再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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一気に気温下がりすぎじゃない?
手がかじかんでいつもよりタイピングしづらいおぉん!




103.正当な評価とは曇りなき眼で人を見るという事だ

 

 

 

 ネット審査最終結果発表の日。

 

 

「「ごくり……」」

 

「……」

 

「あっぅ……」

 

 スターリーにてテーブルを囲い息を呑みながらじっと佇んでいる結束バンドの四人。

 その視線の先にはスマホの画面を開いている俺がいた。

 

 本当ならみんなで一緒に見るという流れだったのにいきなり虹夏さんと喜多さんが、

 

 

『ぬぐぁーっ! やっぱ無理! お願い優人くん先に見てあたし達に教えて! 勇気出てこない!」

 

『え、俺もそれなりに宣伝頑張ったから緊張してるんですけど』

 

『こういう時こそ優人君の出番よ! さあ早く!!』

 

『俺の気持ちって……』

 

 

 という事で急遽俺が先に確認してから結果を告げる形になったのであった。メンタルぅ……。

 まあ一度請け負った以上今更やっぱ店長に見てもらうとかはなしだ。多分虹夏さんが許してくれない。

 

 正直俺も心臓ばっくばくなんだけどなぁ……。

 この一週間で色々模索しながら手は尽くしたと思うが、リアルタイムで結果が変わる訳でもないので実際の効果がどれくらいあったのかは未知数のままだ。

 

 しかしその結果ももうこのサイトを開けば分かる。緊張のせいかスマホを持つ手が少し震えていた。

 すると隣に座っている後藤さんが小さく俺の服の裾を掴んできた。……ふぅ……よし。

 

 こういうのは勢いだ。どうせ必ず見ないといけないのならパパっと確認して盛大に喜ぶか落ち込むかすりゃいい。

 覚悟を決めて椅子から立ちそのままサイトを開く。ええい、ままよぉ!! 

 

 

「………………………………………………」

 

「……ゆ、優人くん? 何位だった?」

 

「どうしてずっと黙ってるの優人君? ねえ……?」

 

「ほわぁ」

 

「ちょっ、いきなり力抜けたみたいになってるけどどうしたのさ!?」

 

 思わず強張っていた全身の力が抜けて尻餅をつくように椅子へへたり込む。

 ああ、結果を言わないとだっけ……。

 

 

「……28位」

 

「「え?」」

 

「結束バンドの最終順位は28位……ネット審査……通過です」

 

「「……に、28位~~~~~~!?」」

 

 ようやく理解したのか虹夏さんと喜多さんが手を取り合って喜び始めた。

 リョウさんも声には出さないもののテーブルの下で小さくガッツポーズしたのを俺は見逃してないですぞ。もっと素直に喜んだらいいのに。……しかしなんかこの順位に引っ掛かりを覚える自分がいる。何だろう、この微かな違和感。

 

 と、急に左隣から手を握られる。

 犯人はもちろん後藤さんだ。

 

 

「ゆうくん、や、やったねっ……」

 

「……だな」

 

 今日までの一週間、後藤さんの家に泊まって作戦会議をしたり宣伝の仕方を変えてみたりなど、出来うる限りの事をしてきた。

 サポート役としての踏ん張りどころだったから思い付いた事は全部してきたが、そこに至るまでの空間には俺だけじゃなく後藤さんもいたのだ。ギターヒーローの力は使わずに、結束バンドの後藤ひとりとしての力を使うために何度も話し合いをした。

 

 そういう意味での労いも兼ねてやったねと言ってくれたんだろう。

 なら今は素直に受け取っておこう。

 

 

「良かった~……。でもなんで急に順位上がったんだろ?」

 

「何故かMVの再生数も数日前から一気に伸び始めたよね」

 

「ああ、それは俺も気になってました」

 

 確かに28位になったのはめでたいしありがたい。ネット審査も通過できて万々歳だ。言う事なんて何もない……と普通なら思う。

 しかしよく考えてみると、果たして俺達の試行錯誤だけで48位から28位、実に20位という順位を覆せるくらいのものがあったのかと思うと、正直そうとは思えないのもまた事実。

 

