再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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お盆休みでも更新してく精神。

劇場総集編の後編最高すぎたね……。新規カットや新録のセリフもあったからまだ観てない人はぜひ観に行こう。
ただの総集編と思ったら大間違いだぜ。



125.長期休みは終わりが近づくにつれて憂鬱になるとこまでがセット

 

 

「で、完成版がこれと」

 

「あっはい……」

 

 PCからデモ音源が流れだす。

 そう、あれから後藤さんは俺の監視の下で色々あったが何とか爆速で音源を完成させたのだ。

 

 途中でバンド経験者の直樹さんが乱入してきて武勇伝という名の自分語りをいきなり始めたり、かと思えば経験者の立場だからこそ言えるアドバイスもちゃんとしてたりと、まあ何やかんやありつつも編曲を終えた後藤さんと俺は雨が降る中急いでスターリーにやってきた。

 そんで今に至る。

 

 

「なるほど……」

 

「これは……」

 

「はい……」

 

 音源はまだ流れたまんまだがお三方の反応はちょっとアレだった。

 

 

「なんかへんてこな音がたくさん鳴ってんだけど……叫び声みたいなの入ってない?」

 

「ひとりちゃん……私このギターパート弾けるかしら……?」

 

 ピロピロギュイーンって鳴ってる部分ね。ちなみに俺は無理だと思う。

 つうか音源からは犬の鳴き声やぽんぽこぽりん的な音や、どうあがいても人の手で演奏できるレベルを超えてるギターやベース、ドラムの音が鳴り響いてて非常におっかない。これ多分腕が四本とか六本いるぞ。誰かカイリキー呼んでこい。

 

 

「優人くん」

 

「はい」

 

「どう思う?」

 

「後藤さんの努力を認めたいとは思ってます」

 

「これあたし達演奏できると思う?」

 

「四妖拳か通信交換してもらう必要がありますね」

 

「天津飯かカイリキーになれって言ってる?」

 

 伝わった事に驚きだよ。

 

 確かに編曲自体は完成した。

 しかしその出来や過程に関して俺はほとんど関与してないから黙って見てる事しかできなかったのだ。ある程度のベースはできてたらしいが、そこで後藤さんの謎拘りが発揮され、いつしか人間離れした化物バンドにならないと演奏できないようなデモ音源が出来てしまったのである。

 

 とにかく完成させるの優先にしたらこうなった。後悔はしている。

 ついでにデモ音源は一つだけではない。なんたって我らが後藤さんだぞ。念には念を、ちょっとした欲張り、細かな修正を繰り返してたらいつの間にか時間ギリギリまで編曲してデモ音源の数がすんげー増えてた。

 

 

「あっ、やっぱり『最終決戦! 超次元ウルトラファイナルジエンドカタストロフィエクスプロージョン完成44』を聴いてください……」

 

「え!? どれ!? さっきから何がどれなのか全然分かんないんだけど!」

 

「俺的には『勝ったッ! 第3部完! アルティメットハイパー超越ファイナルエクスプロージョンZ35』の方が好きだったりするんですけどね」

 

「何でいちいちタイトル違うのこれ!? てかよく覚えてるね!?」

 

 へへっ照れるじゃねえか。よせやいっ。

 

 しかし実のところ俺の好みとかはどうでもよく、結局は演奏する虹夏さん達の評価と現実的に演奏可能かで全てが変わる。

 まあ腕を多数要求される時点でほぼ全部不可能なんだけどね。

 

 

「あっへへ……やっぱりこんなの使えないですよね……。自分で言い出したくせに無駄に時間かけてしまってすみません自害します……」

 

「いやそこまでする必要ないから!」

 

「そうよ! 私も頑張って腕を生やすわ!」

 

「喜多さんはそのままでいてくれ」

 

 あーもうほら後藤さん落ち込んじゃったじゃん。

 音源の評価は置いといて彼女なりに自分で提案して頑張った結果がこれならショックを受けるのも無理はない。大丈夫だ後藤さん、失敗から色々学んでいけばいいんだよ。まずはみんなに人間辞めさすのを止めような。

 

 しくしくと俺に近寄り慰めてオーラ満載で来たからとりあえずふーちゃんを宥める感覚で頭を撫でておく。

 すると未だに人間離れした音源を聴いているリョウさんが口を開いた。

 

 

「……いや、でもこのベースとギターの掛け合いはいいと思う。私じゃ絶対出ないアイデア」

 

 ……えっ、マジで? 

