ありふれた職業と月の姫   作:ザラメシュガー

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3.大迷宮へ

 

 

 その日の夜、俺はいつものようにアルクェイドの部屋を訪れていた。

 

「今日はな、白崎さんにお前のことを話したんだ。お前のこと心配してくれているみたいでな、昨日見舞いにも来てくれたし、治癒師として、今度診てくれるってさ。知りもしないヤツのことをあんなに心配できるなんて、優しい人だ」

 

 こうして今日あったことを語り掛けるのが日課になっている。忙しい二週間だったが、これだけはどうしてか外せなかった。反応がないことは分かっているが、放っておくことは出来なかった。

 物言わぬアルクェイドに話しかけているのは、言ってしまえばただの自己満足に過ぎないことだ。それでも、気付けば俺の足はこの部屋に向いているのだから、困ったものだ。

 

「実力がついてきたから、遠征に行くんだってさ。オルクス大迷宮ってところらしい。実力的に見れば余裕の階層までしか行かないらしいから、心配はないと思う。もちろん、油断なんてないけどな。明日出発するらしいから、しばらくここにはこれなくなる。ごめんな。でも、安心してくれ。信頼できる人にお前のことを話してある。もし起きた時のことも言ってあるから、大丈夫なはずだ」

 

 正直言ってアルクェイドから離れるのは不安だ。こいつは人目を引くから無防備な状態のまま置いてと何が起きるかわからない。俺についてくれているメイドさんに様子を見てもらうよう頼んだのはいいが、それでも心配は尽きない。

 遠征は決定事項なので俺が残ることは出来ない。なら、無事でなるべく早く帰って来ることが何よりアルクェイドのためになるのだろうか。

 

「明日は早いから、もう寝るよ。おやすみ、アルクェイド」

 

 今日は早めに部屋に帰って休むことにして、アルクェイドの部屋を出た。

 自室に帰る途中、廊下の窓から外を見ると、三日月が妖しく光っていた。

 

 

 

 

 

 

 王都から大迷宮のあるホアルドという街への道中、同じ馬車に乗ったハジメ、八重樫、白崎さんと話をする。この人選になるまでに、天之河とひと悶着あったらしいが、メルドさんが仲裁に入って、事なきを得ていた。なんでも白崎さんはハジメに気があるようで、天之河としてはそれがどうも気に食わないらしい。しかもハジメはそれにどうもピンと来てないようだ。

 それを知ってか知らずか、白崎さんはハジメに迫る。地球にいたときは、天之河を止めるのは八重樫の役目で、白崎さんと天之河によっていつも板挟みになっていた。そんな姿を見て、彼女の影のあだ名が「苦労人」となっていたことを俺は知っている。

 

「ごめんね、遠野君。誰と乗るかなんてことでバタバタしちゃって」

 

「問題ないよ。白崎さんにもそれなりに事情があったんだろうし、そういうのも高校生らしくていいじゃないか」

 

「香織を甘やかしちゃだめよ、遠野君。そうやっていつもみんなが甘やかすから、さっきみたいな我儘を突然言い出すことが増えたんだから」

 

「まあまあ、八重樫さんも落ち着いて。遠野の言う通り、高校生らしく気を抜くことも必要だしさ」

 

 もう、南雲君まで。と八重樫がため息をこぼす。

 

「確かに、気を抜くのは大事かもね。いざって時のために、今のうちにリラックスするのがいいのかも」

 

「その調子だ、八重樫。おまえはいつも気を張りすぎなんだ。もっと気楽でいいんだ、気楽で」

 

「そうだよ雫ちゃん。こっちに来てからいっつも怖い顔してるんだもん。それじゃあかわいい顔が台無しだよ」

 

「そ、そうかな」

 

 八重樫は困った顔をしている。こういう性分はもとからだし、すぐに変わるものでもないだろう。気まずそうにしている南雲もいることだし、ここは一つ話題を変えよう。

 

