再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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あとがきの方に幼メンの今後に関してのお知らせ書いてるので、良かったら見てってくださいな。




111.みんな必ず何かしらを背負っている

 

 

 いよいよ始まった未確認ライオットの最終ステージ。

 どうやら1組目は福岡からやってきたバンドらしい。MCで博多弁喋ってるけど方言女子って良いよね(小並感)。

 

 

「せっかくだしもっと前で聴きましょうよ! なんたって現地の熱さは現地でしか味わえないんですから!」

 

 キラキラ陽キャがまた訳の分からない事を言っておられる。

 俺が何のために熱中症対策グッズを持ってきたか分かってないのか。

 

 

「喜多さん、悪いけどこのクソ暑い中であの人混みに入るのはバカの所業だとおも」

 

「ん~、まあこんな機会も中々ないしね~。ほら、優人くんも行こ?」

 

「さっさと行くぞ喜多さん後藤さん。人混み掻い潜ってべスポジまで一直線だ」

 

「あっえっ、えっ……わ、私も……?」

 

「バカが増えた」

 

 ダーヤマから何か聞き捨てならん言葉が聞こえたような気もするが構わん。

 言いたいヤツには言わせておけばいいのだ。俺には人混みの中で天使を守り抜くという任務があるのでね! 

 

 後方でのんびり見ると言ったリョウさんを残し俺達はライブの観客がリズムに乗って揺れている僅かな隙間を潜り抜けながらそれなりに見えるとこまで辿り着く。

 ある程度身に付けられる冷感アイテムを装備しているとはいえ、人と人との距離がゼロに近い密度と真上からの直射日光のせいでなんかもう色々凄い。自然と人体の群れで生成されるサウナみたいだ。一言で表すなら地獄。

 

 着いてから一瞬でここに来たこと後悔したわ。虹夏さんの言葉に脊髄反射でイエスマンになってしまうこの体と精神が憎い。

 隣を見ると喜多さんと虹夏さんは普通に楽しんでる様子。何ならもうちょっと前行こうとか言い出した。陽キャとバンド好きは音楽フェスへの適応力高いな。

 

 虹夏さんを守るミッションは喜多さんに任せ、俺はその場にいる事にした。多分ここがこの子の限界ラインだからだ。

 で、肝心の後藤さんはというと。

 

 

「ヒィッ!?」

 

 俺の腰にしがみ付きながらライブとか暑さよりも周りの人間に怯えている最中だった。

 まあ無理もない。俺でさえこの密度に圧倒されてるんだ。屋外+人混み(陽キャ集団)+直射日光という、後藤さんの天敵三拍子が融合召喚されてる時点で彼女に安寧の地はない。

 

 緊急ミッション、虹夏さんを守れから後藤さんを守れに変更。これにより難易度はSランクからCランクに下がる。

 ただし周囲のどこにも逃げ場はなく、今のバンドが終わるまでの耐久戦となる。何がなんでも彼女を守る事を優先されたし。

 

 

「ゆ、ゆうくんっ……い、いつの間にか周りカップルばかりになってる……!」

 

「ヒィッ!?」

 

 緊急事態発生、緊急事態発生。突如として周囲にリア充カップルが大量に出現。「前は危険だから俺の傍から離れるなよ」とかあすなろ抱きをしながらライブそっちのけで歯が浮くようなセリフを平然と言っている模様。

 清水優人の精神の汚染を確認。不快感が臨界点を突破。このままではリア充殺戮モードへ自動的に移行されます。任務続行不能、任務続行ふノゥ。

 

 

「ピーピーガガッ、ガガガッピーウィーガシャン、ウィーガシャンッ」

 

「屋外だからはっきり客が見えるせいでダイレクトに心にくる……ウッアァッ」

 

「うわあ!? 何か変なロボットみたいなヤツと溶けかけてるヤツいるんだけど!? に、逃げるぞぉ!」

 

「え、何言ってきゃー!?」

 

 リアジュウシスベシホフルベシ、リアジュウシスベシホフルベシ。

 

 

 

「……ハッ!? こ、ここは……?」

 

「あっゆうくん、気が付いた……」

 

 気付いたら俺と後藤さんは人混みではなくステージから後方へと戻って来ていた。

 いったい何故? 数分前から記憶が……。

 

