蘭ちゃんはいつも通りに過ごしたい!   作:鳩ポッポ

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この、バカ男!!!

 

 

 

 

 楓は、椅子に座って疲れたようにふうと息を吐いた。時間ギリギリで滑り込んで来るなんて、そそっかしいやつ。蘭がそう思いながら彼の後ろ姿を見ていると、まるで狙ったかのように楓はこちらを振り向いた。

 

「あ、どうもです」

 

 そして馴れ馴れしく声をかけてくる。何なんだこいつは。

 

「ん〜? 蘭。ひょっとして、この人と知り合い〜?」

 

 モカが席から身を乗り出して聞いてくる。その横にいるつぐみも蘭の方を見つめていた。

 

「知らない」

 

 蘭はにべもなく答えて、楓から目線を逸らす。

 

「え、さっきの講義で自己紹介したじゃないですか」

 

 余計なことを……。蘭は恨めしげに楓のことを睨みつける。横にいるモカの目の奥がキラリと光った気がした。

 

「ふ〜ん」

 

 モカは楓のことをじろじろと観察していた。口と目が笑っていて、何か企んでいることは明らかだった。

 

「どうも~。うちの蘭がお世話になりまして~」

 

 そう言いながらモカは、楓に話しかける。

 

「あ~どうも~」

 

 楓の方も間延びした声でそう答えていた。何だか、モカとは雰囲気が似ている。この二人、気が合いそうだな。蘭は漠然とそう思った。

 

「えー今から講義を始めます。静かにお願いします」

 

 教壇から男性講師の声が聞こえてくる。蘭がそちらを見ると、講師がこちらを見つめている。明言はしなかったものの、間違いなく蘭たちに向けての注意だった。

 

 蘭は教壇の上の壁掛け時計を見る。講義開始時間を二分ほど過ぎていた。

 

 モカと楓は渋々自席に着席する。それを確認して講師は話を始めた。

 

 蘭は頭を抱える。何だか、面倒くさい奴と関わり合いになったな……と。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 講義が終わってお昼休み。Afterglowの五人は、約束通り大学の食堂に集合してお昼ご飯を食べていた。

 

 特にひまりは、初めて食べる食堂のご飯にご満悦のようで、一口一口嬉しそうに口に運んでいる。ひまりのお盆の上には、豪華なデザートまで乗っている。また太ったと騒ぎになりそうだなと、蘭は呆れながら見ていた。高校の時みたいに、お弁当の中身を交換するということは無くなったけれど、また五人の、新しいいつも通りが始まっている。……たった一つ。()()()()()()()()()()

 

 なんでこいつがいるわけ……。蘭は、不機嫌そうにご飯を口に運んでいた。一方、その不機嫌の原因は、モカや巴の二人から質問攻めにされている。講義が終わってすぐ、モカとつぐみを連れて教室を出た蘭だったが、まさかここでも楓と遭遇することになるとは思わなかった。お昼時とあって食堂は混んでいて、何とか空いたところに滑り込む形で席を取ったAfterglow。取った席は、ショッピングモールにあるような、二人が向かい合って座ることのできる机があって、それを更に三つ繋げたものだった。だから、対面で六人座ることができるが、五人なのでちょうど一人分空きがあった。そこに、席を見つけられずにウロウロしていた楓を、モカが見つけて呼び寄せたのだ。蘭は、モカに対して何でわざわざそんなことを……と少し苛立った。しかも、彼が座ったのは蘭の対面。しかし、それ以上に気に食わないのは、「あ~ありがとうございます」と言いながらヅケヅケと座ってきた楓だった。蘭は、行くところなすところにひょっこりと現れる楓が、何だか不気味に思えてきた。

 

「はぁ……」

 

「どうした? 蘭。溜息なんて吐いて」

 

 蘭が大きく溜息を吐くと、隣に座っている巴が蘭の顔を覗き込んできた。

 

「……別に」

 

 蘭はむすっとした顔を巴から背ける。

 

「ごめんな。蘭が機嫌悪くて」

 

「いや、僕が勝手に入ってきたから……」

 

 巴の言葉にそう答えた楓を、蘭は睨みつける。分かっているなら早くどこかに行ってしまえばいいのに。蘭は、そう口に出そうになったのを堪えた。

 

「あれ?」

 

 楓が蘭の方を向いた。今度は何を言われるのか。蘭が身構えていると、楓は椅子から立ち上がって、席から乗り出す。更に蘭の顔の方に左手を伸ばした。蘭は何をされるのかと身体を強張らせると、右のおとがい近くに触れられた。

 

「ななな何してんの!?」

 

「いや、ご飯粒ついてたから」

 

 顔を真っ赤にして怒る蘭に、楓はさらっと言いのける。しかもつまんだご飯粒をあろうことか、自分の口に放り込んだのだ。蘭は、酸欠の魚のように口をパクパクさせる。ご飯粒をつまんだところまでは、驚きながらも微笑ましげに見ていた蘭と楓以外の四人も、楓の行動にカチンと動きを止めた。沈黙が六人の間に横たわる。なぜ皆が黙ったのか、皆目見当がつかない楓は、不思議そうに皆をキョロキョロと見回した。

 

「だ、大胆だね」

 

「やりますなぁ~」

 

「漫画でも見たことないな……」

 

「お、おーい蘭。大丈夫?」

 

 つぐみ、モカ、巴、ひまりが口々に言う。

 

「え、僕何かしました?」

 

 蘭は、ここでようやく再起動を果たす。椅子から立ち上がって怒りの形相で楓を見下ろす。

 

「え、蘭さんどうしたの?」

 

 呑気に聞いてくる楓に、蘭はお見舞いする。

 

「この、バカ男!!!」

 

 

 

 








とってもお久しぶりです。
Afterglow解散?何のことですか???
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