「そういえば、これから行くオルクス大迷宮って具体的にはどんなところなんだ」

 

「ええと、全百階層から成る、七代迷宮のひとつだって聞いたよ」

 

「確か、反逆者って人たちが作ったって言われていて、一度も攻略されていないらしい」

 

「反逆者?」

 

「そう、反逆者。本に載ってた話では、ずっと昔、神に反逆し、世界に混乱を齎したと言われる大悪党達。次第に数が減っていったらしいけど、7人だけが抵抗を続けて、最後には大迷宮を作って消えたんだって」

 

「それはなんとも、壮大な話だな」

 

 話題を変えることには成功したが、思いの他大きな話が飛び出してきた。このあたりはまだ考察の余地がありそうな気がする。

 

「八重樫は知ってたか?反逆者どうこうの話」

 

「いいえ、知らなかったわ。南雲君はよく勉強してるのね」

 

「ははは、それほどでも」

 

 ハジメは満更でもなさそうだ。エセ勇者のせいで訓練以外は無意味という風潮が漂っている中で、自分なりの努力を続けているのだから、ハジメはすごいやつだ。

 

「うーん、なんかなぁ」

 

 唐突に白崎さんがうなり始める。なにか会話におかしいところでもあったのだろうか。

 

「どうしたの、白崎さん」

 

 南雲も気になったのか、白崎さんに問いかけた。

 

「あのね、雫ちゃんって意外と友達少ないから、『八重樫』って、呼び捨てされること少ないなーと思って。遠野君って、雫ちゃんと仲いいんだね。学校であんまり見ない組み合わせだから、気になっちゃって」

 

「ああ、そういうこと」

 

「そんなに意外なことかしら?」

 

 白崎さんの疑問も納得だ。俺は確かに学校で八重樫と関わることは少ないからな。

 

「確かに、二人の組み合わせはちょっと意外だね。外ではよく遊んだりする感じ?」

 

「あー、そうだな。話しちゃってもいいか、八重樫」

 

 別にやましいことは無いのだが、一応八重樫にも確認を取る。

 

「?、別に確認するようなことじゃないでしょう」

 

「ならよかった」

 

 確認をとって二人に話すことにした。

 

「俺たち、同じ先輩と知り合いなんだ。はじめはお互いにそのことは知らなかったけど、たまたま知って、少し仲良くなったんだ。で、その先輩ってのがえらいカレー好きでさ、3人で何回か食べに行った仲なんだ」

 

「そうそう、あの人が紹介してくれるカレー屋さん、ものすごくおいしいお店ばかりなの」

 

「だよな、先輩はカレーに関しては超一流だ」

 

「なんだ、そういうこと。てっきり雫ちゃんに先を越されちゃってたのかと」

 

「そういうのじゃないわよ。香織ははやとちりなんだから」

 

 女子組がそんな話をするのが聞こえる。もちろん、俺と八重樫はそういった関係ではない。誓ってない。本当にただの友達だ。

 

「でも、ちょっと安心したかも。雫ちゃんと仲良くしてくれて、ありがとね、遠野君」

 

「ちょっと、やめてよ香織。私だって子供じゃないんだから」

 

 そう言いながら、八重樫は笑っていた。少しは肩の荷が下りたようで一安心だ。

 

「じゃあ、この流れで、遠野君にもう一つ聞いてもいいかな」

 

 白崎さんはまだ聞きたいことがあるようだ。

 

「いいよ、俺に答えられることならなんでも」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。言いにくかったらいいんだけど、その、アルクェイドさん?のこと、聞きたいなって」

 

 白崎さんが切り出す。治癒師として診てもらうよう頼んだ時は有耶無耶にしたことだし、追及は避けられないだろうとは思っていた。それが今だったということか。

 

「ああ、確かに気になるよな。まだ誰にも話してないし」

 

「うん、話しにくいのは分かるけど、少しでもいいから、教えてくれないかな。」

 

