再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る   作:たーぼ

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何とか書けたので投稿〜。




130.カラオケでも一応ボリュームには気を付けるべき

 

 

 喜多さんから何故か釘を刺され、パーティーのはずなのに後藤さんと同じくビクビクしながら呼ばれた部屋へと着いた俺達。

 こんな事ならもう俺帰ってよくない? 後藤さんなら喜多さんに任せるから。たまには俺のために犠牲になってくれないかな。

 

 という願望も後藤さんが俺の服を掴んで離さないから叶わないようだ。

 ……ん? なんか近くの部屋からシデロスの曲が聴こえるような……確かヨヨさん達の曲はカラオケにあるんだったか。まさかこんなとこにシデロスのファンがいるなんてさすがフェス優勝者だな。

 

 

「開けるわよ〜」

 

 あ、はい、現実逃避してる場合じゃなかったですね。もういいですよ。覚悟決めましたよ。何だかんだ男子より女子と話してる時間多い(大体結束バンド)俺が華麗な立ち回りで澄んだ空気と化そうじゃないですか。

 とりあえず一言二言喋ったら壁際でタンバリン係でもしておこう。そうすれば光り輝く陽キャ達を照らす影の薄い立ち位置いられるはず。僕は影だ……。

 

 そして喜多さんが扉を開けた。

 すると、突然中からパンッパンッと空を叩くような音が響くと同時に中から数人顔を覗かせてきた。

 

 

「「「「喜多ちゃん後藤さん未確認ライオットお疲れ様〜!」」」」

 

 分かってはいたがクラスの女子達だ。人数は四人、喜多さんの推測通り全員女子。

 ……フッ、なるほどな。先が怖いぜ。

 

 何が来るか分かってたかのようにスマホを構えポーズを決めてた喜多さんがわざとらしく先に口を開く。

 

 

「これって……」

 

「有志による慰労会でーす! 未確認ライオットを頑張った喜多ちゃんと後藤さんやそれを支えた清水君を労うための集まりだよ〜!」

 

 カラオケ部屋の内装は学生なりに頑張って飾ってみました感満載の飾り付け仕様になっており、横断幕には『祝! 喜多ちゃん後藤さん未確認ライオットお疲れ様会! あと清水君も☆』と書かれている。

 そんな無理に俺を足さんでもいいよ? 気遣いで誘われちゃった勘違い男みたいになっちゃうから。

 

 

「わ〜! 最高のサプライズだわ〜! びっくり〜!」

 

「その割には完璧なポーズ決めてたような」

 

「そんなことないわよ。ね、優人君!」

 

「あ、はい、そうっすね」

 

「清水は清水で何してんのさ」

 

 見れば分かるだろ。クラッカーの音で自分が撃たれたと勘違いしてショック死してる後藤さんを蘇生してんだよ。

 どういう風に蘇生してるかは諸君の想像に任せる。

 

 

「……あ、部屋にから揚げあるぞ後藤さん、良かったな」

 

「か、から揚げ……!」

 

 よし、蘇生完了。まさかから揚げがザオリクと同じ効果持ってるとは。

 

 

「ゆ、ゆうくん……から揚げ何個まで食べていいかな……?」

 

「後藤さん達の慰労パーティーだから食べたいだけ食べたらいいんじゃね。足りなかったら追加注文すりゃいいだろ」

 

「パーティー……そ、そっか、私達へのサプライズパーティーだったんだ…………ハッ!? で、でもロッキンの件はどうなって……!?」

 

 まだ続いてたのそれ。

 

 

「え? ロッキン? 夏休み前にはみんなの誤解解けてたけど。後藤達が出るはずないって。少し考えたらすぐ分かる事じゃんね」

 

 まあそりゃそうだよね。まともにデビューもしてないのに出れるはずないもの。

 つうかあの集会が茶番ってより黒歴史すぎて俺ですらあんま思い出したくないんだが。人間って何で嫌な思い出の方が覚えてるんだろうね。

 

 

「ほらっ、晴れて無罪放免よひとりちゃん! 何も気にせず楽しみましょ!」

 

「あっはい!」

 

