再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
話の都合上、今回は少し短めです。
最近右隣の席に座っている喜多さんの様子がおかしい。ちなみに後藤さんはいつもおかしい。
前まではいつも笑顔で後ろに太陽でも飼ってんのかと思うくらいいちいち眩しかったのに、ここ最近はふとした拍子に溜め息を吐いているのだ。
いや、何でお前が喜多さんの溜め息をよく見てるんだよとか言わないで。隣でよく話すからつい視線が右に向きがちになるだけなんだって。
前も左の子も全然喋らない女子だからそこしか適当に見れるとこがないの。信じてほしい。というか周りに聞こえそうな感じで溜め息吐く喜多さんにもちょっと責任はあると思います!
だって気になるじゃん。常に笑顔をティッシュ配り感覚で振り撒いてる子が不意にアンニュイな顔ではぁとか言ってんだぞ。
何事かと思うだろ普通。常時笑顔装備型の子から笑顔奪うような出来事があったって事だぞ。そんなの気にするなという方が無理だ。どうにか元気になってくれないかとも思うが、原因が分からないのでどうしようもない。
さて、今日も今日とて喜多さんからは複数回の溜め息が確認された。回数だけで言えばざっと14回。誰だ今俺の事キモいとか思ったヤツは。やめろ、自覚してるから。
というのも彼女、友人達と席で話してる時は一回もしていないのだ。それは俺が自分の席からや教室の外からバレないように見ていたので確定である。……あれ、いつの間にかいつも後藤さんを遠目で観察してるからか俺の覗き見スキルのレベル上がってない? めっちゃ嫌なんだけど。
つまりだ。喜多さんが溜め息を吐く時は総じて一人で席に座っている時。何かを思い出したかのようにそれを繰り返していた。
少なくとも彼女はこの学校で数少ない俺の友人だ。例え俺が多数友人のいる喜多さんの中で有象無象の中の一人に過ぎないのだとしても、友達が困ってるなら話くらいは聞いてもおかしくないはずだ。
休み時間の時。
「なあ、喜多さん」
「どうしたの、清水君?」
あくまで俺と接する時も笑顔を崩さない。という事はアレは無意識だったのか?
けどここまで来たら後戻りはできない。俺は直球に聞いた。
「もし不快にさせてしまったらごめん。けど気になるから言わせてもらう。単刀直入に聞くけど、悩みでもあんの?」
「……え?」
「最初は見間違いかもと思ったんだけど、ここ最近の喜多さんは結構悩んでる感じ出てたよ。溜め息ばっか吐いてるし」
「やだ、噓っ、私そんな事してたっ?」
「俺が気になるくらいには」
別に下心がある訳じゃない。純粋に気になるからだ。
「そっか、私ったらそんなに……」
「ああ、だから何か悩んでるなら力になる事はできなくても話くらいは聞けるかなって」
「……そう、ね」
困ってる人がいるなら助ける。当たり前且つ誰だって抱いた事のある気持ちだ。
問題は実際にそれで行動できる人の方が少ない事だ。だから俺はできるだけ手を差し伸べたいと思っている。
「うん、じゃあ、ちょっとだけ聞いてくれる?」
「もちろん」
「えっとね、清水君ならどうするかっていう体で聞いてほしいんだけど、私には憧れの先輩がいて、まずその人がやってる事を自分もしたくてできないのにできるって噓ついて一緒のチームに入るじゃない?」
「いや入らないけど」
「もうっ、最後まで聞いてってば!」
「ああ、ごめんごめん」
あれ、何か流れ変わったな?