 

「ゆうくん、ロボットみたいになったと思ったらすぐ熱でオーバーヒートしちゃって……そ、そのまま私と一緒に人並みに呑まれてここに戻ってきたんだよ……」

 

「俺クソザコすぎん?」

 

 気温と自らの怒りによってオーバーヒートとかただの自滅じゃん。

 

 

「ふっ哀れな優人達」

 

「いたのか山田」

 

「後方なら巻き込まれなかったものを、青空の下冷感アイテムと共にゆったりライブを眺めるのも悪くないぞ」

 

「人の持ってきたアイテムを我が物顔で使って言う台詞かそれ」

 

「だって優人が勝手に使っていいって言った」

 

「……いや、うん……それは、まあ、そうですね……」

 

 リョウさんにダンガンロンパされてしまった。俺はもうダメかもしれない。

 いそいそと保冷バッグから飲み物でも取ろうとした時、集団の方から目立つような声がした。

 

 

「モッシュモッシュヘイモッシュ! さあ、みんなで輪になって踊ろう!」

 

「……何だありゃ。Vで6の曲みたいなワード聞こえてきたけど」

 

「説明しよう。あれはフェス名物のライブをよそ目にサークルモッシュを先導しサビで飛んだり跳ねたりする周囲の気持ちを考えないで好き勝手暴れるクソ迷惑なモッシュ先導男であーる!」

 

「サンキューダーヤマ。つまり目立ちたがりなファッ〇ンボーイって事だな」

 

「イエス」

 

 フ〇ッキン。

 

 

「アレに巻き込まれる前に安全地帯に戻って来れたのは不幸中の幸いだったな」

 

「傍から見てる分には愉快」

 

「あっで、でも虹夏ちゃん達が……」

 

「適応力高いあの二人ならむしろすぐ馴染むだろ。無理に伝えに行こうとするなよ後藤さん。却って巻き込まれた上にボロカスになるぞ」

 

「う、うん……」

 

 キンキンに冷えたスポドリを飲みながら眺めていても分かる。

 アレは素人が気軽に混ざっていいものではない。渦中にいる人達はアドレナリンが出てるのかみんな楽しそうだが、俺の視点ではもうマジでぐっちゃぐちゃ。遠目で見ればちょっとした乱闘でも起きてるのかと思ってしまうほどだ。

 

 あんな物騒な所に体力と精神が常に赤ゲージ瀕死状態の後藤さんを向かわせる訳にはいかない。

 それはわざわざ犠牲者を送り込むようなものだ。俺は保護者なのだから到底無理な事はさせないのである。

 

 

「バンドの雰囲気や曲の方向性に関係なくただただ騒ぎたいだけの輩がなんでもかんでもサークル作ろうとするのがそもそもの間違い。音を聴け音を! 何のためのフェスだ!」

 

「それについては同意見ですな。まあ俺達は安全地帯から頑張るバンドを見守っていましょうや」

 

「あっゆうくん、スマホのバイブ通知鳴ってるよ……」

 

「お、マジか。サンキュ」

 

 レジャーシートの上に置いてあったスマホがバイブで揺れているのを確認してから取る。

 ロインだ。絶賛どこかでサークルモッシュしているであろう喜多さんと虹夏さんじゃないのは確定。

 

 となると、

 

 

「……あー、俺達ももう少しであの人混みの中に行かないといけないっぽいですね」

 

「マジか……」

 

「もうすぐだから絶対前方まで来なさいよって送られてきました」

 

「という事は」

 

「……し、シデロスの番が近いですね……」

 

 

 ──

 

 

 フェス中には似つかわしくない静寂の中、ステージに立つ彼女がスタンドマイクを手に取った。

 

 

『……あー、SIDEROSです。観客のみんな、こんなにも暑い中朝からお疲れ様』

 

 人の波が荒立たないうちに後藤さんとリョウさんを連れて人混みの中でさらに前方の方へ移動し、ようやく喜多さんと虹夏さんと合流した。

 最前ではないけど前の方。そしてマイクを持つ彼女は俺達の正面にいる。

 

 ライブが始まる前のMCだった。

 

 

『……今立ってるこのステージを目指したバンドを今回たくさん見てきました。いいバンドばかりだった』

 