 色んな宣伝をしたのが偶然どこかでバズってこうなった……なんて可能性も無きにしも非ずだが、違うような気がする。

 多分、別のきっかけが俺達の知らないとこであったのかもしれない。例えば作戦会議の時、ふとそのアイデアを思い浮かんだがすぐに俺達じゃ手が出せないからという理由で頭の隅に追いやった手段とか。

 

 

「みんなが最後まで諦めなかったからですよ~! 優人君もこの一週間一生懸命私達のために頑張ってくれてたもの! その努力が実ったんだわ!」

 

「だといいんだけどな」

 

「そうだねっ。それに廣井さん達も投票してくれたしね~」

 

 あっちにはシデロスもいるし、案外ヨヨさん辺りがきくり姐さんに借金ちらつかせてシデロスに投票させてる説とかありそうだけど。

 むしろ俺はそっちを推すね。

 

 

「ねえ、これ見て」

 

 喜多さんが通過した嬉しさにキラキラきららしながら後藤さんの手を握って喜び、その輝かしさで後藤さんが灰になりかけていると、スマホを片手にリョウさんが話しかけてきた。

 

 

「どうしたんです?」

 

「なんかばんらぼってサイトの『絶対次にバズりちらかしてのし上がってくる若手バンド』って記事に結束バンドが取り上げられてたっぽい。MVのコメ欄にここから来たって書いてる人いた」

 

「ネット記事!? あたし達紹介されてたの!?」

 

 なんつうタイトルだよ。もっとシンプルでいいだろ。

 にしてもネット記事、か。そう聞くとどうしてもぽいずんさんの顔が浮かび上がってきてしまう。最近あの人の顔が何度も浮かび上がってくる辺り、無駄に重要キャラの美化されたヒロインポジっぽい感じがしてなんか嫌だな……。

 

 

「なになに~なんて書いてるの!? ライターさん誰!?」

 

「分からない。探してみたけどどこにも名前書いてなかった」

 

「匿名の記事か」

 

「はいはーい! 私が読みま~す! え~『メンバーが若く勢いがある。楽曲にも年齢に見合わない深みがあり、それがまた聴く者を惹き込ませる魅力の一つだろう』」

 

「おお、結構褒めてくれてるね」

 

「タイトルがタイトルですしね」

 

 絶対バズりちらかすとか書いてるし。普通にハードル上げてくるやん。

 

 

「『しかしバンド名が結束バンドとかっこ悪くてもったいない気がする。リードギターのパフォーマンスが時々突拍子もなくて怖い。変わり者にはハマるかもしれない。あと日によっては酔っ払いの客が最前列で喚き散らかしていて民度が低い時もある』……」

 

「「よし、あの人は出禁だな」」

 

 酔っ払いの時点で犯人は確定してるから顔写真載せてお断りポスターでも貼っておこう。

 何ならスターリー付近で見かけたらとっ捕まえるよう指名手配犯っぽくするのもありかもしれない。

 

 

「みなさ~ん、ネット審査通過のお祝いケーキですよ~」

 

 どんなポスターデザインにしてやろうか虹夏さんと話し合っていると、いきなりPAさんがホールケーキを持ってやってきた。

 みんなでやけくそ食いした時と一緒のやつじゃん。

 

 

「やった~! ケーキだ~!」

 

「おう、ネット投票は実力の他にも運が絡んでくるからある意味一番難しい審査だ。それを乗り越えたんだからな。今日くらいは祝ってやるよ、食え食え」

 

「あれ、店長どっか行ってたんですか?」

 

「あん? ちょっと外に電話しに行ってただけだ。気にすんな」

 

「みかじめ料の請求ですか?」

 

「冗談を言えるくらいにゃメンタルもいつも通りに戻ったみたいだな。よし、盛大に祝ってやる。覚悟しろよ」

 

「おかしいな、祝ってもらうはずなのに指の骨パキパキ鳴らしながら近づいてくる理由を聞いてもよろ腕が変な方向にぃぃぃいいいいいいい~!?」

 

「今日も平和ですねぇ~」

 

 その後は店長にこってりと絞られましたとさっ。

 解放されたのは数分後。

 