「で、結局本番が来そうってなった時にまだ何も分からないままだったからつい逃げだしちゃったの。清水君なら、どうするべきだと思う?」
「まず噓つかないと思う」
「それはそうなんだけど!」
一緒のチームって何だ。スポーツの事か? 喜多さん運動神経良いからよく助っ人頼まれるって言ってなかったっけ。
まあできない事だってあるか。たまたま憧れの先輩がいる部活に限って苦手分野だったのかもしれない。
「先輩と同じ事がしたいって思う気持ちは分かるけど、さすがにできないのにできるって嘘を言うのはまずかったんじゃ」
「だから困ってるのよ~! 何も言わずに逃げ出しちゃったし、先輩達にも迷惑かけちゃったから謝りにいかなきゃとは思ってるんだけど……」
「けど?」
「……気まずくて行きづらい」
うん、気持ちは分かる。やった事ないけどバイトとか仕事でブッチしたらそういう気持ちになるとか言うよね。ネットで見た。
しかも喜多さんの場合は憧れの先輩という付属付きだ。謝りに行ったとしても、そこで先輩と周囲に何を言われるか分からない不安などもあるのだろう。
悩んでる原因は大体分かった。うーん、聞いたところ喜多さんの自業自得ではあるが、ここまで悩むほど反省もしてるならどうにか力になってあげたいけどなあ。
その憧れの先輩とやらがどんな人かも気になる。喜多さんの事だからめちゃくちゃイケメンの陽キャだったりして。うわ、普通にありそうで何か腹立つな。
「そんなに気まずいなら俺も一緒に行こうか?」
「え?」
「いや、ほら、何言われるか分かんなくて怖い気持ちもあるんだろ? だったら誰かに一緒に着いて来てもらった方がまだ謝りやすいんじゃないかなって。別に男子が嫌なら俺じゃなくても友達に訳を話して着いて来てもらうのもありだと思うけど」
男子が一緒だとその先輩に変な誤解を与えてしまう可能性もゼロではない訳だし。俺と勘違いされるのも迷惑になるだろうから、本当なら女子友達に来てもらった方が喜多さんも安心できるだろう。
トップカーストの女子に近づきすぎるのは男子からの視線も痛くなるしな。あくまで今も話しているのは隣としてのよしみで、偶然俺が喜多さんの悩みに気付けたからだ。
困ってる人がいるなら助ける。しかし自分より適切な人がいるならそちらに任せても良いだろう。
直接力になれなくたって構わない。補助役で充分ならそれでもいい。
「……じゃあ、清水君着いてきてくれる?」
「分かった。じゃあ他の友達に言ってか……ん?」
自分の中で会話の流れを想定していたから思わず反応が遅れてしまった。まずい、俺も後藤さんのせいで自己完結型になってきてるかもしれない。
「お、俺でいいの?」
「清水君が最初に一緒に行こうかって言ったんでしょ」
「や、まあそれはそうなんだけど……」
「それに男子に来てもらった方が心強いしね」
「オーケー、土下座でも何でもするから任せてくれ」
「そこまでは言ってないけど!?」
頼りにされるとつい見栄を張っちまうのが男ってもんよ。大丈夫、その気になれば土下座でも殴られ屋でもやってやらあ。
「あっ、けど今日はアレ持ってきてないのよね……。ごめんね清水君、明日とかでもいい?」
「いいよ。じゃあ明日で」
ユニフォームとかトレシューかな。助っ人とか頼まれるくらいだし常備してたんだろうけど、逃げたから今日は持ってきてないのか。
行くのは明日の休み時間か放課後になるが、放課後なら後藤さんには先にスターリーへ一人で行ってもらうか。風邪も治って明日から学校来れる訳だし、そろそろ一人でも行けるようになってもらわないと。リハビリついでに強くなってもらおう。瀕死から蘇って強くなるサイヤ人方式だ。下手したら逆効果だけど。
「やっぱり優しいのね、清水君って」
ふとそんな声があった。
喜多さんが何だかこちらを見て微笑んでいる。うおっ眩しっ、とふざける余裕も少しなくて、俺には精一杯の照れ隠ししかできなかった。
「……面倒見が良いだけだよ」
後藤さんの世話ばっかしてるからな。
────
翌日。
登校時。
風邪を引いて数日。ようやく完治した後藤さんは今日からまた登校しているのだが。
「何でギター持ってきてんの。今日バイトだけで練習なかったよな? あ、もしかして自主練?」
「あっ、またギター持って行ったら話しかけられるかもって……」
向上心あると思って少しでも感心した俺の気持ち返せこの野郎。結局他力本願のままじゃねえか。
「少しは成長したんなら自分からもうちょい話しかける努力をしてだな……」
いやでも虹夏さんの時はこれで話しかけられたんだよな。ほとんど奇跡に近かったけど。
あれからバンド組んだりバイト始めたりと、今までの後藤さんなら考えられないほど上手く事が進んでいる。今回も案外功を奏するかもしれない。
「いや、それで虹夏さんと出会えたんだし、万が一って事もあるからその手もありかもな。どうなるかは分からんけど試したいならやってみるか。最悪上手くいかなくてもスターリーで自主練できる時間あるかもだし」
「う、うん……!」
こういう直感が割と当たる時もあるのは事実だ。後は後藤さんを観察しつつ経過を見守る事に専念しよう。
「あっ、それと……ゆう、くん」
「ん?」
「あの、こ、この前はありがとう、ございます……。私を送ってくれた後も、飲み物とか風邪薬に冷えピタも買ってきてくれたって……お母さんから聞いたから……」
「ああ、そんな事か。別に良いよ。下着姿のままなのに一時間くらい説教した俺にも非はあるからな。一割ほどだけど」
「あっうっ……」
シュンッて縮こまるな。そこはいつものように奇声出して作画崩壊するとこだろ。
何か普通に恥ずかしがられるとこっちの調子が狂うわ。ほら、もっと目ぐるぐるにして口とか地面に落とすんだよ。ボトってさあ!!
