再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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来週で今年の投稿は最後になります。(早めの告知)




106.何かを成すのには心を休ませるのも必要

 

 

 古着屋を出る。

 

 結局後藤さんのキメラコーデは全員一致で0点……いや正確には採点拒否で無効となった。

 そのまま彼女以外は俺を含めリョウさんにコーデしてもらった服を買い上げ、ワンポイント古着コーデで下北散策を再開したのであーる。

 

 

「そういやリョウも買ったんだ。ジャケットかっこいいじゃん」

 

「一目惚れ」

 

「……ん? でもリョウさんお金なかったはずですよね? ケーキも俺が出したし、どっからそれを買うお金が湧いてきたんですか」

 

 まさか俺の知らないとこで後藤さんか喜多さんに借りたとかじゃないよな。

 この人なら普通にあり得そうだから怖い。お金に関しては信用度マイナスに振り切ってるからね。

 

 と、こんな疑問をぶつけてみたのが逆にまずかったのかもしれない。

 基本的にどこかズレているリョウさんの行動力を見誤っていた俺の責任もあったのだと思う。というか気付くべきだったのだ。元々着てた服はどこに行ったのかと。

 

 俺の質問に彼女は答えた。

 

 

「さっき着てた服を売ったお金で買った」

 

 普通にチャックを開けて見せてきたのまでは良かったが、その中身が問題だった。

 さっきまでリョウさんが着ていたのはシャツ一枚。夏も間近で気温も暖かいというより暑く感じてきた近頃ではそれがデフォルトになっていた。

 

 リョウさんの着ている服は基本的に良いブランドの服だろうからそれなりの値段で売れたのだろう。

 それで古着を買ったと言えば済んだ話なのに、何故か証拠まで見せてきたのだ。

 

 つまり。

 疑似的な露出狂山田の誕生であった。

 

 

「うわちょっリョウさんいきなり何してというか中に何も着てな」

 

「「優人(くん)は見ちゃダメーッ!!」」

 

「ぐぎゃああああああああああ目がァァァああああああああああッ!?」

 

 虹夏さんと喜多さんがそれぞれの人差し指で俺の両目を突き刺してきた。

 俺は死んだ。

 

 

 

 数分もすれば潰れた両目も復活し、下北ぶらり旅続行。

 

 

「優人にはカフェで身体で支払うって言ったからちょっとしたサービスをと思って……一応ギリギリ見えないラインでやったのに……」

 

「外でやるバカがどこにいるのさこのクソバカベーシストっ。下着まで売りやがって……」

 

 そこにいますよ。

 リョウさんは頭に思いっきりたんこぶを作りとぼとぼ歩いている。多分虹夏さんに一発やられたんだろう。あれは山田が悪い。

 

 

「優人くんも最後まで見てないよね?」

 

「その前に刺突されたんで見れてないです」

 

()()()()()……?」

 

「見てないですハイ!!!!」

 

 日本語難しいなぁ~~~!! 

 

 

「まったく、いくらお金のお礼とはいえあんな事は絶対しちゃダメだからね。優人くんには刺激が強いんだから」

 

「でも優人はぼっちが下着姿のままなのに説教した過去があるから何とも思わないと思ってた」

 

「あっうっ……」

 

「今それ掘り出すのやめてもらえません?」

 

 後藤さんに流れ弾行ってますよ。

 

 

「言われてみれば確かに……優人くん、ちゃんと女子の身体に興味はある?」

 

「どう答えてもアウトになりそうな質問なんですが」

 

「ただの興味だよ。で、どうなの?」

 

「まあ、普通程度には……」

 

 女子高生四人に囲まれながらこんな質問答えさせられるとかどんな拷問だよ。

 一応無難な答えにしたけど、大丈夫だよな……? 

 

 

「ちなみに二次元の可愛い女の子キャラクターの場合は?」

 

「大好k……愛してます」

 

「よし、ギルティだね」

 

 ハッ!? 誘導尋問だなんて卑怯な!! 

 それが天使のする事かぁ!? 

 

 

「私からの質問だけど優人君、二次元で胸が大きい女の子キャラクターは?」

 

「何がとは言わないけど包容力に包まれたい」

 

「よし、ギルティね」

 

 ちくしょう口が勝手に……!! 