 まさかのここで作曲者から悪くない言葉が出てくるとは俺も思わなかった。

 

 

「おい後藤さんっ、あのリョウさんからお褒めの言葉を頂いたぞ。全てが無駄な訳じゃなかったんだって!」

 

「うん、ここは少し手を加えるだけで普通に使えそうだと私は思う」

 

「あっえっ!?」

 

「編曲は作曲とはまったく別物だから今回は思うようにいかなかったかもだけど、私が聴いてる限り確かに光るところもあるしそんなに凹まなくてもいい。これからの成長に期待」

 

 おお、結構褒められてんじゃん。リョウさんにしては珍しく褒めて伸ばそうとしてんのかな。

 

 

「また面白いアイデアが浮かんだら遠慮せずに意見ちょうだい。ぼっちの脳内は結構奇想天外で面白いし参考になるとこもあるから」

 

「あっはい……!」

 

「よかったな。作曲者のリョウさんに褒められるなら上々じゃんか」

 

「う、うん……へへへ……」

 

 後藤さんの機嫌も元通りで監視してた俺もとりあえずは一安心。

 しかし結局後藤さんのデモ音源自体は使えないままだ。となると。

 

 

「それじゃあ編曲はリョウさんが直し入れるって感じですか?」

 

「うん、ぼっちの音源をベースにしつつ郁代や虹夏でも演奏できるレベルに調整して世界観を壊さないようにするつもり」

 

 そこでこの化物音源演奏できない枠に自分を入れないリョウさんの強メンタルさすがっす。

 

 

「ぼっち、次の作曲も楽しみにしてるから」

 

「あっはい……! あっだったら編曲も次こそは良いものにしてみせます……!」

 

「ぼっちの編曲の才能にはまだ時代がついて来れないから作曲が行き詰まった時の最終兵器、切り札として取っておこう」

 

「っ!! は、はい……!」

 

 それっぽく言って今後編曲させないようにさせる強メンタルさすがっす。

 

 

「ゆうくん……わ、私最終兵器だって……! か、かっこいいね……!」

 

「そうだね、かっこいいね」

 

 ちゃんと鵜呑みにして喜んでる君もちょろげふんげふん……純粋で良い子だね。できれば今後もそのままの後藤さんでいて。

 

 

「(ねえ優人くん、あれって遠回しな戦力外通告なんじゃあ……)」

 

「(これを機に後藤さんも編曲の勉強頑張ると思えば悪くはない結果だし黙っておくのが吉ですよ。後藤さんももっと編曲できるようになったら曲のバリエーションも増えて結束バンドも今より成長できるはずです)」

 

「(うーん……言われてみればそうかも?)」

 

 小さく首を傾げる虹夏さんからしか得られない栄養がある。

 よし、今日のニジカルシウム摂取完了。こんなもんなんぼあってもいいですからね。

 

 とりあえずこれで後藤さんの任務は完了。今日は元々音源の確認だけでバイトも練習もないから後はどうするも個人の自由だ。

 このまま帰ってもよし、適当に雑談してくのもよし、寄り道していくのもよし、豊臣秀よし。

 

 後藤さんとリョウさんは作曲の事で少し話してるっぽい。うんうん、別荘の時も思ったけど後藤さんが自分の意見を言えてる姿を見るのは何度見ても感慨深いね。

 作曲組でしか話せない事もあるから案外そっちの方が話しやすいのかもしれない。

 

 

「むぅ……また二人だけで変な絆できてる……」

 

「諦めな〜。あれはあたし達じゃ入っていけない輪だから」

 

 まあっ、喜多さんが謎の嫉妬オーラを出しておられまするわ。

 憧れの二人だけにできてる絆に自分が入っていけないのが悔しいのかしら。知らんけど。

 

 っと、そうだ。

 一応リョウさんには報告しとくかな。聞き耳をたてながら話の区切りを探り二人に近づいていく。

 

 

「そういえばリョウさん」

 

「ん、何」

 

「俺、この一週間の間にアコギ買ったんですよ」

 