 分かりやすくご機嫌になったなこのピンク。キラキラしすぎて目がしいたけになってんぞ。

 まあこれで後藤さんも多少は居た堪れなさが解消されるだろう。この子の場合はどこにいてもそう感じてしまう悲しい性の持ち主だけど。

 

 

「優人君は節度を持って楽しむのよ!」

 

 俺だけちょっと注意喚起みたいになってるのは何なんですかね。

 いやみんな女子だし元からそのつもりではあるけどさ。何なら俺の方が後藤さんより居た堪れないよ。バンドメンバーって訳じゃないからパーティーに呼ばれてるのちょっと恥ずかしいもの。

 

 だってスターリーの人達や新宿フォルト組のようなキャラが濃い癖強残念ガール達ならまだしも、ここにいるクラスの女子達は至って普通の子達なんだもん。

 めちゃくちゃまとも枠に入る人達なんだもん。普通の女子と絡む事自体とても珍しいから俺自身少し緊張してる。ミスディレクションちゃんと使えるかな……。

 

 

「ほれほれ、主役達はこっち座りな。清水は後藤の隣確定ね」

 

「いや、うん、まあそれはいいけど……」

 

 さっさんに言われたまま後藤さんの隣に座る。むしろその方が俺も精神的に安心できて助かります。

 どうしよう、普通の女子の相手ってどうすればいいんだっけ? 頼む、みんな極力俺に話しかけないで喜多さんとか後藤さんにターゲット向けたままパーティー終わってくれ……! 

 

 

「んでうちは清水の隣ね〜」

 

「今ほどさっさんが隣にいてくれて幸せだと思える事はないぜ」

 

「口説いてるように見せかけて実は真逆のこと言ってるなコノヤロ」

 

 今の俺にとっては最上級の言葉なんだけどどうしてそのまま受け取ってくれないの。

 

 

「はい優人君そういうの禁止!」

 

「何が!?」

 

 いきなりワンアウト喰らった件。

 神様、この世は理不尽に溢れてるぜ。どうにかしてくれよ。

 

 と、そんなごちゃごちゃがありつつも慰労会という名のパーティーが始まった。

 

 

「え〜では本日の慰労会、司会進行は私佐々木が勤めさせていただきます〜。つっても特に何も考えてないんで適当に二人をちやほやしてあげてくださ〜い。ついでに清水も一割くらいはちやほやってあげるかんね〜」

 

「気持ちだけで結構です」

 

 というか気持ちも結構です。さっさんのちやほやは信用できないんだって。絶対余計な事してくるの確定してるし。

 隣ではさっそく後藤さんがクラスの女子達にちやほやされていた。

 

 

「二人ともお疲れ〜! 凄かったね〜!」

 

「ネットでも配信されてたんだよっ。めっちゃかっこよかった!」

 

「秀華祭でも思ったけど後藤さん凄いんだね〜! ねえ、もっとお話聞かせてよ! ほら、これも付けてさ!」

 

「あっうっ……!?」

 

 いや思ったよりちやほやされてんな。

 本日の主役2と書かれたタスキを掛けられた後藤さんは案の定目ん玉をぐるぐるさせている。良かったな、持て囃されるの夢見てたもんな。

 

 

「あっあっ……き、喜多ちゃん……」

 

「ふふ、主役はどっしり構えとけばいいのよ」

 

 本日の主役1と書かれたタスキを掛けている喜多さんはもうこういうイベントに慣れているのか、もはや貫禄すら感じる。

 あれが今まで主役を張り続けていた猛者だ。面構えが違う……。

 

 

「清水も一応コレ付けときな」

 

「本日の主役3……ここまで来たらもうモブ扱いでいいんだけど」

 

 どんだけ主役いんだよ。野球の優勝チームかよ。

 喜多さんがいつもの陽キャオーラで乾杯の音頭をとりみんなの注目を掻っ攫っていく中、ひと味違うさっさんは俺の隣を維持したまま俺を間に挟みながら、

 

 

「後藤も乾杯しよ〜」

 

「さっささささん!?」

 

「間に俺挟む必要ある?」

 

「後藤の安定剤」

 

 俺っていつからお薬になったんですかね……。代わりにから揚げを安定剤にしたらダメですか。

 