 

 

「優人は時々私よりバカになるよね」

 

「元凶が何言ってんだこの野郎! ……いやでも待てよ? 俺のはそもそも二次元だから別にアウトもギルティもないのでは?」

 

「おそらくそういう問題じゃないと思う」

 

「じゃあどういう問題なんです?」

 

「三次元へどう引き戻すかとかじゃない」

 

「?」

 

 いまいちよく分からん。

 どういうことだってばよって俺の中のナルトも疑問に思ってる。

 

 

「(優人くんのオタク部分が強すぎるんだよねぇ)」

 

「(包容力という意味ではそういうのも含めて受け入れる事も大事なんじゃないですかね?)」

 

 何をこそこそ話してんだあの二人。

 とりあえず俺へのギルティ判定はどこかへ行ったらしい。まあ許されるならそれに越した事はないな。

 

 

「後藤さんは二人の言ってること理解できた?」

 

「あっえっと……ちょっとだけなら……」

 

 なん……だと……!? 

 後藤さんでも少しは分かってるのに俺が理解できないとか、そんな事があって許されていいのか……? 

 

 こそこそ話を続けている二人と俺が軽く絶望してたら痺れを切らしたのか、リョウさんが自ら声をかけてきた。

 

 

「どうでもいいから次のとこ行こう。音楽好きなら誰もが心躍る穴場スポットを案内するから」

 

「ハッ!? そういえば今日は私のイソスタ更新ネタを探すための遊びでしたね! 私とした事がうっかりしてました!」

 

「違うと思うよ。みんなで気分転換に遊ぶためだったと思うよ」

 

「さあ行きましょうリョウ先輩! 穴場と聞いて俄然やる気がみなぎってきました! どんな映えスポットなのか私、気になります!」

 

 おお、まさか自然にえるたそネタを聞けるとは思ってなかった。ちょっと感動。

 リョウさんの一言から流れが変わり、さっきまでの謎の不穏オーラはどこへやら。俺達は先導するリョウさんに着いていった。

 

 

 

 そして着いたのが。

 

 

「ここ、ハードオプ」

 

「ふざけてんですか!」

 

 喜多さん渾身のツッコミであった。

 気持ちは分かるよ。穴場スポットがまさかの割かしどこにでもあるお店だったもんね。今のところ映えとは無縁だものね。

 

 

「何を言うっ。ここには現行品から生産終了した中古楽器や機材まで稀に値の張る物が激安で売られている事があるのだ! 気分は徳川埋蔵金探検隊! ジャンク品を買い取って自分好みに改造するも良し! 部品のために買うも良し! ネタで買うも良し! これが穴場スポットと言わずして何と言う!?」

 

「他人のオタク特有早口を聞くとこんな微妙な気分になるんですね。何と返したらいいか分かんねえや。虹夏さんも俺からオタク話聞く時こんな気持ちだったんですか」

 

「そうだよ~」

 

 何気ないそうだよが俺の心をハートブレイク。

 

 

「一ヵ月で品揃えが変わる事も多いから月イチ都内ハードオプ巡りをするのがまた楽しい……。あっ郁代、この情報は友達に教えたらダメだよ」

 

「言いませんよこんな役に立たない情報!」

 

 言ったところでそれがどうしたのとか言われそう。

 楽器通にしか伝わらんだろその魅力。……ん? ってことは……。

 

 

 

「見てリョウ! スピードコブラがこんな値段で売ってるよ!」

 

「くくっ、これだからハードオプでの物色はやめられんなぁ……」

 

「う、嘘……!? 高くて手が出なかったエフェクターがこんなに安く売ってるなんて……! ここで買えば何回もマイニューギアできる……! うふへ、うふぐへえへへ……」

 

 案の定楽器通のヤツらが見事に釣られていた。

 楽器に詳しい人にとっちゃ中古品だとしても安く売られてる商品を見ると魅力的に見えるらしい。俺で言う面白いゲームが安く売ってたみたいな発見をするのが良い所なんだろう。

 

 そしてそんなに詳しくない俺と一緒に取り残されてるのは喜多さんである。

 もちろん借り物のギターを持ってる時点で楽器に拘りもない彼女には、あの領域に混ざるのは到底無理な話だ。

 

