

 

 そして、脳に電流が走ってから少し、私は白子と共に、学園へと戻る道を歩いていた。

 

「キングヘイローを見た時の君の反応、何処か変だったが、彼女とは知り合いか何かか?」

 

 白子は、そう切り出す。まあ、予測はしていた。白子は、私の目を見ることのできる位置に居たのだから。

 

「うーん、知り合いと言うよりは、昔、一度だけ会ったことがあるね」

「一度だけ、ふむ、それは思いがけない再会だったようだな。それで、それは何時の話なのかね、個人的に興味が湧いてきた、教えてほしいものだ」

「小学生の時だね、たまたま、親戚の家の近くでやってたウマ娘のリレー大会に参加した時」

 

 キングヘイロー、彼女は、私がリレー大会で打ち負かし──そして、前の走者と喧嘩をしていた、あのアンカーのウマ娘だったのだ。あのウェーブのかかった髪と声変わりでも分かる鼓膜を突くような声のクセ、そして青のメンコは、昔から変わっていない。

 

 なぜ今まで気づかなかったかと言うと、私が単に名前を覚えていなかった上に、デビュー戦の振り返りを集中してやっていたからである。

 

 さらに、向こうは私を初対面だと思いこんでいる、目を見た感じ、嘘ではない。ベリーショートにしていた小学生の時と異なり、今はロングにしているのが大きいだろう。本格化による身長の急激な伸びもあったし。ただ、用心に越した事はないので、注視しておく。

 

 

 そしてツルマルツヨシである、彼女はキングヘイローら黄金世代と同クラスなのだ。そして、今日、私は彼女に恩を売った。これからも何かしらのコンタクトを取っていこう。彼女は“使える”と思ったからだ。

 

「ふむ……そんな過去があったとは、面白いな」

「私も想像できなかった。今月は濃い」

 

 私がそう言うと、白子は鼻で「フッ」と笑った。

 

「何か?」

「いや、今月の予定を明日話そうと思っていたのだが、このままだと更に濃くなるなと思ったのだよ」

「どういう事?」

「君は確か、土曜日は基本的空いていると言っていたな?」

「そうだけど」

「では、その土曜日のどれかを使い、名古屋まで行くとしよう」

「はい?」

 

 なぜ名古屋なのか、美味しい店でもあるんだろうか?

 

「何、ちょっとした交流だ。ネットワークが広がるのは、レースをする君にとって有益だろう?」

「それはもちろん」

 

 交流…詳細は分からないが、確かにネットワークを広げることは重要だ。ワンマンでは破壊なんてできないことは、分かり切っている。歴史が証明済みだ。

 

「では、了承と言う事だな」

「うん」

 

 兎に角、今日の事は大きな収穫だ。部屋に戻って、今日の事をまとめておくとしよう、要は日記だ。

 

 ただただぶち壊していくだけでは、破壊とは言えない、ただ“暴れた”だけである。

 

 簡単でも良い、その足跡を残して初めて、破壊というものは成立する。最も、これは私の持論に過ぎない──だが、この世界においても、モンゴル帝国の所業が今もなお語り継がれていることを考えると…

 

 私の意見は恐らく正しいのだろう。

 

 





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