「僕も気になっていたんだ。遠野、あの人のことになると雰囲気変わるし。ああ、もちろん、話したくないなら、無理にとは言わないから」

 

 南雲と白崎さんの二人からはこちらへの気遣いが感じられる。無遠慮に詮索する気はないようだし、この特殊な状況で秘密にし続けるのは難しいだろう。そうだな、話せることを話そう。ただ、全てを公にするのは避けたい。話せる範囲だけで、許してもらおう。彼らの優しさに甘えることになるが、仕方ない。

 

「わかった、話すよ。嘘はつかないことも約束する。でも、アイツのことで話せないことがあるのは理解してほしい。簡単な話じゃ、ないから」

 

 そう前置きして話し始める。

 

「知り合ったのは、去年の冬ごろ。あっただろ、連続通り魔殺人事件。そこに二人とも巻き込まれたんだ」

 

「そういえば、そんなこともあったわね。何人か被害にあって、嫌に騒がれていた事件でしょう。確か、蘇った吸血鬼とか言っていたわね」

 

「そう、それ。そこで知り合って以来、ちょくちょく会う仲になったんだ」

 

 少し話しただけだが、他に話していいことって、正直無いよな。アイツは吸血鬼だとか、災害みたいな吸血鬼と殺し合ったとか、先輩の正体とか、何から何まで話しちゃいけないことばかりだ。

 

「そうだな、後は、アイツが常識に疎すぎるところがあるから、放っておけなくて一緒にいるってことくらいかな」

 

 よし、嘘は言っていないし、こんなところかな。これで納得してくれると嬉しいのだけど。

 なんとなく白崎さんの方をみると、頬をほんのり赤くして、浮足立っているように見えた。その様子はご馳走を前にした幼子を思わせる。

 え、何。ほんとに何。今の話にそんなふうになる要素あったか?

 

「なるほどなるほど、紆余曲折を経て二人は好き合う仲になった、と」

 

「はぁ!?」

 

 思わず返してしまった。いや、何だこの人。頭の中まっピンクなのか。今頃白崎さんの頭の中には俺とアルクェイドの長編ラブロマンス映画が放映されているのだろうか。

 いやまあ、別に嫌い合ってるわけでもないし、今の関係を恋仲と言うことも間違いではないと言えばそうなのかもしれないが、なんというか、認めるのも少し悔しいような気もする。

 

「そ、そういうのじゃ、ない、かな。俺がアイツといるのは放っておけないからだ。アイツ、ほんっっとに世間知らずだから、面倒見てやってるだけだ」

 

 なんだか首のあたりがむず痒い気がする。今の自分が変な顔をしているような気がして、顔を背けてしまう。

 その反応は、傍から見たら「如何にも」といったものであったようで、あら、まあ、おお、と三者三様の声が聞こえてくる。

 くそ、どうしてこんな目にあっているんだ。もしかして、はじめからこれが目的だったのか。おのれ白崎、策士であったか。

 

「アルクェイドさんって海外の人だよね。それにすっごい美人さんだし。遠野君ってすごいんだね」

 

「そうだな、意外とやるんだな。遠野って」

 

「二人とも茶化さないの。で、遠野君。どこまでいったの」

 

 一番茶化してるのは八重樫じゃないのか。結構ぐいぐい来てるぞこいつ。お前そういうタイプじゃないだろ。

 コホン、わざとらしい咳ばらいを一つ。このままでは、なんだかいたたまれない。

 

「とにかく、何故だかわからないけど、目覚めないアルクェイドを放っておくわけにはいかないから、面倒を見てやってるだけだ」

 

 くそ、三人とも笑顔でうんうん頷きやがって。

 いつかこの借りは返そう。そう心に固く誓った。

 

 

 

 