 つまりは謎の疎外感をここにきて感じる陽キャの出来上がりだった。

 もはや俺達の事は眼中になく三人共ハードオプの虜になっている。あの後藤さんさえ目をキラキラさせながら色々見ているのだ。余程楽しいのかもしれない。

 

 

「とはいえこっちはこっちで暇だよなあ」

 

「うう……みんな楽器に夢中なんて……こんなの女子高生の遊びじゃないわ……」

 

「まあ楽しみ方は人それぞれだし、結束力を高める以外にもリフレッシュは大事だからな。気が済むまで見させてやろうぜ」

 

「こんな時まで優人君は面倒見がいいのね……」

 

 一応元々は帰ろうとしてた身ではあるんですけどね。無理矢理連れてきたのはあなた達でしょうよ。

 こういう時はいっそ開き直ってこっちも楽しむ気概でいれば楽しめるもんなのさ。暇は暇だけど。

 

 しかしこの遊びも元はと言えば喜多さんの発案。

 最終的に彼女が楽しめていないと今日の一日を付き合った意味もなくなるというものだ。

 

 三人を見てみると……まだまだ時間はかかりそうだな。

 スマホを出して適当にこの付近の店を調べる。軽く時間を潰すのにちょうどいいのはっと……ふむふむ、よし。

 

 

「喜多さん」

 

「何かしら……」

 

「そんなに暇ならリョウさん達が見終わるまでどこか別の店に行って時間でも潰すか? 近くに有名なドラマで紹介されてた食べ物とか売ってるらしいけど」

 

「………………二人で?」

 

「うん」

 

「行くわ!!」

 

 うわうるさっ。

 いきなり機嫌良くなるじゃん。そんなに暇だったのかよ。陽キャって常に動いてないと死ぬの? 

 

 という訳で虹夏さん達に一言だけ告げてハードオプを後にする。

 スマホでマップを見ながら目的の店へ歩いてると、隣に並んだ喜多さんが上機嫌で口を開いた。

 

 

「何だか私服で優人君と二人で歩いてると横浜のシーパラダイスに行った時の事思い出すわね~」

 

「そういやそうだな。まああん時は文化祭の展示物を撮るって目的があったけど」

 

 後半寝不足が原因で寝てしまったのも今ではもはや懐かしい。何だかんだ半年以上は経ってるもんな。

 

 

「ほとんど遊んでたようなものだったけどね。でも今日は何の目的もなく遊びに来てるから、前よりも気楽で楽しいわっ」

 

「いや喜多さんの陽キャ成分補充が目的だったような気が……」

 

「何か言った?」

 

「いえ何も」

 

 笑顔で聞き返してこないで。

 つうかシーパラの時も結構はしゃいでたような気がするんですが俺の気のせいですかね。

 

 目的の店に着き『ぼっちのグルメ』というドラマで次郎さんが食べてた肉巻きおにぎりを購入。

 ベンチに座り食べながら適当なトークをする事にした。

 

 

「一応次に行きたい店とかは決まってんの?」

 

「ビレパンね!」

 

「……それどこにでもあるし特別感ないのでは?」

 

「下北のビレパンは特別なの! 何故なら下北だからよ!」

 

 あーそーゆーことね。完全に理解した(わかってない)。

 

 

「じゃあ合流したらそこ向かいますか」

 

「先輩達はまだ少し時間かかりそうかしら?」

 

「多分。自分の好きなものを見る時は一つ一つ丁寧に見るから普段より時間かかっちまうんだよ。オタクだから分かる」

 

「私が美容系とかのグッズを見る時みたいな?」

 

「そゆこと」

 

「へえ~」

 

 本屋に行って漫画の試し読みをしたりゲームショップで色んなゲームソフトを見漁るようなのと一緒だ。

 たまに後藤さんと帰りの際に俺の都合で付き合ってもらったりしてたから理解できる。おかげで最近は後藤さんと一緒にアニメを見たりする時あるし、何気に布教も成功してるのだ。

 

 

「うーん、私もギターとかもっと詳しくなった方がいいのかしら?」

 

「別に詳しくなくてもいいんじゃね。そういうのは後藤さんやリョウさんがいるんだから知識はそっちに任せりゃいいさ。ブランドとかなんてのは結局音の質と見た目と値段の違いがほとんどなんだから」