「えっ……!?」

 

「おぉ、行動力高いじゃん。いいね、もう練習始めたんだ。どう、弾き心地は? 弾き語りできそう? 曲はまだ作ってないの?」

 

 近い、近いって。音楽の事になると距離感バグってくるの何なんマジで。

 色々と近すぎてさすがの優人さんも困惑しちゃいますよこんなの。

 

 と思ってたら袖を引っ張られた。後藤さんだ。

 

 

「ゆ、ゆうくん、アコギ買ったの……っ? 私き、聞いてない……!」

 

「え? あー……そういやこの一週間後藤さんと連絡取り合ってなかったから言うの忘れてたな。そうそう、アコギ買ったんだよ。これで本格的に弾き語りの練習できるからまたご教授よろしく頼むわ」

 

「えっ……あ、う、うん……それは、ま、任せてっ……四六時中教えてあげる……!」

 

「四六時中はいいかな」

 

 一日使い潰す気かこやつ。

 

 

「で、弾き語りに使う曲は? 既存曲? オリジナル? 既存曲なら私も教えられる。特に結束バンド」

 

「いやまあ最初はオリジナルなんて無理だから既存曲ですけど……だから近いって!」

 

「りょ、リョウさん……ゆうくんには私が教えるので……!」

 

 後藤さんが謎に張り合おうとしてるのはなぁぜなぁぜ? 

 

 

「伊地知先輩、私達ってまずあの輪に入れなきゃスタートラインにすら立てないんでしょうか……」

 

「どこかぶっ飛んでなきゃあの距離感は凡人にはハードル高すぎるよねぇ〜」

 

 よく分かんない事言ってないで虹夏さんはリョウさん引き取ってください。

 こういう時のダーヤマすげぇ純粋で逆に困惑なんだって。餌に引っかかった獲物を絶対に逃がさんとばかりに詰め寄ってくるんだもの。怖いよ。

 

 

「あれ、お前ら今日はぼっちちゃんのデモ音源の確認してるんじゃなかったのか。何してんの」

 

 と、ここで店長が買い出しから帰ってきたみたいだ。

 雨の中ご苦労さんです。

 

 

「それはもう終わったよ〜。だから今は……暇潰しタイム?」

 

「要はやる事ないって事か。終わったんなら邪魔だからさっさと帰れよ〜。こっちも今日はいつもと違う仕事あんだから」

 

「……ハッ!? ゆ、ゆうくん帰ろう……今日はもう明日に備えて精神統一しないと……」

 

「精神統一って……あーそういや忘れてんだっけか」

 

「……?」

 

 無理矢理リョウさんを引き剥がしつつ思い出す。

 後藤さんは今日が夏休み最終日だと思っている。まあ本来なら今日は31日だし明日から新学期と思っても別におかしくはないのだが、曜日を勘定に入れてないのだこの子は。

 

 答え合わせは案外すぐだった。

 同じ高校に通う喜多さんから声がかかる。

 

 

「ん? ひとりちゃん明日何かあるの?」

 

「えっが、学校が……」

 

「? ひとりちゃん、今年の9月1日は土曜日よ? 今日は金曜だから休みはまだあと2日残ってるわ」

 

「……え?」

 

 後藤さんがガチガチとぎこちない動きをしながらこちらに振り向く。

 目が合ったので俺も首を縦に振る。学生こそ楽しい楽しい長期休みの最終日は絶対覚えておくはずなんだけどなあ。まだ何日残ってるとか今回は前回より休み多いかとかって感じで。

 

 さて、ここで改めて後藤さんをちゃんと見る。

 基本学校行きたくないさっさと売れて中退したい派の彼女の表情は絶望から希望へと変わっていった。そりゃそうだ。だって猶予が2日増えたんだから。

 

 それにもう編曲作業もないから休みを満喫できるという喜びが後藤さんの顔にめっちゃ出ている。

 満喫と言ってもやる事といえば家でギター弾くくらいしかないと思うんだけどそこを突くのは多分野暮だ。指摘したらほぼ確で後藤さんは死ぬ。

 

 

「ぼっちちゃんから急に後光が出てきた!?」

 

「後光さん再びですね」

 

「休みが増えて嬉しいのねひとりちゃん」

 