 暗い、暗い、終わりの見えない空間を行く。遠くに見える輝きは光源のようでも、実際に何かを照らしているわけではないようだ。

 どうにか土地とのパスをつなぐことには成功した。この世界でもほとんどの場所で力を振るえるようにはなったはずだ。もっとも、出力は地球の頃よりは落ちるが。

 問題はこの世界の意思の不安定さだ。人類史が不安定と言い換えてもいい。千年や二千年では効かないだけの時間、この世界は何者かの手によって虐げられている。これではカウンターとしての抑止力も大した力を持ち合わせないだろう。まあ、そのあたりを力づくで解決できちゃうのが私なんだけども。

 

 この工程さえこなせば、私は息を吹き返すことができる。本当なら一刻も早く起きたいところなのだけど、焦ってもいいことは無いし、志貴が上手くやってくれているでしょうから、もう少しだけ。

 突然星から引きはがされる感覚があったと思えば気づいた時には異世界。まったくとんでもない。危うく存在ごと消えてしまうところだったけど、ギリギリ何とかなった。人類を守る無意識と星の意識の双方から力を引き出し、契約を交わすことでなんとか存在を保てた。あとはこれの調整だけ。万が一のためのものだけど、あって損はないでしょう。

 

 そろそろかしら。最初は手がかりも何もなくて探すのに苦労したけれど、やっとたどり着いたわ。

 この真っ暗な世界に輝いている光の一つ一つが、すべて過去に存在した英雄たち。きっと世界に痕跡は残っていないだろうけど、確かに存在した大衆にとっての希望の光だった存在。力を借りる必要はないかもしれないけど、念には念を。私が万全ではない以上、こういう助太刀があってもいいでしょう。

 

 それにしても

 

「座っていうのは味気ない場所なのね。どこまで行っても同じ景色でつまんないわ」

 

 

 

 

 

 時は流れて次の日。俺たち神の使途一行はオルクス大迷宮を進んでいた。

 オルクス大迷宮。未だ全貌が明らかになっていない秘境。人類の最高到達階層は六十五階層で、下に行けば行くほど出現する魔物が強力になっていくほか、多種多様なトラップ、変化する環境など、いかにもといった迷宮である。今回は二十階層まで行き、いくらか訓練をすることが目標である。騎士団による保護のもとに行う訓練であるので、安全は保障されたようなものらしい。まあ、未熟な勇者サマが訓練中に死亡したっとあっては、王国のメンツも丸潰れだろうし、当然の対応ではあるのだろう。

 

 一応実戦の場ではあるのだが、俺は眼鏡を外していない。今回に限った話ではなく、異世界に来てから寝るとき以外に眼鏡を外したことは無い。脳にかかる負荷のこともあるのだが、一番は打算だ。異世界の法則に従って自分を強化すること、誰にも知られていない切り札としての眼を温存しておくこと。生き残るために必要と思ってのことだ。

 皆は物珍しげあたりを見回しつつ、迷宮を進んでいる。そんな一行の前に、壁の隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「よし、光輝たちが前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、大した敵じゃない。冷静に行け!」

 

 メルドさんの指示にはい!と返事をして各々が行動に移る。俺は光輝たちと呼ばれた前半分の集団であるため、前に出る。右手には短剣。ナイフより大きく、騎士の人が使う直剣よりは小さい。刀身が肘から手の付け根ほどの長さのこれが最も使いやすかった。手になじんだナイフは使わない。線をなぞらない以上、あのナイフはあまりに脆い。速さを犠牲にしない、かつ丈夫な武器として選んだのがこの剣だ。光輝、龍太郎、雫が前に出てラットマンを蹴散らす。後ろからは詠唱が聞こえてくるので、魔物は簡単に一掃されるだろうが、少しは自分の力を確かめておこう。

 俺が得た「致命」というスキルは単純だが実行が難しい。弱点を突く攻撃が勝手に強化されるこのスキルは、別に弱点をあらわにする機能や身体能力への影響は全くない。故に、結局は自分の身体能力と技量だけが頼りだ。