 

「そうかしら?」

 

「それに喜多さんはギター以外にボーカルもやらなくちゃだしな。ギターを詳しくなるより普通に練習なりボーカル方面を頑張る方が堅実だと思うぞ」

 

「うっ……それってもっと私に練習した方が良いって言ってるの……?」

 

「じゃなくて、バンドにとっちゃボーカルはバンドの顔でもあるんだから、それを磨けば後藤さん達にはない喜多さんだけの武器になりえるんじゃないかなって」

 

「私だけの、武器……」

 

 肉巻きおにぎりの最後の一口を頬張る。

 

 

「喜多さんの歌声は綺麗だけどどこか力強さもある。だからボーカルの知識を深めてもっと良い練習法とか分かれば、今以上に誰かの心に響く歌声になるんじゃねえかな」

 

「……ねえ、私の歌声は優人君の心に響いてる?」

 

「おう、響いてる響いてる。響きすぎてひじきになるくらいだわ」

 

「そこ茶化すとこ!? あと何でちょっと声掠れ気味なの!?」

 

 だって俺の中の大蛇丸が勝手に出てくるもんだから……。

 とまあ、冗談はさておき。喜多さんも食べ終わったのを見て席を立つ。

 

 

「少なくとも俺は喜多さんの歌声に、結束バンドの音楽に心打たれた最初の一人だからな。身体によぉく染みついてるよ」

 

「……もう、最初からそう言えばいいのに」

 

「言わせんな恥ずかしい。っと、しょっぱいもん食べたから甘いもの食べたくなってきたな。何か店探すか」

 

「あっ、だったらすぐ近くにテレビで紹介されてたクレープ屋さんがあるわよ! そこ行きましょ!」

 

「よくそんなのチェックしてんな。まあいいや、どうせなら美味いもん食べたいしそっち行くか」

 

 

 

 マジで近くにあった。数分もかからなかった。

 お互い違うクレープを頼み、そろそろハードオプ組も終わる頃合いかと思いながら店に向かう。

 

 

「……美味いけど、そんな紹介されるほどか?」

 

「う~ん! やっぱりテレビで紹介されてるだけあって全然違うわね~! 絶品だわ~!」

 

 クレープというより情報食ってんなこの子。プラシーボ効果じゃねえのそれ。

 舌が肥えてる訳じゃないと思うんだが、普通よりちょい上くらいだと思う。そもそも作り方と具材的にクレープに味の良し悪しは付けにくいと思うんだけど。作った事あるから分かるけど、生地さえあれば不味い具を入れない限り誰でも平均点は超えれるだろこれ。いや全然美味しいけどね。

 

 

「優人君のはどう?」

 

「美味いよ。ただテレビで紹介されたって聞いたから勝手にハードル上げすぎたかもしれん。そこは俺の反省点だな」

 

「そう? 私は凄く美味しいと思うけど」

 

「テレビで紹介してたのは喜多さんのクレープだから、一番美味しいのがそれって事かな」

 

「……」

 

 フルーツ系じゃなくてシンプルにチョコソースと生クリームたっぷりなやつの方がよかったか。

 何だかんだ王道が一番って言うものね。ポテチもうすしお味が一番だししゃがりこもサラダ味が一番だし、たけこのかきのこかで言えばたけのこがいちば……おっといけない、これ以上は血みどろの争いが起きかねないな。

 

 俺は両方好きですよって謎の勢力にアピールしていると、喜多さんが不意にこちらを向いた。

 

 

「……じゃあ優人君、私のクレープ食べてみてっ」

 

「え? ……いや、でもそれってかんsぶぐぼぁっ!?」

 

 言い終わる前に喜多さんから俺の口へクレープアタックが飛んできた。

 予備動作なしの攻撃とは……やるじゃねえか喜多さん……俺の完敗だぜ。クリームが顔のそこら中に飛び散ったぜ。

 

 

「(きゃー! やっちゃったっ、私やっちゃったわー!)」

 

「……あの、できればウェットティッシュを貸していただけると清水さん嬉しいなって……」

 

 周囲の人に注目されてるの地味に恥ずかしいんだわ。

 こんな嬉しくないアオハルイベントも早々ないぞ。やっぱり俺はとことん青春ラブコメに縁がないらしい。ラブコメになりそうなシチュになると大体ギャグが襲い掛かってくるのは何なんだよ。呪いかよ。