 テーブルを囲んで仲良くケーキを食べている結束バンドをカウンター席で店長とPAさんと見守っていると、

 

 

「お前はケーキ食いに行かなくていいのか」

 

「誰かさんに右腕痛めつけられたからフォーク持てません」

 

「そんなの誰かに食わせてもらえばいいだけだろ。あいつらなら喜んで功労者のお前の世話くらい名乗り出てくるぞ。例えば虹夏とか」

 

「天使の手を煩わせたくありませんので却下ですね」

 

「言っとくけどお前のその崇拝だか敬愛だか分かんねえ言い方すんのは今更止めないけど、その扱いをされる本人の気持ちくらいは考えてやれよ」

 

「?」

 

「近づきたくても壁を感じる事だってあるって言ってんだ」

 

「なぁに言ってんですか。俺と虹夏さんの間に今更壁なんてないですよ」

 

「……重症だな」

 

「重症ですねぇ」

 

 そりゃアンタに技仕掛けられたんだからこっちが重症なのは当たり前でしょうよ。

 まだズキズキするんだからね! 

 

 

「……で、結局店長の電話相手は誰だったんですか」

 

「あん? 何でそんなのいちいちお前が気にするんだよ」

 

「だって泣いてたでしょ。目が少し充血してるし周りもちょっと腫れてますよ。ああ、もしかして嬉し泣きとか?」

 

「っ、う、うるせえな……電話のせいだよ電話の」

 

 今更目元隠しても意味ないよそれ。むしろ泣いてたの認めてる事になるからね。

 相変わらずのツンデレなんだからもう。これで暴力がなかったら良いのになー。いや大体俺の自業自得だけど。

 

 

「あるヤツと話してただけだ。それ以上でもそれ以下でもねえ」

 

「もしかしてぽいずんさんですか」

 

「……お前、なんで」

 

 反応から見るにやっぱり当たってたか。

 何となくだがそうかもしれないとは思ってたけど見事に的中したらしい。店長は普段から電話もお構いなしにスターリーの中でやってるのに今日に限ってわざわざ外に出ていくし、確か電話しに行ったのも俺達がネット記事を見てる最中の時だった。

 

 誰にも見られたくなくて結束バンドのみんなにもまだ聞かれたくない相手といえば、と考えたら消去法でこうなった。

 あとはタイミングだ。

 

 

「もしかしてと思っただけですよ。それに結束バンドの記事を書きそうな人なんて、例え匿名だとしても心当たりはあの人しかいないんで」

 

「……そうだな」

 

「あの人何か言ってました?」

 

「礼を言ったら今の結束バンドを正当に評価しただけだから礼はいらねえだってさ」

 

「正当な評価ねえ……」

 

 だろうな、と思う。

 さっきの記事を見ればよく分かる。褒めてくれていたとこもあったが厳しいとこもちゃんと書かれていた。評価的には五分五分といったところ。

 

 しかし忖度なしだからこそ正当であり平等な評価だと思えたのは事実。

 嘘偽りのない言葉には力が宿り、不思議と人の目を惹く。それがMVの再生数が伸びた最大の要因だろう。そしてその効果は見事にネット審査を覆すほどの影響力を見せた。

 

 結束バンドがネット審査を逆転通過できたのは、間違いなくぽいずんさんの書いた記事のおかげだ。

 たった一つの記事だけで多くの人の心と興味を動かし、結束バンドに投票するという行動力まで付随させた。

 

 記事が匿名なのも、ぽいずん♡やみ名義だとネットではほとんど素性がバレていて悪目立ちしてしまうための対策だろう。

 それにあの人の記事を読める範囲のもの全て読んできたから分かる。あの記事はぽいずんさんがまだ真面目に好きなバンドを広めたいという一心で書いていた初期の頃の内容そのものだった。

 

 やっぱりこっちの記事の方が俺も好みだ。

 そして、これでもう一つ分かった事がある。

 

 ぽいずんさんの記事があったから結束バンドはネット審査を通過できた。

 では、だ。

 

 もしそれがなかったら、結果はどうなっていたんだろう。

 奇跡的な逆転劇なんてどこにも存在しなくて、結束バンドのみんなが今食べているお祝いケーキもまたやけくそ食いになっていたかもしれない。というか絶対にそうだ。あの記事がなければ確実に落ちていたと思う。