 

 魔物の群れ目掛けて一直線に走り出す。標的は三体並んだ大鼠。狙うべきはほとんどの生物にとっての弱点、眼球だ。これほどわかりやすい弱点もないだろう。

 敵は人でない魔物。これの命を奪うことを、誰も疑問に思っていないのかもしれない。それでも、俺は徒に命を奪うことに納得したくない。そこを考えなくなったら、俺は人間として立っていられない。

 だから、受け入れろ。受け入れて、この葛藤も悩みもそのまま、剣を振るおう。

 

 三度、剣を振るった。後ろで魔物が斃れる音がする。降り抜いた短剣は致命の効果で微かに光を放っていた。嫌な感触だ。命を刈り取った手に、手ごたえがない。ここでの命は、こんなにも軽いのか。

 

 残った魔物は、火の魔法で一掃された。

 

 

 

 

 

 その先も特に苦労することもなく進んでいく。正直、拍子抜けだ。俺の予想では、この遠征の目的は浮かれた勇者たちに強力な魔物をぶつけて現実を見せ、気を引き締めることだと思っていたが、はずれだったようだ。いや、騎士団が生徒たちの力量を見誤ったという線もある。

 そうして二十階層にたどり着く。メルドさん曰く、この階層から現れる魔物が増え、強力になるらしい。今日の目的はここでの訓練だ。ここがゴールではないのだし、気を引き締めていこう。

 

 現れる魔物の弱点にあたりを付け、接近し、一撃で仕留める。道中の魔物はこれだけで十分だった。慣れとは恐ろしいもので、俺の体は頭が抱える悩みとは切り離されて動くようになってきた。心とは関係なく滑らかに動く体は、この状況に合わせた適応ということなのか。複雑な気分だが、そのおかげで楽になっているのは事実だ。ここは受け入れて進むのが良いだろう。

 

 ロックマウントという魔物との戦闘が終わる。もっとも、天之河が通路を崩壊させかねない攻撃で一掃してしまっただけなので、戦闘らしいものを行ったわけではないが。得意げな顔のままメルドさんに拳骨を食らっているエセ勇者を尻目に、周囲を警戒する。光輝が壊した壁を見ると、崩れた先に、美しい鉱石があるのを見つけた。鉱物自体が発光しており、花が咲いているように壁から生えている様子は異世界ならではの美しい光景だ。

 

「あれ、何かな。キラキラしてる」

 

 白崎さんも気づいたようだ。彼女が指をさして疑問を口にしたことで、全員が目を向ける。今までに目にしたことのない光景に、皆が注目し、息をのむ。

 

「ほぉーあれはグランツ鉱石だ。大きさもなかなかだ。珍しい」

 

 グランツ鉱石。確か、南雲に付き合って勉強していた時に見たな。宝石の原石で、加工したものは贈り物としてよく使われるものだとか。

 メルドさんが「求婚に使ったらイチコロだぞー」と砕けた口調で説明する。

 

「素敵ね…」

 

 それを聞いた白崎さんが零す。確かにきれいだ。地球では見られない美しい鉱石に目を奪われる。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そういって唐突に動き出したのは檜山だ。瓦礫の山を軽快に上っていく。それを見て後ろのメルドさんが慌てた様子で叫ぶ。

 

「勝手なことをするな!安全確認もまだだぞ!」

 

 安全確認。そういえば、説明された。トラップというのはいかにも自然な形で点在している。例えば、一見普通の小部屋とか、朽ちた人の死骸とか、誰もが欲しがりそうな美しい鉱石とか。

 檜山もその考えに思い至ったのだろう。青い顔をして、口をパクパクさせて、目で助けを求めている。その右手で鉱石を触りながら。

 

 メルドさんが駆け寄るがもう遅い。足元に突然現れた魔法陣が光る。そして、次の瞬間には。

 見知らぬ橋の上に全員が佇んでいた。

 

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