どうにかして後藤さんの顔面を崩壊させようとしていたところで思い出す。
「あ、そうだ」
「?」
「もしかすると今日放課後ちょっと用事できるかもだから、先にスターリー行っててくれないか。バイトには間に合うようにするから」
「……うえぇッ!?」
あ、顔面崩壊した。うーん、基準がよく分からんな。
「むっ、むむむむむむむ無理ですぅ! 一人で入れないぃ……!」
「大丈夫、行けるって。そんなんじゃいつまで経っても一人でどこも行けないんだぞ? そんなのは嫌だろ?」
「ゆ、ゆうくんが一緒なら行けそうな気が」
「バカな事言ってんじゃねえ」
子供か。しかも俺がいても気がするって確定じゃねえのかよ。
ここは何とか一人で行けるようにしないとダメだ。甘やかしてたつもりはなかったが、今後のためにも厳しくいかないと。
「確かに今までの後藤さんなら無理だったかもしれねえけど、今はバンド組んでバイトもしてるんだぞ。そこまで成長できたんなら絶対行けるって」
「そっ、そんな事……うへ、うへへぇ~。じゃ、じゃあ、大丈夫です。頑張ります……!」
「よし、よく言った。偉いぞ」
うん、ちょろいわこの子。心配になるくらいちょろい。さすが承認欲求の塊を擬人化させた女だ。褒めればコロッと手のひら返すな。大丈夫かこの先。
「じゃあそういう事だから」
「は、はいっ」
────
「え、放課後に着いてきてほしい場所がある?」
「そうなの。ちょっと距離あるんだけど、いいかしら?」
「学校内じゃなくて?」
「あら、言ってなかったっけ? 謝りに行くのは学校の外よ?」
そ、そっちかぁ~。てっきり学校内だと思ってたから思いっきり勘違いしてた。
だとしたらちょっとバイト間に合うか不安になってきたな。距離あるって言ってるし。少し遅れるかもってロインでも入れとくか?
「ごめん、憧れの先輩って言ってたから部活の先輩か何かだと思ってた。でも、だったら喜多さんは何をやってたんだ?」
「えーっとね……」
少し言いにくそうな表情をしてから彼女は言った。
「私、バンド組んでたの」
「…………マジか」
まさかの自分と決して無関係じゃない事を喜多さんもしていたとは。いや俺はバンドしてないしただのバイトだけど。
割かし似たような事をやってたんだな。
「なら逃げたってのは?」
「ギターとか弾けもしないくせに弾けるって言っちゃって……いざライブで本番やろうってなった時に怖くて逃げだしたの……」
結構クレイジーだなこの子。ただの陽キャ最終形態と思ってたら意外とロックだった。弾けもしないのに嘘ついてバンド入るって普通しないだろ。
どんだけ先輩といたかったんだよ。好きすぎだろ。
「ちなみにさ……憧れの先輩って男性? 女性? どっち?」
「女性だけど。一つ上だったかな」
いやそこ女子なんかい。謝りに行きづらいとか言ってたし完全にイケメンパリピバンドマンかと思った。
「女子の先輩なら、俺いるか?」
「いるわよ! 何なら今もちょっと怖くなってきたところなのに! どうしよう清水君っ、や、やっぱり後日って事にして……」
「俺の放課後が空いてるのは今日だけだぞ。基本バイト今日もあるけど、何より俺の知り合いが多分うるさいから」
「当日になったら急に怖くなる気持ちだってあるんだから~!」
その気持ちを一刻も早く無くすために行くんだろうに。
今日の一日は何だか長くなりそうだ。
喜多ちゃん何気にやってる事ロックなの面白いよねって。
では、今回高評価を入れてくださった
☆10:アリアポコテンさん、ランディールさん、無楽さん、リセル316さん、らはささん
☆9:きゅれむさん、いとこんにゃくさん、ガバチェブさん、RYOU3さん、ユキの宮さん、あさ。さん、タスマニアさん、統領さん、ゆうちゃんssさん、ヨミタカさん、ノーナさん、オクチャーブリスカヤ・レヴォリューツィヤさん、5686さん、おkさん、研究員さん、メヴィさん、しゅいんデルッッッさん、七時の権兵衛さん、アステカのキャスターさん
☆8:x_shigure_さん、やる気マンゴスチンさん
本当にありがとうございます!
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忙しくてそろそろ毎日投稿厳しくなってきたかもしれない。明日できるか分かんないッピ……。