再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る 作:たーぼ
久々のオリ回?です。
虹夏と山田不在のスターリーでの一コマ。
まだまだ夏休み真っ最中ではあるが、俺達は今日も今日とてスターリーにいた。
しかし、あるメンバーを除いて。
「今日も虹夏さんとリョウさんは車校かあ」
「ええ、だから今日も私達だけでスタ練だけど頑張りましょうねひとりちゃん!」
「あっはい…………」
そう、ここ最近虹夏さんとリョウさんは車校、つまりは教習所へ通っているのだ。
理由は簡単。レーベル契約もしたし結束バンドの活動もこれからさらに大きくなっていくかもしれない。だから今後ライブツアーなどをする際に必要になってくるであろう機材車のために、年長者組の二人が夏休みを利用して車の免許を取りに行っている最中なのである。
とは言ってもリョウさんはまだ誕生日じゃないから仮免までしかダメらしいけど。
あの人ほんとに免許取れんのか? 仮免すら取れるイメージ湧かないんだが。S字カーブで心折れてそう。
「でもいいわよね〜。車を運転できる女性って憧れちゃうわ〜!」
「別に今時珍しい事じゃないだろ? 免許なんて適正年齢になれば誰でも取れるんだし」
「そういう事じゃなくてっ、何か運転できる女性ってできる人感があってキラキラして見えるのよ!」
「さいですか」
相変わらずミーハー極まってんなこの子。世界が輝いて見えてそうで羨ましい限りですわ。
「そういう優人君は免許取れるようになったら取りに行くの?」
「まあそのつもりだけど」
「どうして? やっぱり男の子って早く免許取って車買ってドライブしに行きたいとか考えてるのかしら?」
「所々偏見が垣間見えるな……。俺の場合は結束バンドのためでもあるよ一応」
「そうなの?」
「ああ。いつかやるライブツアーのために機材車買うって話だけど、それって今のままだと要はライブ終わりに疲れてる状態で虹夏さんが運転するって事だろ」
「ナチュラルにリョウ先輩を運転手から除外するのね」
あたぼうよ。俺だって命が惜しい。
「だからできればそんな負担は背負って欲しくない訳。年齢が年齢だから一年遅れるのは仕方ないと割り切ってるけどさ、俺が運転できるようになって遠征するって事になったら運転は全部俺が請け負うつもりだよ」
「なるほど、確かにライブ終わりに運転は疲れちゃうものねぇ」
ましてや虹夏さんは手足を酷使するドラムだからな。それを踏まえても一年はまだ我慢しなくちゃいけないから歯がゆい。
まあこの先どうなるかは何も分かっちゃいないが、まだ高校生だし遠征なんてのはもっと先の話になるだろうとは思う。そもそも機材車を買うのが先だしね。いったいいつの事になるやら。
「あ、ひとりちゃんは免許取るつもりはあるの?」
「こいつに取らせる訳ないだろというか一生取らせねえよ命がいくつあっても足りんわ車校代を無駄にするのはやめなさい」
「あっみたいです……」
「出たわね過保護怪獣カホゴン」
誰が怪獣だキターン星人め。人をカネゴンみたいに言うな。
そんなこと言うならまず後藤さんが教習車乗ってる時に隣に乗ってる教習所の人と喋ってるとこを明確に想像してみなさいよ。できないでしょ、俺も想像できないもん。
「いや、うん……まあ、ひとりちゃんが車を運転してるとこは想像できない、かも……」
「あっへへっ……」
それ見たことか。後藤さんは運転じゃなくて助手席でナビの言った事を軽く復唱してるだけでいいんだよ。
知ってるか、適材適所って大事なんだぜ。
「けどいつまでも免許なかったら不便じゃない? ほら、最近は車乗らないにしても免許だけは取っておこうって人も多いって聞くわよ」
「安心しろ。後藤さんが行きたいとこあったら俺が連れてってやるから」
「あっみたいです……うへっ」