 

「今日のためにあえて感想言わないようにしてたけど改めてライブ良かったよ。応援来てたの気付いてた?」

 

「あっはい、す、ステージから見えてました……どうも……」

 

「マジであの横断幕持ってくるとは思わなかったわ。よく没収されなかったな」

 

「一応邪魔にならない後ろの方でやってたからね。いや〜うちらからしたら余裕で一位だったんだけどなー」

 

 分かる、と言いたい気持ちに蓋をする。多分共感を口にした途端俺は止まらなくなるからだ。いつだって自分の推しは一位なんだぞと厄介オタクの部分が表に出てしまえば終わりである。

 オタクは密かに推しの活躍を支えればそれだけでいいのだ。……なんか恵恋奈みたいな事言ってんな俺。

 

 

「後藤はステージの上だと凄いんだからそーやって俯いてないで堂々としたらいいのに。あんたに憧れてる人、後藤が思ってるより結構いると思うよ。何ならうちもその一人だったり、なんて」

 

「よし後藤さんや、さっさんにサインを書いてやるのだ。今のうちにファンとして取り込んで離さないようにしておくのだ。推しのファンサに喜ばないファンなんていねえよなあ!?」

 

「あっはい! サインいりますか!」

 

「何であんたら共々0か100でしか受け取れねえの。清水からは厄介ファンの気配ぷんぷん感じるし。いらんいらん」

 

 嘘でしょ。俺がいつ厄介オーラ出したってのよ。そんなもん出した覚えはありませんよ。

 ……まさか無自覚? 無意識に出しちまってたのか? やべえ、もしかしてよくSNSにいる厄介オタクも善意での言動や行動と思って無意識にこんな事してるのか……? あれらと同列扱いされるのだけは何としても回避しないと……! 

 

 

「じゃあ間を取って俺のサインいる?」

 

「清水って時々うちが引くくらい知能指数下がる時あるよね」

 

 おかしいな、シンプルにバカにされて終わったんだけど。

 

 

「そーだ。ねえねえ清水君!」

 

 やっぱりミスディレクション使っとくかと思っていたら突然向かいの席に座っている女子から声をかけられた。

 この流れは質問だと思うが、クラス女子からされる質問って何だ? 喜多さんの友達だし映えスポットとか聞かれる? それかやっぱ女子会したいから帰れとか? いや何か面白い事やってとか無茶振りされる可能性もあるか……? 

 

 

「何?」

 

「清水君って結束バンドのサポートやってるんでしょ? 何やってるの?」

 

 意外と普通の質問だった。

 

 

「喜多さんから聞いてないのか?」

 

「ざっくり程度にはね。けど普段どういう事してたりするのかなって。気になっちゃった!」

 

 気になっちゃったかー。ならしょうがないよねー。

 といっても別に企業秘密でもないし漏らしたらマズい事もレーベル以外では特にない。ここは普通に答えるのが無難かな。

 

 

「ん〜ライブだと機材運びの力仕事はもちろん、体調管理や一応個々でメンタルケアできるようにそれぞれの好みはある程度把握してるかな。例えば後藤さんだと好きな食べ物で釣ったりとか」

 

「何それ〜! じゃあ喜多ちゃんの好みとかも知ってるの?」

 

「とりあえず映え系のモノを与えておけばいいかなって」

 

「思ったより大雑把だった!?」

 

 実際それで釣れてるからさ。ほら、みんなで下北沢ぶらり旅した時みたいな。

 ちなみにリョウさんはまともな料理、虹夏さんは彼女が望むものを全て与える精神でいけば大体メンタルケアはできる。

 

 

「ライブイベントに出れるよう手配するとかはないの?」

 

「結束バンドの拠点は基本下北沢のスターリーだからな。あそこが一番ホームでやりやすいんだよ。まあたまに違うとこでやったりもしたけどまだデビューした訳でもないし知名度もめちゃくちゃ広まった訳でもないから、こっちから出向かない限りはそういうオファーも来ないかな。もちろんみんなが他の箱でもやりたいって言うなら俺は全力で良いとこ探すつもりだよ」

 