「……い、今なら何でもできそうな気がする……!」

 

「無理だと思うぞ」

 

 そうやってすぐ調子乗る癖いい加減直しなさい。

 あとでいつもフォローしてるの誰だと思ってんだ。大体俺だぞ。せめて変なやらかしだけはやめてね。

 

 

「ゆうくん、私先に行ってるね……この喜びを世界と分かち合いたいから……!」

 

「え、おいっ」

 

 制止する前にピンクの子はスターリーから出ていった。

 どうしよう、もう嫌な予感しかしないんだけど。

 

 

「さすがぼっち、私達の想像をいつも斜め上の方向に上回っていく。だからぼっちのアイデアには光るものがあるんだ」

 

「それギリギリ褒めてないからな?」

 

「まあぼっちちゃんはこの一週間頑張ってたからね〜。土日は活動休みにしてあげて夏休み明けからバシバシやってこっか」

 

「私はその土日で直しの作業と他の作曲もあるけどね」

 

「リョウ先輩とひとりちゃんの曲、楽しみにしてますっ!」

 

 虹夏さんはアルバムのジャケット作成、喜多さんは俺と一緒にSNSでの広報。

 ジャケットは最低でも曲を何曲か作ってから方向性を決めて作成しないとだし、広報は商品がある程度出来上がってからじゃないと宣伝しにくい。

 

 いずれにしても俺達の番はもう少し後って感じかな。

 

 

「ところで優人くん、ぼっちちゃん放置しといていいの?」

 

「え? ああ、先に行くって言っても駅で待ってるでしょうからそんなに慌てなくてもいいかなって。後藤さんだし通った事ない道には絶対行かないだろうから迷子の心配もありませんよ」

 

「や、そうじゃなくてね……外はまだ雨凄く降ってるのにぼっちちゃん傘ここに置いたまんま出てったから大丈夫かなって」

 

 …………………………………………………………………………………………。

 

 

「あんのアホピンクぅッ!!」

 

 喜びを世界と分かち合いたいからって天の恵みを真っ向から受け止めてどうするあのバカっ。

 雨の中ピンクジャージが傘もささずに外出歩いてる方が悪目立ちして後で黒歴史になるに決まってんでしょうよもぉーっ!! 

 

 

 

 

「凄い勢いで出てったね」

 

「ひとりちゃん風邪引かないといいけど……」

 

「あん? 優人とぼっちちゃんは帰ったのか?」

 

「うん、相変わらずイベントには事欠かなそうだったけど」

 

「? まあいいや、そこの二人も用が済んだら今日はとっとと帰れよ」

 

「いつもは何も言わないのに何で今日は帰らそうとしてるの?」

 

「さっきも言ったろ。今日はいつもと違う仕事があるって」

 

「そういえば言ってましたね。何かあるんですか?」

 

「面接だよ。バイトのな」

 

 

 ──

 

 

 翌日。

 

 俺は後藤さんの部屋で座っていた。

 ギターの練習をする訳でもなく、遊ぶ訳でもなく。

 

 

「ゆうくん……ぷ、プリン食べたい……けほっ」

 

「一個だけな」

 

 全身ずぶ濡れになったせいで見事風邪になり最後の土日を布団で過ごす羽目になったバカな彼女を看病するために。

 

 

「な、生クリーム乗ってるのがいい……」

 

「図々しいなこの病人」

 

 

 

 

 

 





次回はいよいよ新キャラのあの二人が登場するかも……?

夏休みだしお盆休みだし暇だよ〜って人。良かったら高評価してってくれると嬉しいなって。
映画観て熱が再燃した人もそういやまだ評価してなかったって人も☆10とか☆9とか気軽にしていってね。ていうかしてくれ。
お願い! ほんの数秒で終わるから! リンク飛んでちょちょいとするだけだから! それだけではちゃめちゃに喜ぶヤツがここにいるから!! ね!?

承認欲求モンスターのために高評価をくらはいっ


では、今回高評価を入れてくださった

☆10. 九条ネギさん、vongolaさん、ssを読む程度の能力さん

☆9. アカウント1さん、イキョウさん、よこやたさん、ザラメ雪さん、完全無欠のボトル野郎さん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
あなたの高評価が私の糧となる。
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