「出たわねタラシ怪獣ミサカイナシマン」
それもう怪獣ってよりヒーローの方のイントネーションじゃねえか。いや名前はクソみたいに嫌だけど。
こんな会話をしつつも後藤さんと喜多さんはギターの練習をちゃんとしている最中である。虹夏さん達がいないのでいっそ喜多さんのギター力を上げてやろうぜって話からこうなった。
「優人君はギター練習しないの? どうせなら一緒にしましょうよ」
「あくまで結束バンドの演奏力向上のためにギター練してんのに関係ない俺が加わる訳ねえだろ。それに練習なら家で後藤さんとずっとやってるよ。な?」
「う、うん……最近は弾き語りも上手くなってきてるもんね……」
「そうなの? じゃあ今度聴かせてちょうだいよっ。見てみたいわ!」
「まだ人様の前で演れるレベルじゃないから却下。んな事言ってねえでギター練頑張らんかい。ギターボーカルはバンドの顔なんだぞ」
「うっ……何も言い返せない……」
しめしめ、喜多さんはこう言われると大人しくなるから実に御しやすい。
とは言ってもレーベル契約した以上本格的に実力向上を求められる訳だから仕方ないのもあるが。まあ後藤さんがいるから無理はさせないだろうし大丈夫か。
「じゃあ俺はバイトに戻るから、後は二人で頑張れよ。後藤さん、喜多さんを頼むな」
「あっうん……任せてっ……」
「最近ここだけひとりちゃん気合い入るわよね……」
スタジオに彼女達を残しフロアへ戻る。
メンバーじゃない俺は通常営業のバイトである。将来的に機材車を運転するなら俺自身もそのための貯金に貢献しなくちゃいけないため、いつもより頑張らないといけない。
のだが、開店前にやる事はもうほとんど終わってるし、ライブの際の大事な事は店長やスタッフの人が担当するため基本雑用の俺は既に暇を持て余している最中なのよね。
だから後藤さん達と一緒に休憩がてら練習覗きに行ってたし。ということでドリンクカウンターの方に向かう。そこには偉そうに座ってパソコンを見ている金髪ヤンキーがいた。
「休憩終わりましたー。店長、何か残ってる仕事あります?」
「んー、掃除もドリンク補充も裏の機材運搬も終わったんだろ。じゃあもう何もねえかな。後は専門のスタッフの仕事だ」
「まだシフト時間めちゃくちゃあるんですが」
「んな事言っても夜までライブないんだから仕方ないだろ? 適当にPAんとこ行って機材の扱い方でも習ったらどうだ。前は教えてもらうとか息巻いてたじゃねえか」
「あれから嫌というほど現実を分からされたんですよ。俺にあの作業は無理でした。PAさんマジ尊敬っす」
「要は諦めたってこったな」
否定はせん。というか事実でしかない。俺には早すぎたよパトラッシュ……。
「そういや虹夏さんは教習所の調子どうなんですか? なんか話してます?」
「普通に雑談始めるつもりだなこいつ……。あー、まあ順調だとよ。今日はいよいよバック駐車するとか言ってたな」
「さすが虹夏さん、お化けが怖い以外は完璧すぎるな」
「ハッ、どうだかね〜。案外アクセルとブレーキをツインペダルに見立ててリズム刻みたくなってんじゃねえの」
「あはは、虹夏さんに限ってそんなバカな事あり得ませんて」
「いやいや、ドラム脳のあいつならハンドルもスネアのフープに見えるとか絶対思ってるって」
「だとしたら重症……いやそんなお茶目な虹夏さんもありっちゃありだな」
「お前の虹夏に対する全肯定主義どうなってんだよ」
それこそ何を言ってんだこの姉は。人は神や天使を崇めてなんぼでしょうが。
虹夏さんが右って言ったら例え正解が左でも喜んで右を選ぶよ俺は。これが信徒ってやつよ。だから店長俺にこいつバカじゃねえのみたいな視線送るのやめてほしい。
「お前も最初とはだいぶ変わったよな。主にヤバい方向だけど」
「褒められてないって事だけは理解しました」
「よく分かってんじゃねえか」
分かりたくはなかったけどね?