 一瞬目が合ったように見えたのは、多分気のせいじゃないと思う。

 

 

『みんなそれぞれ頑張って、悩んで、もがいて、苦しんで、それでも今の自分達にとって最高の曲を作り上げて切磋琢磨したんだと思う。私達もそうだったから……。その道の途中で凄いギタリストにも出会ったし、それを一生懸命支える人達にも出会った』

 

 マネージャー(仮)体験をさせてもらった事もあるから何度かシデロスのライブを見てきた俺だけど、こんなにもMCで話す彼女を見たのはもしかすると初めてかもしれない。

 

 

『きっとみんなそうだったと思う。自分達だけじゃなくて、色んな人やファンが支えてくれてここまで頑張ってきたんだって。そういう思いを胸に未確認ライオットに臨んだんだって。でも、それらを退けて私達は今ここに立ってます』

 

 彼女の言葉を聞きながら、失礼にも俺は思ってしまった。

 もし結束バンドがあのステージに立っていたら、どんな言葉を、どんな演奏を見せてくれたのだろうかと。

 

 それはきっといつもスターリーで見るような景色でもなくて、歓声もいつもの数十倍はあって……こんな暑さなんかどうでもよくなるくらいとてもキラキラしている光景だったんだろう。

 このステージに立ってほしかった。あのステージに立たせてあげたかった。

 

 こんな空想がふと出てきてしまうくらい、大槻ヨヨコの言葉が俺の胸に容赦なく刺さってしまった。

 

 

『だからその分背負ってるものが半端ないの! 誰にも負けてやる訳にはいかない! 初っ端から死ぬ気でトバすから、死ぬ気で最後までついてきなさい!』

 

 

 そして、大歓声と共にシデロスの曲が未確認ライオットのステージを席巻していった。

 

 

 ──

 

 

「は~楽しかったー! 結局シデロスが優勝か~。やっぱ凄いね~」

 

「大槻さんのドヤ顔凄かったですねぇ。最後私達の方見てませんでした?」

 

「ドヤ槻だったね~」

 

 あれから時間はすぐに経過し、終わってみれば結果もみんなが納得のいくものだった。

 優勝者はシデロス。誰もがそれで文句はないと言わんばかりの拍手を彼女達に送り、未確認ライオットは閉幕したのだ。

 

 最後の方はもう人の密度がどうとか気にもなっていなかった。ただただシデロスの奏でる激しい音楽から目が離せなかった。

 結果発表の時に見せたドヤ顔だけが妙に鼻につくのは置いておく。

 

 

「あーあ、フェス終わっちゃったね~」

 

「名残惜しいですけど私達も帰りましょうか。どこかで晩ご飯でも食べに行きます?」

 

「優人様」

 

「晩ご飯は奢りじゃなくて貸しですからね」

 

「はは~」

 

 ほんとに分かってんのかこの人。

 

 

「ん? ぼっちちゃんどうしたの。あたし達も帰る準備しよっ」

 

 みんなが帰る準備をするために移動しようとしている中、後藤さんだけがいつまでもステージの方に向いていて動こうとしなかった。

 普段の彼女なら迷惑をかけないためにこういった行動にはすぐさま反応するのに、だ。

 

 だから気になって、俺も彼女に近づいた。

 

 

「ほら、行こうぜ後藤さ……」

 

 そして、後藤さんの顔を見て最後まで言葉が続かなかった。

 同じように駆け寄ってきた虹夏さんが代わりに反応してくれる。

 

 

「え!? ぼっちちゃん大丈夫!? どうしたの!?」

 

 泣いていた。

 抑える事もできずにボロボロと少女は泣いていた。

 

 

「ひとりちゃん!? 大丈夫っ? どこか痛めたの? け、怪我はしてない!? ちょっと、優人君も突っ立ってないで何があったのか聞かないと!」

 

「…………え、あ、ああ……」

 

 普段のようなコミカルな泣き方じゃないのはすぐに分かった。

 けどだからこそそうと悟った瞬間、俺の思考は空っぽになってしまう。単純に、涙を流す後藤さんを見てどうすればいいのか分からなくなったのだ。

 

 ポロポロと涙を零す後藤さんは嗚咽混じりにでも自分から理由を話してくれる。

 

 