 

 つまり、つまり、つまり……。

 俺の努力は、ほとんど無駄になっていたのかもしれない。

 

 

「……無力だなあ、俺」

 

「アホかお前」

 

「バカですか」

 

「いでぇっ」

 

 自虐的にぽつりと呟いた言葉を聞いた瞬間に店長とPAさんから脳天チョップを頂いた。

 反応早すぎませんかね……。

 

 

「今の数十秒間で何を悟ったか知らねえけどな、お前の頑張りが無駄だった事なんて絶対にないぞ。これだけは断言してやる」

 

「……や、でも結局俺の努力だけじゃ投票審査は負けてた訳ですし……ぽいずんさんの記事のおかげってのが一番でしょうよ。実際MVのコメント欄はあそこから来たって人ばかりなんだから」

 

「それが事実だとしてもだよ。あいつらのためにお前がやってきた事に間違いなんて一つもねえ。あいつの記事とお前の努力の成果がどこまで投票の差に影響を与えたか正確なデータもないんだからな。無事に通過したとはいえ28位。順位で言えば割とギリギリなとこだ。実際の所は知らんがあいつの記事だけでこの一週間全てが上手くいった確証もないんだろ。だったらお前の努力だってきっと報われてる。それを無力だなんて水の泡みたいに言うな」

 

「……」

 

「あと今のは絶対にみなさんの前で言わない方がいいですよ。確信を持って言いますけどおそらく全員怒ります」

 

「え、いや、さすがに後藤さんは怒りはしないんじゃあ……」

 

 後藤さんが怒る確率とか多分FGOのガチャ排出率より低いぞ。絶対1%未満だもん。

 

 

「そういうとこだぞ」

 

「そういうとこです」

 

「どういうとこだ」

 

 どういうことだ。

 

 

「まあお前の頑張りはここにいる全員ちゃんと見て知ってんだから卑下すんなって事だよ」

 

「……はあ」

 

「ちなみに今度そんなこと言ったら私達も怒りますからね」

 

「それは……勘弁したいですね」

 

「ふふっ、店長は既にちょっと怒ってたみたいですけど」

 

「べ、別に怒ってねえよ……。ただちゃんと頑張ってたヤツが自分を下げるような自己評価をすんのが気に入らないってだけだ」

 

 その割には目逸らしてません? 

 とか思ってたらいきなり店長の手が俺の頭の上に置かれた。どうやらチョップでもそのまま持ち上げられるのでもないらしいのは力加減で分かった。

 

 

「ただ、まあ、何だ。お前もよく頑張ったな」

 

「……あの、高二になってこれはさすがにハズいんでやめてほしいんですけど……うわっ」

 

「これも正当な評価の一つだよ。遠慮なく貰っとけ」

 

「あらあら、それなら私もした方がいいですかね~」

 

「年上お姉さんからの二連なでなではなんかヤバイ気がするっ。普段はやさぐれ三銃士なのにこういう時のギャップで攻めてくんのは卑怯だって!」

 

「誰がやさぐれ三銃士だコラ」

 

「あがががががががががっ!? そ、そうこれっこれだよ! 片手で難なく頭を鷲掴みにして持ち上げてくるような事をするのがいつもの店長なんだ! こっちの方が落ち着くしやりやすい! そしてさようなら頭蓋骨!」

 

 来世でも丈夫な頭蓋骨に生まれてきてね! 

 

 

「あっちはあっちで盛り上がってるね~」

 

「盛り上がってるというか優人君シメられてません?」

 

「ああいう時は大体優人が悪いから気にしなくていい」

 

「あっ、ゆ、ゆうくんの分のケーキ取っといても良いですか……?」

 

 

 

 






大人組と絡ませると結構良い出汁取れるんすよね~清水って男。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:A_FGr000さん、混沌の闇さん

☆9:タスマニアさん、Refyさん、モチモチこしあんさん、てんぷら/2000さん、完全無欠のボトル野郎さん、イキョウさん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!!
年内までにお気に入り7000いけるかな~いきたいな~。

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