「おお〜、マネージャーみたいだね〜」

 

 ちょっと違うけどね、と思いつつあくまで女子高生の軽い質問だからという事でここで区切っておく。

 自分からぐいぐい行くと女子にはすぐ引かれるんだよ。優人さん知ってる。そういうのはただしイケメンに限るって米印付きで書かれるやつ。

 

 

「喜多ちゃんもこの前言ってたけど健気な程に献身的だねぇ。そういうとこが他の男子とは違うって感じか〜」

 

「え、何が?」

 

「いやね、喜多ちゃん最近いつも雑談する時は結束バンドかしみ」

 

「はいストォーップ!!」

 

 友達の言葉を遮ってきたのは喜多さんである。は、速いっ……これが赤い彗星の力か……! 

 じゃなくて。いきなり俺と女子の間にマイクを持った手でカットを入れるかのように割って入ってきたのはなぁぜなぁぜ? せっかく普通の女子と緊張せずに話せているのに!! 

 

 

「どうしたんだよ喜多さん。今この子と話してる途中なんだけ」

 

「優人君とずっと話してたら気がもたないわよ!」

 

 俺の相手って常人には荷が重かったりすんの? 

 

 

「大丈夫だよ喜多ちゃん〜、私達もある意味では喜多ちゃんのサポート役なんだからさ〜!」

 

「何のサポート役なんだ?」

 

「そんな事より私の歌を聴いて!!」

 

 何でいきなりマクロスみたいなこと言い出したのこの子。いや別にいいけどさ。

 無理矢理話を中断した喜多さんがデンモクを手に取る。そしてそのまま数十秒が経過した。いや歌うんじゃなかったんかい。

 

 

「えっとぉ……じゃあシデロスさんの歌で!」

 

 なんで? 熟考してそれ? 

 陽キャならもっとパリピみたいな歌入れるんじゃないの? イケナイ培養とか水面花とかさ。あれでしょ? 今は逆にちょっと古めな曲が盛り上がるんでしょ? 

 

 そのままシデロスの曲を歌い始める喜多さん。

 シデロスの曲を結束バンドのボーカルが歌うのはどちらの曲も聴き慣れてる俺からすれば中々に新鮮だ。うむ、これはこれで悪くない。むしろめっちゃ良い。

 

 

「そういや後藤さんはシデロスの曲とかカバーしようと思わねえの?」

 

「えっ……わ、私は基本テレビで流行ってる曲ばかりだから……そ、それにもしカバーやったの大槻さんに知られたら怖い……」

 

「ああ、うん、そっか」

 

 そうだった。ヨヨさんは割とツンデレしつつも歩み寄ろうとしてるけどこの子は普通に怖がってるんだった。

 ツンデレが通用しないから似てる部分はあるのに変なとこで後藤さんと相性悪いんだよなヨヨさん。

 

 

「……ねえ清水、隣なんかうるさくない?」

 

「ん? ……あー言われてみれば」

 

 さっさんに言われて壁に意識を向けると、確かに隣の歌声が妙に響くというかちょっとうるさいまである。

 いくらカラオケといえども防音は完璧じゃない。100%音を防げる訳じゃないのは理解しているが、これはさすがにお隣さんの声が大きすぎるだけだと思いたい。

 

 まったく、喜多さんの歌声に集中したいのに中々迷惑な客だ。どんだけストレス溜まってるんだろう。

 ……なんかちょっと聴き覚えのある声にも思えるが、さすがに勘違いか。別にここ新宿じゃないしな。

 

 

「さっさん、隣がうるさいならこっちの音量上げればいいよ」

 

「それもそっか。んじゃぶち上げちゃうよ〜」

 

 ふぅ、これで喜多さんの歌声に集中できますな〜。

 ……隣なんか叫んでる? まいっか。

 

 





ヨヨさんは隣部屋でぼっちカラオケだそうな。


では今回新たに高評価を入れてくださった

☆10. キモッタマさん、 A_FGr000さん

☆9. カットさん、扁桃石さん、イキョウさん、ザラメ雪さん、完全無欠のボトル野郎さん、カイナアズナブルさん

いつも感想高評価お気に入り登録ここすきthank you!
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