「で、そっちの方はどうなんだよ」
「というと?」
「結束バンドの方。新曲の進捗は? 上手くいってんのか」
言われて考える素振りも見せず、俺は直球で答える事にした。
「微妙なとこですね」
「正直だなおい」
「主にリョウさんが音楽にバイトだけだったのがそこに車校もプラスされたせいで難航してるって感じですかね。あの人にマルチタスクは難しいかと」
「怠け者が作曲の要だと面倒だな……」
いやまあそこはリョウさんだけが頼りだから俺達はどうこう言える立場じゃないんですけどね。
怠け者に関してははげど(死語)
「それに伴って後藤さんも作詞に手が付けられなくて滞ってる最中です」
「自分の中である程度アイデアないと新曲なんてのはそうポンポン作れる訳じゃないし、且つレーベル契約して最初の新曲だからそれなりにハードル高くなってプレッシャーも感じてるってとこか。あるあるだな」
「そうなんですか?」
「チャンスが来たからそれに応えられるよう気合いを入れようとしても、それが逆にプレッシャーになって自分を追い詰めちまうなんて事はこの業界じゃザラだ。今までよりも良い曲を作らなくちゃいけない、バンドにとって大事な一歩目になる曲だから未踏のハードルを越えなくちゃならない。それはバンドメンバーの作詞作曲者にとっちゃある種の呪いであり枷にもなりかねねえんだ」
俺なんかよりも遥かに音楽業界に詳しい店長はパソコンの画面を見ながら淡々と言う。
「どんだけ外じゃ平気な面してても、家だと孤独の中たった一人でこれからのバンド生活を左右するかもしれないプレッシャーの中をひたすら考え込まなくちゃならない。多分お前が思ってる以上に内側では何か思い詰めてる可能性あるかもな。リョウは普段はクソみたいに不真面目だが、こと音楽に関しては結束バンドの中で一番のバンド経験者であり真面目なやつだし」
ふとリョウさんが突然バイトにも学校にも来なくなった時の事を思い出す。
確かあの時もフェスに出るから新曲を作るってなりスランプに陥って誰にも相談しないまま家の庭でキャンプしてたな。そういう意味じゃ、今回とシチュエーションは似てるかもしれない。
しかも前に比べて今回はレーベルがいてサポートもしてくれる好条件付き。故に下手な曲は作れないとリョウさんも人知れず焦っている可能性があるという事か。
後藤さんは……何かあれば俺に言えって伝えてるし多分大丈夫だとは思う。何なら家隣だから付きっきりでいてもいいし。
「つってもまだ新曲リリースまで期間もあるし焦る事もないだろ。リョウだって一応成長してんだ。今はとにかく車校に集中させときゃいいさ」
「店長……」
「あいつの場合脳内ショートしたままバイトしたら何かやらかしそうだし」
「そこかい」
気遣いと思ったら割と自分本意の考えしてたよこの人。
優しいとこあんじゃん……と思って見てた俺の尊敬の眼差し返してほしい。
「それにあいつらの事は公認サポーターのお前が何とかすんだろ」
「……へへっ」
「お前って時々ぼっちちゃんに似てるよな」
それは褒めてんのか貶してんのかどっちだ……?
店長後藤さんの事大好きだから分からん。多分ペットは飼い主に似る的なニュアンスで言ってきたのかも。……どっちみち褒められてはないな?
「ほれ、やる事ねえならどっか行け。正確にはぼっちちゃん達のとこ行ってこい」
「それが店長の言う事ですか?」
「用ができたら呼んでやっから。こっちはまだやる事あるからお前の相手ばっかしてらんないんだわ」
「追いやり方が都合の良いカレカノみたいで何か嫌だな!」
「烏滸がましい事言ってんな。お前が私の彼氏だなんて百年早えわ。いいとこ虹夏くらいだろ」
「俺なんかがッ! 虹夏さんにッ! 釣り合う訳ッ! ないだろうがッ!!!!」
「お前ほんとそういうとこで虹夏泣かしたらぶっ飛ばすからな?」
虹夏さん泣かすヤツなんか俺も一緒にぶっ飛ばしてやりますよ!!
え? ぶっ飛ばされるのは俺の方? なして??
疑問に思っていると店長にげしげしと蹴られながらドリンクカウンターを追いやられた。
扱いが酷いと思います。
「それでひとりちゃんに私を頼むって言ったのにのこのこ戻ってきたと」
「はい。流れに身を任せて戻ってきました」
「……優人君ってたまにそういうとこひとりちゃんに似てるわよね」
「後藤さん、俺らって似てるらしいぞ」
「え、えへへ……嬉しいね……」
……嬉しいのか?
ちょい短めだったけどPCぶっ壊れた中スマホで地道に頑張ったから許してちょ。
実は数日前に誕生日迎えました。幼メン始めてから二度目だね。
という事でプレゼントと称して高評価くれたら嬉しいぜよ! 誕生日くらい乞食モンスターさせてくれたっていいじゃない!
誕プレあげちゃう
↑ここから評価できるからみんな高評価くらはい!
10が最高らしいですよ???
では、今回高評価を入れてくださった
☆10. ilikecartmanbrahさん、たけしいたけさん、ゴールド@モーさん好きさん、文字モジ狐面さん、A_FGr000さん、sangodさん
☆9. イキョウさん、ザラメ雪さん、大石内蔵助さん、タスマニアさん、完全無欠のボトル野郎さん
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次回はお待ちかねの水着回になるかもしれない。