 

 

 

 ハードオプに戻ると、虹夏さん達が店の前にいた。

 どうやら堪能したようだ。

 

 

「……優人くん、何だか顔テカってない?」

 

「今流行りの生クリーム洗顔してきた後なんで」

 

「絶対流行ってないよね!? 喜多ちゃんは何で若干顔赤いの!?」

 

「今流行りの赤面メイクです」

 

「絶対流行ってないよね!?」

 

 やはり虹夏さんのツッコミは素晴らしいね。

 一家に一人虹夏さん欲しいわ。観賞用と保存用と拝む用と話す用で四人欲しい。

 

 

 

 

「はぁ……まあいいや、それで次はどこ行くか決まったの?」

 

「一応は」

 

 そして先程喜多さんが言った希望通りビレパンに行った。

 彼女曰く、下北のビレパンは特別らしいとの事だったが、実際行ってみれば特別なとこはそんなになくて他のビレパンとあまり大差はないと虹夏さんが言ってた。

 

 ただ何もなかったという訳でもなく、ビレパン特有の手書きポップやステッカーを見てグッズの参考にしたり、いつの間にか後藤さんが迷子になってたり、リョウさんが結束バンドのマスコットキャラクターけつばんちゃんを自分で開発しておきながら忘れてて虹夏さんにツッコまれてたりと、相も変わらず俺達はどこかに行けば何かしらのイベントが起きるらしい。

 癖強パーティーならではかもしれない。

 

 

 

「それで、喜多ちゃんは満足した? 今日はもう解散でいい?」

 

「はい! 楽しかったです! きらきら成分もたくさん補給できました! これで明日も生きられるわ!」

 

 え、死ぬとこだったの? 

 

 外も既に暗くなりつつある頃、俺達はスターリー付近まで戻ってきていた。

 

 

「じゃあみんなまたね! リフレッシュした分、次は目いっぱい練習しよう!」

 

「あっはい!」

 

「分かりました!」

 

「それより今日買った中古品の修理で私は忙しくなる」

 

「そんなこと言うなら審査終わるまで没収するよ」

 

「練習頑張る」

 

 虹夏さんの声にそれぞれ応える。山田は通常運転だった。

 

 

「では俺達はこれで」

 

「うん、じゃね~!」

 

 虹夏さん達と別れ、後藤さんと喜多さんと下北沢駅へ向かう。

 その道中だった。

 

 

「あ、あそこで路上ライブやってるわよ!」

 

「おお、今日も下北は下北してんな~」

 

 うむ、やはりライブハウスで聴くのとはまた違う良さが路上ライブにはありますな。

 ちらほらと立ち止まって聴く客、そんなのお構いなしに自分達の音楽を奏でるバンド。

 

 この小さな街のあちこちで毎夜夢溢れる若者達が自分達だけの世界を作り上げていた。

 音楽、ひいてはバンドに関わり始めてまだ一年くらいだけど、それでもバンドは俺の世界を広げてくれたと言っても過言ではない。これも後藤さんがギターをやってなかったら縁のない世界だったんだ。

 

 そして、結束バンドがもう一段階上のステージに行くための審査がそこまで迫ってきている。

 

 

「ひとりちゃん、私達もライブ審査まで頑張らなくちゃね!」

 

「は、はいっ」

 

「優人君もしっかりサポート頼むわよ!」

 

「おう、俺にできる事なら何だってしてやるさ」

 

 結成して一年とちょっとだけれど、ここまでやってきたならいっそ行くとこまで突き抜けていけばいい。

 行けるとこまで行くのではなく、行きたいとこまで行く。俺はその一歩後から着いていく。そうすれば、きっと何も怖くない。どこへだって行けるのだ。

 

 

 ライブ審査まで、あと約一週間。

 

 

 





なんか知らんけど優喜多要素多めになっちゃった。
ぼっちもっと喋れ。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:KOUyuaさん、ssを読む程度の能力さん、雪村紅さん

☆9:しん7さん、クリストフさん、タスマニアさん、モチモチこしあんさん、イキョウさん、ザラメ雪さん、完全無欠のボトル野郎さん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!!
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