「あぅ……そ、そのっ、やっぱり悔しくて……みっみんなで今日……大きいステージに立ちたかったです……。ゆうくんの期待に応えたくて……応援してくれた店長さん達やファンの人達にも、このステージに立つとこを見てほしくて……もっとたくさんの人に、結束バンドの曲を……聴いてほしかった……。誰かに認めてもらうとか、一番になるとか、そういう事より……もっと……」

 

 多分、我慢していたんだろう。

 ライブ審査に落ちてから今日までずっと、この気持ちを塞いでいたんだろう。

 

 上手く呑み込んで、理解して、納得して、だけど諦めきれなくて……表面張力のようにギリギリで耐えていた思いが、シデロスのライブを見てついに溢れ出したんだと思う。

 涙だけに留まらず鼻水さえも垂らしている後藤さんの姿は、いつものようなみっともさなんて一ミリもなく、一人のバンドマンとして純粋に悔しさを吐き出す立派なギタリストに見えた。

 

 

「……やめてよ」

 

 呼応するように、それはバンドマンのメンバーに浸透していく。

 

 

「あたしだって……みんなと今日とライブしたかったよ……」

 

「伊地知先輩ぃ……」

 

「うぅ、が、我慢してたのにぃ……」

 

 それぞれ抑えていたものが零れていく。

 ぽすりと、後藤さんが俺の胸に額を押し付けて預けてきた。後は嗚咽が聞こえるだけ。

 

 迷いがあった。

 この涙は努力をし続けてきた彼女達が流す事に意味がある。俺なんかよりもプレイヤーであるみんなの方が悔しい思いや悲しい気持ちを何十倍も持っている。だから俺に涙を流す資格はない。

 

 でも、だけど。

 こんなにも頑張ってきた彼女達を一番近くで見てきたからこそ、それを労って、受け止める事くらいはしてもいいんじゃないだろうか。

 

 それくらいなら、俺にもしてあげられる資格ぐらいはあるんじゃないだろうか。

 自然と、俺の右手は後藤さんの頭の上に置かれていた。

 

 何かを特別言う必要はない。

 言葉をかける事よりも、こんな行動だけであっても何かがマシになればいいと信じる。

 

 そして、新しい声がした。

 

 

「ねえちょっと!」

 

 水を差すような部外者の声。

 俺達以外の誰か。

 

 後藤さんを撫でるのに必死になっていた俺の代わりに、虹夏さんが先に反応した。

 

 

「え、ぽいずんさん!?」

 

 

 同時に、新しい風が舞い降りてくるような音がした。

 

 

 

 





未確認ライオット編は次回で終わりそう。


 という事で前書きにも書いてましたが、幼メンの今後についてのお知らせです。
 結論から先に言いますと、幼メンは次回から毎週投稿ではなくなり隔週投稿となります。
 よって次回は再来週に投稿予定です。

 理由としましては第一にこのまま毎週投稿を続けていると早くに原作に追いつきかねないため、またストーリー内での齟齬が生じてしまう可能性があるからですね。
 第二に100話を超えた事でこの作品の伸びも落ち着いたからというのが大きいかもです。何分二次創作を書いてる時点で私も承認欲求モンスター故、感想や高評価をたくさん貰えるとそれがモチベに活かされる難儀な生物でして……それも投稿を始めた当初から落ち着いたので、ライオット編も終わるしちょうどいい区切りかなと。
 あとは私が個人的に他にやりたい事が出来たためでもあります。

 まあ完全に終わる訳ではないのでね、これからものんびりとではありますが幼メン自体は続けていこうと思ってますよ。
 ただいつでも終われるように一区切り付けられるようにはしておきます。原作がないとどうしようもないのが原作準拠の弱み。

 とまあお知らせはこんな感じです。
 本音を言うとライオット編で最終回にしてもよかったんですが、新キャラと清水の絡みも書きたいから続きも書く事にしたってのがあります。ええ、あの後輩達ですよ。良いキャラしてるよね。
 そんな訳で次回は再来週。応援してくれる人がいる限りこの作品もできるだけ長く書き続けたい所存。


では、今回高評価を入れてくださった

☆10:ココモモさん、A・takeさん

☆9:伊達要一さん、ザラメ雪さん、タスマニアさん、踏文さん、二三さん、イキョウさん、完全無欠のボトル野郎さん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
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